古文常識の一覧|寝殿造・垣間見・後朝・通い婚・物忌み・方違え・出家を図でわかりやすく【大学受験】

古文常識の一覧|寝殿造・垣間見・後朝・通い婚・物忌み・方違え・出家を図でわかりやすく【大学受験】

古文文法辞典 › 和歌・古文常識

大学受験難関大

ひとことで言うと

古文常識は、本文に書かれていない行動の理由を補う知識です。とくに、寝殿造の住まい(御簾・几帳の奥に女性がいる)、通い婚(夜に来て暁に帰り、後朝の文を贈る)、物忌み・方違え(こもる・よそに泊まる)、出家(世を背く・様を変ふ)が読解でよく問われます。

このページのポイント

  • 寝殿造は寝殿・対の屋・渡殿。部屋は御簾・几帳・格子で区切り、女性は奥にいる
  • 恋はうわさ→垣間見→文(和歌)→逢ふ→後朝の文
  • 結婚は三日続けて通う→三日夜の餅→露顕(通い婚)
  • 物忌み=家にこもって人に会わない、方違え=別の家に泊まって方角を変える
  • 世を背く・様を変ふ・頭おろすはどれも「出家する」

はじめて(やさしく)

古文常識とは、古文の時代の人たちにとって「あたりまえ」だった暮らしのきまりのことです。文法や単語がわかっても、古文常識を知らないと「なぜ男の人が夜に来て朝に帰るの?」「なぜ外に出かけられないの?」と、話の流れがつかめなくなります。逆に、古文常識を知っていれば、書かれていないことまで想像して読めるようになります。

このページでは、入試の読解でとくに役に立つ住まい・恋と結婚・物忌み(ものいみ)や方違え(かたたがへ)・出家・行事を、役に立つ順に見ていきます。身分や役職のことは官職と身分のページにまとめています。

平安貴族の家「寝殿造」

平安時代の貴族は、寝殿造(しんでんづくり)という大きなお屋敷に住んでいました。真ん中に主人の住む寝殿があり、北や東西に対(たい)という建物が建ち、渡殿(わたどの)という廊下でつながっています。南には白い砂の庭と池がありました。正妻は北の対に住むことが多かったので、正妻を「北の方」と呼びます。

寝殿造(上から見た図)↑北渡殿渡殿北の対正妻=北の方寝殿主人の住まい西の対東の対釣殿南庭(白砂の庭・行事の場)中島池建物は渡殿(廊下)でつなぎ、南に庭と池を置く
寝殿造は、寝殿を中心に対の屋を渡殿でつなぎ、南に庭と池を置く

建物の中には、今のような壁やドアはほとんどありません。広い部屋を、御簾(みす・すだれ)、几帳(きちゃう・布をかけたついたて)、屏風などで区切って使いました。外まわりには格子(かうし)という戸があり、朝に上げて夜に下ろします。

部屋の中(横から見た図)御簾・格子几帳男女庭簀子縁側廂外側の部屋母屋奥の部屋男性は簀子や廂に座り、御簾・几帳ごしに話す
外から、簀子(縁側)→廂→母屋。女性は御簾や几帳の奥にいる
サクラちゃん

サクラちゃん

女の人は、どうして御簾や几帳の奥にいるんですか?

合格先生

合格先生

身分の高い女性は、家族やお付きの人以外には顔を見せないのがふつうだったんだ。男性の客は縁側の簀子(すのこ)や廂(ひさし)に座って、御簾ごしに話をした。

うかるくん

うかるくん

じゃあ、顔も見ないで好きになるの?

