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ひとことで言うと
古文では主語が省かれることが多く、読む人が補います。「て」の前後は主語が同じ、「ば・に・を・ど」の前後は変わりやすいのが目安で、敬語・会話文・登場人物の身分も手がかりになります。
このページのポイント
- 接続助詞「て・で・つつ」→ 主語は同じになりやすい
- 「ば・に・を・ど・ども」→ 主語は変わりやすい(必ずではない)
- 尊敬語=動作をする人が高い、敬語なし=作者自身や身分の低い人が多い
- 会話文は「と言ふ」「とて」で話し手を確かめ、最後は主語を補って訳し、筋が通るかで決める
はじめて(やさしく)
古文を読んでいて「あれ? いま動いているのはだれ?」と迷ったことはありませんか。古文では、主語(「だれが」「何が」にあたることば)が書かれないことがとても多いのです。読む人が自分で主語を考えて補うことを、主語の補いといいます。
現代の会話でも、友だちに「きのう、行った?」「うん、行った。楽しかった」と言うとき、「あなたは」「私は」とは言いませんね。言わなくてもわかる人どうしだからです。古文の文章も、もとは同じ宮中や貴族の世界に住む人が読むものでした。だから、わかりきった主語はどんどん省かれました。
まなぶくん
古文の問題で「この動作をしたのはだれか」って聞かれると、いつも迷っちゃう……。
合格先生
主語は書いていなくても、手がかりはちゃんと残っているんだ。いちばん大事なのは、文と文をつなぐ「て」と「ば」だよ。
ハルちゃん
「て」と「ば」? どうちがうの?
合格先生
「て」でつながると、同じ人が動き続けることが多い。「ば」「に」「を」「ど」でつながると、別の人に入れかわることが多いんだ。リレーのバトンみたいにね。
竹取物語のはじめの部分で確かめてみましょう。「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」は、「まじりて」「取りつつ」とつながるので、ずっと同じ人、つまり翁(おじいさん)の動作です。ところが「寄りて見るに、筒の中光りたり」では、「に」のあとで主語が「筒の中」に入れかわります。
このように、文を短く区切って、それぞれに主語を書きこむだけで、古文はぐっと読みやすくなります。
ここだけは覚えよう
- 古文は主語が省かれやすい。読む人が補う。
- 「て・で・つつ」でつながると、主語は同じになりやすい。
- 「ば・に・を・ど・ども」でつながると、主語は変わりやすい。
- 敬語(「たまふ」など)がついていれば、身分の高い人の動作。
- 会話文「 」は、すぐあとの「と言ふ」「とて」で話し手を確かめる。

まなぶくん
「て」は同じ人のバトン、「ば」は交代のバトン! 文を区切って、主語を( )に書きこめばいいんだね。
中学受験・高校受験の古文では、「――線部の動作をしたのはだれか」「『 』は、だれの言葉か」という問題がよく出ます。まず人物に印をつけ、「て」と「ば」の目じるしを使えば、多くの問題に答えられます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
主語が省かれる理由
理由は大きく3つあります。①文脈でわかる主語は書かないのが日本語のふつうの書き方であること、②敬語が「だれの動作か」を示す働きをしていたため、名前を出さなくても伝わったこと、③身分の高い人の名前を直接書くのをはばかったこと(官職名や「上」「宮」などで呼ぶ)です。とくに②の敬語は、主語を見つけるいちばんの手がかりになります。
主語を見つける手がかり一覧
| 手がかり | 目安 | 注意 |
|---|---|---|
| 接続助詞「て・で・つつ・して」 | 前後の主語は同じになりやすい | 「〜なくて」など、前が状態の文だと変わることもある |
| 接続助詞「ば・に・を・ど・ども・が」 | 前後の主語は変わりやすい | 「に・を」は連体形についたものが接続助詞。名詞につけば格助詞 |
| 敬語(尊敬語・謙譲語) | 尊敬語=動作をする人が高い/謙譲語=動作を受ける人が高い | 会話文では話し手から見た敬意になる |
| 会話文「 」と地の文 | 会話の中は「私」「あなた」が省かれる | 「と言ふ」「とて」「と思ふ」の前で会話・心の中が終わる |
| 登場人物の整理 | 人物を書き出し、呼び名をまとめる | 同じ人が「男」「中将」「君」などと呼び名を変える |
| 身分・立場 | 帝・中宮>大臣・貴族>女房・従者 | 自分のことを書く日記・随筆では、作者が主語のことが多い |
