古文の敬語動詞一覧|尊敬語・謙譲語・丁寧語の意味と訳し方・もとの動詞から引ける表・練習問題【大学受験】

古文の敬語動詞一覧|尊敬語・謙譲語・丁寧語の意味と訳し方・もとの動詞から引ける表・練習問題【大学受験】

古文文法辞典 › 敬語

大学受験

ひとことで言うと

敬語動詞は、1語の中に敬意がふくまれる動詞です。尊敬語(おはす・のたまふ・思す・御覧ず・給ふ など)、謙譲語(申す・聞こゆ・奉る・参る・まかる・賜る など)、丁寧語(侍り・候ふ)があり、もとの動詞と敬語の種類をセットで覚えます。「参る」「奉る」は尊敬語にもなります。

このページのポイント

  • 敬語動詞は1語で敬意を表す動詞。もとの動詞(言ふ・行く・あり・与ふ など)と種類をセットで覚える
  • 尊敬:おはす・おはします・のたまふ・思す・御覧ず・召す・給ふ(四段)など
  • 謙譲:申す・聞こゆ・奉る・参る・まうづ・まかる・承る・賜るなど/丁寧:侍り・候ふ
  • 「参る・まうづ」は貴人の所へ入る、「まかる・まかづ」は出る
  • 「参る」「奉る」は、高貴な人が飲食・着る・乗るなら尊敬(召し上がる・お召しになる・お乗りになる)

はじめて(やさしく)

敬語動詞(けいごどうし)とは、1語の中に敬意がふくまれている動詞です。現代語でも「言う」を目上の人について言うときは「おっしゃる」、自分について言うときは「申し上げる」と、別の語に入れかえますね。古文でも同じで、「言ふ」が「のたまふ」(おっしゃる)や「申す」(申し上げる)に変わります。

敬語動詞=もとの動詞+敬意(1語)言ふ+尊敬=のたまふおっしゃる言ふ+謙譲=申す申し上げる見る+尊敬=御覧ずご覧になるあり+丁寧=侍りあります・ございます「〜給ふ」とつけなくても、1語で敬意を表せる
敬語動詞は、もとの動詞に敬意が加わった1語の動詞

敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があります(くわしくは 敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧))。敬語動詞を読むときは、いつも次の2つをセットで覚えます。

  • もとの動詞は何か(「のたまふ」なら「言ふ」)
  • どの種類の敬語か(「のたまふ」なら尊敬)
うかるくん

うかるくん

敬語動詞って、数が多すぎない? 全部覚えられる気がしないよ……。

合格先生

合格先生

入試でよく出るのは30語ほど。しかも「言ふ」「行く・来」「あり」「与ふ」の4つの動詞の敬語が半分以上なんだ。もとの動詞ごとにまとめると、ぐっと覚えやすくなるよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

「行く」の敬語は、「参る」と「まかる」があるのよね。どっちも「行く」なの?

合格先生

合格先生

いい所に気づいたね。えらい人の所へ入るのが「参る」、えらい人の所から出るのが「まかる」。向きが逆なんだ。

「行く・来」の敬語は、向きで変わるふつうの所・自宅宮中・貴人の所参る・まうづ参上する(入る)まかる・まかづ退出する(出る)身分の高い人が行く・来る → おはす・おはします(いらっしゃる。だれが動くかで尊敬か謙譲かが決まる)
「参る・まうづ」は入る向き、「まかる・まかづ」は出る向き

「参る」は今も「神社に参る」と使い、「まかる」は「まかり出る」に残っています。「おはす」「おはします」は、身分の高い人がいる・行く・来るときの尊敬語で、「いらっしゃる」と訳します。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「のたまふ」も「申す」も、もとは「言ふ」。敬語動詞はもとの動詞に戻して考えればいいのね!

