古文文法辞典 › 助詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
副助詞は上の語に意味をそえる助詞。「だに」は類推「〜さえ」と最小限の希望「せめて〜だけでも」、「すら」は類推、「さへ」は添加「〜までも」、「のみ」は限定「〜だけ」、「し」は強意を表します。
このページのポイント
- だに=類推「〜さえ」。文末が意志・願望・命令なら最小限「せめて〜だけでも」
- さへ=添加「〜までも」(今の「さえ」は古語のだに・すら)
- のみ=限定・強意、ばかり・まで=程度・限定、など=例示・婉曲
- し・しも=強意。取り除いても意味が通る
- 難関大は「し」の識別(強意/過去「き」の連体形/サ変)
はじめて(やさしく)
「水さえ飲めない」「君だけに話す」の「さえ」「だけ」のように、上の語に意味をそえる助詞を副助詞(ふくじょし)といいます。古文の副助詞の主役は「だに・すら・さへ・のみ・し」です。助詞の全体の地図は 助詞の種類 で見られます。
いちばん大事なのは「だに」。「蛍ほどの光だになし」は「蛍ほどの光さえない」。小さな光さえないのだから、まして明るい光なんてあるはずがない、と相手に推しはからせる言い方です。これを類推(るいすい)といいます。
サクラちゃん
古文の「さへ」って、今の「さえ」と同じ意味?
合格先生
そこが一番の落とし穴。今の「さえ」にあたるのは古文の「だに・すら」。古文の「さへ」は「〜までも」で、何かに付け加える意味なんだ。
うかるくん
えっ、形が同じなのに意味がずれてるの!?
合格先生
そう。時代とともに「さへ」が「だに」の役目を引きついで、今の「さえ」になったんだよ。
ここだけは覚えよう
- 「だに」は類推(〜さえ)。下に意志・願望・命令があれば最小限の希望(せめて〜だけでも)
- 「さへ」は添加(〜までも)。今の「さえ」とはちがう
- 「のみ」は限定(〜だけ)、「し・しも」は強意(訳さない)

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しっかり(大学受験の基礎〜標準)
副助詞の一覧(意味・訳し方)
副助詞は、体言・連体形・助詞などいろいろな語につきます。接続より意味と訳し方を覚えることが大切です。
| 副助詞 | 意味 | 訳し方 | 例 |
|---|---|---|---|
| だに | 類推/最小限の希望 | 〜さえ/せめて〜だけでも | 光だになし・香をだに残せ |
| すら | 類推 | 〜さえ | (上代・漢文訓読調に多い) |
| さへ | 添加 | 〜までも・〜まで | よるさへや |
| のみ | 限定/強意 | 〜だけ/ひどく・ただもう | おのれのみ |
| ばかり | 程度/限定 | 〜ほど・〜ぐらい/〜だけ | 三寸ばかりなる人 |
| まで | 程度/限度 | 〜ほど/〜まで | 見るまでに |
| など | 例示/婉曲/引用 | 〜など/〜などと | 烏など |
| し・しも | 強意 | (訳さない) | 名し負はば |
「だに」=類推と最小限の希望
「だに」には2つの意味があり、文末の形で見分けます。文末が意志(む)・願望(ばや・なむ)・命令・仮定なら「せめて〜だけでも」(最小限の希望)。それ以外(打消が多い)なら「〜さえ」(類推)です。
光やあると見るに、蛍ばかりの光だになし。
(竹取物語・仏の御石の鉢)
現代語訳光があるかと見ると、蛍ほどの光さえない。
散りぬとも香をだに残せ梅の花恋しき時の思ひ出にせむ
(古今和歌集・春上・読人しらず)
現代語訳散ってしまっても、せめて香りだけでも残しておくれ、梅の花よ。恋しいときの思い出にしよう。
家の人どもに物をだに言はむとて、言ひかくれども、ことともせず。
(竹取物語・貴公子たちの求婚)
現代語訳家の人たちにせめて言葉だけでもかけようと、話しかけるけれども、相手にもしない。
百人一首51番「かくとだにえやはいぶきのさしも草」の「だに」も、「(せめて)こうだとだけでも(言えようか、いや言えない)」と訳されます。65番「恨みわびほさぬ袖だにあるものを」は類推で、「かわかす間もない袖さえ(朽ちずに)あるのに」。

合格先生
「だに」を見たら、まず文末をチェック! 意志・願望・命令なら「せめて〜だけでも」、打消なら「〜さえ」だ。
「さへ」=添加(〜までも)
「さへ」は、すでにあるものにさらに付け加わることを表します(添加)。訳は「〜までも」。現代語の「さえ」と同じ形なので、まちがえやすい語です。
住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ
