古文の「侍り」「候ふ」の意味と見分け方|謙譲と丁寧・本動詞と補助動詞・訳し方・練習問題【大学受験】

古文の「侍り」「候ふ」の意味と見分け方|謙譲と丁寧・本動詞と補助動詞・訳し方・練習問題【大学受験】

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大学受験

ひとことで言うと

「侍り(はべり)」「候ふ(さぶらふ・さうらふ)」は、身分の高い人のそばにいるときは「お仕えする・控える」の謙譲語、それ以外の本動詞は「あります・おります」の丁寧語、補助動詞のときはいつも丁寧語(〜です・〜ます)です。

このページのポイント

  • 本動詞で貴人のそば(御前・上・宮など)なら謙譲:お仕えする・おそばに控える
  • 本動詞でただ「ある・いる」なら丁寧:あります・おります・ございます
  • 補助動詞(連用形・て・にて・での下)ならいつも丁寧:〜です・〜ます
  • 活用:侍り=ラ変(終止形はべり・連体形はべる)、候ふ=ハ行四段
  • 平安の丁寧語の中心は「侍り」、中世は「候ふ(さうらふ)」。「はべなり」は「はべんなり」と読む

はじめて(やさしく)

「侍り(はべり)」と「候ふ(さぶらふ・さうらふ)」は、古文の敬語の動詞です。もとの意味は、どちらも「身分の高い人のそばに控える・お仕えする」。時代劇に出てくる「侍(さむらい)」ということばも、この「さぶらふ」から生まれました。えらい人のそばに仕える人が「さぶらひ」と呼ばれ、それが武士の呼び名になったのです。

もとの意味は「えらい人のそばに控える」帝・中宮など(身分の高い人)そばに控える女房・家来など「さぶらふ」「はべり」=お仕えするさぶらふさぶらひ(侍)さむらいそばに仕える人=「侍」が、武士の呼び名になった
「さぶらふ」「はべり」は、えらい人のそばに控えること。そこから「侍(さむらい)」も生まれた

ところが、古文を読むと「侍り」「候ふ」は、そばに仕える場面以外にもたくさん出てきます。「ございます」「〜です・〜ます」の意味の丁寧語としても使われるからです。現代語でも、お店の人が「こちらにございます」と言いますね。あの「ございます」に近い使い方です。

うかるくん

うかるくん

「侍り」って「お仕えする」なの? それとも「ございます」なの?

合格先生

合格先生

どちらもあるんだ。身分の高い人のそばにいるときは「お仕えする」(謙譲語)。それ以外で「ある・いる」の意味なら「あります・おります」(丁寧語)だよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

動詞の下についている「侍り」もよく見るけど……。

合格先生

合格先生

それは補助動詞。「知り侍り」なら「知っています」。補助動詞の「侍り」「候ふ」は、いつも丁寧で「〜です・〜ます」と訳せばいい。

「侍り」「候ふ」の3つの使い方謙譲本動詞お仕えする・おそばに控える例:上にさぶらふ御猫(枕草子)丁寧本動詞あります・おります・ございます例:京に知る人侍り(自作)丁寧補助動詞〜です・〜ます・〜ございます例:骨は得てはべれ(枕草子)補助動詞の「侍り」「候ふ」は、いつも丁寧
「侍り」「候ふ」は、謙譲の本動詞・丁寧の本動詞・丁寧の補助動詞の3つ

平安時代の宮中には、天皇や中宮(天皇のきさき)のそばに仕える女性たちがいました。女房(にょうぼう)と呼ばれる人たちです。『枕草子』を書いた清少納言は中宮定子(藤原定子)に、『源氏物語』を書いた紫式部は中宮彰子(藤原彰子)に仕えた女房でした。まさに「宮にさぶらふ」人たちです。

百人一首62番 清少納言の絵札(中宮定子にさぶらふ女房 侍り はべり 候ふ さぶらふ)
百人一首62番・清少納言の絵札。清少納言は一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、『枕草子』には「さぶらふ」「はべり」がたくさん出てきます。画像:絵札「Hyakuninisshu 062」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

百人一首にも、宮中に仕えた女性の歌が多く入っています。62番 清少納言「夜をこめて鳥のそら音ははかるとも」、57番 紫式部「めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に」、67番 周防内侍「春の夜の夢ばかりなる手枕に」などです。周防内侍は4代の天皇に女官として仕えました。「内侍」はその役職の名前です。歌の中に「侍り」は出てきませんが、作者がどんな立場の人だったかを知ると、敬語の場面がぐっと身近になります。

ひらめいたうかるくん

うかるくん

「そばにお仕え」なら謙譲、「あります・〜です」なら丁寧。補助動詞なら丁寧で決まり!