合格先生

合格先生

そう。だからうわさや和歌のやりとりがとても大事だったし、こっそりのぞく「垣間見(かいまみ)」が物語の名場面になるんだよ。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

顔が見えないから、和歌や手紙の字のうまさ・ことばのセンスで相手を想像したんだ! 古文に恋の歌が多いのも納得。

ここでわからないところがあれば、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

古文常識の一覧(住まい・調度・時間)

語読み意味読解のポイント
寝殿・対の屋しんでん・たいのや主人の建物と、家族が住む建物北の対の正妻=北の方
簀子・廂・母屋すのこ・ひさし・もや縁側・外側の部屋・奥の部屋客は簀子・廂、女主人は母屋
格子かうし外まわりの戸。上げ下ろしする「御格子まゐる」=お上げ(お下ろし)申し上げる
御簾・簾みす・すだれ部屋を仕切るすだれ御簾の内=女性の場所
几帳きちゃう布をかけた移動式のついたて几帳のかげに隠れる
局つぼね宮中で女房に与えられた部屋「御局」=きさきの部屋
炭櫃・火桶すびつ・ひをけ暖房(いろり・火ばち)枕草子の冬の場面に多い
大殿油おほとなぶら宮中・貴族の家の灯火夜の場面の明かり
牛車ぎっしゃ貴族の乗り物車の飾りで身分がわかる

格子・御簾と女房たち

雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。

(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)

現代語訳雪がとても高く降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭びつに火をおこして、(女房たちが)話などをして集まって(中宮様のおそばに)お仕えしていると、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃるので、(私は)御格子を(人に)上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、(中宮様は)お笑いになる。

ここがポイントふだんは昼に上げておく格子を、雪の寒さで下ろしていたのが「例ならず」です。清少納言は、白居易の詩の一節(香炉峰の雪は簾をかかげて見る)をふまえて、格子を上げさせ御簾を巻き上げて答えました。住まいのしくみを知ると、この場面のおもしろさがわかります。「まゐる」の使い方は敬語の種類へ。

恋と結婚の流れ(垣間見・後朝・通い婚)

平安貴族の恋は、ふつう次の順に進みます。男性は女性のうわさを聞き(「音に聞く」)、ときには垣間見(垣根のすきまからのぞき見ること)をして、和歌をそえた手紙を贈ります。女性側は、はじめは女房が代わりに返事を書くこともありました。気持ちが通じると、男性は夜に女性のもとを訪れ、暁(夜明け前のまだ暗いころ)に帰ります。

恋と結婚の流れ1うわさを聞く(音に聞く)2垣間見:垣根のすきまからのぞく3文(和歌)を贈る → 返歌が来る4逢ふ:夜に女性のもとへ通う5後朝の別れ:暁に帰り、すぐ文を贈る6三日続けて通い、三日夜の餅を食べる7露顕(ところあらはし):お披露目(青=出会い、赤=通う、紫=結婚の儀式)
恋は「うわさ→垣間見→文→逢ふ→後朝の文」、結婚は「三日通う→三日夜の餅→露顕」

垣間見(伊勢物語)

昔、男、初冠して、奈良の京春日の里に、しるよしして、狩りに往にけり。その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。この男かいま見てけり。

(伊勢物語・第一段(初冠))

現代語訳昔、ある男が、元服して、奈良の都の春日の里に、領地がある縁で、狩りに出かけた。その里に、たいそう若々しく美しい姉妹が住んでいた。この男は(その姉妹を)のぞき見てしまった。

ここがポイント「初冠」(うひかうぶり)は男子の成人式=元服。成人したばかりの男が、さっそく垣間見をして恋が始まります。このあと男は、着ていた狩衣のすそを切って歌を書き、女に贈りました。

垣間見(源氏物語)

中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。

(源氏物語・若紫(北山の垣間見))

