古文文法辞典 › 助動詞
大学受験難関大
ひとことで言うと
「す・さす・しむ」は使役(〜させる)と尊敬(お〜になる)の助動詞で、「す」は四段・ナ変・ラ変の未然形、「さす」はそれ以外、「しむ」はすべての未然形につきます。尊敬になるのは下に「給ふ」などがあるときだけで、「せ給ふ・させ給ふ」は二重尊敬(最高敬語)です。
このページのポイント
- 接続:「す」は四段・ナ変・ラ変の未然形、「さす」はそれ以外、「しむ」はすべての活用語の未然形
- 活用は下二段型(せ・せ・す・する・すれ・せよ)
- 意味は使役・尊敬の2つ。下に尊敬語がなければ必ず使役
- 「せ給ふ・させ給ふ」は、させられる人(〜に)がいれば使役、いなければ二重尊敬(最高敬語)
- 謙譲語+す・さす(奏せさす)は使役。「せ」の識別も頻出
はじめて(やさしく)
「す」「さす」「しむ」は、現代語の「せる・させる」にあたる助動詞です。「子に書かす」は「子に書かせる」、「人に見さす」は「人に見させる」。だれかに何かをさせることを「使役」といいます。
使役の文には、命じる人と実際に動く人の2人が出てきます。竹取物語で、竹の中から小さな女の子を見つけた翁(おじいさん)は、「妻の嫗にあづけて養はす」――おばあさんに預けて育てさせました。命じたのは翁、育てたのは嫗です。

うかるくん
「させる」だけなら、現代語と同じでかんたんだね。
合格先生
ところが古文の「す・さす」には、もう1つ尊敬の意味があるんだ。「笑はせ給ふ」は「笑わせなさる」ではなく、「お笑いになる」のことが多い。
サクラちゃん
えっ、「せ」があるのに、だれにも何もさせていないの?
合格先生
そう。尊敬の「す」と尊敬の「給ふ」を2つ重ねた、いちばん高い敬語なんだ。帝や中宮のような、とても身分の高い人に使うよ。
「す」と「さす」の使い分けは、助動詞「る・らる」と同じです。「書か」「笑は」のようにア段の音(四段・ナ変・ラ変の未然形)には「す」、「見」「受け」のようにそれ以外の動詞には「さす」がつきます。「しむ」はどの語にもつきますが、かたい文章(漢文を読み下した文など)に多く出てきます。

サクラちゃん
「す・さす」はさせる(使役)とお〜になる(尊敬)の2つ。尊敬になるのは「せ給ふ」「させ給ふ」の形のときだね!
ここまでのまとめ
- 「す・さす・しむ」=現代語の「せる・させる」
- 意味は使役・尊敬の2つ
- 「す」は四段・ナ変・ラ変の未然形、「さす」はそれ以外、「しむ」はすべての未然形
- 尊敬になるのは、下に「給ふ」などの尊敬語があるときだけ
わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の古典文法のお勉強のスレッドで質問できます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
「す・さす・しむ」の活用表と接続
| 語 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 | 活用の型 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| す | せ | せ | す | する | すれ | せよ | 下二段型 |
| さす | させ | させ | さす | さする | さすれ | させよ | 下二段型 |
| しむ | しめ | しめ | しむ | しむる | しむれ | しめよ | 下二段型 |
3つとも下二段活用と同じ形(下二段型)です。未然形と連用形が同じ「せ・させ・しめ」なので、「せ給ふ」の「せ」は連用形(「給ふ」は連用形につく)、「せず」の「せ」は未然形と、下の語で活用形を決めます。
| 助動詞 | 接続 | 例 |
|---|---|---|
| す | 四段・ナ変・ラ変の未然形(ア段の音) | 書かす・笑はす・死なす |
| さす | それ以外(上一段・上二段・下一段・下二段・カ変・サ変)の未然形 | 見さす・起きさす・上げさす・来さす(こさす)・せさす |
| しむ | すべての活用語の未然形 | 書かしむ・見しむ・あらしむ |
未然形の形は活用形や四段活用のページで確かめられます。未然形につく助動詞のなかまは助動詞の接続にまとめています。
2つの意味と訳し方
| 意味 | 訳し方 | 見分ける手がかり |