ここまでのまとめ

  • 敬語動詞は、1語で敬意を表す動詞(のたまふ・申す・侍り など)
  • 覚えるときはもとの動詞と敬語の種類をセットで
  • 「参る・まうづ」は貴人の所へ入る、「まかる・まかづ」は貴人の所から出る

覚え方や訳し方で迷ったら、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強で質問できます。

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

敬語動詞の一覧① 尊敬語(動作をする人を高める)

敬語動詞(読み)活用もとの動詞訳し方
おはすサ変あり・行く・来いらっしゃる・おいでになる
おはします四段あり・行く・来いらっしゃる(おはすより高い)
います・いますかり四段・ラ変あり・行く・来いらっしゃる
のたまふ四段言ふおっしゃる
のたまはす下二段言ふおっしゃる(のたまふより高い)
仰す(おほす)下二段言ふ・命ずお命じになる・おっしゃる
思す(おぼす)四段思ふお思いになる
思し召す(おぼしめす)四段思ふお思いになる(思すより高い)
聞こす・聞こし召す四段聞く・食ふ・飲む・治むお聞きになる・召し上がる・お治めになる
知ろし召す(しろしめす)四段知る・治むご存じである・お治めになる
御覧ず(ごらんず)サ変見るご覧になる
大殿ごもる(おほとのごもる)四段寝・寝ぬおやすみになる
召す(めす)四段呼ぶ・食ふ・飲む・着る・乗るお呼びになる・召し上がる・お召しになる・お乗りになる
遊ばす(あそばす)四段す(管弦・詩歌などを)なさる
給ふ・賜ふ(四段)四段与ふ・授くお与えになる・くださる
賜はす(たまはす)下二段与ふお与えになる(給ふより高い)
奉る(尊敬)四段食ふ・飲む・着る・乗る召し上がる・お召しになる・お乗りになる
参る(尊敬)四段食ふ・飲む召し上がる

敬語動詞の一覧② 謙譲語(動作を受ける人を高める)

敬語動詞(読み)活用もとの動詞訳し方
申す(まうす)四段言ふ申し上げる
聞こゆ(きこゆ)下二段言ふ申し上げる
聞こえさす下二段言ふ申し上げる(聞こゆより高い)
奏す(そうす)サ変言ふ(天皇・院に)申し上げる
啓す(けいす)サ変言ふ(皇后・中宮・皇太子に)申し上げる
奉る(たてまつる)四段与ふ差し上げる
参らす(まゐらす)下二段与ふ差し上げる
参る(まゐる)四段行く・来/与ふ・す参上する/差し上げる・して差し上げる
まうづ(詣づ)下二段行く・来参上する・参詣する
まかる(罷る)四段行く・去る退出する・参ります
まかづ(罷づ)下二段出づ退出する
承る(うけたまはる)四段聞く・受くお聞きする・お受けする
賜る・給はる(たまはる)四段受く・もらふいただく
給ふ(下二段・補助動詞)下二段思ふ・見る・聞く・知る〜ております・〜させていただく
仕うまつる(つかうまつる)四段仕ふ・すお仕えする・して差し上げる
侍り(はべり)ラ変あり・をり・仕ふお仕えする・おそばに控える
候ふ(さぶらふ)四段あり・をり・仕ふお仕えする・おそばに控える

敬語動詞の一覧③ 丁寧語(聞き手・読み手を高める)

敬語動詞(読み)活用もとの動詞訳し方
侍り(はべり)ラ変あり・をりあります・おります・ございます
候ふ(さぶらふ・さうらふ)四段あり・をりあります・おります・ございます

表は横にスクロールできます。「侍り」「候ふ」は、本動詞の「お仕えする」が謙譲、「あります・ございます」と補助動詞の「〜です・〜ます」が丁寧です(くわしくは 「侍り」「候ふ」)。「給ふ」の四段と下二段は 「給ふ」(四段と下二段) で見分け方を練習できます。

もとの動詞から引ける敬語の一覧

現代語訳を作るときや、空欄に敬語を入れる問題では、逆に「もとの動詞」から敬語を引ける表が役に立ちます。

もとの動詞尊敬語謙譲語丁寧語
行く・来おはす・おはします・います参る・まうづ(参上する)/まかる・まかづ(退出する)―
あり・をりおはす・おはします・います・いますかり侍り・候ふ(お仕えする・控える)侍り・候ふ
言ふのたまふ・のたまはす・仰す申す・聞こゆ・聞こえさす・奏す・啓す―
思ふ思す・思し召す(思ひ給ふ:下二段の給ふ)―
見る御覧ず(見給ふ:下二段の給ふ)―
聞く聞こす・聞こし召す承る―
与ふ給ふ(四段)・賜ふ・賜はす奉る・参らす・参る―
受く・もらふ―賜る・給はる・承る―
食ふ・飲む召す・聞こし召す・奉る・参る――
着る・乗る召す・奉る――
寝・寝ぬ大殿ごもる――
知る・治む知ろし召す・聞こし召す――
呼ぶ召す――
す遊ばす仕うまつる・つかまつる―
仕ふ―侍り・候ふ・仕うまつる―

