古文「し」の識別|過去「き」・サ変「す」・強意の副助詞・形容詞の見分け方と練習問題【大学受験】

古文「し」の識別|過去「き」・サ変「す」・強意の副助詞・形容詞の見分け方と練習問題【大学受験】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

古文の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形・サ変動詞「す」の連用形・強意の副助詞・形容詞の語尾などがあります。すぐ上が連用形なら過去(サ変・カ変は未然形も)、「する」と訳せればサ変、取っても意味が通れば強意と見分けます。

このページのポイント

  • 「し」は5種類:過去「き」の連体形/サ変「す」の連用形/強意の副助詞/形容詞の語尾/動詞・副詞の一部
  • 上が活用語の連用形なら過去の「し」(〜た)。下は体言か係り結びの結び
  • 「する」と訳せるならサ変「す」の連用形(して・しけり)
  • 取っても意味が通るなら強意の副助詞(名にし負はば・し〜ば・しも)
  • 例外:「せし」「こし」は未然形+過去の「し」。「しき」の「し」はサ変の連用形

はじめて(やさしく)

古文には「し」という1文字がたくさん出てきます。ところが、この「し」は、いつも同じことばではありません。「〜た」という過去の意味のこともあれば、「する」という動詞のこともあり、ただ言葉を強めているだけで訳さなくてよいこともあります。同じ形でちがう正体のものを見分けることを「識別」といいます。

同じ名字の人を顔や学年で区別するように、古文の「し」もまわりの形を見れば正体がわかります。

古文の「し」は、おもに5種類見し・ありし活用語の連用形+し過去「き」の連体形〜た(〜した)して・しけり「する」と訳せるサ変動詞「す」の連用形〜して・〜した名にし負はば取っても意味が通る強意の副助詞「し」訳さなくてよいなし・恋し様子を表す語の終わり形容詞の終止形の語尾〜い過ぐし・しばし1語の中の一字動詞の語尾・副詞の一部切り離せない入試でねらわれるのは上の3つ過去「き」・サ変「す」・強意の「し」
古文の「し」の正体は、おもに5種類。入試で問われるのは、過去「き」・サ変「す」・強意の「し」の3つ
うかるくん

うかるくん

「し」なんて1文字だから、どれも同じに見えるよ……。

合格先生

合格先生

見分けのコツは2つだけだ。1つはすぐ上の形。上が「見」「あり」「いひ」のような連用形なら、過去の助動詞「き」の連体形「し」だ。

サクラちゃん

サクラちゃん

もう1つは?

合格先生

合格先生

取ってみることだよ。「名にし負はば」から「し」を取っても「名に負はば」で意味が通る。こういう「し」は言葉を強めるだけの強意の副助詞なんだ。

「し」を取ってみよう名にし負はば(25番)「し」を取る名に負はば○ 意味が通る強意の副助詞出でし月かも(7番)「し」を取る出で月かも× 通らない過去「き」の連体形
「し」を取って意味が通れば強意の副助詞。通らなければ過去「き」など、ほかの語

上の図の右の「出でし月」は、百人一首7番「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」の一部です。「出で」は下二段動詞「出づ」の連用形なので、「し」は過去で「出た月」。取ってしまうと「出で月」になり、意味が通りません。

百人一首25番 三条右大臣(藤原定方)の絵札(名にし負はば 強意の副助詞 し の識別)
百人一首25番・三条右大臣の絵札。「名にし負はば逢坂山のさねかづら」の「し」は、取っても意味が通る強意の副助詞です。画像:絵札「Hyakuninisshu 025」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

3つめによく出るのが、サ変動詞「す」(する)の連用形「し」です。「物語などして」は「おしゃべりなどして」。現代語でも「して」と言うので、「する」と訳せたらサ変と考えます。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

「し」を見たら、①上が連用形なら過去、②「する」と訳せたらサ変、③取っても通れば強意。この3つの順で確かめよう!

わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈古典文法のお勉強〉で質問できます。

ここまでのまとめ

  • 古文の「し」は、過去「き」の連体形・サ変「す」の連用形・強意の副助詞・形容詞の語尾・動詞や副詞の一部の5種類
  • 上が連用形 → 過去の「し」(〜た)
  • 「する」と訳せる → サ変「す」の連用形
  • 取っても意味が通る → 強意の副助詞

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

「し」の識別一覧(正体・品詞・すぐ上の形・訳・例)

正体品詞・活用形すぐ上の形訳例
過去「き」助動詞・連体形連用形(カ変・サ変は未然形も)〜た出でし月(7番)・見しかな(59番)
サ変「す」動詞・連用形体言・助詞・副詞など(下に て・けり・き・つ・たり)〜し(する)女もしてみむ(土佐日記)
強意の「し」副助詞体言・助詞・連用形など(活用しない語が多い)訳さない名にし負はば(25番)・まつとし聞かば(16番)
形容詞の語尾形容詞・終止形の一部語幹(1語の中)〜い知る人もなし(66番)・人も恨めし(99番)
動詞の語尾サ行四段などの連用形の一部語幹(1語の中)―過ぐしてよ(19番)・おはしけれ(徒然草)
助動詞・副詞の一部べし・まし・らし・ごとし/しばし・しか――をとめの姿しばしとどめむ(12番)

入試で問われる中心は上の3つです。下の3つは1語の一部なので、識別はまず単語に正しく区切ることから始まります。区切り方は品詞のページ、活用形の見分けは活用形のページで確かめましょう。

「し」の識別の手順

  1. 1語の中の「し」かを見る。「なし」「恋し」(形容詞)、「過ぐし」「おはし」(動詞)、「べし」「まし」(助動詞)、「しばし」(副詞)なら、その語の一部。
  2. すぐ上が活用語の連用形か見る → 過去の助動詞「き」の連体形。下には体言(「見し世」)や助詞が続くか、「ぞ・なむ・や・か」の結びで文が終わる。
  3. 「する」と訳せるか見る → サ変動詞「す」の連用形。下に「て・けり・き・つ・たり・給ふ」などが続く。
  4. 取っても意味が通るか見る → 強意の副助詞。「し〜ば」「しも」の形が多い。
「し」のまわりを、順に確かめる①1語の中の「し」か語の一部②上が活用語の連用形過去「き」③「する」と訳せるサ変「す」④取っても意味が通る強意の副助詞カ変・サ変は未然形にもつく(こし・せし)過去の「し」の下は、体言か係り結びの結び
「し」の識別は①〜④の順に。カ変・サ変は未然形の下にも過去の「し」がつく

過去の「し」は連用形の下

過去の助動詞「き」は「せ・○・き・し・しか・○」と活用し、連用形に接続します。連体形「し」は、下に体言が来る(「見し世」「ありし日」)か、係助詞「ぞ・なむ・や・か」の結びになって文を終えることが多い形です(係り結び)。上の語は動詞だけでなく、完了「ぬ・つ」の連用形「に・て」、打消「ず」の連用形「ざり」など、助動詞の連用形のこともあります。

過去の「し」のすぐ上は連用形形すぐ上の語百人一首見し上一段「見る」の連用形59・84番いひし四段「いふ」の連用形21番ありしラ変「あり」の連用形にし完了「ぬ」の連用形14・57番てし完了「つ」の連用形38番ざりし打消「ず」の連用形50番せしサ変「す」の未然形9番こしカ変「来」の未然形赤はカ変・サ変だけの例外(未然形+し)
過去の「し」のすぐ上は連用形。サ変・カ変だけは未然形「せ」「こ」にもつく

やすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月を見しかな

(百人一首59番・赤染衛門(やすらはで))

現代語訳(あなたが来ないとわかっていたら)ためらわずに寝てしまったでしょうに。(来るのを待って)夜がふけて、西にかたむくまでの月を見てしまいましたよ。

ここがポイント「見しかな」の「し」は、上一段「見る」の連用形「見」の下なので過去「き」の連体形。上の句の「寝なまし」の「し」は、反実仮想の助動詞「まし」の一部で、識別の対象ではありません。

サ変「す」の連用形「し」

サ変動詞「す」は「せ・し・す・する・すれ・せよ」と活用します。連用形「し」は、下に接続助詞「て」や助動詞「けり・き・つ・たり」が続く形でよく出ます。上には「物語」「恋」などの体言や、「など」「も」などの助詞が来ることが多く、「する」と訳して意味が通るのが目印です。「おはし」「ものし」のような複合動詞の「し」は、1語の一部として扱います。

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。

(土佐日記・冒頭)

現代語訳男も書くという日記というものを、女(の私)も書いてみようと思って書くのである。

ここがポイント「女もして」の「し」は、係助詞「も」の下にあり、下に接続助詞「て」が続きます。「女もして」は「女も(日記を)書いて」と「する」の意味で訳せるので、サ変「す」の連用形。「すなる」「するなり」の「す」「する」もサ変です。

