本歌取りとは?意味と決まり・見分け方|百人一首の本歌取りの歌一覧と本歌・新古今集・練習問題【大学受験】

本歌取りとは?意味と決まり・見分け方|百人一首の本歌取りの歌一覧と本歌・新古今集・練習問題【大学受験】

古文文法辞典 › 和歌・古文常識

大学受験難関大

ひとことで言うと

本歌取りは、よく知られた古い歌(本歌)の言葉を一部借りて新しい歌を作り、読む人に本歌を思い出させて歌の世界を二重に広げる和歌の修辞です。新古今和歌集のころ(鎌倉時代の初め)にさかんになり、藤原定家の「ことばは古く、心は新しく」という考え方で説明されることが多いです。

このページのポイント

  • 本歌取り=古い名歌(本歌)の句を借りて、新しい歌を作る修辞
  • 決まり:借りるのは2句ほどまで、題を変える、心は新しく(定家の考え方とされる)
  • 新古今和歌集の時代に最もさかん。百人一首では91番・94番が代表例
  • 答えるのは「本歌」「借りた言葉」「変えた所」の3点
  • 物語・漢詩・故事をふまえるものは本説取りとして区別する

はじめて(やさしく)

本歌取り(ほんかどり)は、和歌の修辞(しゅうじ=ことばのわざ)の一つです。よく知られた古い歌の言葉を一部借りて、新しい歌を作ります。借りられたもとの歌を本歌(ほんか)といいます。

たとえば、だれもが知っている昔話の一場面を、ちがう季節や別の主人公に置きかえて書いた話を想像してください。読む人は「あ、あの話だ」と思い出しながら、新しい話も楽しめます。本歌取りは、それを31音の和歌の中でやるわざです。読む人の頭の中で、本歌と新しい歌の2つの世界が重なるのがねらいです。

本歌取りのしくみ本歌(古い歌)古今和歌集・冬・坂上是則み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり言葉は借りる心は新しく本歌取りの歌新古今集・秋下・藤原雅経み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり読む人は、冬の雪の歌を思い出しながら秋の夜を味わう
本歌取りのしくみ。古い歌の言葉を借り、心(季節・場面)は新しくする

百人一首の94番「み吉野の」は、本歌取りのお手本としてよく出る歌です。もとになったのは、約300年前の『古今和歌集』にある坂上是則(さかのうえのこれのり)の冬の歌。是則は百人一首31番「朝ぼらけ」の作者でもあります。

うかるくん

うかるくん

昔の歌の言葉を借りるって……それ、まねじゃないの?

合格先生

合格先生

いいところに気がついたね。ぜんぶ借りたら、ただのまね。本歌取りは、借りるのは2句ほどにして、季節や気持ちを新しく変えるのが決まりなんだ。

サクラちゃん

サクラちゃん

94番は、冬の雪の歌を、秋の夜の歌に変えたんですね。

合格先生

合格先生

そう。しかも、雪を「見る」歌を、衣を打つ音を「聞く」歌にした。読む人は是則の歌の寒さを思い出すから、秋の夜がいっそう寒く感じられる。これが本歌取りの力だよ。

何を借りて、何を変えたか(94番)くらべる所本歌(是則)本歌取り(雅経)季節冬秋主役白雪(目で見る)砧の音(耳で聞く)歌集古今集905年ごろ新古今集1205年ごろ同じ言葉み吉野の山のふるさと寒く同じ2句を同じ位置に言葉は同じ、季節と感覚を入れかえた
本歌(是則)と本歌取り(雅経)を比べると、借りた言葉と変えた所がよくわかる

本歌取りは、本歌を知らないと見抜けない修辞です。だからこそ、百人一首や有名な歌を覚えている人ほど有利になります。百人一首の中にも、ほかの百人一首の歌を本歌にした歌があります(91番の本歌の一つが3番)。全首の意味は百人一首 全百首で確かめられます。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

本歌取りは「古い言葉+新しい心」。もとの歌を思い出すと、新しい歌が二重に味わえるんだ!

