- 歌
- 御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ
- 意味
- 宮中の御門を守る衛士(えじ)のたくかがり火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の恋心も、夜は燃え上がり、昼は消え入るばかりに思い悩んでいることだ。
- 作者
- 大中臣能宣朝臣(おおなかとみのよしのぶあそん)
- 出典
- 『詞花和歌集』恋上・224番
- 決まり字
- 「みかき」(3字決まり)

御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
昼は消えつつ ものをこそ思へ
読みみかきもり えじのたくひの よるはもえ
ひるはきえつつ ものをこそおもえ
歴史的仮名遣いみかきもり ゑじのたくひの よるはもえ
ひるはきえつつ ものをこそおもへ
宮中の門を守る兵士のかがり火が、夜は燃えて昼は消えるように、私の恋心も夜は燃え上がり、昼は消え入るように思い悩む——対句が美しい大中臣能宣の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 御垣守 | みかきもり | 宮中の御門を守る人。 |
| 衛士 | えじ | 諸国から集められ、宮中の警備をした兵士。夜はかがり火をたいて守りました。 |
| たく火 | たくひ | たいている火、かがり火。 |
| 夜はもえ昼は消えつつ | よるはもえひるはきえつつ | 夜は燃え、昼は消える。かがり火と恋心の両方を表しています。 |
| ものをこそ思へ | ものをこそおもえ | 「思い悩むことだ」。「こそ」を受けて「思へ」が已然形で結んでいます。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 御垣守 | 名詞 | |
| 衛士 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| たく | 動詞・カ行四段「たく」連体形 | |
| 火 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 比喩 |
| 夜 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| もえ | 動詞・ヤ行下二段「もゆ」連用形 | |
| 昼 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 消え | 動詞・ヤ行下二段「消ゆ」連用形 | |
| つつ | 接続助詞 | 反復 |
| もの | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| こそ | 係助詞 | 強意 |
| 思へ | 動詞・ハ行四段「思ふ」已然形 | 係り結び |
表現技法・文法のポイント
「御垣守衛士のたく火の」が、「夜はもえ昼は消え」を導く序詞です。
「夜はもえ」「昼は消え」が対になり、昼と夜で揺れ動く恋心を表しています。
「こそ」を受けて「思へ」が已然形になっています。
歌の背景・鑑賞
『詞花和歌集』恋上に入っています。夜は会えると思って燃え上がり、昼は会えずに消え入りそうになる――恋する人の一日の心の揺れを、宮中のかがり火にたとえた歌です。ただし、能宣の家集には見えず、本当に能宣の作かどうかは疑問とする説もあります。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
能宣が自信作の歌を父の大中臣頼基に自慢したところ、頼基はその歌を何度も口ずさんだあと、急に枕を投げつけて「天皇に招かれたら、これ以上の歌を詠むつもりか」と叱った、という話が残っています。厳しい父の教えが、名歌人を育てたのかもしれません。
この歌は、能宣の家集には見えず、作者が能宣かどうか疑問だとする説があります。それでも、かがり火の燃えたり消えたりする様子に恋心を重ねた見事な歌として、百人一首に選ばれました。
能宣の孫は、61番「いにしへの奈良の都の八重桜」の伊勢大輔です。歌の家は三代にわたって続きました。
作者:大中臣能宣朝臣
平安時代中期の貴族・歌人、大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)です。代々伊勢神宮の神官(祭主)を務める家の出身です。村上天皇の命で『後撰和歌集』を編集し、『万葉集』を読み解いた「梨壺の五人」の一人で、42番の清原元輔とは同僚でした。61番の伊勢大輔の祖父にあたります。三十六歌仙の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「みかき」まで読まれたら、取り札が決まります。「み」で始まる歌は5首あります。
覚え方:「みかき」と聞いたら「ひるはきえつつ」。御垣(みかき)の火は昼(ひる)消える、と覚えます。27番「みかの」と3字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- 序詞・対句
- 係り結び(こそ→思へ)
- 衛士(古文常識)
- 梨壺の五人(文学史)
よくある質問
「衛士」とは何ですか?
諸国から集められて宮中を警備した兵士です。夜はかがり火をたいて門を守りました。
この歌の対句はどこですか?
「夜はもえ」と「昼は消え」です。恋心の揺れを、燃えたり消えたりする火にたとえています。
梨壺の五人とは誰ですか?
村上天皇の命で『後撰和歌集』を編集した5人の歌人です。大中臣能宣や清原元輔(42番)が含まれます。
あわせて読みたい
- 42番「契りきな」(清原元輔・恋)
- 61番「いにしへの」(伊勢大輔・春)
- 27番「みかの原」(中納言兼輔・恋)
- 47番「八重むぐら」(恵慶法師・秋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