強意の副助詞「し」

強意の副助詞「し」は、上の語を強めるだけなので、取り除いても文の意味が変わりません。体言・助詞・連用形などにつき、「〜し〜ば」(条件の「ば」と組になる)、「しも」(係助詞「も」と重なる)の形で特によく出ます。訳すときは何も足さなくてかまいません。

名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと

(伊勢物語・第九段(東下り))

現代語訳(都という)名を持っているのなら、さあたずねよう、都鳥よ。私の恋しく思う人は無事でいるかいないかと。

ここがポイント「名に負はば」と「し」を取っても意味が通るので、強意の副助詞。上は格助詞「に」で、活用語ではないので過去の「し」にはなりません。下の「負はば」は未然形+ば(順接の仮定条件)で、「し〜ば」の典型的な形です。なお歌の最後の「なし」の「し」は、形容詞「なし」の終止形の語尾です。

形容詞の終止形の語尾「し」

「なし」「高し」(ク活用)や「恋し」「をし(惜し)」「恨めし」(シク活用)の「し」は、形容詞の終止形の一部です。「いと」をつけて「いと恋し」と言える様子の語なら形容詞と考えます。99番「人もをし人も恨めし」の「をし」「恨めし」も、シク活用の形容詞の終止形です。上の「を」「恨め」は語幹で、連用形ではないので過去の「し」にはなりません。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 1つの文に「し」が2つ以上:84番を分解する

入試の定番は、同じ文の中に正体のちがう「し」を並べて問う形です。百人一首84番の下の句には、「し」が3つも入っています。

1つの句に「し」が3つ(84番)憂しと見し世ぞ今は恋しき憂し形容詞「憂し」の終止形ク活用(憂く・憂し・憂き)見し「見る」の連用形+過去「き」「し」は連体形で、下の「世」へ恋しき形容詞「恋し」の連体形シク活用。「ぞ」の結び助動詞の「し」は「見し」の1つだけ
「憂し」「恋しき」は形容詞の一部、「見し」の「し」だけが過去の助動詞

ながらへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき

(百人一首84番・藤原清輔朝臣(ながらへば))

現代語訳この先生きながらえたら、つらい今のこのごろもまた、なつかしく思い出されるのだろうか。つらいと思っていた昔が、今では恋しく思われるのだから。

ここがポイント「憂しと」の「し」は形容詞「憂し」の終止形の語尾(引用の「と」の上なので終止形)。「見し」の「し」は、上一段「見る」の連用形の下なので過去「き」の連体形で、下の体言「世」にかかります。「恋しき」は形容詞「恋し」の連体形で、係助詞「ぞ」の結び。初句の「しのばれむ」の「し」は動詞「しのぶ」の一部です。
百人一首84番 藤原清輔朝臣の絵札(憂しと見し世 しの識別 過去の助動詞き 形容詞)
百人一首84番・藤原清輔朝臣の絵札。「憂しと見し世ぞ今は恋しき」の3つの「し」のうち、助動詞は「見し」の「し」だけです。画像:絵札「Hyakuninisshu 084」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

2. 「しき」「せし」:サ変と過去「き」が重なる形

サ変動詞に過去の「き」がつくときは、特別な形になります。終止形「き」はサ変の連用形「し」について「しき」、連体形「し」と已然形「しか」はサ変の未然形「せ」について「せし」「せしか」となります。「しし」「ししか」とは言いません。つまり、「しき」の「し」はサ変、「せし」の「し」は過去です。カ変「来」も「こし・こしか」(未然形)、「きし・きしか」(連用形)の形をとります(変格活用・助動詞「き・けり」)。

サ変「す」+過去「き」の形しき「し」サ変の連用形「き」過去「き」の終止形せし「せ」サ変の未然形「し」過去「き」の連体形×「しし」「ししか」とは言わない(ながめせしまに=百人一首9番)
「しき」の「し」はサ変の連用形、「せし」の「し」は過去「き」の連体形

花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

(百人一首9番・小野小町(花の色は))

現代語訳桜の花の色は、むなしくあせてしまったなあ。長雨が降り、私がもの思いにふけっていた間に。(私の美しさも同じように衰えてしまった。)