和歌の修辞には、ほかに枕詞・序詞・掛詞・縁語があります。修辞の全体は、読みもの「和歌の修辞」で通して読めます。わからないところは、受験掲示板「100点BBS」の〈百人一首のことなら何でもOKな掲示板〉や〈古典文法のお勉強〉で質問できます。

しっかり(大学受験の基礎〜標準)

本歌取りとは?意味と定義

本歌取りとは、古い有名な歌(本歌)の句を意識的に取り入れ、読む人に本歌を思い起こさせることで、歌の内容に深みや広がりを持たせる技法です。鎌倉時代の初め、『新古今和歌集』のころに最もさかんになりました。新古今集は後鳥羽院(後鳥羽天皇。百人一首99番「人もをし」)の命令で作られ、撰者には藤原定家(97番)・藤原家隆(98番)・藤原雅経(94番)・寂蓮(87番、完成前に亡くなる)らがいました。百人一首を選んだとされる藤原定家は、本歌取りの名手であり、その決まりを考えた人としても知られます。

本歌取りの決まり(定家の考え方)

定家は歌論書(歌の作り方を論じた本)の中で、本歌取りについて考えを述べています。教科書や参考書では、次のようにまとめて説明されることが多いです。

本歌取りの決まり(定家の考え方)ことばは古く、心は新しく1取るのは2句まで+3〜4字ほど。全部まねたら盗作2題(内容)は本歌と変える季節の歌→恋の歌、恋の歌→季節の歌3心(主題)は新しく本歌と同じことを言い直さない4新しい歌からは取らない取るのは昔から知られた名歌藤原定家の歌論書の考え方として説明されることが多い(句の数え方など、細かい所には諸説あり)
本歌取りの決まり。「ことばは古く、心は新しく」が合言葉
決まり内容ねらい
取る量本歌の句は2句まで、それに3〜4字ほどまで取りすぎると、本歌のまね(盗作)になる
題本歌と同じ題・同じ内容で詠まず、題(季節・恋など)を変える同じ題だと、新しさが出ない(句の位置を変えるかどうかは本によって説明がちがう)
心本歌と同じ内容をくり返さず、新しい心をよむ「ことばは古く、心は新しく」
本歌の選び方昔から知られた名歌から取り、近い時代の人の歌からは取らないだれもが本歌を思い出せるように

これらは定家の歌論書(『詠歌大概』『毎月抄』など)の考え方をもとに、後の人が整理したものです。「2句まで」「3〜4字」の数え方など、細かい所は本によって説明が少しちがいます。入試では「本歌の言葉を借りつつ、新しい内容をよむ」という核心がわかっていれば十分です。

百人一首の本歌取りの歌一覧(本歌つき)

百人一首の解説で本歌取り(または本歌をふまえた歌)とされる主な歌を、本歌と並べました。本歌の出典は、ふつう説明されているものです。

番号・作者本歌取りの歌(出典)本歌(出典)変えた所
39番 参議等(源等)浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき(後撰集)浅茅生の小野の篠原しのぶとも人知るらめやいふ人なしに(古今集・よみ人しらず)「隠しても気づかれまい」→「隠しきれずにあふれる」
42番 清原元輔契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは(後拾遺集)君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ(古今集・東歌)誓いの言葉を、心変わりした相手を責める歌に
90番 殷富門院大輔見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず(千載集)松島や雄島の磯にあさりせしあまの袖こそかくはぬれしか(源重之、後拾遺集)「あまの袖ほどぬれた」→「あまの袖でさえ色は変わらないのに」
91番 藤原良経きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む(新古今集)3番の人麻呂の歌(拾遺集)と、「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」(古今集・よみ人しらず)恋の歌の言葉で、秋の霜夜の寂しさをよむ
93番 源実朝世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも(新勅撰集)みちのくはいづくはあれど塩釜の浦こぐ舟の綱手かなしも(古今集・東歌)など旅の景色を、世の無常を思う歌に
94番 藤原雅経み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり(新古今集)み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり(坂上是則、古今集)冬の雪(視覚)→秋の砧の音(聴覚)
97番 藤原定家来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ(新勅撰集)万葉集の笠金村の長歌(松帆の浦で藻塩を焼く海人の娘子をよむ)海辺の景色を、恋人を待ちこがれる女性の心に

例文で確かめる(本歌と並べて読む)

季節と感覚を変えた本歌取り

み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり

(新古今和歌集・秋下・483番、藤原雅経(百人一首94番))

