書き下し文のきまりと書き方|ひらがなにする字(不・可・也・之・与・見・被)・置き字・再読文字の書き方【漢文】

書き下し文のきまりと書き方|ひらがなにする字(不・可・也・之・与・見・被)・置き字・再読文字の書き方【漢文】

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ひとことで言うと

書き下し文は、訓読文を返り点の順に読んで漢字かな交じりの日本語の文にしたものです。送り仮名と、日本語の助詞・助動詞にあたる字(不・可・也・之・与・見・被 など)はひらがなにし、置き字は書かず、歴史的仮名遣いのまま書きます。

このページのポイント

  • 返り点にしたがって読む順に並べる
  • カタカナの送り仮名はひらがなにする
  • 助詞・助動詞にあたる字(不=ず・可=べし・也=なり・之=の・与=と・見/被=る・らる)はひらがな
  • 置き字は書かない。再読文字の二度目はひらがなで書く
  • かなづかいは歴史的仮名遣いのまま。音便にしない

はじめて(やさしく)

書き下し文(かきくだしぶん)は、漢文を日本語の文に書き直したものです。漢文は、もとは中国の文章なので、漢字だけが中国語の順番で並んでいます。これを日本人が読めるように、読む順番に並べかえ、ひらがなを足して、ふつうの「漢字かな交じり文」にしたのが書き下し文です。

漢文には、同じ文に三つの形があります。漢字だけの白文(はくぶん)、白文に返り点と送り仮名をつけた訓読文(くんどくぶん)、そして日本語の文にした書き下し文です。白文は「楽譜のない歌詞」、訓読文は「読み方の記号つきの楽譜」、書き下し文は「実際に歌ったときの言葉」と考えるとイメージしやすいでしょう。三つの形のくわしい説明は漢文とは(白文・訓読文・書き下し文の違い)にまとめています。

同じ文の三つの形(論語・学而)白文学而時習之漢字だけ(中国の原文)訓読文学ビテ而時ニ習フレ之ヲ書き下し文学びて時に之を習ふ日本語の文に直した形
白文・訓読文・書き下し文。書き下し文は、訓読文を読む順に並べて、送り仮名をひらがなにした文

書き下し文を作るときに守るきまりは、たった5つです。①返り点にしたがって読む順に並べる。②カタカナの送り仮名はひらがなにする。③日本語の助詞・助動詞にあたる字(不・也・之 など)はひらがなにする。④読まない置き字は書かない。⑤再読文字の二度目の読みはひらがなで書く。そして、かなづかいは歴史的仮名遣い(「思ふ」「言ふ」のような昔のかなづかい)のままにします。

書き下し文の5つのきまり1読む順に並べる返り点にしたがう2送り仮名はひらがなにカタカナ → ひらがな3助詞・助動詞の字はひらがな不→ず 也→なり 之→の4置き字は書かない而・於・矣 などは消す5再読文字の二度目はひらがな未だ〜ず 将に〜んとすかなづかいは歴史的仮名遣いのまま
書き下し文の5つのきまり。これだけ守れば、テストで減点されない書き下し文が書ける
まなぶくん

まなぶくん

「書き下し文」って、現代語訳とは違うんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

ぜんぜん違う。書き下し文は昔の日本語のままの文なんだ。「学びて時に之を習ふ」は書き下し文。「学んで、機会があるたびにくり返し習う」が現代語訳。書き下し文は、漢字はほとんどそのまま残して、順番と送り仮名だけ日本語にするんだよ。

ハルちゃん

ハルちゃん

だから「習ふ」の「ふ」も、今の「う」に直さないんですね。

ミスターT先生

ミスターT先生

そのとおり。書き下し文は歴史的仮名遣いのまま。ここで「習う」と書くと、テストでは減点されることが多いから注意しよう。

まずは中学校の教科書にも出てくる漢詩で、書き下し文の作り方を見てみましょう。漢字の横の丸い数字が読む順番です。レ点は「下の1字を読んでから、すぐ上の字に返る」という記号でした(返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方)。

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例文1 レ点が二つ続く(春眠暁を覚えず)

書き下し文春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く。

(孟浩然「春暁」)

現代語訳春の眠りは心地よく、夜が明けたのにも気づかない。あちらこちらで鳥の鳴く声が聞こえる。

ここがポイント「不」は打ち消しの助動詞「ず」にあたるので、書き下し文ではひらがなで「ず」と書きます。「覚」の送り仮名「エ」は、ひらがなの「え」にして「覚え」。レ点が二つ続くので「暁→覚→不」の順に返ります。
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例文2 「自」は「より」とひらがなに

