【百人一首90番】見せばやな雄島のあまの袖だにも|意味・現代語訳・品詞分解(殷富門院大輔)

【百人一首90番】見せばやな雄島のあまの袖だにも|意味・現代語訳・品詞分解(殷富門院大輔)
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この歌の要点
歌
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず
意味
(つれないあなたに)見せたいものです。雄島の漁師の袖でさえ、海水でぬれにぬれても色は変わらないのに、(私の袖は、あなたを思って流す血の涙で、色まで変わってしまいました。)
作者
殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)
出典
『千載和歌集』恋四・884番
決まり字
「みせ」(2字決まり)
百人一首90番 殷富門院大輔の絵札
殷富門院大輔(江戸時代のかるた)

見せばやな 雄島のあまの 袖だにも

濡れにぞ濡れし 色は変はらず

読みみせばやな おじまのあまの そでだにも
ぬれにぞぬれし いろはかわらず

歴史的仮名遣いみせばやな をじまのあまの そでだにも
ぬれにぞぬれし いろはかはらず

あなたに見せたいものです。雄島の漁師の袖でさえ、ぬれにぬれても色は変わらないのに、私の袖は涙で色まで変わってしまいました——48番の作者・源重之の歌をふまえた、殷富門院大輔の歌です。

現代語訳(意味)

(つれないあなたに)見せたいものです。雄島の漁師の袖でさえ、海水でぬれにぬれても色は変わらないのに、(私の袖は、あなたを思って流す血の涙で、色まで変わってしまいました。)

語句の意味

語句読み意味・ポイント
見せばやなみせばやな「見せたいものだなあ」。「ばや」は自分の願望を表す終助詞です。
雄島おじま陸奥の松島(宮城県)にある島。
あまあま漁師。海に入って魚や貝をとる人。
袖だにもそでだにも「袖でさえも」。「だに」は類推の副助詞です。
ぬれにぞぬれしぬれにぞぬれし「ぬれにぬれたが」。同じ言葉を重ねて強めています。
色は変はらずいろはかわらず「色は変わらない(のに)」。言葉の外に「私の袖は血の涙で色が変わった」という意味をふくんでいます。

品詞分解

歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。

単語品詞・活用意味・用法
見せ動詞・サ行下二段「見す」未然形
ばや終助詞自己の願望
な終助詞詠嘆(初句切れ)
雄島名詞
の格助詞
あま名詞
の格助詞
袖名詞
だに副助詞類推
も係助詞
ぬれ動詞・ラ行下二段「ぬる」連用形
に格助詞強調
ぞ係助詞強意
ぬれ動詞・ラ行下二段「ぬる」連用形
し助動詞「き」連体形過去(係り結び)
色名詞
は係助詞
変はら動詞・ラ行四段「変はる」未然形
ず助動詞「ず」終止形打消

表現技法・文法のポイント

本歌取り

48番の作者・源重之の別の歌「松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくはぬれしか」をふまえています。

自己の願望「ばや」

「見せたい」と自分の願いを表す終助詞です。他への願望「なむ」との区別が入試頻出です。

省略

「私の袖は血の涙で色が変わった」という一番言いたいことを、あえて言わずに伝えています。

歌の背景・鑑賞

『千載和歌集』恋四に入っています。48番の作者・源重之が別の歌で「雄島の漁師の袖ほどぬれた」と詠んだのをもとに、「漁師の袖は色までは変わらないが、私の袖は血の涙で色が変わった」と、さらに強い表現にしています。古典では、悲しみが極まると「血の涙」を流すと表現されました。

諸説・伝説――想像をふくらませてみよう

昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。

千首大輔

殷富門院大輔は、とにかくたくさんの歌を詠んだことで知られ、「千首大輔」と呼ばれました。歌合や歌会にも数多く参加し、生涯に詠んだ歌の数は相当なものだったと考えられています。

血の涙のイメージ

「血の涙」は、悲しみのあまり涙が尽きて血が流れるという、中国の詩から来た表現です。漁師の袖さえ色は変わらないのに、私の袖は真っ赤に染まった――と言わずに伝える技法に、作者の腕前が光ります。

作者:殷富門院大輔

平安時代末期の女性歌人です。後白河天皇の皇女・殷富門院(亮子内親王)に仕えたので、この名で呼ばれます。歌をとてもたくさん詠んだことから「千首大輔(せんしゅたいふ)」とも呼ばれました。俊恵法師(85番)の歌林苑にも参加しています。

決まり字と覚え方

百人一首90番の取り札(下の句)
取り札
みせ2字決まり

上の句が「みせ」まで読まれたら、取り札が決まります。「み」で始まる歌は5首あります。

覚え方:「みせ」と聞いたら「ぬれにぞぬれし」。見せ(みせ)たい、ぬれ(ぬれ)た袖、と覚えます。「み」で始まる歌は5首あるので、2字目の「せ」まで聞きます。

入試で問われるポイント

  • 自己の願望「ばや」
  • 本歌取り(48番の作者・源重之の歌)
  • 類推の「だに」
  • 省略と血の涙(古文常識)

よくある質問

「見せばやな」の「ばや」は何ですか?

自分の願望を表す終助詞で、「見せたい」という意味です。

何をふまえた歌ですか?

48番の作者・源重之の別の歌「松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくはぬれしか」をふまえた本歌取りです。

なぜ袖の色が変わるのですか?

悲しみのあまり血の涙を流し、それで袖が赤く染まった、という意味がこめられているからです。

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画像:絵札「Hyakuninisshu 090」(パブリックドメイン)、取り札「Torifuda 090」(Cookai1205・CC0)/いずれも Wikimedia Commons。歌の本文・出典は『千載和歌集』ほか複数の資料で確認しています。
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04