現代語訳吉野の山の秋風が吹き、夜も更けて、昔都のあったこの里は寒々として、衣を打つ(砧の)音が聞こえてくる。

ここがポイント本歌は坂上是則「み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり」(古今和歌集・冬)。「み吉野の山の」「ふるさと寒く」の2句を同じ位置に置き、そのかわり冬→秋と題を変えています。文末の「なり」は終止形「打つ」についた推定(聴覚)の助動詞で、音を聞いて推し量る言い方です(助動詞「なり」(伝聞・推定))。本歌の「つもるらし」の「らし」も推定です(助動詞「らし」)。

本歌の誓いを、恨みに変えた本歌取り

契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは

(後拾遺和歌集・恋四・770番、清原元輔(百人一首42番))

現代語訳約束しましたよね。おたがいに(涙にぬれた)袖をしぼりながら、末の松山を波が越えることがないように(決して心変わりしない)と。

ここがポイント本歌は古今和歌集・東歌「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」(あなたをさしおいて浮気心を持ったら、末の松山を波が越えるだろう=ありえないこと)。本歌の「ありえない誓い」を借りて、その誓いを破った相手を責める歌にしています。「契りき」の「き」は直接経験の過去(助動詞「き・けり」)、「越さじ」の「じ」は、主語が「波」なので打消推量です(助動詞「じ」)。

本歌の上の句を生かし、下の句で心を変えた例

浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき

(後撰和歌集・恋一・578番、参議等(百人一首39番))

現代語訳(浅茅の生えた小野の篠原の「しの」のように)忍んでいるけれど、こらえきれず、どうしてこんなにあの人が恋しいのだろう。

ここがポイント本歌は古今和歌集のよみ人しらずの歌「浅茅生の小野の篠原しのぶとも人知るらめやいふ人なしに」(隠していても、告げる人がいないのだから、あの人が知るだろうか)。上の句をほぼそのまま借り、下の句で「隠しきれずにあふれる恋心」へと反対向きに作りかえています。「浅茅生の小野の篠原」は「しの」の音から「しのぶ」を導く序詞です。定家の時代より前の歌なので、取る量は「2句まで」の決まりより多めです。
① 古い有名な歌と同じ句が2句ほど入っている?いいえ似ているだけはい② 本歌を思い出すと、歌の意味が深まる?いいえ決まり文句はい③ 本歌取り!本歌は何か・どこを変えたか(枕詞・歌枕は別の修辞)入試で答える3点・本歌(もとの歌)とその出典・借りた言葉(どの句か)・変えた所(季節・立場・場面・気持ち)
本歌取りの見分け方。同じ句があり、本歌を重ねると意味が深まるなら本歌取り
歌集の年表で見る「本歌」と「本歌取り」万葉集8世紀後半本97番(笠金村の長歌)古今集905年ごろ本39・42・91・93・94番後撰集951年〜取39番拾遺集1006年ごろ本91番(3番の歌)後拾遺集1086年取42番本90番千載集1188年取90番新古今集1205年ごろ取91・94番(最もさかん)新勅撰集1235年取93・97番本〇番の本歌がのる取〇番の歌がのる(年は成立・命令の年の目安)
本歌は古今集など古い名歌から、本歌取りは新古今集のころに最も多い
百人一首94番 参議雅経(藤原雅経・飛鳥井雅経)の絵札(み吉野の 本歌取り ほんかどり 本歌 坂上是則)
百人一首94番・参議雅経(藤原雅経)の絵札。雅経は『新古今和歌集』の撰者の一人で、是則の冬の歌を秋の歌に作りかえました。画像:絵札「Hyakuninisshu 094」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

もっと深く(難関大・上級者)

1. 本歌が2つある本歌取り(91番)

本歌取りの歌には、本歌が2首以上あるものもあります。百人一首91番の藤原良経(後京極摂政前太政大臣)の歌は、その代表です。

本歌1 3番・人麻呂あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む本歌2 古今集さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫91番 藤原良経(新古今集・秋下)きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む2首の言葉を重ね、秋の霜夜のひとり寝に作りかえた(「さむしろ」は「寒し」との掛詞とされる)
91番は、3番の人麻呂の歌と古今集の歌の2首を本歌にしている

きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む

(新古今和歌集・秋下・518番、藤原良経(百人一首91番))

