古文文法辞典 › 和歌・古文常識
大学受験
ひとことで言うと
序詞は、ある語を導くために前に置く作者が自由に作った前置き(2句以上が多い)。比喩・掛詞・同音のどれかで後ろへつながり、枕詞とちがって訳す(〜のように/〜ではないが)。
このページのポイント
- 序詞=景色の前置きで、後ろの心を導く
- 枕詞との違い:長さ自由・その歌だけ・訳す
- 3つの型:比喩型(〜のように)・掛詞型・同音型(〜ではないが)
- 範囲は導かれる語のすぐ前まで。歌の途中から始まる序詞もある(92・97・51番)
はじめて(やさしく)
和歌の序詞(序詞)は、本当に言いたいことの前に置く前置きのことばです。まず目に見える景色や物を描いて、そこから「〜のように」と心の話へつなげます。
今のことばでいえば、「ジェットコースターのように、気持ちが上がったり下がったりした」という言い方に近いものです。「ジェットコースターのように」の部分が前置きで、言いたいのは「気持ちが上がったり下がったり」のほうですね。
うかるくん
前置きって、和歌のどこにあるんですか?
合格先生
百人一首77番を見てごらん。「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」が前置き。流れの速い川が岩にぶつかって二つに分かれ、また一つになる景色だ。
サクラちゃん
それで後ろが「われても末に逢はむとぞ思ふ」……。川みたいに、今は別れても、いつかまた会おうってこと?
合格先生
そのとおり。前の景色(序詞)が、後ろの心をわかりやすく見せているんだ。

序詞とよく比べられるのが枕詞(まくらことば)です。どちらも「次のことばを導く」働きですが、ちがいははっきりしています。
ここだけは覚えよう
- 序詞は長さが自由(2〜3句、7音以上が多い)。枕詞はほぼ5音
- 序詞は作者がその歌のために作る。枕詞は「あしびきの→山」のように組み合わせが決まっている
- 序詞は訳す(「〜のように」「〜ではないが」)。枕詞は訳さない
百人一首3番「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」では、「あしびきの」が「山」にかかる枕詞で、「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」全体が「ながながし」を導く序詞です。山鳥の長く垂れた尾のように長い夜、というわけです。短い枕詞が、長い序詞の中に入っている形です。

うかるくん
序詞は「景色の前置き」、枕詞は「決まった5音のかざり」。長い・自由・訳すのが序詞!
序詞は、和歌の修辞をまとめた記事「和歌の修辞」でも紹介しています。この辞典のページでは、3つの型・範囲の見つけ方・百人一首の序詞の一覧まで、もう一歩くわしく見ていきます。
しっかり(大学受験の基礎〜標準)
序詞とは(定義)
序詞は、ある語句を導き出すために、その前に置かれる、作者が自由に作った前置きの語句です。長さは決まっていませんが、2句以上(7音以上)にわたることが多く、上の句(5・7・5)全体が序詞になる歌もよくあります。前半で景色や物(自然)を描き、後半で心(人の気持ち)を述べる、という組み立てが基本です。
枕詞と序詞の違い(一覧)
| くらべる点 | 枕詞 | 序詞 |
|---|---|---|
| 長さ | ほぼ5音(1句) | 自由(2〜3句、7音以上が多い) |
| かかる語 | 決まっている(あしびきの→山) | その歌だけ。作者の自由な創作 |
| 訳すか | 訳さない | 訳す(〜のように/〜ではないが) |
| 働き | 語のかざり・調子をととのえる | 景色で心を導く・イメージを重ねる |
| 例 | ひさかたの→光、ちはやぶる→神 | 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の→われても |
序詞の3つの型
序詞が次の語へつながる方法は、ふつう3つの型に分けて説明されます。
- 比喩型(たとえ):序詞の景色が、後ろの心のたとえになっている。訳は「〜のように」。序詞の終わりが「の」になることが多く、この「の」は格助詞「の」の比喩(連用修飾格)の用法です。
- 掛詞型:序詞に導かれる語が掛詞になっていて、その語の別の意味で後ろへつながる。58番の「そよ」は、笹が風にそよぐ音と「それよ(そうですよ)」の二つの意味です。
- 同音型(同音反復):序詞の中の語と同じ音をくり返して、後ろへつなぐ。意味のつながりはなく、訳は「〜ではないが」「その名のように」などとします。
例文で確かめる
