- 歌
- 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
- 意味
- 私の命よ、絶えてしまうのなら、いっそ絶えてしまえ。このまま生きながらえていたら、胸に秘めた恋心をこらえる力が弱って、(人に知られて)しまうといけないから。
- 作者
- 式子内親王(しょくしないしんのう)
- 出典
- 『新古今和歌集』恋一・1034番
- 決まり字
- 「たま」(2字決まり)

玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする
読みたまのおよ たえなばたえね ながらえば
しのぶることの よわりもぞする
歴史的仮名遣いたまのをよ たえなばたえね ながらへば
しのぶることの よはりもぞする
私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえたら、胸に秘めた恋心を隠す力が弱って、人に知られてしまうから——式子内親王の、激しい忍ぶ恋の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 玉の緒 | たまのお | 命。もとは玉を貫く糸のことで、魂と体をつなぐものと考えられました。 |
| 絶えなば絶えね | たえなばたえね | 「絶えるなら絶えてしまえ」。「な」は完了「ぬ」の未然形、「ね」は完了「ぬ」の命令形です。 |
| ながらへば | ながらえば | 「生きながらえたならば」。 |
| 忍ぶること | しのぶること | 恋心を人に知られないよう、じっとこらえること。 |
| 弱りもぞする | よわりもぞする | 「弱ってしまうといけない」。「もぞ」は心配・危惧を表します。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 玉の緒 | 名詞 | 呼びかけ |
| よ | 間投助詞 | 呼びかけ |
| 絶え | 動詞・ヤ行下二段「絶ゆ」連用形 | |
| な | 助動詞「ぬ」未然形 | 完了 |
| ば | 接続助詞 | 仮定条件 |
| 絶え | 動詞・ヤ行下二段「絶ゆ」連用形 | |
| ね | 助動詞「ぬ」命令形 | 完了(二句切れ) |
| ながらへ | 動詞・ハ行下二段「ながらふ」未然形 | |
| ば | 接続助詞 | 仮定条件 |
| 忍ぶる | 動詞・バ行上二段「忍ぶ」連体形 | |
| こと | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 主格 |
| 弱り | 動詞・ラ行四段「弱る」連用形(名詞的) | |
| も | 係助詞 | |
| ぞ | 係助詞 | 強意(危惧) |
| する | 動詞・サ変「す」連体形 | 係り結び |
表現技法・文法のポイント
自分の命(玉の緒)に「絶えてしまえ」と呼びかける、激しい表現です。
「玉の緒」「絶え」「ながらへ」「弱り」は、糸(緒)に関係する言葉でつながっています。
「〜したら大変だ」という心配を表す形。72番の「もこそ〜已然形」と同じ意味です。
歌の背景・鑑賞
『新古今和歌集』恋一に入っています。「忍ぶ恋(人に知られないように隠す恋)」という題で詠まれた歌です。恋心を隠し続けるくらいなら、いっそ死んでしまいたい――という、百人一首の中でも特に激しい情熱の歌です。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
式子内親王は、百人一首を選んだ藤原定家(97番)と恋をしていたという伝説があります。能の『定家』では、定家の恋心がつる草(定家葛)となって、式子内親王の墓にからみついたと語られます。この歌の「忍ぶ恋」の相手は定家だったのでは、と想像する人もいます。
式子内親王は若いころ、賀茂神社に仕える斎院を務めていました。斎院は恋をすることが許されない身分でした。そうした人生を知ると、「忍ぶる恋」という言葉がいっそう重く感じられます。
作者:式子内親王
平安時代末期から鎌倉時代初期の女性歌人で、後白河天皇の皇女です。若いころ、京都の賀茂神社に仕える斎院を約10年務め、のちに出家しました。藤原俊成(83番)に和歌を学び、『新古今和歌集』を代表する女性歌人の一人です。
決まり字と覚え方
上の句が「たま」まで読まれたら、取り札が決まります。「た」で始まる歌は6首あります。
覚え方:「たま」と聞いたら「しのぶることの」。魂(たま)が忍ぶ(しのぶ)、と覚えます。「た」で始まる歌は6首あるので、2字目の「ま」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 完了「ぬ」の未然形・命令形(なば・ね)
- 「もぞ〜連体形」(危惧)
- 「玉の緒」=命
- 縁語
よくある質問
「玉の緒」とは何のことですか?
命のことです。もとは玉を貫く糸のことで、魂と体をつなぐものと考えられていました。
「絶えなば絶えね」の文法は?
「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ね」は同じく「ぬ」の命令形です。「絶えるなら絶えてしまえ」という意味です。
式子内親王はどんな人ですか?
後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた歌人です。藤原俊成に和歌を学びました。
あわせて読みたい
- 83番「世の中よ」(皇太后宮大夫俊成・雑)
- 97番「来ぬ人を」(権中納言定家・恋)
- 40番「しのぶれど」(平兼盛・恋)
- 72番「音に聞く」(祐子内親王家紀伊・恋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