二つの顔をもつ「参る」「奉る」

入試でいちばんねらわれるのが、ふだんは謙譲語の「参る」「奉る」が尊敬語になる場合です。身分の高い人が、食べる・飲む・着る・乗るときに使われ、「召し上がる・お召しになる・お乗りになる」と訳します。

参る(まゐる)謙譲(ふつう)参上する(行く・来)差し上げる(与ふ)尊敬(ときどき)召し上がる(食ふ・飲む)奉る(たてまつる)謙譲(ふつう)差し上げる(与ふ)〜申し上げる(補助)尊敬(ときどき)召し上がる(食ふ)お召しになる(着る)お乗りになる(乗る)主語が高貴な人+食べ物・衣服・乗り物 → 尊敬それ以外はまず謙譲で考える
「参る」「奉る」は、主語と目的語で謙譲か尊敬かを決める

例文で確かめる

謙譲(参る)と丁寧(侍り)と尊敬(おはす)

年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん。

(徒然草・第五十二段「仁和寺にある法師」)

現代語訳長年思っていたことを、果たしました。(うわさに)聞いていた以上に、尊くていらっしゃった。それにしても、お参りした人がみな山へ登っていったのは、何があったのだろうか。

ここがポイント法師の会話文。「侍り」は丁寧の補助動詞(聞き手の仲間への敬意)、「おはし」は尊敬の補助動詞(石清水の神への敬意)、「参り」は謙譲の本動詞で「参詣する」(神への敬意)。3種類がそろう定番の場面です。

謙譲(参る)と尊敬(仰す)

例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、

(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)

現代語訳いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭びつに火をおこして、(女房たちが)話などをして集まってお仕えしていると、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃるので、

ここがポイント「御格子まゐり」の「まゐる」はして差し上げる意味の謙譲語(お下ろし申し上げる)。「仰せらるれ」は「仰す」+尊敬「らる」で「おっしゃる」(中宮定子(藤原定子)の動作)です。

謙譲(奉る)

中納言参りたまひて、御扇たてまつらせたまふに、

(枕草子「中納言参りたまひて」の段)

現代語訳中納言(隆家)が参上なさって、(中宮様に)御扇を差し上げなさるときに、

ここがポイント「御扇(を)たてまつる」は名詞を受ける本動詞の謙譲語で「差し上げる」。受け手の中宮への敬意です。「参り」も謙譲(参上する)で、中宮のいる所へ「入る」向きです。

謙譲(まうづ)

昔、男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、竜田川のほとりにて、

(伊勢物語・第百六段(百人一首17番「ちはやぶる」の場面))

現代語訳昔、男が、親王たちがそぞろ歩きをなさる所に参上して、竜田川のほとりで、

ここがポイント「まうづ」は「行く・来」の謙譲語で「参上する」。行き先の親王たちへの敬意です。主語は敬語のない「男」とわかります(主語の補い方)。
物のやりとりは、主語と向きで決まる高い人低い人給ふ(尊敬)主語=高い人お与えになる賜る=いただく奉る(謙譲)参らす も同じ差し上げる同じ下向きでも、給ふ=与える人が主語賜る=受け取る人が主語(謙譲)
物のやりとりは、主語と向きで「給ふ・賜る・奉る」を使い分ける

「給ふ」と「賜る」は、物が上から下へ移る点は同じですが、主語がちがいます。「帝、禄を給ふ」は帝が主語で「お与えになる」(尊敬)、「人々、禄を賜る」は受け取る人々が主語で「いただく」(謙譲)。主語をまちがえると訳が逆になります。