敬語の3つの種類(尊敬・謙譲・丁寧)の全体は 敬語の種類 のページへ。わからない所は、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強で質問できます。

ここまでのまとめ

  • 「侍り」「候ふ」のもとの意味は身分の高い人のそばに控える・お仕えする(謙譲語)
  • それ以外の「ある・いる」はあります・おります・ございます(丁寧語)
  • 動詞などの下につく補助動詞は、いつも丁寧(〜です・〜ます)

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

「侍り」「候ふ」の意味と訳し方の一覧

語・読み使い方敬語の種類訳し方もとの語
侍り(はべり)本動詞謙譲お仕えする・おそばに控える仕ふ・あり(貴人のそばに)
侍り(はべり)本動詞丁寧あります・おります・ございますあり・をり
侍り(はべり)補助動詞丁寧〜です・〜ます・〜ございます(上の語に丁寧の意味をそえる)
候ふ(さぶらふ・さうらふ)本動詞謙譲お仕えする・おそばに控える(参上する とも)仕ふ・あり(貴人のそばに)
候ふ(さぶらふ・さうらふ)本動詞丁寧あります・おります・ございますあり・をり
候ふ(さぶらふ・さうらふ)補助動詞丁寧〜です・〜ます・〜ございます(上の語に丁寧の意味をそえる)

表は横にスクロールできます。主な敬語動詞をまとめて見るなら 主な敬語動詞の一覧 へ。

「侍り」「候ふ」の活用(ラ変と四段)

未然連用終止連体已然命令侍り(ラ変)語幹「はべ」らりりるれれ候ふ(四段)語幹「さぶら」はひふふへへ侍り:ラ変(あり・をり・いまそかりの仲間) → 終止形は「はべり」。「はべる」は連体形候ふ:ハ行四段。中世は「さうらふ」とも読む → 音便で「さうらうて」(候うて)も
「侍り」はラ変、「候ふ」はハ行四段に活用する
語未然形連用形終止形連体形已然形命令形活用の種類
侍りはべらはべりはべりはべるはべれはべれラ行変格活用
候ふさぶらはさぶらひさぶらふさぶらふさぶらへさぶらへハ行四段活用

「侍り」は、「あり・をり・いまそかり」と並ぶラ変動詞の一つです(変格活用 のページ参照)。終止形が「はべり」とイ段で終わるのがラ変の目印で、「はべる」は連体形です。係り結びの「ぞ・なむ・や・か」の結びでは「はべる」、「こそ」の結びでは「はべれ」になります(係り結び)。「候ふ」は四段で、平安時代の作品では「さぶらふ」、中世の作品では「さうらふ」と読むのがふつうです。

見分け方の手順(謙譲か丁寧か・本動詞か補助動詞か)

  1. すぐ上を見る。動詞・形容詞・助動詞の連用形、接続助詞「て」、断定の「にて」「で」、「に+係助詞」などがあれば補助動詞。補助動詞の「侍り」「候ふ」は丁寧(〜です・〜ます・〜ございます)。
  2. 補助動詞でなければ本動詞。そのとき、そばにいる(仕える)相手が身分の高い人か考える。「御前に」「上に」「宮に」「院に」などがあれば謙譲(お仕えする・おそばに控える)。
  3. そうでなく、ただ「ある・いる」の意味なら丁寧(あります・おります)。会話文や手紙の中に多い。
すぐ上が 連用形・「て」「にて」「で」など(=補助動詞の位置)?はいいいえ補助動詞=丁寧〜です〜ます〜ございます例:得てはべれ(得ております)本動詞。そばにいる相手は身分の高い人?はいいいえ謙譲お仕えするお控えする丁寧ありますおります身分の高い人の目印:御前・上・宮・院・殿 など迷ったら「お仕えする」と訳して通じるかを試す
補助動詞なら丁寧。本動詞なら、相手が身分の高い人かどうかで謙譲と丁寧を分ける

