古文文法辞典 › 敬語
大学受験難関大
ひとことで言うと
敬意の方向は2段で決めます。だれから=敬語の場所(地の文なら作者、会話文なら話し手)、だれへ=敬語の種類(尊敬語は動作をする人、謙譲語は動作を受ける人、丁寧語は聞き手・読み手)です。
このページのポイント
- だれから:地の文→作者、会話文→話し手、手紙→書き手
- だれへ:尊敬語→動作をする人、謙譲語→動作を受ける人、丁寧語→聞き手・読み手
- まず「 」の範囲に線を引き、主語・相手・聞き手を補ってから人名で答える
- 謙譲+尊敬(さぶらひたまふ・聞こえたまふ)は二方面への敬語で、敬意が二人に向かう
- 「奏す・啓す」は相手が決まった絶対敬語。会話文の最高敬語や自敬表現は例外として注意
はじめて(やさしく)
古文の試験でよく出るのが「この敬語は、だれから、だれへの敬意か」という問題です。これを敬意の方向(けいいのほうこう)といいます。むずかしそうに見えますが、答え方は2つの手順だけです。
- だれから? = 敬語がどこにあるかで決まる(地の文なら作者、会話文なら話し手)
- だれへ? = 敬語の種類で決まる(尊敬語ならする人、謙譲語なら受ける人、丁寧語なら聞き手・読み手)
うかるくん
「地の文」ってなに?
合格先生
「 」(かぎかっこ)の外の、物語を進めている文のことだよ。そこを書いているのは作者だから、地の文の敬語は全部「作者から」。登場人物どうしの敬意になるのは「 」の中だけなんだ。
サクラちゃん
じゃあ、「だれへ」は?
合格先生
敬語の種類を見る。尊敬語なら動作をする人へ、謙譲語なら動作を受ける人へ、丁寧語なら聞いている人・読んでいる人へ。種類の見分け方は敬語の種類のページで確かめよう。
たとえば「(地の文)翁、帝に申す」(自作)なら、地の文なので作者から。「申す」は謙譲語なので、申し上げる相手=帝へ。答えは「作者から帝へ」です。

サクラちゃん
「だれから」は場所、「だれへ」は種類。この2つを分けて考えれば、敬意の方向はこわくない!
わからない問題があれば、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
敬意の方向とは?「誰から誰へ」の決め方の表
| 敬語のある場所 | だれから | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
|---|---|---|---|---|
| 地の文(「」の外) | 作者(書き手) | 作者 → 動作をする人 | 作者 → 動作を受ける人 | 作者 → 読み手 |
| 会話文(「」の中) | 話し手 | 話し手 → 動作をする人 | 話し手 → 動作を受ける人 | 話し手 → 聞き手 |
| 手紙 | 書いた人 | 書き手 → 動作をする人 | 書き手 → 動作を受ける人 | 書き手 → 受け取る人 |
| 心の中のことば(〜と思ふ) | 思っている人 | 思う人 → 動作をする人 | 思う人 → 動作を受ける人 | (ほとんど使われない) |
例文で確かめる(地の文)
雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせたまふ。
(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)
現代語訳雪がとても高く降り積もっているのに、いつもとちがって御格子をお下ろし申し上げて、炭びつに火をおこして、(女房たちが)話などをして集まって(中宮様のおそばに)お仕えしていると、(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃるので、(私は)御格子を(人に)上げさせて、御簾を高く巻き上げたところ、(中宮様は)お笑いになる。
| 敬語 | 種類 | 意味 | 敬意の方向 |
|---|---|---|---|
| まゐり | 謙譲語(本動詞) | (格子を)お下ろし申し上げる | 清少納言 → 中宮定子 |
| さぶらふ | 謙譲語(本動詞) | お仕えする | 清少納言 → 中宮定子 |
| 仰せらるれ | 尊敬語(仰す)+尊敬の助動詞(らる) | おっしゃる | 清少納言 → 中宮定子 |
| せたまふ | 尊敬の助動詞(す)+尊敬語(給ふ)=最高敬語 | お笑いになる | 清少納言 → 中宮定子 |
なお、「上げさせて」の「させ」は、下に尊敬語がないので使役(人に上げさせて)です(助動詞「す・さす・しむ」)。作者自身の動作「上げたれ」には敬語がつきません。この段の読み方は記事「枕草子「春はあけぼの」」も参考になります。
昔、男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、竜田川のほとりにて、
(伊勢物語・第百六段(百人一首17番 在原業平朝臣「ちはやぶる」の場面))
現代語訳昔、男が、親王たちがそぞろ歩きをなさる所に参上して、竜田川のほとりで、
例文で確かめる(会話文)
年ごろ思ひつること、果たし侍りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。