書き下し文朋有り遠方より来たる、亦また楽しからずや。

(『論語』学而)

現代語訳友人が遠くから訪ねて来てくれる。なんと楽しいことではないか。

ここがポイント「自」は「〜から」という意味で、日本語の助詞「より」にあたるのでひらがなにします。文末の「乎」も、疑問・詠嘆の助詞「や」なのでひらがな。「不」は「ず」。漢字のまま残るのは「朋・有・遠方・来・亦・楽」です。
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

書き下し文で迷ったら、「この字は日本語の助詞・助動詞か?」と自分に聞いてごらん。そうならひらがな、そうでなければ漢字のまま。これが一番大事なコツだ。

ここまでのまとめ

  • 書き下し文=訓読文を日本語の漢字かな交じり文にしたもの
  • 送り仮名と、助詞・助動詞にあたる字(不・自・乎 など)はひらがな
  • 置き字は書かない。歴史的仮名遣いのまま書く

しっかり(共通テスト)

書き下し文の5つのきまり(表)

きまりやること例
① 読む順返り点にしたがって、日本語の順に並べる習レ之 → 之を習ふ
② 送り仮名カタカナの送り仮名はひらがなにする学ビテ → 学びて
③ 助字日本語の助詞・助動詞にあたる字はひらがなにする不 → ず/也 → なり/之 → の
④ 置き字読まない置き字は書かない(働きは送り仮名に表す)学而時習之 → 学びて時に…
⑤ 再読文字一度目は漢字+送り仮名、二度目はひらがな未ダ知 → 未だ知らず
仮名遣い歴史的仮名遣いのまま。現代仮名遣いに直さない言ふ・思ふ・曰はく
句読点訓読文の句読点(、。)はそのまま残す…を知らず、…

共通テストの漢文では、「返り点のつけ方と書き下し文の組み合わせとして正しいものを選べ」という形の問題がよく出ます。選択肢を比べるときは、どの字から読んでいるか(読む順)と、どの字がひらがなになっているかの二つを見ると、正解をすばやくしぼれます。

ひらがなにする字の一覧

きまり③の「日本語の助詞・助動詞にあたる字」は、数がかぎられています。よく出るものを表にまとめます。この表に出てくる字は、その読み方をするときだけひらがなにします。

字読み(書き下し文の形)日本語の品詞例
不・弗ず(ざる・ざれ など)助動詞(打消)知らず・知らざる
可べし(べから・べき など)助動詞畏るべし
也なり(断定)/や(呼びかけ・疑問)助動詞/助詞欲する所なり
之の助詞子の矛
与と(〜と〜と)/か・や(文末)助詞富と貴きと
自・従より助詞遠方より
乎・哉・邪・耶・与・歟や・か・かな助詞楽しからずや
者は(「〜は」の意味のとき)助詞〜者は(読み方は本で違う)
如・若ごとし助動詞(比況)朝露のごとし
使・令・教・遣しむ助動詞(使役)取らしむ
見・被る・らる助動詞(受身)疑はる・謗らる
為たり(断定)助動詞人の臣たり
耳・已・爾・而已のみ助詞(限定)〜のみ

「者」をひらがなの「は」と書くのは、「〜というものは」と主語を示すだけで「もの」と読まないときです。ふつうは「者(もの)」と読んで漢字のまま書くことのほうが多いので、問題文の読み方に合わせます。使役の「しむ」や受身の「る・らる」は、それぞれ古文の助動詞「す・さす・しむ」、古文の助動詞「る・らる」と同じ語です。

反対に、漢字のまま書くのは、名詞・動詞・形容詞・副詞・代名詞などにあたる字です。同じ字でも、品詞が変わると書き方も変わるので、下の図で比べておきましょう。

同じ字でも書き方が分かれる字漢字のままひらがなにする之之を(これを)代名詞の助詞可可なり形容動詞べし助動詞如如かず(しかず)動詞ごとし助動詞与与ふ(あたふ)動詞と助詞為為す・為る動詞たり助動詞自自ら(みづから)副詞より助詞日本語の助詞・助動詞になるときだけ、ひらがな
同じ字でも、日本語の助詞・助動詞になるときだけひらがな。代名詞・動詞・副詞なら漢字のまま