現代語訳中の柱に寄りかかってすわって、脇息の上に経を置いて、とても苦しそうに読んでいる尼君は、ふつうの身分の人とは見えない。

ここがポイント光源氏が北山で、小柴垣のすきまから家の中をのぞいている場面。脇息(けふそく)はひじかけです。このあと、走ってきた少女(のちの紫の上)を見つけます。垣間見は、男性の目から女性の姿や暮らしを描く、物語の決まった型です。
源氏物語 若紫の巻の絵。縁側の鳥かご、空へ逃げる小鳥、垣根の外からのぞく貴族(垣間見 かいまみ 古文常識)
源氏物語「若紫」の垣間見(かいまみ)の場面。垣根の外からのぞいているのが光源氏と考えられます。部屋が御簾や几帳でしか仕切られておらず、縁側が外に開いていることもわかります。画像:「Wakamurasaki by Unknown Japanese artist.jpg」(1620年ごろ、作者不明、バーミンガム美術館蔵、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

後朝(きぬぎぬ)の別れと後朝の文

一夜をともにした男女が、暁に別れることを「後朝の別れ」と言います。重ねていた衣をそれぞれ着て別れるので「衣衣(きぬぎぬ)」と呼んだと説明されます。男性は帰るとすぐに「後朝の文」(和歌をそえた手紙)を贈るのが礼儀で、これが早いほど愛情が深いとされました。

通い婚の一夜(上から時間の順)夕暮れ・宵男が女のもとへ出かける夜中(夜半)二人で過ごす(逢ふ)暁(あかつき)まだ暗いうちに男が帰る曙(あけぼの)空が白みはじめる朝ぼらけほのぼのと明るくなるつとめて翌朝。後朝の文が届く暁の別れ=後朝(きぬぎぬ)の別れ30番「暁ばかり憂きものはなし」・52番「朝ぼらけ」
夜に来て暁に帰る。暁の別れが後朝の別れで、翌朝に後朝の文が届く

後朝の歌

君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな

(後拾遺和歌集・恋二(百人一首50番 藤原義孝「君がため」))

現代語訳あなたのためなら惜しくないと思っていた命までも、(逢えた今は)長くあってほしいと思うようになったことだ。

ここがポイント詞書に「女のもとより帰りてつかはしける」とあり、女性のもとから帰った朝に贈った後朝の歌です。逢う前と逢ったあとで気持ちが変わったことを、まっすぐに伝えています。

暁の別れのつらさ

明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな

(後拾遺和歌集・恋二(百人一首52番 藤原道信朝臣「明けぬれば」))

現代語訳夜が明けると、また日が暮れて(あなたに逢える)ものだとはわかっているけれども、やはり恨めしい夜明けだなあ。

ここがポイント女性のもとから雪の朝に帰って贈った歌です。夜になればまた通える(=通い婚)とわかっていても、別れの朝ぼらけはつらい、という気持ち。30番 壬生忠岑の「暁ばかり憂きものはなし」も、暁の別れをよんだ歌です。

通い婚と「待つ女」

平安貴族の結婚では、夫が妻の家に通う形がよく見られました(通い婚・妻問婚)。男性が三日続けて通うと結婚が成立し、三日目の夜に三日夜の餅(みかよのもちひ)を食べ、露顕(ところあらはし)というお披露目をしました。源氏物語「葵」の巻にも、三日夜の餅を用意させる場面があります。

夫は複数の妻をもつことができたので、妻の側は夫の訪れを待つしかない立場でした。男性が通ってこなくなることを「夜離れ(よがれ)」と言います。53番 右大将道綱母(藤原道綱母)の「嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る」は、夫の藤原兼家がほかの女性のもとへ通うようになったころの歌で、作者の結婚生活は蜻蛉日記に書かれています。59番 赤染衛門「やすらはで寝なましものを」や21番 素性法師「今来むといひしばかりに」も、来ない男性を待つ歌です。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 物忌み・方違え・加持祈祷(なぜ会えない?なぜ泊まる?)