竹取物語の絵。天人が迎えに来て、かぐや姫が月へ帰る場面(昇天)
竹取物語「かぐや姫の昇天」。天人は姫に「壺なる御薬たてまつれ」と言います。この「たてまつれ」は、尊敬の「奉る」(召し上がれ)です。画像:「Taketori Monogatari 2.jpg」(土佐広通・土佐広澄、1650年ごろ、パブリックドメイン〈PD-Art/PD-old-100-expired〉、Wikimedia Commons)

尊敬(奉る)と尊敬(聞こし召す)

壺なる御薬たてまつれ。穢き所の物きこしめしたれば、御心地悪しからむものぞ。

(竹取物語・かぐや姫の昇天)

現代語訳壺にあるお薬を召し上がれ。けがれた所(人間の世界)の物を召し上がったので、ご気分が悪いことでしょう。

ここがポイント天人がかぐや姫に言う会話文。「御薬」を受け、飲むのはかぐや姫なので、「たてまつれ」は尊敬の「奉る」の命令形で「召し上がれ」。「きこしめし」も「食ふ・飲む」の尊敬で「召し上がる」。どちらもかぐや姫への敬意です。

百人一首の詞書に出てくる敬語動詞

和歌そのものに敬語は多くありませんが、和歌の前の説明文(詞書)には敬語動詞がたくさん出てきます。作者の身分や、だれのための歌かを知る手がかりになります。

  • 15番 光孝天皇「君がため春の野に出でて若菜つむ」:古今和歌集の詞書は、親王のころ人に若菜を賜ひ(お与えになっ)たときの歌、という内容。「賜ふ」は「与ふ」の尊敬語です。
  • 24番 菅家(菅原道真)「このたびは幣も取りあへず」:詞書は、朱雀院(宇多上皇)が奈良におはしましける時の歌、という内容。上皇への尊敬語です。
  • 61番 伊勢大輔「いにしへの奈良の都の八重桜」:詞花和歌集の詞書は、八重桜を人が奉り(献上し)、作者が御前に侍り(お仕えし)ていたので(詞書には「奉りて侍りける」と丁寧の補助動詞の「侍り」もあり、2つの「侍り」は種類が違います)、歌をよめと仰せ言があった、という内容。「奉る」「侍り」は謙譲です。
百人一首61番 伊勢大輔の絵札(詞書に 奉る 侍り 仰せ言)
百人一首61番・伊勢大輔の絵札。詞書の「奉り」「侍り」(謙譲)と「仰せ言」(天皇側のおことば)から、宮中の晴れの場でよんだ歌だとわかります。画像:絵札「Hyakuninisshu 061」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

敬語動詞はもとの動詞と種類をセットで。「参る」「奉る」は、主語が高貴な人で食べ物・衣服・乗り物が出てきたら尊敬を疑おう!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 敬意の強さのちがい(「〜す」「〜召す」は一段上)

同じ意味でも、敬意の強さがちがうふつうの敬語より高い敬語訳おはすおはしますいらっしゃるのたまふのたまはすおっしゃる思す思し召すお思いになる給ふ賜はすお与えになる聞こゆ聞こえさす申し上げる「〜す」「〜召す」「〜さす」がつくと一段上の敬意
同じ意味の敬語動詞でも、敬意の強さに段がある

「おはす→おはします」「のたまふ→のたまはす」「思す→思し召す」「聞こゆ→聞こえさす」のように、同じ意味でも敬意の強い語があります。地の文では、帝・中宮・上皇など最高位の人に強いほうが使われやすく、主語を決める手がかりになります。訳はふつう同じでかまいません。尊敬を重ねる「せ給ふ」「させ給ふ」(助動詞「す・さす」)とあわせて、最高敬語・絶対敬語のページで整理しています。

2. 「参る」「奉る」の尊敬用法を見分ける手順

  1. 目的語が食べ物・飲み物(御粥・御酒・御薬・御湯 など)、衣服(御衣・御直衣 など)、乗り物(御車・御輿 など)か。
  2. その動作をするのが身分の高い人(物を受け取る側ではなく、使う側)か。
  3. 両方そろえば尊敬(召し上がる・お召しになる・お乗りになる)。そろわなければ謙譲(差し上げる・参上する)。

