- 歌
- 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 葦のまろやに 秋風ぞ吹く
- 意味
- 夕方になると、家の門の前にある田んぼの稲の葉を、さらさらと音を立てて訪れ、葦でふいた粗末な小屋に、秋風が吹いてくることだ。
- 作者
- 大納言経信(源経信)(だいなごんつねのぶ(みなもとのつねのぶ))
- 出典
- 『金葉和歌集』秋・183番
- 決まり字
- 「ゆふ」(2字決まり)

夕されば 門田の稲葉 おとづれて
葦のまろやに 秋風ぞ吹く
読みゆうされば かどたのいなば おとずれて
あしのまろやに あきかぜぞふく
歴史的仮名遣いゆふされば かどたのいなば おとづれて
あしのまろやに あきかぜぞふく
夕方になると、門前の田の稲の葉をさわさわと鳴らして、葦ぶきの小屋に秋風が吹いてくる——のどかな田園の秋を詠んだ源経信の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 夕されば | ゆうされば | 「夕方になると」。「さる」は「(時が)来る」の意味です。 |
| 門田 | かどた | 家の門の前にある田。 |
| 稲葉 | いなば | 稲の葉。 |
| おとづれて | おとずれて | 「音を立てて訪れて」。風が稲葉を鳴らす様子です。 |
| 葦のまろや | あしのまろや | 葦で屋根をふいた粗末な小屋。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 夕 | 名詞 | |
| され | 動詞・ラ行四段「さる」已然形 | (時が)来る |
| ば | 接続助詞 | 確定条件 |
| 門田 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 稲葉 | 名詞 | |
| おとづれ | 動詞・ラ行下二段「おとづる」連用形 | |
| て | 接続助詞 | |
| 葦 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| まろや | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 秋風 | 名詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意 |
| 吹く | 動詞・カ行四段「吹く」連体形 | 係り結び |
表現技法・文法のポイント
「ぞ」を受けて「吹く」が連体形になっています。
「おとづれて」で、稲の葉を鳴らす風の音が聞こえてくるように描いています。
田園の秋の夕暮れを、目と耳で感じたままに描いています。
歌の背景・鑑賞
『金葉和歌集』秋の部に入っています。詞書によると、源師賢の梅津(京都市右京区)の山荘に人々が集まり、「田家秋風(田舎の家の秋風)」という題で詠んだ歌です。都の貴族が、郊外ののどかな田園風景に心をひかれて詠んだ、さわやかな秋の歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
経信は、白河天皇が大堰川で漢詩・和歌・音楽の三つの舟を浮かべて遊んだとき、遅れてやって来て「どの舟でもいいから乗せてくれ」と言い、どの道にもすぐれていることを示した、という話が伝わっています。55番の藤原公任と並ぶ、万能の文化人だったようです。
経信の子・源俊頼(74番)は『金葉和歌集』を編集し、孫の俊恵法師(85番)も百人一首に選ばれています。三代続けて百人一首に選ばれた、歌の名門なのです。
作者:大納言経信(源経信)
平安時代後期の公卿・歌人、源経信(みなもとのつねのぶ)です。大納言まで昇り、京都の桂に住んだので「桂大納言」とも呼ばれました。和歌・漢詩・音楽のすべてにすぐれ、藤原公任(55番)と同じく「三船の才」とたたえられたと伝えられます。74番の源俊頼は経信の子です。
決まり字と覚え方
上の句が「ゆふ」まで読まれたら、取り札が決まります。「ゆ」で始まる歌は2首あります。
覚え方:「ゆふ」と聞いたら「あしのまろやに」。夕(ゆふ)方の葦(あし)の小屋、と覚えます。46番「ゆら」と2字目で分かれます。
入試で問われるポイント
- 「夕されば」の意味(夕方になると)
- 係り結び(ぞ→吹く)
- 叙景歌
- 74番俊頼との親子関係
よくある質問
「夕されば」とはどういう意味ですか?
「夕方になると」という意味です。「夕方が去ると」ではないので注意しましょう。
「葦のまろや」とは何ですか?
葦で屋根をふいた粗末な小屋のことです。
74番の源俊頼とはどんな関係ですか?
源俊頼は経信の子です。親子で百人一首に選ばれています。
あわせて読みたい
- 74番「憂かりける」(源俊頼朝臣・恋)
- 55番「滝の音は」(大納言公任・雑)
- 46番「由良の門を」(曽禰好忠・恋)
- 47番「八重むぐら」(恵慶法師・秋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