平安貴族は、陰陽道(おんやうだう)の考えにもとづいて、日の吉凶や方角をとても気にしました。入試の古文で「なぜ会えないのか」「なぜよその家に泊まるのか」と問われたら、次の知識が答えのかぎになります。

不安なとき、平安貴族はどうした?物忌み家にこもり人に会わない札をつけて身をつつしむ方違え悪い方角をさけて別の家に一度泊まる加持祈祷僧が仏に祈る病気・物の怪・お産陰陽師日や方角の吉凶を占う例:安倍晴明「なぜ会えないのか・なぜ泊まるのか」の理由になる
物忌み・方違え・加持祈祷・陰陽師は、行動の理由として本文に出てくる
  • 物忌み(ものいみ):悪い夢を見た日や、陰陽師に悪いと占われた日などに、家にこもって外出せず、人にも会わないこと。「物忌み」と書いた札をつけることもありました。62番 清少納言「夜をこめて」の背景には、藤原行成が「宮中の物忌みがあるので」と言って早く帰ってしまった話があります。
  • 方違え(かたたがへ):行きたい方角に、その日は神(天一神など)がいて悪い方角とされるとき、前の晩に別の方角の家に泊まり、方角を変えてから行くこと。
  • 加持祈祷(かぢきたう):病気・お産・物の怪のときに、僧(験者)が仏に祈ること。物の怪(もののけ)は人にとりついて苦しめる霊で、源氏物語では葵の上に六条御息所の生霊がとりつきます。
方違え(かたたがへ)のしくみ自宅目的地別の家(知人の家など)×この方角に神がいる日→ まっすぐ行けない① 前の晩に泊まる② 翌日、方角を変えて行く源氏物語「帚木」では、方違えの夜に空蝉と出会う
方違えは「前の晩に別の家に泊まって、方角を変える」

方違えは、物語の出会いのきっかけにもなります。源氏物語「帚木」の巻では、光源氏が方違えのために紀伊守の家に泊まり、そこで空蝉と出会います。枕草子「すさまじきもの」には、方違えに行ったのにもてなしをしない家が「興ざめなもの」として挙げられています(このページの説明は要約です)。

2. 出家(世を背く)と、その言い方

出家は、俗世(ふつうの暮らし)を捨てて仏道に入ることです。重い病気、愛する人との別れ、世の中への失望などがきっかけになります。古文では「出家する」と直接言わず、いろいろな言い方をするので、言いかえを知っていることが読解のかぎです。

どれも「出家する」と訳す世を背く世を捨つ世を遁る様を変ふかたちを変ふ頭おろす御髪おろす発心す入道す青=俗世をはなれる 紫=姿を変える・髪をそる緑=仏道に入る出家した人の衣=墨染めの衣(95番)
「世を背く」「様を変ふ」「頭おろす」などは、どれも「出家する」

帝の出家(大鏡)

あはれなることは、おりおはしましける夜は、藤壺の上の御局の小戸より出でさせたまひけるに、有明の月のいみじく明かかりければ、「顕証にこそありけれ。いかがすべからむ」と仰せられけるを、

(大鏡・花山院の出家)

現代語訳しみじみと心を打たれるのは、(花山天皇が)退位なさった夜は、藤壺の上の御局の小戸から(宮中を)お出になったところ、有明の月がたいそう明るかったので、「(これでは)目立ってしまうなあ。どうしたらよかろう」とおっしゃったのを、

ここがポイント花山天皇が夜中に宮中を抜け出し、花山寺(元慶寺)で出家する場面。「御局」は宮中の部屋、「有明の月」は夜明けに残る月です。帝は出家のために位を退くことになり、政治が大きく動きました。最高敬語の使い方は最高敬語・絶対敬語へ。

百人一首にも出家した人がたくさんいます。名前に「法師」「入道」「僧正」がつく作者や、95番 前大僧正慈円「わが立つ杣に墨染めの袖」(墨染めの袖=僧の衣)、出家を迷う心をよんだ83番 皇太后宮大夫俊成(藤原俊成)「思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる」などです。12番 僧正遍昭は、仕えた仁明天皇が亡くなると出家しました。