現代語訳こおろぎが鳴く、霜の降りる寒い夜、むしろの上に自分の着物の片袖だけを敷いて、ひとりさびしく寝るのだろうか。

ここがポイント「ひとりかも寝む」は3番「あしびきの」の結句と同じ言葉。「さむしろに衣かたしき」は古今和歌集の「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」から。どちらも恋の歌の言葉ですが、91番は秋の歌(新古今集・秋下)として、霜夜のひとり寝の寂しさをよんでいます。「さむしろ」には「寒し」と「狭筵(せまいむしろ)」が掛けられているとされます(掛詞)。「か」「も」を受けて「む」が連体形になる係り結びも入試の定番です。

2首の本歌は、どちらも「待つ人のいない夜」「ひとり寝」という恋の世界の言葉です。それを晩秋の霜夜の景色にとけこませることで、恋の歌の気配を残したまま、季節の寂しさを深めています。題を変える(恋→秋)という決まりにもかなった、新古今時代らしい本歌取りです。

2. 本歌取り・本説取り・引き歌・異伝のちがい

「何かをふまえている」表現には、本歌取りのほかにもいくつかの呼び名があります。入試で「本歌取り」と答えてよいのは、和歌の句を借りている場合です。

何をふまえるかで呼び名が変わる本歌取り和歌の句を借りて新しい歌に例:91番・94番本説取り物語・漢詩・故事をふまえる例:23番・62番・78番引き歌文章の中で名歌の一部を引く例:源氏物語・枕草子の会話異伝同じ歌が伝わる中で形が変わる例:2番(万葉集→新古今集)入試の「本歌取り」は、和歌の句を借りるものだけ
ふまえる元が和歌か、物語・漢詩・故事かで呼び名が変わる
  • 本説取り(ほんぜつどり):和歌ではなく、物語・漢詩・故事などをふまえる方法です。23番「月見れば」は唐の白居易(白楽天)の詩の一句をもとにしたとされ、62番「夜をこめて」は『史記』の孟嘗君の故事をふまえ、78番「淡路島」は『源氏物語』の須磨の場面を思わせる歌として知られます。
  • 引き歌(ひきうた):物語や日記の文章の中で、有名な歌の一部だけを引いて、言葉にしない気持ちを伝える方法です。『源氏物語』や『枕草子』の会話によく出てきます。
  • 異伝(いでん):同じ歌が書き写され伝わる中で、形が変わったものです。2番「春過ぎて」は、『万葉集』の「春過ぎて夏来るらし白たへの衣干したり天の香具山」が、『新古今和歌集』では「夏来にけらし…衣ほすてふ」の形で載っています。これは別の作者が新しく作った歌ではないので、ふつう本歌取りとはいいません。

3. 定家の言葉と、本歌取りの名歌

定家の歌論書『詠歌大概』には、漢文で「情以新為先、詞以旧可用」(情は新しきを以て先と為し、詞は旧きを以て用ゐるべし)という二つの句があり(実際は間に別の文をはさむ二句を並べて引いたもの)、「心は新しく、言葉は古い歌の言葉を使う」という考え方として、よく引かれます。百人一首以外では、定家自身の次の歌が、本歌取りの例として教科書によく出てきます。

駒とめて袖うち払ふ陰もなし佐野のわたりの雪の夕暮れ

(新古今和歌集・冬・藤原定家)

現代語訳馬をとめて、袖に積もった雪を払う物かげもない。佐野の渡し場の、雪の夕暮れよ。

ここがポイント本歌は『万葉集』の「苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに」(つらいことに降ってくる雨だなあ。三輪の崎の狭野の渡し場には家もないのに)とされます。本歌の「雨」を「雪」に変え、旅のつらさの歌を、白一色の絵のような冬の景色の歌に作りかえました。最後を名詞「夕暮れ」で止める体言止めも、新古今時代に好まれた表現です。

4. 入試での問われ方と、訳し方のコツ

入試では、①「この歌の本歌はどれか」(選択肢から選ぶ)、②「本歌と比べて、どこが新しいか」(説明)、③「本歌をふまえて現代語訳せよ」の形がよく出ます。③では、本歌の内容を( )で補って訳すのがコツです。たとえば42番なら「末の松山を波が越えることがないように(=決して心変わりしないと)」と、本歌の誓いの意味を補います。

