古文文法辞典 › 助動詞
大学受験
ひとことで言うと
「たり・り」は存続(〜ている)と完了(〜た)を表す助動詞です。ラ変型に活用し、「たり」は連用形に、「り」はサ変の未然形・四段の已然形(さみしい)につきます。体言につく「たり」は断定です。
このページのポイント
- 意味は存続(〜ている・〜てある)と完了(〜た)。まず「〜ている」で訳す
- 活用はどちらもラ変型(たら・たり・たり・たる・たれ・たれ/ら・り・り・る・れ・れ)
- 「たり」は連用形、「り」はサ未四已(さみしい)に接続。上は e の音
- 完了の「たり」は連用形の下、断定の「たり」は体言の下
- e の音+「る」は「り」の連体形、a の音+「る」は受身などの「る」
はじめて(やさしく)
「たり」と「り」は、「〜ている」「〜てある」「〜た」と訳す助動詞です。たとえば「花咲きたり」「花咲けり」は、どちらも「花が咲いている(咲いた)」という意味です。
現代語の「〜た」は、じつはこの「たり」の連体形「たる」が「た」に縮んでできたものです。でも古文の「たり・り」は、「〜た」よりも「〜ている」と訳すほうがぴったりくることが多いのが特徴です。
うかるくん
「あり」から生まれたってことは、「ある」の意味が残っているの?
合格先生
そのとおり! 「咲きてあり」は「咲いて、そのままある」。だから動作のあとの状態が続いている、つまり「〜ている」の意味(存続)が中心なんだ。もちろん「〜た」(完了)の意味もあるよ。
サクラちゃん
「咲いた」より「咲いている」。絵みたいに、今の様子が見える感じだね。

うかるくん
「り」は「咲け・書け」のように、すぐ上が e の音になるんだね。「け+り」で「けり」に見えるけど、過去の「けり」とはちがう!
ここまでのまとめ
- 「たり・り」=存続(〜ている・〜てある)と完了(〜た・〜てしまった)
- 「たり」は「て+あり」、「り」は「〜あり」がつまってできた。どちらもラ変型
- 「たり」は連用形につく。「り」はサ変の未然形・四段の已然形(さみしい)につく
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
助動詞「たり・り」の意味・接続・活用表
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| たり | たら | たり | たり | たる | たれ | たれ | ラ変型 |
| り | ら | り | り | る | れ | れ | ラ変型 |
| 語 | 接続 | 意味・訳し方 |
|---|---|---|
| たり | 連用形(動詞・一部の助動詞) | 存続(〜ている・〜てある)、完了(〜た・〜てしまった) |
| り | サ変の未然形・四段の已然形(さみしい) | 存続(〜ている・〜てある)、完了(〜た・〜てしまった) |
意味は2つとも同じです。ちがうのは接続だけ。「り」は四段とサ変にしかつかないので、それ以外(上一段・上二段・下一段・下二段・カ変・ナ変・ラ変、助動詞)には「たり」を使います。四段とサ変には「たり」も「り」もつきます(「咲きたり」「咲けり」)。接続全体の整理は助動詞の接続、ほかの完了の助動詞は助動詞「つ・ぬ」へ。
「り」の接続は「さみしい」(サ未四已)
「サ変の未然形・四段の已然形」で「さみしい」(サ未四已)と覚えるのが定番です。サ変「す」の未然形は「せ」、四段「咲く」の已然形は「咲け」。どちらもエ段の音なので、「e の音+ら・り・る・れ」を見たら「り」を疑います。「り」の連体形「る」と已然形・命令形「れ」が特に見落とされやすい形です。
存続と完了の見分け方
- まず「〜ている・〜てある」と訳してみる。自然なら存続。
- 不自然なら「〜た・〜てしまった」で完了。
- 下に体言がある連体形「たる・る」(咲ける花・降れる雪)は、存続のことが多い。
例文で確かめる
あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。
(竹取物語・かぐや姫の生い立ち)
現代語訳不思議に思って近寄って見ると、(竹の)筒の中が光っている。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
(竹取物語・かぐや姫の生い立ち)
現代語訳それを見ると、三寸(約9センチ)ほどの人が、とてもかわいらしい様子で座っている。
その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。
(伊勢物語・第九段(東下り))
現代語訳その沢にかきつばたがとても美しく咲いている。
紫だちたる雲の細くたなびきたる。
(枕草子・第一段(春はあけぼの))
現代語訳紫がかっている雲が細くたなびいている(のがよい)。
かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
(百人一首6番・中納言家持(大伴家持)「かささぎの」)
現代語訳かささぎが(翼を連ねて)渡したという橋(宮中の階段をたとえたとする説が多い)に降りている霜の白さを見ると、夜もすっかり更けてしまったのだなあ。
朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
(百人一首31番・坂上是則(朝ぼらけ))
現代語訳夜がほのぼのと明けるころ、有明の月(の光)かと思うほどに、吉野の里に降り積もっている白雪よ。
山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
(百人一首32番・春道列樹(山川に))
現代語訳山の中の川に風がかけている柵(しがらみ)は、流れきれずにたまっている紅葉であったよ。

合格先生
百人一首の「渡せる」「降れる」「しげれる」「残れる」は、みんな四段の已然形+「り」の連体形「る」。e の音+「る」は、まず「り」を疑おう!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 完了の「たり」と断定の「たり」の見分け方
「たり」には、この完了・存続の「たり」のほかに、「〜である」と訳す断定の助動詞「たり」があります(くわしくは 断定の助動詞「なり・たり」)。見分けの決め手は上の語です。
| 完了・存続の「たり」 | 断定の「たり」 | |
|---|---|---|
| 接続 | 連用形(咲き・見・来 など) | 体言(主に身分・資格などを表す名詞) |
| 訳 | 〜ている・〜た | 〜である |
| 活用 | たら・たり・たり・たる・たれ・たれ | たら・たり/と・たり・たる・たれ・たれ(連用形に「と」がある) |
| 出てくる文章 | 和文(物語・日記・随筆)にも多い | 漢文訓読調。軍記物語などに多く、和文にはあまり出ない |
然るに忠盛、未だ備前守たりし時、鳥羽院の御願、得長寿院を造進して
(平家物語・巻一「殿上闇討」)
現代語訳(平)忠盛が備前守であった時、鳥羽院のご祈願の寺、得長寿院を造ってさし上げて
もう1つまぎらわしいのが、「堂々たり」「漫々たり」のような形容動詞タリ活用の語尾です。これは「堂々たり」全体で1語の形容動詞です(形容動詞(ナリ活用・タリ活用))。上が様子を表す漢語(「〜々」「〜然」など)なら形容動詞、人や身分・物の名前なら断定の「たり」と考えます。
夕日のかかやいたるに、みな紅の扇の日出だしたるが、白波の上に漂ひ
(平家物語・巻十一「那須与一」)
現代語訳夕日が輝いているところに、一面紅色の地に日の丸を描いてある扇が、白波の上にただよい
2. 「る」「れ」の識別:完了「り」か、受身などの「る」か
「り」の連体形「る」と已然形・命令形「れ」は、助動詞「る・らる」(受身・尊敬・自発・可能)の「る」「れ」と形が同じです。見分けは上の音です。
| 形 | 上の音 | 正体 | 例 |
|---|---|---|---|
| る | エ段(四段の已然形・サ変の未然形) | 完了・存続「り」の連体形 | 「月ぞ残れる」(81番) |
| る | ア段(四段・ナ変・ラ変の未然形) | 受身・尊敬・自発・可能「る」の終止形 | 「人に思はる」(自作) |
| るる | ア段 | 受身などの「る」の連体形 | 「岩にせかるる」(77番) |
| れ | エ段/ア段 | エ段なら「り」の已然形・命令形、ア段なら「る」の未然形・連用形 | 「咲けれど」(り)/「思はれけり」(る)(ともに自作) |
ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる
(百人一首81番・後徳大寺左大臣(ほととぎす))
現代語訳ほととぎすが鳴いた方をながめると、(ほととぎすの姿はなく)ただ有明の月が空に残っている。

3. 「り」は已然形接続か、命令形接続か
学校の文法では「四段の已然形」につくと教えるのがふつうですが、「命令形」につくとする文法書もあります。奈良時代の万葉仮名の使い分け(上代特殊仮名遣い)を調べると、「り」の上のエ段の音は、已然形ではなく命令形と同じ種類の音で書かれていたからです。もともと「咲き+あり」がつまった音なので、どちらの活用形とも本来は別、と考える立場もあります。入試では「已然形」と答えれば問題ありませんが、「命令形」と書いた本を見ても誤りではない、と知っておくと安心です。
4. 存続と完了の境目
平安時代の和文の「たり・り」は、存続で訳すと自然なことが多いと説明されます。一方で、「文書きたり。今は使ひに持たせよ。」(自作:手紙を書き終えた。もう使いの者に持たせなさい)のように、動作が終わったことに重点があれば完了です。存続と完了は、「動作の結果が残っている」か「動作が終わった」かという視点の違いで、はっきり2つに分けられない例もあります。そのため、「たり・り」の意味を「完了」1つとし、その中に存続をふくめる説明もあります。入試の訳では、まず「〜ている」で訳し、不自然なら「〜た」が安全です。
5. 「たり」と「り」は、どちらが古い?
「り」は奈良時代から使われた古い形で、平安時代以降は接続を選ばない「たり」がしだいに広く使われるようになったと説明されます。のちに「たり」の連体形「たる」が「た」となり、現代語の過去・完了の「た」につながりました。
サクラちゃん
「〜ている」の意味の「たり」が、今の「〜た」になったなんて!
