- 歌
- 人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は
- 意味
- 人がいとおしく思われ、また人が恨めしくも思われる。この世の中をおもしろくないと思うために、あれこれと思い悩んでいる私にとっては。
- 作者
- 後鳥羽院(ごとばいん)
- 出典
- 『続後撰和歌集』雑中・1199番
- 決まり字
- 「ひとも」(3字決まり)

人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに もの思ふ身は
読みひともおし ひともうらめし あじきなく
よをおもうゆえに ものおもうみは
歴史的仮名遣いひともをし ひともうらめし あぢきなく
よをおもふゆゑに ものおもふみは
人をいとおしく思い、人を恨めしくも思う。この世をつまらなく思うがゆえに、あれこれと思い悩む私は——承久の乱で隠岐に流された後鳥羽院の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 人もをし | ひともおし | 「人がいとおしい」。「をし」は「いとおしい」の意味です。 |
| 人も恨めし | ひともうらめし | 「人が恨めしい」。 |
| あぢきなく | あじきなく | 「つまらなく、おもしろくなく」。 |
| 世を思ふゆゑに | よをおもうゆえに | 「世の中のことを思うために」。 |
| もの思ふ身は | ものおもうみは | 「思い悩む私は」。倒置で、上の句につながります。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| 人 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| をし | 形容詞・シク活用「愛し」終止形 | いとおしい |
| 人 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| 恨めし | 形容詞・シク活用「恨めし」終止形 | |
| あぢきなく | 形容詞・ク活用「あぢきなし」連用形 | |
| 世 | 名詞 | |
| を | 格助詞 | |
| 思ふ | 動詞・ハ行四段「思ふ」連体形 | |
| ゆゑ | 名詞 | 原因 |
| に | 格助詞 | |
| もの思ふ | 動詞・ハ行四段「もの思ふ」連体形 | |
| 身 | 名詞 | |
| は | 係助詞 |
表現技法・文法のポイント
「人もをし」「人も恨めし」と、反対の気持ちを並べて、揺れ動く心を表しています。
「もの思ふ身は」が最後に置かれ、上の句につながる形になっています。
「人も恨めし」で切れます。
歌の背景・鑑賞
『続後撰和歌集』雑中に入っています。後鳥羽院が33歳のころの作です。鎌倉幕府との関係が悪化していくなかで、人を愛しく思ったり恨めしく思ったりする、天皇としての苦悩が込められているといわれます。この9年後、承久の乱が起こります。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
後鳥羽院は、和歌だけでなく武芸にもすぐれ、自ら刀を作ったと伝えられます。院が作った刀には菊の紋が刻まれ、「菊御作(きくごさく)」と呼ばれました。皇室の菊の紋は、後鳥羽院が好んだことから始まったともいわれます。
隠岐に流されたあとも、後鳥羽院は『新古今和歌集』に手を入れ続け、「隠岐本」と呼ばれる形を作りました。都を遠く離れても、歌への情熱は消えなかったのです。
作者:後鳥羽院
第82代の天皇・後鳥羽天皇です。わずか4歳で即位し、退位後は上皇として院政を行いました。和歌を深く愛し、自ら『新古今和歌集』の編集を命じて、その中心となりました。1221年、鎌倉幕府を倒そうとした承久の乱に敗れ、隠岐(島根県)に流され、その地で亡くなりました。100番の順徳院は子です。
決まり字と覚え方
上の句が「ひとも」まで読まれたら、取り札が決まります。「ひ」で始まる歌は3首あります。
覚え方:「ひとも」と聞いたら「よをおもふゆゑに」。人も(ひとも)世を思ふ(よをおもふ)、と覚えます。「ひと」で始まる歌は4首あるので、3字目の「も」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 対句(をし/恨めし)
- 古語「をし」(いとおしい)・「あぢきなし」
- 承久の乱(日本史)
- 『新古今和歌集』を命じた天皇
よくある質問
「人もをし」の「をし」とはどういう意味ですか?
「いとおしい」という意味です。「惜しい」とは別の言葉なので注意しましょう。
後鳥羽院はどんな天皇ですか?
『新古今和歌集』の編集を命じた天皇です。承久の乱で鎌倉幕府に敗れ、隠岐に流されました。
100番の順徳院とはどんな関係ですか?
順徳院は後鳥羽院の子です。百人一首は、親子の天皇の歌で終わります。
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