もう一つの注意は、本歌取りとほかの修辞が重なることです。97番「来ぬ人を」は、本歌取りに加えて、「まつほ」に「松帆」と「待つ」を掛けた掛詞、「焼く」「藻塩」「こがれ」の縁語、「こがれ」を導く序詞が一首にこめられています。修辞を一つ見つけて安心せず、ほかの修辞も探しましょう。

百人一首97番 権中納言定家(藤原定家)の絵札(来ぬ人を 本歌取り 掛詞 縁語 序詞)
百人一首97番・権中納言定家(藤原定家)の絵札。定家は本歌取りの名手で、自分の歌として、万葉集の長歌をふまえたこの歌を選びました。画像:絵札「Hyakuninisshu 097」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)
サクラちゃん

サクラちゃん

本歌を知らないと、本歌取りかどうかわからないんですよね……。全部覚えないとだめ?

合格先生

合格先生

入試では、本歌が問題文や注に示されることが多いよ。大事なのは「同じ言葉を探す→ちがいを言葉にする」という読み方。それに、百人一首の中の本歌取りは、覚えておくと強い武器になる。

うかるくん

うかるくん

94番は「冬→秋」「見る→聞く」、42番は「誓い→恨み」。変えた所を短く言えるようにしておこう!

よくあるまちがい

まちがい1:古い歌に似ていれば、すべて本歌取りだと思う

本歌取りは、意識して古い名歌の言葉を借り、本歌を思い出させるものです。「白妙の」「あしびきの」のような枕詞や、「逢坂の関」「末の松山」のような歌枕が同じでも、それだけでは本歌取りとはいいません。

まちがい2:物語や漢詩をふまえた歌も「本歌取り」と答える

和歌ではなく物語・漢詩・故事をふまえるものは、ふつう本説取り(または「漢詩・故事をふまえた表現」)と呼びます。23番(白居易の詩)や62番(史記の故事)がその例です。

まちがい3:本歌取りは「まね」なので、価値が低いと思う

本歌取りは、本歌を知っている読み手との知的な遊びであり、新古今時代には高度なわざとして重んじられました。本歌とのちがい(季節・立場・気持ち)にこそ、作者の工夫があります。

まちがい4:本歌取りの歌を訳すとき、本歌の意味を落とす

本歌の内容が分からないと、本歌取りの歌は正しく訳せないことがあります。42番の「末の松山波越さじ」は、本歌をふまえて「決して心変わりしない」という誓いの意味を補って訳します。

「ここが大事!」と説明する合格先生

合格先生

本歌取りは「借りた言葉」と「変えた心」の2つを言えたら合格! 本歌と並べて、同じ所に線、ちがう所に丸をつけて読もう。

練習問題

やさしい

  1. 本歌取りの説明として正しいものを1つ選びなさい。
    (ア)ある語を引き出すために、その前に置く5音の決まった言葉
    (イ)よく知られた古い歌の言葉の一部を借りて、新しい歌を作る技法
    (ウ)1つの言葉に2つの意味を重ねる技法
    答えと解説を見る

    答え:(イ)。(ア)は枕詞、(ウ)は掛詞の説明です。

  2. 百人一首94番「み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり」の本歌は、坂上是則の「み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり」です。①借りた言葉を2つ書き出し、②本歌から変えた季節を「〇→〇」の形で答えなさい。
    答えと解説を見る

    ① 「み吉野の山の」「ふるさと寒く」 ② 冬→秋。本歌は白雪の積もる冬の歌、94番は秋風と砧の音の秋の歌です。

ふつう

  1. 百人一首91番「きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む」の結句「ひとりかも寝む」は、百人一首の何番の歌の言葉を借りたものですか。また、その歌の作者を答えなさい。
    答えと解説を見る

    3番、柿本人麻呂(「あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」)。91番は、このほかに古今和歌集の「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」も本歌にしています。

  2. 次のうち、藤原定家の考え方として説明される本歌取りの決まりに合わないものを1つ選びなさい。
    (ア)本歌の句は2句ほどまでにとどめる
    (イ)本歌と同じ題で詠まず、季節や恋などの題を変える
    (ウ)同じ時代に活躍している歌人の新しい歌から、積極的に言葉を取る
    (エ)本歌の言葉を使いながら、新しい心をよむ
    答えと解説を見る