「御格子まゐる」「御殿油(おほとなぶら)まゐる」などお世話の動作の「参る」は「お上げ(お下ろし)申し上げる」「おともし申し上げる」と訳し、上げるか下ろすかは文脈で決めます。

3. 「聞こゆ」は敬語とはかぎらない

「聞こゆ」は3通りに読める謙譲の本動詞「〜と」「〜を」を受ける→ 申し上げる謙譲の補助動詞連用形の下につく→ 〜申し上げるふつうの動詞音・うわさ・意味が主語→ 聞こえる・評判になる百人一首55番「なほ聞こえけれ」は3つ目(評判になる)
「聞こゆ」は謙譲の本動詞・補助動詞と、敬語でない動詞の3通り

百人一首55番 大納言公任(藤原公任)「滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ」の「聞こえ」は、主語が「名(評判)」なので敬語ではありません。「評判は世に流れて、今もなお聞こえている(知られている)」と訳します。同じように「思ゆ(おぼゆ)」「見ゆ」も、敬語に似た形ですが一般動詞です。

4. 「まかる」「侍り」の丁重語的な用法(諸説)

「まかる」は本来「退出する」ですが、会話文の「まかり出づ」「まかりなる」のように、聞き手に対して自分の動作をへりくだることがあります。下二段の「給ふ」も同じ性質です。これを現代語の「参ります」「存じます」と同じ丁重語(謙譲語Ⅱ)とする文法書もあれば、従来どおり謙譲語とする説明もあります。答案では「謙譲語」と書き、敬意の向きは聞き手とするのが一般的です(敬意の方向)。

5. 敬語でない「ものす」と、敬語の名詞

「ものす」は「あり・行く・言ふ・書く」などいろいろな動詞の代わりになる語(代動詞)で、敬語ではありません。また「仰せ言」「御消息(おせうそこ)」「行幸(みゆき)」のように、敬語の名詞にも敬意がふくまれます。百人一首26番 貞信公(藤原忠平)「小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ」の「みゆき」は、天皇(や上皇)のお出かけをいう語で、和歌の中に敬意が入っている珍しい例です。

うかるくん

うかるくん

「聞こえけれ」が敬語じゃないなんて、ひっかけだね!

合格先生

合格先生

敬語動詞は、だれが・何をするのかを確かめてから決めるのが鉄則。主語が人でなく「名」や「音」なら、ふつうの動詞なんだ。

サクラちゃん

サクラちゃん

「参る」「奉る」も、主語と目的語を見れば迷わないわね。

入試でねらわれる所

  • 「参る」「奉る」の尊敬用法(召し上がる・お召しになる・お乗りになる)
  • 「給ふ」と「賜る」の主語のちがい(与える人/受け取る人)
  • 「参る・まうづ」と「まかる・まかづ」の向き
  • 敬語動詞から主語・相手を補う(主語の補い方)
  • 「聞こゆ」「おぼゆ」など敬語でない語との区別

よくあるまちがい

まちがい1:「奉る」「参る」はいつも謙譲語

高貴な人が飲食する・着る・乗るときの「奉る」「参る」は尊敬語です。竹取物語の「御薬たてまつれ」は「召し上がれ」。主語と目的語を確かめましょう。

まちがい2:「賜る」を「お与えになる」と訳す

「賜る(給はる)」は受け取る人が主語の謙譲語で「いただく」。「お与えになる」は四段の「給ふ」「賜ふ」です。

まちがい3:「まかる」を「参上する」と訳す

「まかる・まかづ」は貴人の所から出る(退出する)向き。「参る・まうづ」とは反対です。会話文では「参ります」程度に軽く訳すこともあります。

練習問題

やさしい

  1. 次の敬語動詞について、敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)と、もとの動詞を答えなさい。
    ① のたまふ ② 申す ③ 御覧ず ④ 大殿ごもる
    答えと解説を見る