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
(百人一首77番・崇徳院(瀬をはやみ))
現代語訳川の浅瀬の流れが速いので、岩にせき止められた急流が二つに分かれても、また下流で一つになるように、たとえ今は引き離されても、将来はきっと会おうと思う。
住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ
(百人一首18番・藤原敏行朝臣(住の江の))
現代語訳住の江の岸に寄せる波の「よる」ではないが、昼だけでなく夜までも、夢の中の通い路で、あなたはどうして人目を避けて(私に会いに来て)くれないのだろうか。
有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
(百人一首58番・大弐三位(有馬山))
現代語訳有馬山のふもとの猪名の笹原に風が吹くと、笹がそよそよと音を立てる。そうですよ、私があなたを忘れたりするものですか。
御垣守衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつものをこそ思へ
(百人一首49番・大中臣能宣朝臣(御垣守))
現代語訳宮中の御門を守る衛士のたくかがり火が、夜は燃えて昼は消えているように、私の恋心も、夜は燃え上がり、昼は消え入るばかりに思い悩んでいることだ。
序詞の範囲の見つけ方
入試でいちばん問われるのは「序詞はどこまでか」です。手がかりは、①上の句に景色・物の描写がある、②「〜の」で切れる所や、同じ音・掛詞のつなぎ目がある、③そこから後ろが作者の心になっている、の3つ。導かれる語のすぐ前までが序詞です。
百人一首の序詞の一覧
百人一首の解説(百人一首 全百首)で序詞とされている歌を、型ごとにまとめました。数え方は本によって少しちがい、16番の「いなばの山の峰に生ふる」を「まつ」を導く序詞とみる説明もあります。
| 歌 | 序詞 | 導かれる語 | 型 |
|---|---|---|---|
| 3番 柿本人麻呂 | あしびきの山鳥の尾のしだり尾の | ながながし | 比喩 |
| 13番 陽成院(陽成天皇) | 筑波嶺の峰より落つるみなの川 | 恋ぞつもりて淵となりぬる | 比喩 |
| 14番 河原左大臣(源融) | 陸奥のしのぶもぢずり | 乱れ | 比喩 |
| 18番 藤原敏行朝臣 | 住の江の岸に寄る波 | よる(夜) | 同音 |
| 19番 伊勢 | 難波潟短き葦の | ふしの間 | 比喩 |
| 27番 中納言兼輔(藤原兼輔) | みかの原わきて流るる泉川 | いつ見 | 同音 |
| 39番 参議等(源等) | 浅茅生の小野の篠原 | しのぶれ | 同音 |
| 46番 曽禰好忠 | 由良の門を渡る舟人かぢを絶え | 行方も知らぬ | 比喩 |
| 48番 源重之 | 風をいたみ岩うつ波の | おのれのみくだけて | 比喩 |
| 49番 大中臣能宣朝臣 | 御垣守衛士のたく火の | 夜はもえ昼は消え | 比喩 |
| 51番 藤原実方朝臣 | いぶきのさしも草 | さしも | 同音 |
| 58番 大弐三位(藤原賢子) | 有馬山猪名の笹原風吹けば | そよ | 掛詞 |
| 77番 崇徳院(崇徳天皇) | 瀬をはやみ岩にせかるる滝川の | われても末に逢はむ | 比喩 |
| 92番 二条院讃岐 | 潮干に見えぬ沖の石の | 人こそ知らね乾く間もなし | 比喩 |
| 97番 権中納言定家 | まつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の | 身もこがれ | 比喩・掛詞 |
15首のうち10首が比喩型(97番は比喩と掛詞の両方)です。比喩型の多くは、序詞が「〜の」で終わっています(3・19・48・49・77・92・97番)。
もっと深く(難関大・上級者)
1. 序詞は初句から始まるとは限らない
序詞は「上の句全体」とは限りません。92番「わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし」は、初句「わが袖は」のあとの「潮干に見えぬ沖の石の」が序詞です。「わが袖は」が主語で、袖のようすを沖の石にたとえています。
わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし
(百人一首92番・二条院讃岐(わが袖は))
現代語訳私の袖は、引き潮のときでも水面に姿を見せない沖の石のように、人は誰も知らないけれど、(恋の涙で)乾く間もありません。