(徒然草・第五十二段「仁和寺にある法師」)
現代語訳長年思っていたことを、果たしました。(うわさに)聞いていた以上に、尊くていらっしゃった。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 一つの動作で二人を高める:二方面への敬語
謙譲語と尊敬語が重なると、謙譲語は動作を受ける人へ、尊敬語は動作をする人へと、敬意が2つの方向に分かれます。これを二方面への敬語といいます(二方面への敬語)。
いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、
(源氏物語・桐壺(冒頭))
現代語訳どの帝の御代であったか、女御や更衣が大勢(帝に)お仕え申し上げていらっしゃった中に、
2. 丁寧語の「だれへ」は、話の外の人
尊敬語・謙譲語は話の中の人物に向かいますが、丁寧語は話の外にいる聞き手・読み手に向かいます。会話文の丁寧語なら聞き手、地の文の丁寧語なら読み手です。物語の地の文には丁寧語があまり使われませんが、勅撰和歌集の詞書や日記・随筆、中世の語り物などでは、地の文に「侍り」「候ふ」が出てきます。
百人一首35番 紀貫之「人はいさ」の詞書(古今和歌集・春上・42番)の「言ひ出だして侍りければ」は、詞書の書き手(貫之)から読み手への丁寧語と説明されます。勅撰集は天皇の命令で作られたので、読み手として天皇を意識した表現だと説明されることもあります。
3. 百人一首の詞書で考える(入れ子になった敬語)
亭子院、大井河に御幸ありて、行幸もありぬべき所なりと仰せ給ふに、ことのよし奏せむと申して
(拾遺和歌集・雑秋・1128番の詞書(百人一首26番 貞信公「小倉山」))
現代語訳亭子院(宇多上皇)が大井川にお出かけになって、「(醍醐天皇の)行幸もあってよい所だ」とおっしゃるので、(忠平が)「このことを(帝に)申し上げよう」と(上皇に)申し上げて(よんだ歌)

「奏す」(天皇・上皇へ)・「啓す」(皇后・中宮・皇太子へ)のように、敬意を向ける相手が決まっている語を絶対敬語といいます。相手が書かれていなくても「だれへ」が決まるので、強い手がかりです(最高敬語・絶対敬語)。
4. 心の中のことば・手紙・会話の中の会話
- 心の中のことば(「〜と思ふ」「〜とて」の前)は、会話文と同じく思っている人から。かぎかっこがついていないことも多いので、「と思ふ」「と見る」などで範囲を決めます。
- 手紙の中の敬語は書いた人から。下二段「給ふ」(思ひ給ふる)は、手紙の書き手から受け取る人への敬意になります(「給ふ」(四段と下二段))。
- 会話の中で、さらにだれかのことばを引用している場合は、いちばん内側のことばの話し手からです。かぎかっこが二重になる所は、外側から順に話し手を確かめます。
5. 例外:自敬表現と、会話文の最高敬語
会話文の中で、帝など身分の高い人が自分の動作に尊敬語を使ったり、自分に向かう動作に謙譲語を使わせたりする例があります。これを自敬表現(自尊敬語)といいます。「話し手から自分へ」と機械的に答えると不自然なため、書き手が帝のことばを敬って整えたもの、と説明されることもあり、解釈は分かれます。また、会話文では、話し手が相手を強く高めるために、最高の身分でない人に「せ給ふ」などの最高敬語を使うこともあります。「最高敬語=必ず帝」と決めつけないことが大切です(最高敬語・絶対敬語)。
うかるくん
詞書の中に、ことばの中のことばがあって、「だれから」が途中で変わるなんて……!
合格先生
だからまず「 」の範囲に線を引くんだ。かぎかっこがなくても、「〜と言ふ」「〜と申す」「〜と思ふ」の「と」の前までがことば。線を引けば「だれから」は自動的に決まる。
サクラちゃん
場所に線を引いて「だれから」、種類を見て「だれへ」。最後に人名で答える、だね。
よくあるまちがい
まちがい1:地の文の敬語を「登場人物から」と答える
地の文の敬語は、すべて作者(書き手)からです。「男が親王たちに敬意を払っている」のではなく、作者が親王たちを高めています。
まちがい2:謙譲語の「だれへ」を、動作をする人にする
謙譲語は動作を受ける人へ。「男、親王たちの所にまうで」の「まうで」は、行く男ではなく、行き先の親王たちへの敬意です。
まちがい3:会話文の丁寧語を「話題の人へ」とする
丁寧語はいつも聞き手(読み手)へ。法師のことばの「果たし侍りぬ」は、話の中の神ではなく、聞いている仲間への敬意です。
まちがい4:「作者」とだけ書いて、名前を書かない
問題が人名を求めているときは「清少納言から中宮定子へ」のように名前で答えます。日記・随筆では作者自身が登場人物でもあるので、とくに注意します。

合格先生
だれから=場所、だれへ=種類。この2つを別々に決めるのがコツ。地の文なら作者、会話文なら話し手。尊敬はする人、謙譲は受ける人、丁寧は聞き手・読み手だよ。
練習問題
やさしい
- 次の――線部は、だれからだれへの敬意か答えなさい(自作・地の文)。
翁、かぐや姫に「よき人に会ひ給へ」と申す。答えと解説を見る
作者から、かぐや姫へ。地の文なので「だれから」は作者。「申す」は謙譲語なので、申し上げる相手のかぐや姫へ。