|---|---|---|
| 使役 | 〜させる | 下に尊敬語がない。または「〜に」「〜をして」で、させられる人が示される |
| 尊敬 | お〜になる・〜なさる | 下に給ふ・おはしますなどの尊敬語があり、させられる人がいない。「せ給ふ・させ給ふ」は二重尊敬(最高敬語) |
使役と尊敬の見分け方の手順
- 下に尊敬語(給ふ・おはします など)があるか見る。なければ必ず使役。
- あれば、させられる人(「〜に」「〜をして」)が文中にあるか、文脈からだれかにさせていると読めるかを確かめる。
- させられる人がいれば使役(+給ふで「〜させなさる」)。
- いなければ尊敬。「せ給ふ・させ給ふ」は尊敬+尊敬の二重尊敬で、地の文では帝・中宮・上皇など最高の身分の人が主語。
- 最後に訳を当てはめ、主語の身分と文脈に合うか確かめる。

合格先生
「す・さす」が尊敬になるのは、下に尊敬語があるときだけ。「せ給ふ」を見たら、まずさせられる人がいるかをさがそう。
例文で確かめる
使役
妻の嫗にあづけて養はす。
(竹取物語・かぐや姫の生い立ち)
現代語訳(翁は女の子を)妻のおばあさんに預けて育てさせる。
使役と二重尊敬
「少納言よ。香炉峰の雪いかならむ」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑はせ給ふ。
(枕草子「雪のいと高う降りたるを」の段)
現代語訳(中宮様が)「少納言よ、香炉峰の雪はどうでしょう」とおっしゃるので、(私は女房に)御格子を上げさせて、(自分で)御簾を高く巻き上げたところ、(中宮様は)お笑いになる。
使役
嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな
(百人一首86番・西行法師(嘆けとて))
現代語訳嘆けと言って、月が私にもの思いをさせるのだろうか、いやそうではない。それなのに、まるで月のせいだと言わんばかりに流れる私の涙であることよ。
使役+尊敬
帝、人々に歌よませ給ふ。
(自作)
現代語訳帝は、人々に歌をよませなさる。
使役(しむ)
天帝我をして百獣に長たらしむ。
(戦国策「虎の威を借る狐」(書き下し文))
現代語訳天の神が、私を百獣の王にさせたのだ。

もっと深く(難関大・上級者)
1. 「せ給ふ」「させ給ふ」は二重尊敬(最高敬語)
尊敬の「す・さす」は単独では使われず、必ず下に尊敬語(給ふ・おはします など)を伴います。「せ給ふ」「させ給ふ」「せおはします」「させおはします」は、尊敬を2つ重ねた二重尊敬で、最高敬語とも呼ばれます。
- 地の文では、帝・中宮・上皇・東宮など最高の身分の人だけに使うのが原則です。主語が書かれていなくても、「せ給ふ」から主語を帝や中宮だと推定できます(補助動詞「給ふ」・主語の補い方)。
- 会話文では、話し手が相手を高めるために、大臣など最高位でない人にも使われることがあります。
- 「る・らる」の尊敬は敬意が軽く、「れ給ふ・られ給ふ」の「る・らる」は尊敬にならないと説明されます。尊敬を重ねる役目は「す・さす」が受け持っている、と考えると整理できます。
尊敬語・謙譲語の全体や敬意の方向は「敬語の種類」「最高敬語・絶対敬語」のページでくわしく扱っています。読みものの古文の敬語もあわせて読んでみてください。
2. 「せ給ふ」でも使役になるとき
「せ給ふ」の形でも、実際に動く人がほかにいるときは使役です。身分の高い人は、自分で物を運んだり格子を上げたりしないので、だれかにさせていると読めるかを文脈で確かめます。
中宮、御前なる人々に、物語読ませ給ふ。
(自作)
現代語訳中宮は、おそばにいる女房たちに、物語を読ませなさる。
3. 謙譲語の下の「す・さす」は使役
「奏す(帝に申し上げる)」「啓す(中宮・東宮に申し上げる)」などの謙譲語の下の「す・さす」は、尊敬ではなく使役と考えます。「奏せさす」は「(人に命じて)帝に申し上げさせる」です。取り次ぎの人を通して申し上げる、宮中のしくみが表れています。
この由を、人して奏せさす。
(自作)
現代語訳このことを、人を介して(帝に)申し上げさせる。
4. 「せ」の識別
| 「せ」の正体 | 見分け方 | 例 |
|---|---|---|
| 使役・尊敬「す」の未然形・連用形 | 上がア段(四段・ナ変・ラ変の未然形) | 笑はせ給ふ・書かせけり |