例文で確かめる(謙譲の本動詞)

上にさぶらふ御猫は、かうぶりにて命婦のおとどとて、いみじうをかしければ

(枕草子「上にさぶらふ御猫は」の段(三巻本))

現代語訳帝のおそばにお仕えしている御猫は、五位の位をいただいて「命婦のおとど」と呼ばれ、たいそうかわいらしいので

ここがポイント「上」は帝のこと。帝のそばに控えているので、「さぶらふ」は謙譲の本動詞(お仕えする)です。地の文なので、作者(清少納言)から帝への敬意。猫に謙譲語を使っているのは、猫をうやまうためではなく、仕えられている帝をうやまうためです。

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに

(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)

現代語訳雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつもと違って御格子をお下ろし申し上げて、炭櫃に火をおこして、(女房たちが)話などをして(中宮様のおそばに)集まってお控え申し上げていると

ここがポイント女房たちが中宮定子のおそばに集まっているので、「さぶらふ」は謙譲の本動詞。敬意は作者から中宮へ。すぐ上が連用形「集まり」ですが、「貴人のおそばに控える」という意味が生きているので、補助動詞の丁寧ではなく謙譲の本動詞と取るのがふつうです(丁寧の補助動詞と見る説明もあります)。主語(女房たち)が書かれていませんが、謙譲語から「中宮に仕える人たち」だとわかります(主語の補い方)。

女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に

(源氏物語・桐壺(冒頭))

現代語訳女御や更衣が大勢(帝に)お仕えしていらっしゃった中に

ここがポイント「さぶらひ」は帝にお仕えする意味の謙譲の本動詞で、作者から帝への敬意。下の「たまひ」は尊敬の補助動詞で、作者から女御・更衣への敬意。一つの動作に謙譲と尊敬が重なる形は 二方面への敬語 で扱います。

例文で確かめる(丁寧の本動詞・補助動詞)

京に知る人侍り。そこに宿り侍らむ。

(自作)

現代語訳都に知り合いがおります。そこに泊まりましょう。

ここがポイント1つ目の「侍り」は、上が名詞「人」で「いる」の意味なので丁寧の本動詞(おります)。知り合いは身分の高い人ではなく、話し手が聞き手に対してていねいに言っているだけです。2つ目の「侍ら」は連用形「宿り」の下の丁寧の補助動詞(〜ます)で、未然形。

隆家こそいみじき骨は得てはべれ。

(枕草子「中納言参りたまひて」の段)

現代語訳私隆家はすばらしい(扇の)骨を手に入れております。

ここがポイント「得て」(連用形+て)の下なので丁寧の補助動詞。会話文なので、話し手(隆家)から聞き手(中宮)への敬意です。係助詞「こそ」の結びで已然形「はべれ」。
竹取物語の絵。竹取の翁が竹の中から見つけた小さなかぐや姫を見守る場面(変化の者にてはべりけむ 侍り はべり 丁寧の補助動詞)
竹取物語。翁が竹の中から小さなかぐや姫を見つける場面です。のちにかぐや姫は、翁に向かって「変化の者にてはべりけむ身」と自分のことを言います。画像:「The Tale of the Bamboo Cutter - Discovery of Princess Kaguya.jpg」(作者不明、17世紀、メトロポリタン美術館蔵、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

変化の者にてはべりけむ身とも知らず、親とこそ思ひたてまつれ。

(竹取物語「貴公子たちの求婚」)

現代語訳(自分が)変化の者でございましたような身だとも知らず、(あなたを)親とお思い申し上げております。

ここがポイント「にて」は断定「なり」の連用形「に」+接続助詞「て」。その下の「はべり」は丁寧の補助動詞(〜でございます)で、かぐや姫から聞き手の翁への敬意です。「にて侍り」「にて候ふ」は「〜でございます」の決まった形(断定の「なり・たり」)。

物その者で候はねども、武蔵国の住人、熊谷次郎直実。

(平家物語・巻九「敦盛最期」)

