【百人一首85番】夜もすがら物思ふころは明けやらで|意味・現代語訳・品詞分解(俊恵法師)

【百人一首85番】夜もすがら物思ふころは明けやらで|意味・現代語訳・品詞分解(俊恵法師)
Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
この歌の要点
歌
夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
意味
(来てくれない恋人を思って)一晩中もの思いにふけっているこのごろは、夜がなかなか明けきらないので、(夜明けの光が差しこまない)寝室の戸のすき間までもが、つれなく思われることだ。
作者
俊恵法師(しゅんえほうし)
出典
『千載和歌集』恋二・765番
決まり字
「よも」(2字決まり)
百人一首85番 俊恵法師の絵札
俊恵法師(江戸時代のかるた)

夜もすがら 物思ふころは 明けやらで

閨のひまさへ つれなかりけり

読みよもすがら ものおもうころは あけやらで
ねやのひまさえ つれなかりけり

歴史的仮名遣いよもすがら ものおもふころは あけやらで
ねやのひまさへ つれなかりけり

一晩中恋しい人を思い続けるこのごろは、なかなか夜が明けず、寝室の戸のすき間さえ、白んでくれずにつれないことだ——男性の僧が女性の立場で詠んだ、俊恵法師の歌です。

現代語訳(意味)

(来てくれない恋人を思って)一晩中もの思いにふけっているこのごろは、夜がなかなか明けきらないので、(夜明けの光が差しこまない)寝室の戸のすき間までもが、つれなく思われることだ。

語句の意味

語句読み意味・ポイント
夜もすがらよもすがら一晩中。
物思ふころものおもうころ恋の物思いにふけっているこのごろ。
明けやらであけやらで「夜が明けきらないで」。「で」は打消接続です。
閨のひまねやのひま寝室の戸のすき間。
つれなかりけりつれなかりけり「つれないことだ」。すき間までも冷たく感じられるのです。

品詞分解

歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。

単語品詞・活用意味・用法
夜もすがら副詞一晩中
物思ふ動詞・ハ行四段「物思ふ」連体形
ころ名詞
は係助詞
明け動詞・カ行下二段「明く」連用形
やら動詞・ラ行四段「やる」未然形最後まで〜しきる
で接続助詞打消接続
閨名詞
の格助詞
ひま名詞
さへ副助詞添加「〜までも」
つれなかり形容詞・ク活用「つれなし」連用形
けり助動詞「けり」終止形詠嘆

表現技法・文法のポイント

女性の立場で詠む

作者は男性の僧ですが、恋人を待つ女性になりきっています。21番の素性法師と同じ方法です。

擬人法

寝室の戸のすき間を、つれない(冷たい)ものとして人のように描いています。

添加の「さへ」

「すき間までも」と、恋人だけでなく、すき間までつれないと強調しています。

歌の背景・鑑賞

『千載和歌集』恋二に入っています。恋人が来ない夜は長い。早く夜が明けてほしいのに、寝室の戸のすき間から朝の光がなかなか差しこんでこない――。恋人のつれなさを、すき間にまで感じてしまう女性の心を詠んでいます。

諸説・伝説――想像をふくらませてみよう

昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。

歌のサロン「歌林苑」

俊恵は、自分の住まいを「歌林苑」と名づけ、身分や家柄に関係なく歌人を集めて歌会を開きました。殷富門院大輔(90番)など多くの歌人が集まり、新しい歌の流れが生まれました。

鴨長明の先生

『方丈記』を書いた鴨長明は、俊恵に和歌を学びました。長明の書いた『無名抄』には、俊恵の言葉がたくさん記録されています。

作者:俊恵法師

平安時代末期の僧侶・歌人、俊恵法師(しゅんえほうし)です。74番の源俊頼の子、71番の源経信の孫で、三代続けて百人一首に選ばれています。京都の白川にあった自分の住まいを「歌林苑(かりんえん)」と名づけ、多くの歌人を集めて歌会を開きました。『方丈記』の鴨長明は弟子です。

決まり字と覚え方

百人一首85番の取り札(下の句)
取り札
よも2字決まり

上の句が「よも」まで読まれたら、取り札が決まります。「よ」で始まる歌は4首あります。

覚え方:「よも」と聞いたら「ねやのひまさへ」。夜も(よも)すがら閨(ねや)で、と覚えます。「よ」で始まる歌は4首あるので、2字目の「も」まで聞きます。

入試で問われるポイント

  • 女性の立場で詠む
  • 添加の「さへ」
  • 打消接続「で」
  • 鴨長明の師(文学史)

よくある質問

「閨のひま」とは何ですか?

寝室の戸のすき間のことです。

作者は男性なのに、なぜ待つ女性の歌なのですか?

平安時代には、男性が女性の立場になりきって恋の歌を詠むことがよくありました。

俊恵法師はどんな人ですか?

74番源俊頼の子で、歌林苑という歌の会を開いた僧です。『方丈記』の鴨長明の師でもあります。

あわせて読みたい

画像:絵札「Hyakuninisshu 085」(パブリックドメイン)、取り札「Torifuda 085」(Cookai1205・CC0)/いずれも Wikimedia Commons。歌の本文・出典は『千載和歌集』ほか複数の資料で確認しています。
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04