- 歌
- 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけてものを 思ふころかな
- 意味
- 風が激しいので、岩に打ちつける波が、岩はびくともしないのに、自分だけ砕け散るように、(つれないあの人のせいで)私だけが心も砕けるほど思い悩んでいる、このごろであることよ。
- 作者
- 源重之(みなもとのしげゆき)
- 出典
- 『詞花和歌集』恋上・210番
- 決まり字
- 「かぜを」(3字決まり)

風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけてものを 思ふころかな
読みかぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもうころかな
歴史的仮名遣いかぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ
くだけてものを おもふころかな
風が激しいので、岩に打ちつける波が自分だけ砕けるように、私だけが心を砕いて思い悩むこのごろだ——片思いの苦しさを詠んだ源重之の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 風をいたみ | かぜをいたみ | 「風が激しいので」。〈名詞+を+形容詞の語幹+み〉で理由を表すミ語法です。 |
| 岩うつ波 | いわうつなみ | 岩に打ちつける波。岩は冷たい相手、波は作者のたとえです。 |
| おのれのみ | おのれのみ | 自分だけが。 |
| くだけて | くだけて | 波が「砕けて」と、心が「砕けて(思い乱れて)」の両方を表します。 |
| ものを思ふころかな | ものをおもうころかな | 「思い悩むこのごろであることよ」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 風 | 名詞 | |
| を | 間投助詞 | ミ語法の「を」 |
| いた | 形容詞「いたし」の語幹 | 激しい |
| み | 接尾語 | 原因・理由 |
| 岩 | 名詞 | |
| うつ | 動詞・タ行四段「うつ」連体形 | |
| 波 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 比喩「〜のように」 |
| おのれ | 代名詞 | |
| のみ | 副助詞 | 限定 |
| くだけ | 動詞・カ行下二段「くだく」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| もの | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| 思ふ | 動詞・ハ行四段「思ふ」連体形 | |
| ころ | 名詞 | |
| かな | 終助詞 | 詠嘆 |
表現技法・文法のポイント
「風をいたみ」は「風が激しいので」。1番「とまをあらみ」と同じ形です。
「風をいたみ岩うつ波の」が、「おのれのみくだけて」を導く序詞です。
びくともしない岩を冷たい相手に、砕ける波を自分にたとえています。
歌の背景・鑑賞
『詞花和歌集』恋上に入っています。作者が春宮(のちの冷泉天皇)に献上した『重之百首』の中の一首です。どんなに思いをぶつけても動じない相手と、ひとりで砕け散る自分を、岩と波で鮮やかに描いています。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
重之は晩年、陸奥守となった藤原実方(51番)に従って、遠い陸奥の国へ下り、その地で亡くなったと伝えられます。年下の実方を慕っていたのか、それとも都で居場所がなかったのか。旅の多い人生でした。
重之が春宮に献上した『重之百首』は、今に残る百首歌の中で最も古いものとされます。百人一首の「百首」というまとまりの、はるかな先輩ともいえます。
作者:源重之
平安時代中期の貴族・歌人、源重之(みなもとのしげゆき)です。清和天皇のひ孫にあたります。地方官として各地を回り、旅や不遇を嘆く歌を多く残しました。現存する最も古い百首歌『重之百首』の作者です。晩年は、陸奥守となった藤原実方(51番)に従って陸奥に下り、その地で亡くなったと伝えられます。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「かぜを」まで読まれたら、取り札が決まります。「か」で始まる歌は4首あります。
覚え方:「かぜを」と聞いたら「くだけてものを」。風を(かぜを)受けて砕け(くだけ)る、と覚えます。98番「かぜそ」と3字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- ミ語法(風をいたみ)
- 序詞・比喩
- 「の」の比喩用法
- 1番とのミ語法の比較
よくある質問
「風をいたみ」とはどういう意味ですか?
「風が激しいので」という意味です。〈を+形容詞の語幹+み〉で理由を表すミ語法です。
岩と波は何をたとえていますか?
びくともしない岩は冷たい相手、砕け散る波は思い悩む自分をたとえています。
98番「かぜそ」との見分け方は?
48番は「風をいたみ」、98番は「風そよぐ」です。3字目の「を」と「そ」で決まります。
あわせて読みたい
- 1番「秋の田の」(天智天皇・秋)
- 51番「かくとだに」(藤原実方朝臣・恋)
- 98番「風そよぐ」(従二位家隆・夏)
- 46番「由良の門を」(曽禰好忠・恋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