97番「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」も、初句「来ぬ人を」のあとの「まつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の」が序詞で、「(身も)こがれ」を導きます。「まつほ」は地名の松帆と「待つ」の掛詞、「こがれ」は藻塩が焼け焦げることと恋に焦がれることの二つの意味です。序詞・掛詞・縁語(焼く・藻塩・こがれ)が一首に重なる、作者の藤原定家らしい技巧の歌です。
51番「かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」は、「いぶき」が「言ふ」と地名の伊吹の掛詞で、「いぶきのさしも草」が同じ音の「さしも(それほど)」を導く序詞です。序詞の頭が掛詞の語(いぶき)から始まる、むずかしい形です。
2. 意味でつなぐ序詞・音でつなぐ序詞
序詞を、意味(たとえ)でつながるもの(比喩型)と、音でつながるもの(掛詞型・同音型)の2つに大きく分ける説明もあります。前者を「有心の序」、後者を「無心の序」と呼ぶこともあります。音でつながる序詞は、景色と心のあいだに意味の関係がうすいので、現代語訳では「〜ではないが」「その名のように」と、ことばのつなぎ目だけを訳出するのがふつうです。
みかの原わきて流るる泉川いつ見きとてか恋しかるらむ
(百人一首27番・中納言兼輔(みかの原))
現代語訳みかの原を分けて湧き出て流れる泉川の「いづみ」という名のように、(あの人を)「いつ見た」というので、こんなに恋しいのだろうか(一度も会ったことがないのに)。
3. 序詞と縁語・掛詞の重なり
序詞の中のことばと、後ろの心のことばが縁語になっていることがよくあります。46番「由良の門を渡る舟人かぢを絶え行方も知らぬ恋の道かな」では、序詞「由良の門を渡る舟人かぢを絶え」と下の句の「行方」「道」が、舟と旅のなかまのことば(縁語)です。かじを失った舟のように、行方のわからない恋、という比喩が、縁語によっていっそうまとまって見えます。
また、序詞の終わりの「の」が比喩(〜のように)になる点は、格助詞「の」の識別でねらわれます。3番では「あしびきの」の「の」、「山鳥の」「尾の」の「の」、「しだり尾の」の「の」が並び、最後の「の」だけが比喩です。比喩の「の」の下には、比況の助動詞「ごとし」を補って考えるとわかりやすい、と説明されることもあります。
4. 百人一首以外の序詞(同音型の定番)
ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな
(古今和歌集・恋一・よみ人しらず)
現代語訳ほととぎすが鳴く五月の菖蒲草(あやめぐさ)の「あやめ」ではないが、物事の筋道(あやめ)もわからなくなるほどの恋をすることだなあ。
うかるくん
景色の部分も全部訳すんですか? 意味がつながっていない同音型は、どう訳せば……。
合格先生
序詞は訳すのが原則。比喩型は「〜のように」、同音型は「〜ではないが」とつなぐ。景色の部分も省かずに訳すと、答案で序詞をわかっていることが伝わるよ。
サクラちゃん
景色を訳して、つなぎのことばを入れて、心を訳す。3つの部品で考えればいいんですね。
よくあるまちがい
まちがい1:序詞を訳さない
訳さないのは枕詞です。序詞は訳すのが原則で、比喩型は「〜のように」、同音型は「〜ではないが」とつなぎます。
まちがい2:上の句全体をいつも序詞と答える
92番・97番・51番のように、序詞が歌の途中から始まる歌があります。導かれる語のすぐ前まで、かつ景色の部分だけを答えます。
まちがい3:5音の語を序詞と答える
「あしびきの」「ひさかたの」など、5音で決まった語にかかるものは枕詞です。3番は、枕詞が序詞の中に入っている形です。
まちがい4:同音型の「よる」「しの」を掛詞とまちがえる
18番の「寄る→夜」は、別の語で同じ音をくり返す同音型です。1つの語に2つの意味を持たせる掛詞(58番の「そよ」など)と区別します。
答え合わせで迷ったら、受験掲示板「100点BBS」の百人一首の掲示板や古典文法のお勉強で質問できます。
練習問題
やさしい
- 序詞の説明として正しいものを選びなさい。
ア ほぼ5音で、かかる語が決まっている。
イ 長さは自由で、作者がその歌のために作り、現代語訳でも訳す。
ウ 一つの語に二つの意味を持たせる。答えと解説を見る
イ。アは枕詞、ウは掛詞の説明です。
- 百人一首18番「住の江の岸に寄る波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」の序詞をぬき出し、導かれている語を答えなさい。