(百人一首18番・藤原敏行朝臣(住の江の))
現代語訳住の江の岸に寄る波の「よる」ではないが、(昼だけでなく)夜までも、夢の中の通い路で、あなたはどうして人目を避けるのだろう。
85番「夜もすがら……閨のひまさへつれなかりけり」は「(あの人だけでなく)寝室の戸のすきままでもつれない」。50番「君がため惜しからざりし命さへ」も「命までも」と訳されます。
「のみ」「ばかり」「まで」「など」
風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな
(百人一首48番・源重之(風をいたみ))
現代語訳風が激しいので、岩に打ちつける波が自分だけくだけ散るように、(つれないあの人を思って)私だけが心もくだけてもの思いをするこのごろだなあ。
それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
(竹取物語・冒頭)
現代語訳それを見ると、三寸ほどの人が、とてもかわいらしい様子で座っている。
「まで」は「〜ほど」(程度)と「〜まで」(限度)。31番「朝ぼらけ有明の月と見るまでに」は「有明の月かと見まちがえるほどに」。「など」は例示・婉曲で、「烏などもこそ見つくれ」(源氏物語・若紫)は「烏などが見つけたら大変だ」(もぞ・もこそ)。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「し」の識別:強意の副助詞・過去「き」・サ変
「し」は識別問題の定番です(くわしくは 「し」の識別)。強意の副助詞「し」は、取り除いても意味が変わらないのが目印です。
名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
(伊勢物語・第九段(東下り))
現代語訳(都という)名を持っているのなら、さあたずねよう、都鳥よ。私の恋しく思う人は無事でいるかいないかと。
- 過去「き」の連体形:連用形につく。59番「やすらはで……月を見しかな」の「し」は、連用形「見」について「見たことよ」(助動詞「き・けり」)。
- サ変動詞「す」の連用形:「物語などして」のように「する」の意味がある(変格活用)。
- 形容詞の語尾:「悲し」「恋し」。副詞の一部:「しばし」「さしも」。
強意の「し」は「しも」の形でもよく出ます。「今日しも」(ちょうど今日)、「必ずしも」(打消と呼応して「必ず〜とはかぎらない」)。「し」を独立した副助詞とせず、間投助詞とする説明もあります。
見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず
(百人一首90番・殷富門院大輔(見せばやな))
現代語訳お見せしたいものだ。雄島の漁師の袖でさえ、濡れに濡れても色は変わらない(のに、私の袖は血の涙で色が変わってしまった)。
2. 「すら」と「だに」、「さへ」の移り変わり
「すら」は類推「〜さえ」で、奈良時代の和歌(万葉集)や漢文訓読調の文に多く、平安時代のかな文では「だに」がその役目をになったと説明されます。たとえば「聖人すら過ちあり」(自作)は「聖人でさえまちがいがある(まして凡人は)」。
中世になると「さへ」が「だに」の類推の意味まで受け持つようになり、現代語の「さえ」につながりました。そのため、中世以降の文では「さへ」が「〜さえ」の意味になる例もあり、時代も判断の手がかりになります。
「だに」の最小限の希望は、仮定の「〜ば」とも呼応します。「声だに聞かば、うれしからむ」(自作)は「せめて声だけでも聞けたら、うれしいだろう」。文末だけでなく、だにを受ける述語の形(意志・願望・命令・仮定)を見る、と覚えると確実です。また、「だに」が「も」と重なった「だにも」(90番)も、意味は「だに」と同じです。
3. 「のみ」の強意と「ばかり」の限定
「のみ」は限定のほか、動詞などについて「ひどく・ただもう」と程度を強める用法があります。「泣きのみ泣く」(自作)は「ただもう泣きに泣く」。「ばかり」は、平安時代はおもに程度「〜ほど」で、限定「〜だけ」は時代が下るほど多くなると説明されます。21番「今来むといひしばかりに」は「(すぐ行くと)言ったばかりに」と訳されることが多い例です。
うかるくん
「だに」と「さへ」、どっちが「さえ」だったか、また迷いそう……。
合格先生
合言葉は「だに・すら=さえ、さへ=まで」。それと、「だに」は文末を見て「せめて〜だけでも」かどうかを確かめること。
サクラちゃん
90番の歌みたいに、「だに」のあとに「まして〜」を補えたら完ぺきだね!