| サ変動詞「す」の未然形 | 上が名詞・漢語(「御覧ず」なども) | 行幸せさせ給ふ・恋せず |
| 過去「き」の未然形 | 「せば〜まし」の反実仮想 | 桜のなかりせば |
| 動詞の一部 | 「見す」「寄す」「まどはす」など | 見せばやな(百人一首90番) |
百人一首90番「見せばやな雄島のあまの袖だにも」の「見せ」は、下二段動詞「見す」(見せる)の未然形で、助動詞「す」ではなく1語の動詞です。29番「心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花」の「まどはせる」も、四段動詞「まどはす」の已然形「まどはせ」+完了「り」の連体形「る」で、使役の「す」ではありません。6番「かささぎの渡せる橋」の「渡せる」も同じ形です(「り」は助動詞「たり・り」)。
5. 「しむ」は漢文訓読調、尊敬の「しむ」も
平安時代の和文(物語・日記)では使役はもっぱら「す・さす」で、「しむ」は漢文訓読の文や男性の書いた文章に多いと説明されます。「しむ」にも「しめ給ふ」の形の尊敬がありますが、中古では漢文訓読調の文章などに限られる、とする説明が一般的です。和漢混交文の軍記物語や、漢文の書き下し文で「しむ」を見たら、まず使役を考えましょう。漢文の「使・令・教・遣」は「しむ」と読みます。
6. 軍記物語の「射させ」「討たせ」
平家物語などの軍記物語では、「射られる」「討たれる」というべき所を、使役の形で「射させ」「討たせ」と言う例があります。受身を使うのは弱く見えるので、「わざと射させてやった」という武士の強がりの言い方だと説明されます。意味は受身に近く訳します。
うかるくん
射られたのに「射させた」って言うの? 負けずぎらいだなあ。
合格先生
文法は人の気持ちも映すんだね。入試では「使役の形で受身の意味」と問われることがある。形と意味がずれる例として覚えておこう。
入試でねらわれる所
- 「せ給ふ・させ給ふ」の使役か尊敬か(させられる人の有無)
- 二重尊敬から主語(帝・中宮など)を補う
- 謙譲語+す・さす(奏せさす・啓せさす)は使役
- 「せ」の識別(す/サ変/過去き/動詞の一部)
よくあるまちがい
まちがい1:「せ給ふ」を全部「〜させなさる」と訳す
「せ給ふ・させ給ふ」は、させられる人がいなければ二重尊敬で「お〜になる」。「笑はせ給ふ」は「お笑いになる」です。まず「〜に」「〜をして」をさがしましょう。
まちがい2:「す・さす」だけで尊敬と答える
下に尊敬語がない「す・さす」は必ず使役です。「養はす」「上げさせて」は尊敬になりません。
まちがい3:「せ」を見たら全部助動詞「す」と考える
「行幸せ」のサ変、「なかりせば」の過去「き」、「見せ」「まどはせ」の動詞の一部があります。上がア段の未然形かどうかを確かめましょう。
練習問題
やさしい
- 次の動詞に「す」か「さす」をつけて、終止形で答えなさい。
① 読む ② 見る ③ 受く ④ 来(く)答えと解説を見る
① 読ます(四段の未然形「読ま」+す) ② 見さす(上一段) ③ 受けさす(下二段) ④ 来さす(こさす。カ変の未然形「こ」+さす)。ア段の音の下が「す」、それ以外が「さす」です。
- 「翁、嫗に竹を切らす。」(自作)の「す」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
下に尊敬語がなく、「嫗に」とさせられる人がいるので使役。「翁は、おばあさんに竹を切らせる」。
ふつう
- 「帝、いみじう笑はせ給ふ。」(自作)の「せ」の意味を答え、全体を訳しなさい。
答えと解説を見る
させられる人がいないので尊敬(「せ給ふ」で二重尊敬・最高敬語)。「帝は、たいそうお笑いになる」。
- 「大臣、随身に馬引かせ給ふ。」(自作)の「せ」の意味を答えなさい。
答えと解説を見る
「随身に」と、馬を引く人(させられる人)が示されているので使役。「大臣は、随身(お供の者)に馬を引かせなさる」。
むずかしい
- 次の「せ」を文法的に説明しなさい。
① 子に文を書かせけり。(自作)
② 世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(古今和歌集・在原業平)
③ 人に花を見せけり。(自作)答えと解説を見る
