- 歌
- 難波潟 短き葦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
- 意味
- 難波潟に生えている葦の、短い節と節の間のような、ほんのわずかな時間でさえも、あなたに会わずにこの一生を過ごしてしまえと、あなたはおっしゃるのですか。
- 作者
- 伊勢(いせ)
- 出典
- 『新古今和歌集』恋一・1049番
- 決まり字
- 「なにはが」(4字決まり)

難波潟 短き葦の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
読みなにわがた みじかきあしの ふしのまも
あわでこのよを すぐしてよとや
歴史的仮名遣いなにはがた みじかきあしの ふしのまも
あはでこのよを すぐしてよとや
難波潟の葦の短い節と節の間ほどの短い時間も、あなたに会わずにこの世を過ごせとおっしゃるのですか——情熱的な恋の歌で知られる伊勢の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 難波潟 | なにわがた | 今の大阪湾の入り江。葦がたくさん生えていました。 |
| 葦 | あし | 水辺に生える草。茎に節(ふし)があります。 |
| ふしの間 | ふしのま | 葦の節と節の間。ごく短い時間のたとえです。 |
| この世 | このよ | 「この世(一生)」と、葦の「節(よ)」の掛詞です。 |
| 過ぐしてよとや | すぐしてよとや | 「過ごしてしまえというのですか」。「てよ」は完了「つ」の命令形、「とや」は「と言うのか」の意味です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 難波潟 | 名詞 | |
| 短き | 形容詞・ク活用「短し」連体形 | |
| 葦 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| ふし | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 間 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| 逢は | 動詞・ハ行四段「逢ふ」未然形 | |
| で | 接続助詞 | 打消接続「〜ないで」 |
| この | 連体詞 | |
| 世 | 名詞 | 掛詞(世/節) |
| を | 格助詞 | |
| 過ぐし | 動詞・サ行四段「過ぐす」連用形 | |
| てよ | 助動詞「つ」命令形 | 完了(強意)「〜してしまえ」 |
| と | 格助詞 | 引用 |
| や | 係助詞 | 疑問(結びの省略) |
表現技法・文法のポイント
「難波潟短き葦の」が、短い「ふしの間」を導いています。
「よ」に「節(よ)」と「世」を掛けています。
「葦」「ふし」「よ(節)」は葦に関係する言葉です。
「とや」の後に「言ふ」などが省略されています。
歌の背景・鑑賞
『新古今和歌集』恋一に入っています。冷たくなった恋人に向けて、少しでも会いたいという気持ちを強く訴えた歌です。短い葦の節を「時間の短さ」に重ねる発想が見事です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
この歌を贈った相手が誰かはわかっていません。伊勢は藤原仲平と恋をしたものの、仲平が別の女性と結婚して別れた、という話が伝わっています。この歌の相手を仲平だと想像する人もいます。
伊勢は宇多天皇に愛されて皇子を産みましたが、その皇子は幼くして亡くなりました。華やかさと悲しみの両方を知る人生が、深い恋の歌を生んだのかもしれません。
作者:伊勢
平安時代前期から中期の女性歌人です。宇多天皇の中宮温子に仕え、のちに宇多天皇に愛されて皇子を産みました。情熱的な恋の歌で知られ、『古今和歌集』では女性歌人の中で最も多くの歌が選ばれています。三十六歌仙の一人で、娘の中務(なかつかさ)も歌人として有名です。
決まり字と覚え方
上の句が「なにはが」まで読まれたら、取り札が決まります。「な」で始まる歌は8首あります。
覚え方:「なにはが」と聞いたら「あはでこのよを」。難波潟(なにわがた)で会わで(あわで)、と覚えます。「なには」で始まる歌は19番と88番「なにはえ」があるので、4字目の「が」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 序詞・掛詞・縁語
- 打消接続の「で」
- 「てよ」(完了「つ」の命令形)
- 結びの省略
よくある質問
「ふしの間」とはどういう意味ですか?
葦の茎の節と節の間のことで、ごく短い時間のたとえです。
この歌の掛詞はどこですか?
「この世」の「よ」に、葦の「節(よ)」と「世(一生)」を掛けています。
伊勢はどんな歌人ですか?
宇多天皇に愛された女性歌人で、情熱的な恋の歌で知られます。『古今和歌集』では女性で最も多く歌が選ばれました。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