- 次の――線部は、だれからだれへの敬意か答えなさい(自作・地の文)。
帝、かぐや姫の家におはします。答えと解説を見る
作者から、帝へ。地の文の尊敬語なので、作者から、動作をする(いらっしゃる)帝へ。
ふつう
- 上の やさしい①の文で、会話文の中の「給へ」は、だれからだれへの敬意か答えなさい。
答えと解説を見る
翁から、かぐや姫へ。会話文なので「だれから」は話し手の翁。「給へ」は尊敬の補助動詞(四段の命令形「お会いなさい」)で、会う人=聞き手のかぐや姫へ。
- 次の文の①「申し」②「侍ら」は、だれからだれへの敬意か答えなさい(自作)。
少将、姫君に、「このことを大臣に①申し②侍らむ」と言ふ。答えと解説を見る
① 少将から大臣へ(会話文の謙譲語。申し上げる相手は大臣)。② 少将から姫君へ(会話文の丁寧語。聞き手は姫君)。
むずかしい
- 百人一首26番の詞書「亭子院、大井河に御幸ありて、行幸もありぬべき所なりと仰せ給ふに、ことのよし奏せむと申して」の①「仰せ給ふ」②「奏せ」③「申し」は、それぞれだれからだれへの敬意か答えなさい。
答えと解説を見る
① 詞書の書き手から亭子院(宇多上皇)へ(地の文の尊敬語)。② 忠平(貞信公)から醍醐天皇へ(忠平のことばの中の謙譲語。「奏す」は天皇に申し上げる絶対敬語)。③ 詞書の書き手から亭子院へ(地の文の謙譲語。申し上げる相手は上皇)。
- 源氏物語・桐壺の冒頭「女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に」の「さぶらひ」と「たまひ」の敬意の方向を答え、なぜ一つの動作に2つの敬語がつくのか説明しなさい。
答えと解説を見る
どちらも地の文なので作者(紫式部)から。「さぶらひ」(謙譲語)は動作を受ける帝へ、「たまひ」(尊敬語)は動作をする女御・更衣へ。動作を受ける人も、する人も身分が高いので、謙譲語と尊敬語を重ねて二人を同時に高めています(二方面への敬語)。
関連ページ
- 敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧):「だれへ」を決める種類の見分け方
- 主語の補い方:敬語から主語と相手を補う
- 二方面への敬語:謙譲+尊敬で二人を高める
- 最高敬語・絶対敬語:せ給ふ・奏す・啓す
- 補助動詞:給ふ・奉る・侍りの補助用法
- 助動詞「す・さす・しむ」:尊敬と使役の見分け
- 官職と身分:「だれへ」の相手の身分と官職
- 共通テストの古文文法:共通テストで問われやすい文法の一覧
- 国公立二次・難関私大の古文文法:記述の訳に文法を出す手順
- 古文文法辞典の目次
敬語の全体は読みものの「古文の敬語」でも通して読めます。百人一首の詞書は「百人一首 全百首」の各首のページで背景といっしょに確かめられます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の敬語
尊敬・謙譲・丁寧と、敬意の方向 - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 国語のまとめ
現代文・古文・漢文の入口
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
敬意の方向とは何ですか?
敬語が「だれから、だれへ」の敬意を表しているかということです。入試では「――線部はだれからだれへの敬意か」の形でよく問われます。
「だれから」はどう決めますか?
敬語のある場所で決まります。地の文なら作者(書き手)、会話文なら話し手、手紙なら書いた人からの敬意です。
「だれへ」はどう決めますか?
敬語の種類で決まります。尊敬語は動作をする人へ、謙譲語は動作を受ける人へ、丁寧語は聞き手・読み手への敬意です。
謙譲語と尊敬語が重なっているときは?
二方面への敬語です。謙譲語は動作を受ける人へ、尊敬語は動作をする人へ、それぞれ別の方向に敬意が向かいます。
地の文に丁寧語があるときはだれへの敬意ですか?
読み手への敬意です。日記・随筆や勅撰和歌集の詞書などの地の文に「侍り」「候ふ」が出てきたら、書き手から読み手への敬意と考えます。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:枕草子(「雪のいと高う降りたるを」の段)、伊勢物語(第百六段)、徒然草(第五十二段)、源氏物語(桐壺・冒頭)、拾遺和歌集(雑秋・1128番の詞書)、古今和歌集(春上・42番の詞書)。表記は読みやすいように一部改めています
- 百人一首(17・26・35番)
- 高校の古典文法の標準的な説明(敬意の方向・二方面への敬語・絶対敬語)にもとづいて作成。地の文の丁寧語の向かう先、自敬表現、会話文の最高敬語は説明が分かれるため、本文中に「〜と説明される」と記した。練習問題の「自作」の文は、このページのために作ったもの
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 026」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