例文で確かめる(接続助詞)
京には見えぬ鳥なれば、皆人見知らず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」と言ふを聞きて、「名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。
(伊勢物語・第九段(東下り))
現代語訳都では見かけない鳥なので、だれも知らない。(男が)渡し守にたずねたところ、(渡し守が)「これが都鳥だ」と言うのを(男が)聞いて、「都という名を持っているのなら、さあたずねよう、都鳥よ。私の思う人は無事でいるかいないかと」とよんだので、舟の人はみな泣いてしまった。
仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、ただひとり、徒歩よりまうでけり。
(徒然草・第五十二段)
現代語訳仁和寺にいたある法師が、年をとるまで石清水八幡宮にお参りしなかったので、情けなく思って、ある時思い立って、ただひとりで、歩いてお参りした。
例文で確かめる(敬語)
敬語は「だれの動作か」を示す名札のようなものです。くわしい種類は合格大作戦の記事「古文の敬語」で確かめられます(古文文法辞典の敬語のページは準備中です)。
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。
(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)
現代語訳雪がとても高く降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭びつに火をおこして、(女房たちが)話などをして集まってお仕えしていると、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃるので、(私は)御格子を(人に)上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、(中宮様は)お笑いになる。
昔、男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、竜田川のほとりにて、
(伊勢物語・第百六段(百人一首17番 在原業平朝臣「ちはやぶる」の場面))
現代語訳昔、男が、親王たちがそぞろ歩きをなさる所に参上して、竜田川のほとりで、(「ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは」とよんだ)
和歌の場面と主語(百人一首)
和歌そのものの主語は、ふつうよんだ人(作者)です。けれども、和歌の前に置かれた説明文(詞書)には何人もの人物が出てきて、主語の補いが問われます。
初瀬に詣づるごとに宿りける人の家に、久しく宿らで、程経て後に至れりければ、かの家のあるじ、かく定かになむ宿りはあると、言ひ出だして侍りければ、そこに立てりける梅の花を折りてよめる
(古今和歌集・春上・42番の詞書(百人一首35番 紀貫之「人はいさ」))
現代語訳(私が)初瀬にお参りするたびに泊まっていた人の家に、長い間泊まらずに、しばらくたってから行ったところ、その家の主人が「このとおり、宿はちゃんとありますよ」と(家の中から)言ってよこしましたので、(私は)そこに立っていた梅の花を折ってよんだ(歌)
百人一首60番、小式部内侍の「大江山いく野の道の遠ければまだふみも見ず天の橋立」も、場面を知るとおもしろい歌です。母の和泉式部が丹後(いまの京都府北部)にいたころ、都の歌合に選ばれた小式部内侍に、藤原定頼が「(お母さんのいる)丹後へ使いは出しましたか」とからかい、それに答えてよんだと伝えられます(金葉和歌集の詞書などによる。要約)。「からかったのはだれか」「歌をよんだのはだれか」は、入試でもよく問われる形です。

清少納言の百人一首62番「夜をこめて」も、枕草子の「頭の弁の、職に参りたまひて」の段に、藤原行成とのやりとりとして出てきます。地の文の「参りたまひ」は行成の動作で、作者自身の動作には尊敬語がつかない、という見分け方がここでも使えます。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「を・に」は格助詞か接続助詞か
「を」「に」が主語交代の目じるしになるのは、接続助詞のときです。活用語の連体形について「〜のに・〜ので・〜と」と訳せれば接続助詞、名詞について「〜を」「〜に(場所・相手)」なら格助詞です。ただし「連体形+を・に」でも、下に名詞が省かれた形(準体法)なら格助詞になります。例えば「雪のいと高う降りたるを」は「(雪が)降り積もっているのに」と逆接にとるのが一般的ですが、「降り積もっている(雪)を」と格助詞にとる説明もあります。どちらにとっても、次の「まゐりて」の主語が雪から人に変わることは同じです。