現代語訳名乗るほどの者ではございませんが、武蔵の国の住人、熊谷次郎直実(です)。

ここがポイント「で」は「にて」がつまった形。その下の「候は」は丁寧の補助動詞「候ふ」の未然形で、下に打消「ず」の已然形「ね」が続きます。中世の作品なので「さうらは」と読みます。

敬意の方向(だれから・だれへ)

謙譲の「侍り」「候ふ」は仕えられる人(動作を受ける人)へ、丁寧の「侍り」「候ふ」は聞き手・読み手へ敬意が向かいます。「だれから」は、地の文なら書き手、会話文なら話し手です。くわしい手順は 敬意の方向 のページで練習できます。

書き手話し手仕えられる人謙譲:お仕えする(帝・中宮など)聞き手・読み手丁寧:おります・〜です(会話・手紙の相手)上にさぶらふ御猫 → 作者から帝へ(謙譲)骨は得てはべれ → 隆家から中宮へ(丁寧)
謙譲なら仕えられる人へ、丁寧なら聞き手・読み手へ
「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

丁寧語の「侍り」は、会話文や手紙によく出てくる。だから敬意の相手は、たいていその話を聞いている人だ。だれが、だれに話しているかを必ず確かめよう!

「侍り」「候ふ」の敬語の種類は、記事「古文の敬語」の敬語動詞の表でもまとめています。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 地の文の丁寧語:日記・随筆・物語の語り

丁寧語は聞き手・読み手への敬語なので、ふつうは会話文や手紙に出ます。ところが、日記や随筆では地の文にも丁寧の「侍り」が使われることがあります。このときの敬意は書き手から読み手へ向かいます。

清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人。

(紫式部日記(消息文の部分))

現代語訳清少納言こそ、得意顔ではなはだしゅうございました人(です)。

ここがポイント「いみじう」は形容詞「いみじ」の連用形のウ音便(音便)。その下の「侍り」は丁寧の補助動詞で、書き手(紫式部)から読み手への敬意です。この部分は手紙の形で書かれているため、読み手に語りかける丁寧語が多く出てくると説明されます。紫式部は百人一首57番、清少納言は62番の作者です。

また、『大鏡』のように老人が語って聞かせる形の作品では、語り手が聞き手に話しているので、語りの部分に「侍り」がたくさん出てきます。「どの場面の、だれの声か」を考えることが、敬意の方向を決める第一歩です。

2. 謙譲と丁寧の境目(説が分かれる所)

  • 会話の「ここに侍り」:身分の高い聞き手のそばで「ここに侍り」と言う場合、「あなたのおそばに控えております」(謙譲)とも「ここにおります」(丁寧)とも取れます。文法書によって扱いが分かれるので、入試では前後の場面(そばにいる相手が貴人か、ただ居場所を言っているか)で判断します。
  • 謙譲語Ⅱ(丁重語)の考え方:本動詞の丁寧の「侍り」は、現代語の「おります」のように、話し手側の動作をあらたまって言うはたらきに近い。そこで、これを丁重語(謙譲語Ⅱ)に近いものと説明する立場もあります。学校文法では「丁寧」と答えれば十分です。
  • 「候ふ」の「参上する」:中世の文章では、「候ふ」が貴人のもとへ「参上する・伺う」の意味で使われることもあると説明されます。基本は「お仕えする・控える」で考え、移動の意味がはっきりしている場面だけ「参上する」と訳します。

3. 「侍り」から「候ふ」へ(時代の変化と候文)

丁寧語は「侍り」から「候ふ」へ奈良さもらふ様子をうかがって控える(上代のことば)平安侍り・さぶらふ丁寧語の中心は「侍り」鎌倉〜室町候ふ(さうらふ)軍記物語の会話は「候ふ」が中心に江戸〜明治候文(〜に候)手紙の文体として長く続くいま〜です・〜ます「候」は手紙のあいさつ・能に残る
平安の丁寧語の中心は「侍り」、中世は「候ふ」、近世以降は「候文」として手紙に残った

「さぶらふ」は、上代の「さもらふ」(様子をうかがって控える)から出たことばだと説明されます。「侍り」の成り立ちには、「這ひ+あり」から来たとする説などがあり、はっきりしません。