ここがポイント「ながめせし」の「せ」はサ変「す」の未然形、「し」は過去「き」の連体形で、下の体言「間(ま)」にかかります。「連用形の下」というきまりの例外で、入試でとてもよくねらわれます。「せ」の正体は「せ」の識別でくわしく扱います。

3. 動詞の語尾の「し」:「過ぐし」は「過ぐ+し」ではない

上の語を正しく区切れないと、動詞の一部を過去の「し」とまちがえます。「おはし」(サ変「おはす」)、「申し」(四段「申す」)、「出だし」(四段「出だす」)の「し」は、どれも動詞の語尾です。下の19番は、その典型です(「てよ」は完了「つ」の命令形)。

難波潟短き葦のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや

(百人一首19番・伊勢(難波潟))

現代語訳難波潟に生える短い葦の、節と節の間のようなほんのわずかな間も逢わないで、この世を過ごしてしまえとおっしゃるのですか。

ここがポイント「過ぐし」は四段「過ぐす」の連用形で、「し」は動詞の語尾。上二段「過ぐ」+過去「き」なら「過ぎし」になるので、形から区別できます。「逢はで」の「で」は打消の接続助詞(〜ないで)です。

4. 強意の「し」と、まぎらわしい「し」

  • 「〜てし」「〜にし」:「誓ひてし」(38番)、「乱れそめにし」(14番)、「雲隠れにし」(57番)の「し」は、完了「つ・ぬ」の連用形「て・に」の下なので過去。取ると意味が変わります。一方、44番「絶えてしなくは」の「絶えて」は副詞(下の「なく」と呼応して「まったく〜ない」)で、「し」は強意。「絶えてなくは」と取っても通じます。上が助動詞(つ・ぬ)の連用形か、副詞などの1語かが分かれ目です。
  • 「しか」:過去「き」の已然形(「思ひそめしか」41番、「こそ」の結び)、副詞「しか」(そのように。「しかぞ住む」8番)、願望の終助詞「てしか・にしか」があり、別に識別します。
サクラちゃん

サクラちゃん

「絶えてし」と「誓ひてし」、同じ「てし」なのに正体がちがうの!?

合格先生

合格先生

そう。「誓ひてし人」は「誓った人」で、「て」は完了「つ」の連用形、「し」は過去。「絶えてしなくは」の「絶えて」は「まったく」という副詞で、「まったくないならば」。「し」を取っても通る。「し」の下が体言か、仮定の「ば・は」かも手がかりになるよ。

5. 学説の違いと、識別の限界

強意の「し」は、副助詞とする本が多い一方、間投助詞とする説明もあります。入試では「強意の副助詞」と答えれば十分です。「し」の識別は、単語の区切りと上の語の活用形を正しく決めることがすべての出発点です。助動詞全体の接続のきまりは助動詞の接続、識別のまとめは記事「古文の助動詞一覧(識別の節)」でも確かめられます。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

わかった! 連用形+し+体言なら過去、「する」ならサ変、取っても通るなら強意。せし・こしは例外で、過去の「し」が未然形の下に来るんだね!

よくあるまちがい

まちがい1:「し」を見るとすぐ過去と答える

過去の「し」は活用語の連用形の下だけです。上が体言や助詞なら、強意の副助詞かサ変を考えます。形容詞の「なし」「恋し」のように1語の一部のこともあります。

まちがい2:「せし」の「し」を、未然形の下だから過去ではないと考える

サ変・カ変だけは、過去の「し」「しか」が未然形(せ・こ)にもつきます。「ながめせし」(9番)の「し」は過去です。

まちがい3:「過ぐし」を「過ぐ+過去のし」と区切る

上二段「過ぐ」の連用形は「過ぎ」です。「過ぐし」は四段動詞「過ぐす」の連用形で、「し」は動詞の語尾です。上の語の活用表を思い出して確かめましょう。

まちがい4:「てし」をいつも完了+過去と答える

「絶えてしなくは」の「絶えて」は副詞(まったく)で、「し」は強意。「し」を取って意味が通るか、下が体言か仮定の「ば・は」かで確かめます。

練習問題

やさしい

  1. 次の「し」は、過去の助動詞・サ変動詞・強意の副助詞のどれか答えなさい。
    ① 昨日見し人(自作) ② 物語などして遊ぶ(自作) ③ 花し咲かば(自作)
    答えと解説を見る