答えと解説を見る
序詞は「住の江の岸に寄る波」、導かれる語は「よる(夜)」。「寄る」と同じ音でつなぐ同音型です。
ふつう
- 次の歌の序詞は、比喩型・掛詞型・同音型のどれですか。
① 浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき(39番)
② 有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする(58番)
③ 風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな(48番)答えと解説を見る
① 同音型(篠原の「しの」→しのぶ)。② 掛詞型(笹の音の「そよ」=「それよ」)。③ 比喩型(岩に打ちつけて砕ける波のように、自分だけ心が砕ける)。
- 百人一首77番「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」の序詞の部分を、つなぎのことばに注意して現代語訳しなさい。
答えと解説を見る
「(川の瀬の流れが速いので)岩にせき止められる急流が(二つに分かれても、また一つになる)ように」。最後の「の」が比喩なので「〜のように」と訳して、「われても末に逢はむ」へつなげます。
むずかしい
- 百人一首92番「わが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし」の序詞の範囲を答え、それが何を何にたとえているかを説明しなさい。
答えと解説を見る
序詞は「潮干に見えぬ沖の石の」(初句「わが袖は」は含まない)。引き潮でも姿を見せず、いつも水にぬれている沖の石に、人に知られず、恋の涙で乾く間もない自分の袖をたとえています。
- 百人一首3番「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」について、枕詞と序詞をそれぞれ答え、序詞の最後の「の」の用法を答えなさい。
答えと解説を見る
枕詞は「あしびきの」(「山」にかかる)。序詞は「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」で、「ながながし」を導きます。最後の「の」は比喩(〜のように)の格助詞です。
関連ページ
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- 古文文法辞典の目次
読みもの(合格大作戦の記事)
- 和歌の修辞
枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り - 百人一首 全百首
全首の現代語訳・品詞・修辞 - 古文単語の覚え方
入試に出る古文単語を、意味のつながりで覚える - 磯のあわびの片思い
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よくある質問
序詞とは何ですか?
ある語句を導き出すために前に置かれる、作者が自由に作った前置きの語句です。長さは2句以上が多く、比喩・掛詞・同音のくり返しで後ろの語につながります。
序詞と枕詞の違いは何ですか?
枕詞はほぼ5音で、かかる語が決まっていて訳しません。序詞は長さが自由で、作者がその歌のために作り、現代語訳でも訳します。
序詞はどう訳せばよいですか?
比喩型は「〜のように」、同音型は「〜ではないが」「その名のように」とつなぎ、景色の部分も省かずに訳します。
序詞の範囲はどうやって見つけますか?
景色や物の描写から作者の心へ切り替わる所を探します。「〜の」で切れる所、同じ音や掛詞のつなぎ目が目印で、導かれる語のすぐ前までが序詞です。
百人一首に序詞の歌は何首ありますか?
このページでは解説で序詞とされる15首を一覧にしています。16番を加えるなど、数え方は本によって少しちがいます。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:百人一首(3・13・14・18・19・27・39・46・48・49・51・58・77・92・97番。本文は合格大作戦「百人一首」のデータ)、古今和歌集(恋一・よみ人しらず)
- 高校の古典の標準的な説明(和歌の修辞・序詞)にもとづいて作成。序詞の数え方・型の分け方は本によって少しちがいます
- 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 077」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦



