- 歌
- わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし
- 意味
- 私の袖は、引き潮のときでも水面に姿を見せない沖の石のように、人は誰も知らないけれど、(恋の涙で)乾く間もありません。
- 作者
- 二条院讃岐(にじょういんのさぬき)
- 出典
- 『千載和歌集』恋二・759番
- 決まり字
- 「わがそ」(3字決まり)

わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
人こそ知らね 乾く間もなし
読みわがそでは しおひにみえぬ おきのいしの
ひとこそしらね かわくまもなし
歴史的仮名遣いわがそでは しほひにみえぬ おきのいしの
ひとこそしらね かわくまもなし
私の袖は、引き潮のときにも見えない沖の石のように、人は知らないけれど、涙で乾く暇もない——「沖の石の讃岐」と呼ばれた二条院讃岐の歌です。
現代語訳(意味)
語句の意味
| 語句 | 読み | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 潮干 | しおひ | 引き潮。潮が引いて海の底が見えるとき。 |
| 見えぬ | みえぬ | 見えない。「ぬ」は打消「ず」の連体形です。 |
| 沖の石 | おきのいし | 沖にあって、いつも水の中に沈んでいる石。 |
| 人こそ知らね | ひとこそしらね | 「人は知らないけれど」。「こそ〜已然形」で逆接になっています。 |
| 乾く間もなし | かわくまもなし | 乾く暇もない。 |
品詞分解
歌を単語に分けて、品詞と意味を示しています。色の付いた行が入試で特に問われる部分です。
| 単語 | 品詞・活用 | 意味・用法 |
|---|---|---|
| わ | 代名詞 | |
| が | 格助詞 | |
| 袖 | 名詞 | |
| は | 係助詞 | |
| 潮干 | 名詞 | |
| に | 格助詞 | |
| 見え | 動詞・ヤ行下二段「見ゆ」未然形 | |
| ぬ | 助動詞「ず」連体形 | 打消 |
| 沖 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | |
| 石 | 名詞 | |
| の | 格助詞 | 比喩 |
| 人 | 名詞 | |
| こそ | 係助詞 | 強意 |
| 知ら | 動詞・ラ行四段「知る」未然形 | |
| ね | 助動詞「ず」已然形 | 打消(逆接で続く) |
| 乾く | 動詞・カ行四段「乾く」連体形 | |
| 間 | 名詞 | |
| も | 係助詞 | |
| なし | 形容詞・ク活用「なし」終止形 |
表現技法・文法のポイント
「潮干に見えぬ沖の石の」が、人に知られず乾くこともないものとして、自分の袖をたとえています。
「人こそ知らね」で「人は知らないけれど」。47番と同じ形です。
人知れず涙にぬれる袖を、いつも海に沈んでいる石にたとえています。
歌の背景・鑑賞
『千載和歌集』恋二に入っています。「石に寄する恋(石にたとえる恋)」という題で詠まれた歌です。いつも水に沈んでいる沖の石と、人知れず涙にぬれ続ける袖――意外な取り合わせが評判となり、作者は「沖の石の讃岐」と呼ばれるようになりました。
諸説・伝説――想像をふくらませてみよう
昔のことなので、はっきりしないことも多くあります。ここでは、言い伝えやいろいろな説を紹介します。
二条院讃岐の父・源頼政は、宮中に現れた怪物「鵺(ぬえ)」を弓で退治したという伝説で知られる武将です。頼政は歌人としてもすぐれ、のちに平家打倒の兵を挙げて戦死しました。武将の娘が、繊細な恋の歌の名手になったのです。
「沖の石」が実際にどこかの海の石を指すのかはわかっていませんが、福井県小浜市や宮城県多賀城市などに「沖の石」と呼ばれる場所が伝わっています。歌が有名になって、名所が生まれたのかもしれません。
作者:二条院讃岐
平安時代末期から鎌倉時代前期の女性歌人です。武将で歌人の源頼政の娘で、二条天皇に仕えたので「二条院讃岐」と呼ばれます。のちに後鳥羽天皇の中宮にも仕え、新古今時代の歌合などで活躍しました。
決まり字と覚え方
上の句が「わがそ」まで読まれたら、取り札が決まります。「わ」で始まる歌は7首あります。
覚え方:「わがそ」と聞いたら「ひとこそしらね」。わが袖(わがそ)は人こそ(ひとこそ)知らね、と覚えます。「わが」で始まる歌は8番「わがい」と2首あるので、3字目の「そ」まで聞きます。
入試で問われるポイント
- 序詞(比喩)
- こそ〜已然形の逆接
- 打消「ず」の連体形・已然形(ぬ・ね)
よくある質問
「沖の石」は何をたとえていますか?
人知れず涙でぬれ続ける自分の袖をたとえています。沖の石はいつも水に沈んでいて、乾くことがないからです。
「人こそ知らね」の意味は?
「人は知らないけれど」という意味です。「こそ〜已然形」で文が続き、逆接になっています。
二条院讃岐はどんな人ですか?
武将・源頼政の娘で、二条天皇に仕えた女性歌人です。この歌から「沖の石の讃岐」と呼ばれました。
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大学受験合格大作戦 最終更新:2026-10-04