    ① 上一段「見る」の連用形の下なので過去「き」の連体形(昨日見た人)。② 「おしゃべりなどして」と「する」の意味なのでサ変「す」の連用形。③ 「花咲かば」と取っても通るので強意の副助詞。

  2. 「知る人もなし」(百人一首66番)の「し」の正体を答えなさい。
    答えと解説を見る

    形容詞「なし」(ク活用)の終止形の語尾。「なし」で1語なので、「し」だけを取り出して助動詞とは考えません(66番「もろともに」)。

ふつう

  1. 次の文の「し」をすべて文法的に説明しなさい(自作)。
    「ありし日に恋しと思ひし人を、今日しも見つ。」
    答えと解説を見る

    「ありし」:ラ変「あり」の連用形の下で、体言「日」に続くので過去「き」の連体形。「恋しと」:シク活用の形容詞「恋し」の終止形の一部。「思ひし」:四段「思ふ」の連用形の下で体言「人」に続くので過去「き」の連体形。「今日しも」:体言の下で、取っても意味が通るので強意の副助詞(「しも」でちょうど今日)。訳「以前の日に恋しいと思った人を、ちょうど今日見た」。

  2. 「ながめせしまに」(百人一首9番)の「せ」と「し」をそれぞれ文法的に説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「せ」はサ変動詞「す」の未然形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形。過去「き」の連体形・已然形は、サ変には未然形「せ」につく(せし・せしか)。訳「もの思いにふけっていた間に」。

むずかしい

  1. 次の①②の「し」の違いを説明しなさい。
    ① 忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな(百人一首38番)
    ② 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし(百人一首44番)
    答えと解説を見る

    ① 「誓ひて」の「て」は完了「つ」の連用形で、「し」はその下の過去「き」の連体形。下の体言「人」にかかり、「誓った人」。② 「絶えて」は「まったく」という副詞(下の「なく」と呼応)で、「し」は強意の副助詞。「絶えてなくは」と取っても通じ、下に仮定の「は」(〜ないならば)がある。同じ「てし」でも、上の「て」が助動詞か助詞かで「し」の正体が決まる(38番・44番)。

  2. 「この世を過ぐしてよとや」(百人一首19番)の「し」を、過去の助動詞と答えるのがまちがいである理由を説明しなさい。
    答えと解説を見る

    過去「き」は連用形に接続するが、「過ぐ」は上二段活用で連用形は「過ぎ」なので、「過ぐ+し」では接続が合わない。「過ぐし」はサ行四段動詞「過ぐす」(過ごす)の連用形で、「し」は動詞の語尾。下の「てよ」は完了「つ」の命令形で、「過ごしてしまえ」と訳す。

関連ページ

助動詞の識別の全体は、記事「古文の助動詞一覧」でも読めます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

古文の「し」は何種類ありますか?

主に5種類です。過去の助動詞「き」の連体形、サ変動詞「す」の連用形、強意の副助詞「し」、形容詞の終止形の語尾(なし・恋し)、動詞や副詞の一部(過ぐし・しばし)です。入試では前の3つの識別がよく問われます。

過去の助動詞「き」の「し」の見分け方は?

すぐ上が活用語の連用形かどうかで見分けます。「見し」「ありし」「にし」「てし」などです。下には体言が来るか、「ぞ・なむ・や・か」の結びになります。サ変・カ変だけは未然形にもつき「せし」「こし」となります。

強意の副助詞「し」はどう見分けますか?

取り除いても意味が通るのが目印です。「名にし負はば」は「名に負はば」としても意味が変わりません。「し〜ば」「しも」の形が多く、訳すときは何も足さなくてかまいません。

「せし」と「しき」の違いは?

どちらもサ変動詞「す」に過去の「き」がついた形です。「しき」はサ変の連用形「し」+過去の終止形「き」、「せし」はサ変の未然形「せ」+過去の連体形「し」です。「しし」とは言いません。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:伊勢物語(第九段)、土佐日記(冒頭)、百人一首(7・9・19・59・84・99番。ほかに8・12・14・16・21・25・38・41・44・50・57・66番に言及)。表記は読みやすいように一部改めています
  • 高校の古典文法の標準的な説明(過去の助動詞「き」の接続と活用、サ変動詞の活用、強意の副助詞「し」、形容詞の活用)にもとづいて作成。強意の「し」を間投助詞とする説明など、説が分かれる所は本文に記しました
  • 画像:百人一首の絵札(25番・84番、パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