平安時代の中ごろ、丁寧語の中心は「侍り」でした。平安時代の終わりごろから「さぶらふ」の丁寧の用法が広がり、鎌倉・室町時代には「候ふ」が丁寧語の中心になります。『平家物語』の会話で「〜で候ふ」「〜候へ」がくり返し出てくるのはそのためです。発音も「さぶらふ」から「さうらふ」へ変わり、現代仮名遣いでは「そうろう」と書きます。『平家物語』では、女性の会話には「さぶらふ」、男性の会話には「さうらふ」が使われる傾向があるとする説明もあります。

その後、「候」は手紙の文体として江戸時代・明治時代まで長く使われました。文末を「〜に候」「〜候へども」などで結ぶ書き方を候文(そうろうぶん)といいます。能の登場人物が最初に名乗る「これは〜にて候」という言い方にも、「候」が残っています。

御無事のよし承り、めでたく存じ候。

(自作(候文の例))

現代語訳ご無事であることをうかがい、喜ばしく存じます。

ここがポイント「存じ候」は「存じます」。候文では「候」を漢字で書き、送りがなを省くことが多い。中身は丁寧の補助動詞「候ふ」です。

4. 「侍るめり」「侍るなり」の撥音便と無表記

「侍り」はラ変なので、ラ変型の語と同じく、連体形「はべる」の下に推定「めり」・伝聞推定「なり」がつくと撥音便になり、さらに「ん」を書かない形(無表記)で出てきます。

もとの形撥音便「ん」を省くはべるめりはべんめりはべめりはべるなりはべんなりはべなり読むときは「はべんめり」「はべんなり」と「ん」を補うめり=推定(〜ようだ)・なり=伝聞推定(〜そうだ)
「はべめり」「はべなり」は、「ん」を補って読む

「はべなり」を見て、断定の「なり」と思いこむのはよくあるまちがいです。「はべ」で切れているのは、「はべる」が撥音便になって「ん」が書かれていないからです。推定「めり」は 助動詞「めり」、伝聞推定「なり」は 助動詞「なり」(伝聞・推定) のページへ。

5. 補助動詞が重なるときの順番

敬語の補助動詞が並ぶときは、謙譲 → 尊敬 → 丁寧の順になります。丁寧の「侍り」「候ふ」はいちばん最後です。たとえば「(姫君に)申し上げなさいました」を会話文で言うと「聞こえ給ひ侍りき」のようになります(自作)。四段の「給ふ」と下二段の「給ふ」の区別は 「給ふ」(四段と下二段) のページで扱います。

サクラちゃん

サクラちゃん

「さぶらふ」と「さうらふ」、テストではどっちで読めばいいの?

合格先生

合格先生

平安時代の作品(源氏物語・枕草子)なら「さぶらふ」、中世の作品(平家物語など)なら「さうらふ」と読むのがふつうだよ。意味は同じだから、まずは謙譲か丁寧かを見分けることが大事。

うかるくん

うかるくん

「はべなり」が出たら「はべんなり」。「ん」を補うんだね。

合格先生

合格先生

そのとおり。ラ変の「侍り」だからこそ起きる形だ。活用の種類まで覚えておくと、こういう問題に強くなるよ。

よくあるまちがい

まちがい1:「侍り」をいつも「お仕えする」と訳す

「お仕えする」は、身分の高い人のそばにいるときの本動詞だけ。動詞の下の補助動詞なら「〜です・〜ます」、ただ「ある・いる」の意味なら「あります・おります」です。

まちがい2:「侍る」を終止形だと思う

「侍り」はラ変なので、終止形は「はべり」、連体形が「はべる」です。文末に「はべる」があれば、上に「ぞ・なむ・や・か」がないか探しましょう(係り結び)。

まちがい3:丁寧の「侍り」の敬意を、主語への敬意と考える

丁寧語は聞き手・読み手への敬意です。主語(動作をする人)への敬意は尊敬語、動作を受ける人への敬意は謙譲語。丁寧の「侍り」があっても、主語が身分の高い人だとは決まりません。

敬語の訳し分けで迷ったら、受験掲示板「100点BBS」の古典の勉強方法のスレで、勉強のしかたも相談できます。

練習問題

やさしい

  1. 次の傍線部を現代語に訳しなさい。
    ① 御前に侍る人々 ② 知らず侍り。(ともに自作)
    答えと解説を見る

    ① お仕えしている(おそばに控えている)。「御前に」とあり、身分の高い人のそばにいるので謙譲の本動詞です。② 「知りません」。打消「ず」の連用形の下なので丁寧の補助動詞(〜ます)です。