2. 会話文の中の主語と敬意の方向
地の文の敬語は作者からの敬意、会話文の敬語は話し手からの敬意です。会話の中で敬語がない動作は話し手(私)のことが多く、尊敬語がつく動作は聞き手(あなた)や、その場にいない高い人のことが多い、と見当をつけます。徒然草の法師の「尊くこそおはしけれ」は、石清水八幡宮(の神)が主語です。
3. 二方面への敬語と、最高敬語の例外
- 二方面への敬語:「(大臣が帝に)申し上げなさる」の「聞こえたまふ」のように、謙譲語+尊敬語が重なると、謙譲語が動作を受ける人(帝)、尊敬語が動作をする人(大臣)への敬意です。主語も相手も身分が高い、とわかります。
- 最高敬語(せたまふ・させたまふ・おはします など):地の文では帝・中宮・皇太子などに使われることが多いですが、作品によっては大臣クラスに使うこともあります。「最高敬語=必ず帝」と決めつけないことが大事です。
- 自敬表現:会話文の中で、帝などが自分の動作に尊敬語を使う例があります(書き手が帝のことばを敬って書いたものと説明されます)。会話文の尊敬語=聞き手、と機械的に決めると誤ります。
4. 主語の人称で助動詞の意味が決まる
文末の「む」は、主語が一人称なら意志、二人称なら適当・勧誘、三人称なら推量が目安です(助動詞「む」のページ参照)。土佐日記の冒頭「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」は、書き手(女に身をやつした作者)が「私も書いてみよう」と言う形なので意志です。主語の補いは、助動詞・敬語の識別と組み合わさって、難関大の記述問題の土台になります。
5. 主語の「の」「が」と、呼び名の変化
古文の「の」「が」は、「雪のいと高う降りたる」のように主語を示すことがあります(主格の格助詞)。また、物語では同じ人が「男」「中将」「君」などと呼び名を変えるので、人物を書き出すときに「同じ人」を線で結んでおくのがコツです。源氏物語の人物も、多くは官職名などで呼ばれます。
うかるくん
敬語、接続助詞、会話文……。手がかりがいっぱいあって、どれを信じればいいか迷うなあ。
サクラちゃん
1つの手がかりで決めないで、2つ3つ重ねるといいんじゃない? 「ば」で交代+尊敬語あり、なら身分の高い人、みたいに。
合格先生
その通り。最後は主語を( )に入れて訳してみて、話の筋が通るかで確かめる。これが入試でいちばん確実な方法だよ。
よくあるまちがい
まちがい1:「ば」があれば必ず主語が変わると思う
「ば」は変わりやすい目安です。徒然草の「拝まざりければ、心うく覚えて」のように、主語が同じままのこともあります。必ず意味で確かめます。
まちがい2:会話文の主語を、地の文と同じ人にする
会話の中は「私」「あなた」が省かれます。「 」の前後の「と言ふ」「とて」で話し手を決めてから、会話の中の主語を考えます。
まちがい3:直前に出てきた人物を、そのまま主語にする
「男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて」で、「まうで」の主語は直前の「親王たち」ではなく男です。敬語(尊敬語か謙譲語か)を見れば区別できます。
まちがい4:作者自身の動作に気づかない
日記や随筆では、作者(私)の動作が敬語なしで書かれます。枕草子で「上げたれば」のように敬語がない動作は、作者の清少納言自身のことが多いです。

合格先生
主語に迷ったら、接続助詞・敬語・会話文の3つを確かめよう。わからなければ受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できますよ。
練習問題
やさしい
- 次の文の「見つけけり」の主語を答えなさい。(自作)
翁、竹を取りに山へ行きて、光る竹を見つけけり。答えと解説を見る
翁。「行きて」でつながっているので、「行く」と「見つく」は同じ人の動作です。
- 「渡守に問ひければ、『これなむ都鳥』と言ふ」(伊勢物語・第九段)で、「これなむ都鳥」と言ったのはだれですか。
答えと解説を見る
渡守(渡し守)。たずねたのは男で、「ば」のあとで答える側の渡守に主語が変わります。
ふつう
- 「あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。」(竹取物語)の「見れば」と「ゐたり」の主語をそれぞれ答えなさい。
