- 歌
- 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
- 意味
- あなたにさしあげるために、春の野原に出て若菜を摘んでいると、私の袖に、雪がしきりに降りかかってくることよ。
- 作者
- 光孝天皇(こうこうてんのう)
- 出典
- 『古今和歌集』春上・21番
- 決まり字
- 「きみがためは」(6字決まり)

君がため 春の野に出でて 若菜つむ
わが衣手に 雪は降りつつ
読みきみがため はるののにいでて わかなつむ
わがころもでに ゆきはふりつつ
歴史的仮名遣いきみがため はるののにいでて わかなつむ
わがころもでに ゆきはふりつつ
あなたのために春の野に出て若菜を摘んでいると、私の袖に雪が降りかかってくる——相手を思うやさしさがあふれる光孝天皇の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 君がため | きみがため | あなたのために。 |
| 若菜 | わかな | 春の初めに生える食用の若い草。食べると邪気を払い、長生きできると考えられていました(今の七草がゆにつながる習慣)。 |
| 衣手 | ころもで | 袖。 |
| 降りつつ | ふりつつ | 降り続いている。「つつ」は反復・継続です。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 君 | 名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| ため | 名詞 | |
| 春 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 野 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 出で | 動詞・ダ行下二段「出づ」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| 若菜 | 名詞 | |
| つむ | 動詞・マ行四段「つむ」連体形 | |
| わ | 代名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 衣手 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 雪 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 降り | 動詞・ラ行四段「降る」連用形 | |
| つつ | 接続助詞 | 反復・継続 |
表現技法・文法のポイント
若菜の緑と雪の白の対比が、春先の景色をあざやかに描いています。
降り続く雪の中で摘み続ける様子と、相手を思う心の余韻を残します。
歌の背景・鑑賞
『古今和歌集』春上に入っています。詞書には、光孝天皇がまだ親王だったころ、人に若菜を贈ったときに添えた歌とあります。贈り物に歌を添えるのは、平安貴族の大切な習慣でした。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
光孝天皇は親王時代、自分で料理をしていたため、部屋の壁がすすで黒くなっていたという話が『徒然草』に出てきます。天皇になっても、その部屋をそのままにしておいたそうです。若菜を自ら摘む歌の姿と重なって、親しみがわいてきます。
この歌で若菜を贈った「君」が誰なのかは、わかっていません。恋人なのか、家族なのか、目上の人なのか。雪の中で摘んだ若菜を受け取った人の気持ちを想像してみましょう。
作者:光孝天皇
第58代の天皇です。仁明天皇の皇子で、陽成天皇が退位したあと、55歳という当時としては高齢で即位しました。親王時代のつつましい暮らしを忘れなかったという話も伝わっています。13番の陽成院のあとを継いだ天皇で、陽成院の妃となった綏子内親王の父でもあります。
決まり字と覚え方
上の句が「きみがためは」まで読まれたら、取り札が決まります。「き」で始まる歌は3首あります。
覚え方:「きみがためは」と聞いたら「わがころもでに」。50番も「きみがため」で始まるので、6字目の「は」(春の野)と「を」(惜しからざりし)で分かれます。1番の取り札「わがころもでは」と、最後の「に」「は」で見分けるのもポイントです。
入試で問われるポイント
- 若菜(古文常識・七草の起源)
- 「つつ」の意味
- 50番・1番との見分け
よくある質問
「若菜」とは何ですか?
春の初めに摘む食用の若い草です。食べると邪気を払い長生きできると考えられ、今の七草がゆの習慣につながっています。
50番「君がため」との違いは?
15番は「君がため 春の野に出でて」、50番は「君がため 惜しからざりし」です。6字目の「は」と「を」で決まります。
光孝天皇はどんな天皇ですか?
陽成天皇のあとを継ぎ、55歳で即位した天皇です。親王時代の暮らしを大切にしたという話が伝わります。
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