    ① 尊敬・言ふ(おっしゃる) ② 謙譲・言ふ(申し上げる) ③ 尊敬・見る(ご覧になる) ④ 尊敬・寝(寝ぬ)(おやすみになる)。

  2. 「参上する」「退出する」の意味をもつ謙譲語を、それぞれ2つずつ答えなさい。
    答えと解説を見る

    参上する:参る・まうづ。退出する:まかる・まかづ。貴人の所へ入るのが「参る・まうづ」、出るのが「まかる・まかづ」です。

ふつう

  1. 「人々、帝より禄を賜りて、まかでぬ。」(自作)を現代語訳しなさい。
    答えと解説を見る

    「人々は、帝からほうびをいただいて、退出した。」「賜る」は受け取る人々が主語の謙譲語(いただく)、「まかづ」は退出する。どちらも帝への敬意です。

  2. 「大臣、御粥まゐりて、御車にたてまつる。」(自作)の「まゐり」「たてまつる」の敬語の種類と意味を答えなさい。
    答えと解説を見る

    どちらも尊敬語。「御粥まゐり」は大臣が粥を「召し上がって」、「御車にたてまつる」は車に「お乗りになる」。主語が身分の高い大臣で、目的語が食べ物・乗り物だからです。

むずかしい

  1. 竹取物語の天人のことば「壺なる御薬たてまつれ」の「たてまつれ」について、敬語の種類・活用形・意味を答え、だれへの敬意か説明しなさい。
    答えと解説を見る

    尊敬語「奉る」(四段)の命令形で「召し上がれ」。薬を飲むのはかぐや姫なので、話し手の天人から、動作をするかぐや姫への敬意です。「差し上げよ」と謙譲に訳すと、だれに差し上げるのかが合わなくなります。

  2. 次の「聞こえ」を文法的に説明しなさい。
    ① (帝が)宮に御文のことを聞こえさせ給ふ。(自作)
    ② 名こそ流れてなほ聞こえけれ(百人一首55番)
    答えと解説を見る

    ① 「御文のことを」を受ける謙譲の本動詞「聞こゆ」の未然形(「させ給ふ」は二重尊敬。「聞こえさす」の一語と見る説明もある)。宮への敬意で「申し上げなさる」。② 主語が「名(評判)」なので敬語でないふつうの動詞「聞こゆ」の連用形で「聞こえている・知られている」。

関連ページ

敬語の全体像は、読みものの「古文の敬語」でも一気に確かめられます。活用の種類は 四段活用・下二段活用・変格活用 のページへ。

読みもの(合格大作戦の記事)

受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう

よくある質問

古文の敬語動詞は何語くらい覚えればよいですか?

入試でよく出るのは30語ほどです。「言ふ」「行く・来」「あり」「与ふ」の敬語が中心なので、もとの動詞ごとにまとめて覚えると効率的です。

「参る」「奉る」が尊敬語になるのはどんなときですか?

身分の高い人が、食べる・飲む・着る・乗るときです。「召し上がる」「お召しになる」「お乗りになる」と訳します。それ以外はふつう謙譲語です。

「参る」と「まかる」の違いは何ですか?

どちらも謙譲語ですが、「参る」は貴人の所へ入る(参上する)、「まかる」は貴人の所から出る(退出する)で、向きが反対です。

「給ふ」と「賜る」の違いは何ですか?

「給ふ」(四段)は与える人が主語の尊敬語で「お与えになる」、「賜る」は受け取る人が主語の謙譲語で「いただく」です。

「侍り」「候ふ」は謙譲語ですか、丁寧語ですか?

本動詞で「お仕えする・おそばに控える」の意味なら謙譲語、「あります・ございます」や補助動詞の「〜です・〜ます」なら丁寧語です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:徒然草(第五十二段)、枕草子(「雪のいと高う降りたるを」の段・「中納言参りたまひて」の段)、伊勢物語(第百六段)、竹取物語(かぐや姫の昇天)、百人一首(15・17・24・26・55・61番)と古今和歌集・詞花和歌集の詞書。表記は読みやすいように一部改めています
  • 高校の古典文法の標準的な説明(敬語動詞の種類・もとの動詞・「参る」「奉る」の尊敬用法)にもとづいて作成。丁重語(謙譲語Ⅱ)の扱いは「〜とする説明もある」として記しました
  • 画像:「Taketori Monogatari 2.jpg」(土佐広通・土佐広澄、1650年ごろ、パブリックドメイン〈PD-Art/PD-old-100-expired〉、Wikimedia Commons)、百人一首の絵札「Hyakuninisshu 061」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