    答え:(ウ)。本歌は、だれもが知る昔からの名歌から取るのが決まりで、近い時代の人の歌からは取らないとされます。

むずかしい

  1. 百人一首42番「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは」は、古今和歌集の「君をおきてあだし心をわが持たば末の松山波も越えなむ」を本歌としています。本歌で「末の松山を波が越える」とは、どのようなことのたとえですか。また、それをふまえて42番の下の句を現代語訳しなさい。
    答えと解説を見る

    本歌の「末の松山を波が越える」は、決してありえないことのたとえで、「もし私が浮気をしたら、末の松山を波が越えるだろう(=浮気など決してしない)」という誓いです。42番の下の句は「末の松山を波が越すことがないように(=決して心変わりしないと)、(約束しましたね)」。42番は、この誓いを破って心変わりした相手を責める歌になっています。

  2. 次の(A)〜(C)のうち、ふつう「本歌取り」と呼ぶものを1つ選び、残りの2つは何をふまえた表現かを答えなさい。
    (A)23番「月見れば千々に物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど」
    (B)62番「夜をこめて鳥のそら音ははかるともよに逢坂の関はゆるさじ」
    (C)94番「み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣打つなり」
    答えと解説を見る

    本歌取りは(C)(坂上是則の歌が本歌)。(A)は唐の白居易(白楽天)の漢詩の一句をもとにしたとされ、(B)は『史記』の孟嘗君の故事(鶏の鳴きまねで函谷関を通った話)をふまえています。(A)(B)のように和歌以外をふまえるものは、本説取り(漢詩・故事をふまえた表現)と呼ぶのがふつうです。

関連ページ

和歌の修辞の全体は、読みもの「和歌の修辞」(枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り・体言止め・句切れ)で、百人一首を例に通して読めます。季節の言葉(砧・霜夜・秋風)の背景は旧暦・季節・時刻のページも参考にしてください。

読みもの(合格大作戦の記事)

受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう

よくある質問

本歌取りとは何ですか?

よく知られた古い歌(本歌)の言葉を一部借りて新しい歌を作り、読む人に本歌を思い出させて内容を深める和歌の修辞です。新古今和歌集のころにさかんになりました。

本歌取りの決まりは?

藤原定家の考え方として、借りるのは2句ほどまで、題(季節・恋など)は本歌と変える、心は新しくする、近い時代の歌からは取らない、と説明されることが多いです。

百人一首の本歌取りの歌は?

代表は91番(3番と古今集の歌が本歌)と94番(坂上是則の歌が本歌)です。ほかに39番・42番・90番・93番・97番も本歌をふまえた歌とされます。

本歌取りと本説取りの違いは?

本歌取りは和歌の句を借りるもの、本説取りは物語・漢詩・故事をふまえるものです。白居易の詩をもとにした23番や、史記の故事をふまえた62番は本説の例です。

本歌取りの見分け方は?

古い有名な歌と同じ句が2句ほど入っていて、本歌を思い出すと意味が深まるかを確かめます。入試では本歌が注や選択肢で示されることが多く、借りた言葉と変えた所を答えます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例歌の本文:百人一首(3・39・42・90・91・93・94・97番、出典は後撰和歌集・後拾遺和歌集・千載和歌集・新古今和歌集・新勅撰和歌集)と、その本歌(古今和歌集・後拾遺和歌集の歌)。本文と本歌は合格大作戦「百人一首 全百首」の各首ページの解説にそろえた
  • 藤原定家の歌「駒とめて」(新古今和歌集・冬)と、その本歌とされる万葉集の歌。表記は読みやすいように一部改めています
  • 藤原定家『詠歌大概』『毎月抄』(本歌取りの考え方)。本歌取りの決まりの数え方(2句・3〜4字など)は説明が分かれるため、本文中に「〜と説明されることが多い」と記した
  • 練習問題は、このページのために作ったもの(入試問題の転載ではない)
  • 画像:百人一首の絵札「Hyakuninisshu 094」「Hyakuninisshu 097」(パブリックドメイン、Wikimedia Commons)

最終更新:2026年10月21日/作成:大学受験合格大作戦