- 歌
- 住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
- 意味
- 住の江の岸に寄せる波の「よる」ではないが、昼だけでなく夜までも、夢の中の通い路で、あなたはどうして人目を避けて(私に会いに来て)くれないのだろうか。
- 作者
- 藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん)
- 出典
- 『古今和歌集』恋二・559番
- 決まり字
- 「す」(1字決まり)

住の江の 岸に寄る波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
読みすみのえの きしによるなみ よるさえや
ゆめのかよいじ ひとめよくらん
歴史的仮名遣いすみのえの きしによるなみ よるさへや
ゆめのかよひぢ ひとめよくらむ
住の江の岸に寄る波のように、夜の夢の中でさえ、あなたは人目を避けて会いに来てくれないのだろうか——一字決まり「す」の、藤原敏行の恋の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 住の江 | すみのえ | 今の大阪市住吉区あたりの海岸。住吉大社があります。 |
| 寄る波 | よるなみ | 岸に寄せる波。「寄る」から同じ音の「夜」を導いています。 |
| よるさへや | よるさえや | 「夜までも〜だろうか」。「さへ」は添加(〜までも)、「や」は疑問の係助詞です。 |
| 夢の通ひ路 | ゆめのかよいじ | 夢の中で恋人のもとへ通う道。 |
| 人目よくらむ | ひとめよくらん | 「人目を避けているのだろうか」。「よく」は「避ける」、「らむ」は原因推量で、「や」を受けて連体形で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 住の江 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 岸 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 寄る | 動詞・ラ行四段「寄る」連体形 | |
| 波 | 名詞 | |
| 夜 | 名詞 | |
| さへ | 副助詞 | 添加「〜までも」 |
| や | 係助詞 | 疑問 |
| 夢 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 通ひ路 | 名詞 | |
| 人目 | 名詞 | |
| よく | 動詞・カ行上二段「よく」終止形 | 避ける |
| らむ | 助動詞「らむ」連体形 | 原因推量(係り結び) |
表現技法・文法のポイント
「住の江の岸に寄る波」が、同じ音の「よる(夜)」を導く序詞です。
「や」を受けて「らむ」が連体形で結んでいます。
「寄る」「夜」と同じ音を重ねて、波のような調べを作っています。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』恋二に入っています。宇多天皇の母・班子女王の主催した歌合(寛平御時后宮歌合)で詠まれた歌です。当時は、相手が自分を思っていると、その人が夢に現れると考えられていました。夢にさえ来ないのは、相手の気持ちが冷めたからでは……という不安を詠んでいます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
『宇治拾遺物語』には、敏行が多くの人に頼まれて法華経を200部以上書き写したのに、魚を食べるなど身を清めないまま書いたため、地獄で苦しんだという話があります。書の名人だったからこその伝説といえます。
当時は「相手が自分を思うと、その人が夢に現れる」とも、「自分が相手を強く思うと、夢で会える」とも考えられていました。夢にさえ来てくれないのは、相手の心が離れたからか、それとも自分の思いが足りないのか――歌の中の不安を想像してみましょう。
作者:藤原敏行朝臣
平安時代前期の貴族・歌人・書家、藤原敏行(ふじわらのとしゆき)です。書の名人として知られ、京都・神護寺の国宝の鐘に刻まれた文字は敏行が書いたものとされます。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「す」まで読まれたら、取り札が決まります。「す」で始まる歌は1首あります。
覚え方:「す」と聞いたら「ゆめのかよひぢ」。一字決まり「むすめふさほせ」の「す」です。住(す)んでいる夢(ゆめ)、と覚えます。
入試で問われるポイント
- 序詞(同音で導く)
- 係り結び(や→らむ)
- 副助詞「さへ」(添加)
- 夢と恋の古文常識
よくある質問
この歌の序詞はどこまでですか?
「住の江の岸に寄る波」までです。同じ音の「よる(夜)」を導いています。
「夢の通ひ路」とは何ですか?
夢の中で恋人に会いに行く道のことです。相手が自分を思うと夢に現れる、と考えられていました。
一字決まりはどれですか?
18番は「す」の一字決まりです。「むすめふさほせ」の「す」にあたります。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