  2. 「侍り」と「候ふ」の活用の種類を答えなさい。また、「侍り」の連体形を答えなさい。
    答えと解説を見る

    「侍り」はラ行変格活用、「候ふ」はハ行四段活用。「侍り」の連体形ははべるです(終止形は「はべり」)。

ふつう

  1. 「上にさぶらふ御猫は」(枕草子)の「さぶらふ」について、敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えなさい。
    答えと解説を見る

    謙譲の本動詞(お仕えする)。「上」=帝のそばに控えているからです。地の文なので、作者(清少納言)から帝への敬意です。

  2. 「物その者で候はねども」(平家物語)の「候は」の文法的説明をし、全体を訳しなさい。
    答えと解説を見る

    ハ行四段活用の丁寧の補助動詞「候ふ」の未然形(「で」=「にて」の下)。「ね」は打消「ず」の已然形です。「名乗るほどの者ではございませんが」と訳します。

むずかしい

  1. 会話文「昔、宮の御前にはべりしかば、さることも聞きはべりき。」(自作)の2つの「はべり」について、敬語の種類と、だれからだれへの敬意かを答えなさい。
    答えと解説を見る

    1つ目は「宮の御前に」いるので謙譲の本動詞(お仕えする)で、話し手から宮への敬意。2つ目は連用形「聞き」の下の丁寧の補助動詞で、話し手から聞き手への敬意。「昔、宮のおそばにお仕えしておりましたので、そのようなことも聞きました」。

  2. 「はべなり」(自作の文中の語)を品詞分解し、読み方を答えなさい。
    答えと解説を見る

    ラ変動詞「侍り」の連体形「はべる」の撥音便「はべん」の「ん」を書かない形+伝聞推定の助動詞「なり」(終止形)。読み方は「はべんなり」で、「〜あるそうです・〜あるようです」の意味。断定の「なり」ではありません。

関連ページ

敬語全体の読みものは記事「古文の敬語」、清少納言が中宮定子に仕えた日々は記事「枕草子「春はあけぼの」」から読めます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

「侍り」は謙譲語ですか、丁寧語ですか?

両方あります。本動詞で身分の高い人のそばに「お仕えする・控える」意味なら謙譲語、ただ「あります・おります」の意味なら丁寧語、補助動詞ならいつも丁寧語です。

「侍り」「候ふ」の謙譲と丁寧はどう見分けますか?

まず、すぐ上が連用形や「て・にて・で」なら補助動詞で丁寧。本動詞なら、そばにいる相手が御前・上・宮など身分の高い人なら謙譲、そうでなければ丁寧です。

「侍り」の活用の種類は何ですか?

ラ行変格活用です。はべら・はべり・はべり・はべる・はべれ・はべれと活用し、終止形は「はべり」、連体形は「はべる」です。

「候ふ」は「さぶらふ」と「さうらふ」のどちらで読みますか?

平安時代の作品では「さぶらふ」、平家物語など中世の作品では「さうらふ」と読むのがふつうです。意味は同じで、ハ行四段活用です。

丁寧語の「侍り」は、だれへの敬意ですか?

聞き手・読み手への敬意です。会話文なら話し手から聞き手へ、地の文なら書き手から読み手へ向かいます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:枕草子(「上にさぶらふ御猫は」の段・「雪のいと高う降りたるを」の段・「中納言参りたまひて」の段)、源氏物語(桐壺)、竹取物語(貴公子たちの求婚)、平家物語(巻九「敦盛最期」)、紫式部日記(消息文)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 百人一首57・62・67番(作者の立場の説明)
  • 高校の古典文法の標準的な説明(侍り・候ふの謙譲と丁寧、補助動詞、ラ変・四段の活用、撥音便の無表記)にもとづいて作成。「侍り」の語源、謙譲と丁寧の境目、丁重語とする考え方、「候ふ」の男女差などは説明が分かれるため、本文中に「〜と説明される」と記した
  • 画像:「The Tale of the Bamboo Cutter - Discovery of Princess Kaguya.jpg」、百人一首の絵札「Hyakuninisshu 062」(ともにパブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