3. 一生の行事と年中行事

行事読みどんなことか読解のポイント
袴着はかまぎ幼児がはじめて袴をつける祝い源氏物語・桐壺に光源氏の袴着
元服(初冠)げんぷく(うひかうぶり)男子の成人式伊勢物語の第一段
裳着もぎ女子の成人式(裳をつける)このころから結婚の話が出る
除目ぢもく官職を任命する行事。春の県召(地方官)・秋の司召(都の官)任官できるかどうかで一家の運命が決まる
五節ごせち秋の収穫を祝う宮中の行事で、舞姫が舞う12番 僧正遍昭「をとめの姿しばしとどめむ」
夏越の祓なごしのはらへ六月の終わりに川などで身を清める(みそぎ)98番 従二位家隆(藤原家隆)「みそぎぞ夏のしるしなりける」

除目は、とくに受領(地方の長官)を望む中流貴族にとって一大事でした。枕草子「すさまじきもの」には「除目に司得ぬ人の家」が挙げられ、任官を期待して集まった人々ががっかりする様子が書かれています。行事の日付や時刻は旧暦で書かれるので、旧暦・季節・時刻のページもあわせて読んでください。

4. 説が分かれるところ

「通い婚」は平安貴族の結婚を説明するときによく使われる言葉ですが、実際には、結婚してしばらくすると夫婦が同じ家に住む(妻の家に夫が住む、のちに夫の家に移る)例も多く、一生ずっと通い続けたわけではないと説明されることもあります。入試の読解では、「夜に来て暁に帰る」「妻は夫の訪れを待つ」という場面の型を押さえておけば十分です。

うかるくん

うかるくん

「物忌み」とか「方違え」とか、文法と関係ないのに、どうして入試に出るの?

合格先生

合格先生

本文には理由が書かれていないことが多いからだよ。「男が来なかった」の理由が物忌みだったり、「よその家に泊まった」の理由が方違えだったり。常識を知らないと、心情や主語の問題で迷ってしまうんだ。

サクラちゃん

サクラちゃん

常識は、本文の「すきま」をうめる道具なんですね!

よくあるまちがい

まちがい1:「後朝の別れ」を「朝ごはんのあとの別れ」と思う

後朝(きぬぎぬ)は、一夜をともにした男女が暁(夜明け前のまだ暗いころ)に別れることです。男性はすぐに後朝の文を贈ります。

まちがい2:「垣間見」をただの「見る」と訳す

垣間見は、垣根や物のすきまからこっそりのぞき見ることです。身分の高い女性は顔を見せないので、垣間見が恋の始まりになります。

まちがい3:「物忌み」を病気のことだと思う

物忌みは、日や夢見が悪いときなどに家にこもってつつしむことで、病気ではありません。「物忌みなれば会はず」のように、会えない理由として出てきます。

まちがい4:「様を変ふ」「世を背く」を文字どおりに訳す

どちらも出家するという意味です。「姿を変える」「世の中にそむく」と直訳すると、設問で点になりません。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

古文常識は「理由」の知識。夜に来て暁に帰る=通い婚、こもって会わない=物忌み、よそに泊まる=方違え、様を変ふ=出家。本文に書かれていない理由を補えるようにしよう。

練習問題

やさしい

  1. 次の語の読みと意味を答えなさい。
    ① 垣間見 ② 几帳 ③ 後朝
    答えと解説を見る

    ① かいまみ:垣根などのすきまからのぞき見ること ② きちゃう(きちょう):布をかけた移動式のついたて ③ きぬぎぬ:一夜をともにした男女が暁に別れること(その別れ)。

  2. 次の言い方のうち、「出家する」という意味でないものを1つ選びなさい。
    (ア)世を背く (イ)様を変ふ (ウ)頭おろす (エ)音に聞く
    答えと解説を見る

    (エ)。「音に聞く」は「うわさに聞く」という意味です。ほかの3つはどれも「出家する」と訳します。

ふつう

  1. 次の文で、男が女のもとへ行かなかった理由を、古文常識をふまえて説明しなさい(自作)。
    男、今宵は物忌みなりとて、女のもとへも行かず、文ばかりをやる。
    答えと解説を見る