よくあるまちがい
まちがい1:古語の「さへ」を「さえ」と訳す
「よるさへ」は「夜さえ」ではなく「夜までも」。古語の「さへ」は添加です。
まちがい2:「だに」をいつも「さえ」と訳す
文末が命令・意志・願望なら「せめて〜だけでも」。「香をだに残せ」を「香りさえ残せ」と訳すと不自然になります。
まちがい3:「し」をすべて過去の助動詞にする
「名にし負はば」の「し」は取り除けるので強意の副助詞。過去「き」の「し」は連用形につく連体形です。
練習問題
やさしい
- 古文の「さへ」の意味として正しいものを選びなさい。
ア 類推(〜さえ) イ 添加(〜までも) ウ 限定(〜だけ)答えと解説を見る
イ。「さへ」は添加「〜までも」。類推「〜さえ」は「だに・すら」です。
- 「一言だになし。」(自作)を現代語に訳しなさい。
答えと解説を見る
「ひと言さえない」。文末が打消「なし」なので類推。
ふつう
- 次の「だに」の意味を答え、訳しなさい。(自作)
① 声をだに聞かせよ。 ② 水をだに飲まず。答えと解説を見る
① 文末が命令形「聞かせよ」なので最小限の希望「せめて声だけでも聞かせてくれ」。② 文末が打消なので類推「水さえ飲まない」。
- 「雨さへ降りて、道いとあし。」(自作)を、「さへ」の意味がわかるように訳しなさい。
答えと解説を見る
「(ほかの困ったことに加えて)雨までも降って、道がとても悪い」。添加です。
むずかしい
- 次の傍線部「し」を文法的に説明しなさい。
① 名にし負はば(伊勢物語) ② 月を見しかな(百人一首59番) ③ 物語などして(自作)答えと解説を見る
① 強意の副助詞(取り除いても意味が通る)。② 過去の助動詞「き」の連体形(連用形「見」につく)。③ サ変動詞「す」の連用形。
関連ページ
- 助詞の種類:6種類の助詞の地図
- 係り結び:90番「濡れにぞ濡れし」の結び
- 接続助詞「ど・ども・に・を・が」:「だに〜ものを」
- 助動詞「き・けり」:「し」の識別
- 終助詞「ばや・なむ・もがな」:「だに」と呼応する願望
- もぞ・もこそ:「烏などもこそ」
- 「し」の識別:副助詞・過去「き」・サ変・形容詞の「し」
- 「せ」の識別:使役・尊敬・サ変・過去
- 古文文法辞典の目次
歌の訳と修辞は「百人一首 全百首」や記事「和歌の修辞」でも読めます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 枕草子「春はあけぼの」
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よくある質問
古文の副助詞にはどんなものがありますか?
だに・すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など・し・しも などです。上の語に意味をそえます。
「だに」の意味の見分け方は?
文末が意志・願望・命令・仮定なら最小限の希望「せめて〜だけでも」、それ以外(打消が多い)なら類推「〜さえ」です。
「さへ」と現代語の「さえ」は同じ意味ですか?
ちがいます。古語の「さへ」は添加「〜までも」です。現代語の「さえ」にあたるのは古語の「だに・すら」です。
強意の副助詞「し」の見分け方は?
取り除いても意味が通れば強意の副助詞です。連用形につく「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。
類推とは何ですか?
軽いものを挙げて「〜さえ」と言い、「まして重いものは言うまでもない」と推しはからせる表現です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:竹取物語(冒頭・仏の御石の鉢・貴公子たちの求婚)、古今和歌集(春上)、伊勢物語(第九段)、源氏物語(若紫)、百人一首(18・48・90番、ほか21・25・31・50・51・59・65・85番に言及)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(副助詞の意味)にもとづいて作成。「し」を副助詞とするか間投助詞とするか、「すら」「さへ」「ばかり」の時代による変化には説明の違いがあり、本文中に記した
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 090」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