① 四段「書く」の未然形「書か」の下なので、使役の助動詞「す」の連用形(「けり」は連用形につく)。② 「せば〜まし」の反実仮想なので、過去の助動詞「き」の未然形。③ 下二段動詞「見す」(見せる)の連用形「見せ」の一部で、動詞の一部。
- 「この由を、人して奏せさす。」(自作)の「さす」の意味を答え、理由を説明しなさい。
答えと解説を見る
使役。「奏す」は帝に申し上げるという謙譲語で、謙譲語の下の「す・さす」は尊敬にならないからです。「人して」(人を介して)もあり、「このことを、人を通して帝に申し上げさせる」。
関連ページ
- 助動詞「る・らる」:同じ使い分け(ア段の下は「る」「す」)。「れ給ふ」は尊敬にならない
- 補助動詞:「せ給ふ」の「給ふ」
- 主語の補い方:最高敬語から主語を決める
- 助動詞の接続:未然形につく助動詞
- 助動詞一覧:意味・接続・活用の地図
- 助動詞「たり・り」(完了):「まどはせる」の「る」
- 最高敬語・絶対敬語:「せ給ふ」は最高敬語
- 敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧):敬語の全体の地図
- 「せ」の識別:使役・尊敬・サ変・過去「き」の見分け
- 古文文法辞典の目次
助動詞の全体は、読みものの古文の助動詞一覧でも確かめられます。
読みもの(合格大作戦の記事)
- 古文の助動詞一覧
接続・意味・活用をまとめて見る地図 - 古文の敬語
尊敬・謙譲・丁寧と、敬意の方向 - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 枕草子「春はあけぼの」
冒頭の段を品詞から読む - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
- 古典文法のお勉強(スレ)(文法のわからない所を質問・答え合わせ)
- 古典の勉強方法(スレ)(古典の勉強の進め方)
- 共通テスト掲示板(共通テストの国語(古文)の対策)
- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
助動詞「す・さす・しむ」の意味は何ですか?
使役(〜させる)と尊敬(お〜になる・〜なさる)の2つです。尊敬になるのは、下に「給ふ」「おはします」などの尊敬語があるときだけです。
「せ給ふ」の「せ」は使役ですか、尊敬ですか?
「〜に」「〜をして」など、させられる人が文中や文脈にあれば使役、なければ尊敬です。尊敬の場合「せ給ふ」は二重尊敬(最高敬語)になります。
二重尊敬(最高敬語)とは何ですか?
尊敬の助動詞「す・さす」と尊敬の補助動詞「給ふ」などを重ねた「せ給ふ」「させ給ふ」の形です。地の文では帝・中宮・上皇など最高の身分の人に使います。
「す」と「さす」の違いは?
意味の違いではなく接続の違いです。四段・ナ変・ラ変の未然形には「す」、それ以外の動詞の未然形には「さす」がつきます。「る・らる」と同じ使い分けです。
「しむ」はどんなときに使われますか?
すべての活用語の未然形につき、漢文訓読の文や漢文調の文章に多く使われます。「〜をして…しむ」は使役の決まった形です。
あわせて読みたい
出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:竹取物語(かぐや姫の生い立ち)、枕草子(「雪のいと高う降りたるを」の段)、戦国策(「虎の威を借る狐」の書き下し文)、古今和歌集(在原業平)、百人一首(6・29・86・90番)。表記は読みやすいように一部改めています
- 高校の古典文法の標準的な説明(「す・さす・しむ」の意味・接続・活用、二重尊敬、「せ」の識別)にもとづいて作成。尊敬の「しむ」の用法、軍記物語の「射させ」などは「〜と説明される」として記しました
- 画像:「The Tale of the Bamboo Cutter - Discovery of Princess Kaguya.jpg」(作者不明、17世紀、メトロポリタン美術館蔵、パブリックドメイン〈PD-Art/PD-old-100-expired〉、Wikimedia Commons)、百人一首の絵札「Hyakuninisshu 086」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