    男は物忌みの日で、家にこもって身をつつしまなければならなかったから。物忌みの日は外出せず、人にも会わないので、手紙だけを送っています。

  2. 百人一首52番「明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな」は、どのような場面の歌か。古文常識の語を使って説明しなさい。
    答えと解説を見る

    女性のもとで一夜を過ごした男性が、夜明け(暁・朝ぼらけ)に別れて帰った(後朝の別れ)あとに贈った歌。通い婚なので夜になればまた逢えるとわかっていても、別れの朝はつらい、という気持ちをよんでいます(52番のページ)。

むずかしい

  1. 次の文の「方違へ」とは何か。また、なぜ男は女の家に泊まることができたのかを説明しなさい(自作)。
    男、方違へにとて、知る人の家にまかりて、その夜、女のけはひを聞く。
    答えと解説を見る

    方違えは、行きたい方角が悪い日に、前の晩に別の方角の家に泊まって方角を変えること。男は方違えという正当な理由で知人の家に泊まったので、ふだんは近づけない女性の気配にふれることができました。源氏物語「帚木」で光源氏が空蝉と出会うのも、この形です。

  2. 平安時代の結婚で「三日夜の餅」「露顕」が行われるのはどのような段階か。通い婚のしくみにふれて説明しなさい。
    答えと解説を見る

    男性が女性のもとに三日続けて通った段階。三日目の夜に三日夜の餅を食べ、露顕(ところあらはし)で周囲にお披露目をして、結婚が正式に認められました。通い婚では、夫が妻の家に通うことで結婚が成り立ちます。

関連ページ

読みものの「枕草子「春はあけぼの」」では宮仕えの女房の感覚を、「旧暦の月の名前」「大晦日と昔の時刻」では行事と時間を、「百人一首 全百首」では恋の歌の背景を読めます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

後朝(きぬぎぬ)とは何ですか?

一夜をともにした男女が、暁(夜明け前のまだ暗いころ)に別れることです。男性は帰るとすぐに「後朝の文」という和歌をそえた手紙を贈りました。

垣間見(かいまみ)とはどういう意味ですか?

垣根や物のすきまから、こっそりのぞき見ることです。身分の高い女性は人に顔を見せないので、垣間見が恋の始まりとして物語によく描かれます。

物忌みと方違えのちがいは?

物忌みは、悪い日などに家にこもって外出せず人にも会わないこと、方違えは、行きたい方角が悪いときに前の晩に別の家に泊まって方角を変えることです。

通い婚とは何ですか?

夫が夜に妻の家に通う結婚の形です。三日続けて通うと結婚が成立し、三日夜の餅を食べて露顕(お披露目)をしました。のちに同居する例も多かったと説明されます。

「出家する」を表す古文の言い方は?

「世を背く」「世を捨つ」「様を変ふ」「かたちを変ふ」「頭おろす」「御髪おろす」などがあり、どれも「出家する」と訳します。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:枕草子(「雪のいと高う降りたるを」の段)、伊勢物語(第一段)、源氏物語(若紫)、大鏡(花山院の出家)、後拾遺和歌集(恋二)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 百人一首(12・21・30・50・52・53・59・62・83・95・98番)の本文と解説(合格大作戦「百人一首 全百首」)
  • 高校の古典の標準的な説明(寝殿造・恋と結婚・物忌み・方違え・出家・年中行事)にもとづいて作成。通い婚の実態、「後朝」の語源、北の方の呼び名の由来は説が分かれるため「〜と説明される」と記した。枕草子「すさまじきもの」・源氏物語「帚木」「葵」の内容は要約。練習問題の「自作」の文は、このページのために作ったもの
  • 画像:「Wakamurasaki by Unknown Japanese artist.jpg」(1620年ごろ、作者不明、バーミンガム美術館蔵、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