- 歌
- 百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
- 意味
- 宮中の古びた軒端に生えているしのぶ草を見るにつけても、(朝廷が栄えていた)昔のことが、いくらしのんでも、しのびきれないほど恋しく思われることだ。
- 作者
- 順徳院(じゅんとくいん)
- 出典
- 『続後撰和歌集』雑下・1202番
- 決まり字
- 「もも」(2字決まり)

百敷や 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
読みももしきや ふるきのきばの しのぶにも
なおあまりある むかしなりけり
歴史的仮名遣いももしきや ふるきのきばの しのぶにも
なほあまりある むかしなりけり
宮中の古い軒端に生えるしのぶ草を見るにつけても、しのんでもしのびきれないほど、昔の栄えた御代が恋しい——百人一首を締めくくる、順徳院の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 百敷 | ももしき | 宮中、皇居のこと。 |
| 軒端 | のきば | 軒の先、軒のあたり。 |
| しのぶ | しのぶ | 古い家の軒などに生える「しのぶ草(忍草)」と、昔を「偲ぶ(懐かしく思う)」の掛詞です。 |
| なほあまりある | なおあまりある | 「それでもなお、しのびきれないほどの」。 |
| 昔なりけり | むかしなりけり | 「昔であることだなあ」。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 百敷 | 名詞 | 宮中 |
| や | 間投助詞 | 詠嘆 |
| 古き | 形容詞・ク活用「古し」連体形 | |
| 軒端 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| しのぶ | 名詞「忍草」/動詞「偲ぶ」 | 掛詞 |
| に | 格助詞 | |
| も | 係助詞 | |
| なほ | 副詞 | |
| あまり | 動詞・ラ行四段「あまる」連用形 | |
| ある | 動詞・ラ変「あり」連体形 | |
| 昔 | 名詞 | |
| なり | 助動詞「なり」連用形 | 断定 |
| けり | 助動詞「けり」終止形 | 詠嘆 |
表現技法・文法のポイント
「しのぶ」に「忍草」と「偲ぶ」を掛けています。
荒れた宮中の軒に生える草で、朝廷の力が衰えたことを象徴しています。
1番が天皇の歌で始まり、100番も天皇の歌で終わります。
歌の背景・鑑賞
『続後撰和歌集』雑下に入っています。順徳天皇が20歳のころの作です。鎌倉幕府に力を奪われ、荒れていく宮中の様子に、朝廷が栄えていた昔をしのんでいます。この5年後、父・後鳥羽院とともに承久の乱を起こして敗れ、佐渡に流されました。百人一首は、この歌で幕を閉じます。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
順徳院は、承久の乱に敗れて佐渡に流され、20年あまりをその地で過ごしました。都に帰る望みがかなわないと知ると、食事を断って亡くなったとも伝えられます。
百人一首は、1番天智天皇・2番持統天皇という父と娘で始まり、99番後鳥羽院・100番順徳院という父と子で終わります。最初も最後も、天皇の親子なのです。定家がそうなるように選んだのかどうかはわかりませんが、美しい形になっています。
順徳院と後鳥羽院の歌は、承久の乱のあと幕府をはばかって、もとは入っていなかったのではないか、という説もあります。のちに定家の子・為家が加えたとも考えられています。百人一首の成り立ちにも、まだ謎が残っているのです。
作者:順徳院
第84代の天皇・順徳天皇です。99番の後鳥羽院の子で、14歳で即位しました。父とともに和歌や朝廷のしきたりの研究に打ちこみ、歌論書『八雲御抄(やくもみしょう)』や、宮中の作法を記した『禁秘抄(きんぴしょう)』を書きました。承久の乱に敗れて佐渡(新潟県)に流され、20年あまりをその地で過ごして亡くなりました。
決まり字と覚え方
上の句が「もも」まで読まれたら、取り札が決まります。「も」で始まる歌は2首あります。
覚え方:「もも」と聞いたら「なほあまりある」。百(もも)の思い出はなほ余りある、と覚えます。66番「もろ」と2字目で分かれます。100番目の歌は「百(もも)」しきで始まる、と覚えるのもおすすめです。
入試で問われるポイント
- 掛詞(しのぶ=忍草/偲ぶ)
- 「百敷」=宮中
- 承久の乱(日本史)
- 99番後鳥羽院との親子関係
よくある質問
「百敷」とはどういう意味ですか?
宮中、皇居のことです。
「しのぶ」の掛詞とは?
古い軒に生える「忍草(しのぶぐさ)」と、昔を懐かしむ「偲ぶ」を掛けています。
百人一首の最後の歌はなぜ順徳院なのですか?
百人一首はおおむね時代順に並んでいて、最も新しい時代の歌人の一人が順徳院だからです。父の後鳥羽院(99番)と親子で締めくくられています。
あわせて読みたい
- 99番「人もをし」(後鳥羽院・雑)
- 1番「秋の田の」(天智天皇・秋)
- 2番「春過ぎて」(持統天皇・夏)
- 66番「もろともに」(前大僧正行尊・雑)
- 97番「来ぬ人を」(権中納言定家・恋)
大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