合格先生
だから古文の「たり」を「〜た」とだけ訳すと、もとの「ている」の感じが消えてしまうんだ。まず「ている」。これを覚えておこう。
よくあるまちがい
まちがい1:「咲けり」「書けり」を過去の「けり」とまちがえる
「咲け+り」は四段の已然形+完了「り」。過去の「けり」は連用形につくので「咲きけり」です。「咲けり」と「咲きけり」の違いに注意しましょう(過去は助動詞「き・けり」)。
まちがい2:「降れる」「残れる」の「る」を受身と答える
上がエ段(降れ・残れ)なら完了「り」の連体形。受身などの「る」はア段(思は・せか)の下につきます。
まちがい3:「たり」をいつも「〜た」と訳す
古文の「たり・り」は存続が中心。「筒の中光りたり」は「光っている」。訳の選択肢では「〜ている」をまず確かめましょう。
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強のスレで質問できます。助動詞全体は記事「古文の助動詞一覧」や助動詞一覧(辞典)で整理できます。
練習問題
やさしい
- 助動詞「り」の接続を答えなさい。また、覚え方も答えなさい。
答えと解説を見る
サ変の未然形・四段の已然形。「さみしい(サ未四已)」と覚えます。
- 「花散りたり。」(自作)を、存続の意味で現代語に訳しなさい。
答えと解説を見る
「花が散っている」。「散り」は四段の連用形、「たり」は存続の終止形です。
ふつう
- 次の「る」を文法的に説明しなさい(自作)。
① 雪の降れる朝 ② 人に笑はる。答えと解説を見る
① 「降れ」は四段の已然形(エ段)なので、完了(存続)「り」の連体形(雪が降り積もっている朝)。② 「笑は」は四段の未然形(ア段)なので、受身の助動詞「る」の終止形(人に笑われる)。
- 「起きたり」は正しいが「起けり」とは言わない。その理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
「起く」は上二段活用で、「り」はサ変の未然形と四段の已然形にしかつかないから。四段・サ変以外の動詞には「たり」を使います。
むずかしい
- 次の「たり」を、①完了(存続)の助動詞、②断定の助動詞、③形容動詞の活用語尾に分けなさい(自作)。
ア 父は大納言たり。 イ 月の光、皎々たり。 ウ 門の前に人立ちたり。答えと解説を見る
ア:上が体言「大納言」なので②断定(父は大納言である)。イ:上が様子を表す漢語「皎々(こうこう)」で、「皎々たり」で1語なので③形容動詞タリ活用の語尾(月の光が白く明るい)。ウ:上が四段「立つ」の連用形「立ち」なので①存続(門の前に人が立っている)。
- 「八重むぐらしげれる宿」(百人一首47番)の「しげれる」を品詞分解し、訳しなさい。
答えと解説を見る
「しげれ」=四段動詞「しげる」の已然形、「る」=完了(存続)の助動詞「り」の連体形(体言「宿」にかかる)。「つる草が幾重にも茂っている宿」。
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- 助動詞の接続:連用形接続の仲間と「さみしい」
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- 「る・れ」の識別:助動詞と動詞の一部・「り」
- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 和歌の修辞
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よくある質問
助動詞「たり・り」の意味は何ですか?
存続(〜ている・〜てある)と完了(〜た・〜てしまった)の2つです。平安時代の文章では存続で訳すと自然なことが多いので、まず「〜ている」と訳してみます。
「り」の接続は何ですか?
サ変の未然形と四段の已然形です。「サ未四已(さみしい)」と覚えます。「せり」「咲けり」のように、すぐ上はエ段の音になります。
「たり」と「り」の違いは?
意味は同じで、違うのは接続です。「たり」は連用形につき、「り」はサ変の未然形・四段の已然形にしかつきません。四段・サ変以外の動詞には「たり」を使います。
完了の「たり」と断定の「たり」はどう見分けますか?
上の語で見分けます。連用形の下なら完了(存続)の「たり」、体言の下なら断定の「たり」(〜である)です。「堂々たり」のように様子を表す漢語につくものは形容動詞タリ活用の語尾です。
「る」が完了の「り」か受身の「る」かはどう見分けますか?
すぐ上の音を見ます。エ段の音(降れ・残れ)の下なら完了「り」の連体形、ア段の音(思は・せか)の下なら受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:竹取物語(かぐや姫の生い立ち)、伊勢物語(第九段)、枕草子(第一段)、平家物語(巻一「殿上闇討」・巻十一「那須与一」)、百人一首(6・31・32・47・77・81番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(「たり・り」の意味・接続・活用、断定「たり」との識別)にもとづいて作成。「り」の接続(已然形説・命令形説)、存続を完了にふくめるかどうかなど、説明が分かれる所は両方を記しました
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 081」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



