- 歌
- 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
- 意味
- 秋の田のほとりに建てた仮小屋は、屋根をふいた苫(とま)の編み目が粗いので、(番をしている)私の袖は夜露にぬれ続けていることだよ。
- 作者
- 天智天皇(てんじてんのう)
- 出典
- 『後撰和歌集』秋中・302番
- 決まり字
- 「あきの」(3字決まり)

秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
読みあきのたの かりほのいおの とまをあらみ
わがころもでは つゆにぬれつつ
歴史的仮名遣いあきのたの かりほのいほの とまをあらみ
わがころもでは つゆにぬれつつ
秋の田の番小屋で夜を明かすと、屋根の苫の目が粗いので、袖が夜露にぬれ続けるという歌。百人一首の最初を飾る天智天皇の一首です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| かりほ(仮庵) | かりほ | 「かりいほ(仮の小屋)」がつまった形。稲を守るために田のそばに建てる番小屋。「刈り穂」と掛けているとする説もあります。 |
| 苫(とま) | とま | 菅(すげ)や茅(かや)を編んだむしろ。小屋の屋根や壁に使いました。 |
| とまをあらみ | とまをあらみ | 「苫が粗いので」。〈名詞+を+形容詞の語幹+み〉で「〜が〜なので」と理由を表します(ミ語法)。 |
| 衣手(ころもで) | ころもで | 袖のこと。和歌でよく使われる言い方です。 |
| ぬれつつ | ぬれつつ | 「つつ」は反復・継続の接続助詞。「ぬれ続けている」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 秋 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾 |
| 田 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾 |
| かりほ | 名詞 | 仮庵 |
| の | 格助詞 | 同格・連体修飾 |
| 庵 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 連体修飾 |
| とま | 名詞 | 苫 |
| を | 間投助詞 | ミ語法の「を」 |
| あら | 形容詞「あらし」の語幹 | 粗い |
| み | 接尾語 | 原因・理由「〜ので」 |
| わ | 代名詞 | 私 |
| が | 格助詞 | 連体修飾 |
| 衣手 | 名詞 | 袖 |
| は | 係助詞 | |
| 露 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| ぬれ | 動詞・ラ行下二段「ぬる」連用形 | |
| つつ | 接続助詞 | 反復・継続 |
表現技法・文法のポイント
「とまをあらみ」は「苫が粗いので」。入試で最もよく問われる形の一つです。
最後を「つつ」で終えて、ぬれ続ける様子と、しみじみとした余韻を残しています。
歌の背景・鑑賞
天皇が農民の苦労を思いやって詠んだ歌として伝えられてきました。ただし、もとは『万葉集』にある作者のわからない歌が、伝えられるうちに形を変え、天智天皇の作とされたとする説があります。出典の『後撰和歌集』では天智天皇の歌として載っています。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
天皇が自分で稲の番をすることは、ふつうは考えにくいことです。そこで「農民の苦労を思いやって、農民の立場になって詠んだ」と読むのが昔からの解釈です。一方で、もとは農作業をする人たちの間で歌われていた歌が、いつのまにか天智天皇の歌として伝えられたという説もあります。もし本当に天皇が夜露にぬれながら田を見回っていたとしたら……と想像すると、歌の景色がぐっと身近になります。
百人一首は、1番・2番が天智天皇と娘の持統天皇、99番・100番が後鳥羽院と子の順徳院という、親子の天皇で始まり親子の天皇で終わります。選んだ藤原定家が、はじめと終わりをそろえるように意図したのではないかと考える人もいます。
作者:天智天皇
第38代の天皇です。即位する前は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と呼ばれ、中臣鎌足(なかとみのかまたり)とともに大化の改新を進めました。都を近江大津宮(おうみのおおつのみや)に移したことでも知られます。2番の持統天皇は、天智天皇の娘です。
決まり字と覚え方
上の句が「あきの」まで読まれたら、取り札が決まります。「あ」で始まる歌は16首あります。
覚え方:「あきの」と聞いたら、取り札は「わがころもでは」。15番の取り札は「わがころもでに」なので、7字目の「は」と「に」で見分けます。「秋(あき)は袖が露でぬれる、だから『は』」と覚えるのがコツです。
入試で問われるポイント
- 「とまをあらみ」の意味(ミ語法=原因・理由)
- 「衣手」=袖
- 「つつ」の意味(反復・継続)
よくある質問
「とまをあらみ」とはどういう意味ですか?
「苫(とま)の編み目が粗いので」という意味です。〈を+形容詞の語幹+み〉で理由を表す「ミ語法」です。
この歌は本当に天智天皇が作ったのですか?
『後撰和歌集』では天智天皇の歌とされていますが、もとは『万葉集』の作者のわからない歌だったとする説があります。
百人一首の1番はなぜ天智天皇なのですか?
百人一首は、おおむね時代の古い歌人から順に並んでいるためです。最後の100番も順徳院という天皇の歌で、天皇の歌で始まり天皇の歌で終わります。
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