答えと解説を見る
「見れば」は翁、「ゐたり」は三寸ばかりなる人(のちのかぐや姫)。「ば」のあとで主語が入れかわっています。
- 枕草子の「御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。」で、「上げ」と「笑は」の主語をそれぞれ答え、そう判断できる理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
「上げ」は清少納言(作者)、「笑は」は中宮定子。「上げ」には敬語がなく作者自身の動作、「笑はせたまふ」には最高敬語「せたまふ」がつくので、その場でいちばん身分の高い中宮の動作です。
むずかしい
- 古今和歌集の詞書「…程経て後に至れりければ、かの家のあるじ、かく定かになむ宿りはあると、言ひ出だして侍りければ、そこに立てりける梅の花を折りてよめる」で、①「至れ」②「言ひ出だし」③「折り」の主語を答えなさい。
答えと解説を見る
①紀貫之(作者)、②家のあるじ、③紀貫之。「ければ」のたびに主語が入れかわっています。歌の「人はいさ」の「人」はあるじを指します(百人一首35番)。
- 次の文の「返り事もせず」の主語を答え、理由を説明しなさい。(自作)
女、文を書きて男に遣りければ、返り事もせず。答えと解説を見る
男。「遣りければ」の「ば」で主語が交代し、手紙を受け取った男が「返事もしない」と考えると筋が通ります。女が自分の出した手紙に返事をしない、では意味が通りません。
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- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の敬語
尊敬・謙譲・丁寧と、敬意の方向 - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 古典と古文のちがい
ことばの意味の整理 - 国語のまとめ
現代文・古文・漢文の入口
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 中学受験掲示板(中学受験の国語・古文の相談)
- 高校受験掲示板(高校受験の国語・古文の相談)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
古文で主語が省略されるのはなぜですか?
文脈でわかる主語は書かないのが日本語のふつうの書き方で、敬語が「だれの動作か」を示していたためです。身分の高い人の名前を直接書くのを避けたことも理由です。
古文の主語の見つけ方のコツは?
接続助詞を見ます。「て」でつながると主語は同じ、「ば・に・を・ど」でつながると主語が変わりやすくなります。あわせて敬語と会話文を確かめます。
「ば」があると必ず主語が変わりますか?
必ずではありません。変わりやすい目安です。主語を補って訳し、話の筋が通るかで最後に判断します。
敬語から主語はどうわかりますか?
尊敬語がつく動作は身分の高い人の動作です。地の文で敬語がない動作は、作者自身や身分の低い人の動作であることが多いです。
中学受験や高校受験でも主語の問題は出ますか?
出ます。「この動作をしたのはだれか」「『 』はだれの言葉か」を答える問題が多く、接続助詞「て」「ば」と会話文の「と言ふ」を見ると答えやすくなります。
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出典・参考
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」国語、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:竹取物語(冒頭)、伊勢物語(第九段・第百六段)、徒然草(第五十二段)、枕草子(「雪のいと高う降りたるを」の段)、土佐日記(冒頭)、古今和歌集(春上・42番の詞書)。表記は読みやすいように一部改めています
- 百人一首(17・35・60・62番)。60番の場面は金葉和歌集の詞書などの伝えを要約したもの
- 高校の古典文法の標準的な説明(主語の把握・接続助詞・敬語)にもとづいて作成。練習問題の「自作」の文は、このページのために作ったもの
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 060」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月15日/作成:大学受験合格大作戦