白文・訓読文から書き下し文を作る手順

  1. 返り点で読む順を決める。慣れないうちは、漢字の横に①②③…と番号をふる。レ点は「1字返る」、一二点は「2字以上離れて返る」。
  2. 読む順に漢字を書き出す。置き字(而・於・矣 など)はここで飛ばす。
  3. 漢字の右下の送り仮名を、ひらがなにして後ろにつける(学ビテ → 学びて)。
  4. 助詞・助動詞にあたる字(不・可・也・之・与・見・被・使 など)をひらがなにする。字の下に送り仮名があれば、それもひらがなでつなげる(不ル → ざる)。
  5. 再読文字は、一度目を漢字+送り仮名で書き、返ってきたところで二度目をひらがなで書く(未ダ…ズ → 未だ…ず)。
  6. 最後に、歴史的仮名遣いになっているか、句読点が訓読文と同じ位置にあるかを確かめる。
書き下し文を作る手順1返り点で読む順を決める番号をふると確実2漢字を読む順に並べる置き字は飛ばす3送り仮名をひらがなで足す学ビテ → 学びて4助詞・助動詞の字をひらがなに不 → ず 可 → べし5再読文字の二度目を足す未 → 未だ〜ず6仮名遣い・句読点を確かめるいふ・思ふ・、。
書き下し文を作る6つの手順。番号をふる→並べる→送り仮名→助字→再読文字→見直し

白文しかないときは、先に漢文の語順(主語・述語・目的語・補語)を手がかりに返り点をつけてから、この手順で書き下します。白文に返り点をつける練習は、国公立大学の二次試験でとくに大事です。

例文で確かめる

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例文3 置き字「而」は書かない

書き下し文子し曰はく、学びて時に之を習ふ、亦また説よろこばしからずや。

(『論語』学而)

現代語訳先生がおっしゃった。「学んで、機会があるたびにくり返し習って身につける。なんとうれしいことではないか。」

ここがポイント「而」は置き字なので書き下し文には書きません。「学びて」の「て」が、而の「そして」の働きを表しています(置き字(而・於・矣・焉)の働き)。「之」はここでは「これ」と読む代名詞なので漢字のまま「之を」と書きます。「曰はく」は歴史的仮名遣い。
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例文4 レ点の連続と置き字「於」

書き下し文己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。

(『論語』衛霊公)

現代語訳自分がしてほしくないことは、他人にもしてはいけない。

ここがポイント「不」は打消「ず」の連体形でひらがなの「ざる」。「於」は場所・対象を表す置き字で、書き下し文には出ず、送り仮名「ニ」が働きを受け持ちます。「勿」は禁止で「勿かれ」と漢字で書くのがふつうですが、「なかれ」とひらがなで書く本もあります。
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例文5 「与」は「と」、「也」は「なり」

書き下し文富と貴きとは、是これ人の欲する所なり。

(『論語』里仁)

現代語訳財産と高い地位とは、だれもが欲しがるものである。

ここがポイント「与」は「AとBと」の助詞「と」、文末の「也」は断定の助動詞「なり」なので、どちらもひらがなです。「也」を漢字のまま「也」と書くのは、もっとも多い減点の一つです。
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例文6 「可」は「べし」とひらがなに

書き下し文後生畏るべし。

(『論語』子罕)

現代語訳若い人たちは(これからどこまで伸びるかわからないので)おそれ敬うべきだ。

ここがポイント「可」は助動詞「べし」なので、ひらがなで「べし」。レ点で「畏」に返ってから「可」を読みます。故事成語「後生畏るべし」として今も使われます。
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例文7 「之」は「の」、「哉」は「や」

書き下し文燕雀安いづくんぞ鴻鵠こうこくの志を知らんや。

(『史記』陳渉世家)

現代語訳ツバメやスズメのような小さな鳥に、どうして大きな鳥(オオトリやクグイ)の志がわかるだろうか(いや、わからない)。

ここがポイントこの「之」は「AのB」の助詞「の」なのでひらがな。文末の「哉」は反語の助詞「や」でひらがな。「安くんぞ」は副詞なので漢字のまま。故事成語「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」の出典です。
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例文8 受身の「見・被」は「る・らる」

書き下し文信にして疑はれ、忠にして謗らる。

(『史記』屈原賈生列伝)

現代語訳誠実であるのに疑われ、忠義をつくしているのに悪口を言われる。

ここがポイント「見」「被」は受身の助動詞「る・らる」にあたるのでひらがな。下に続くので「見」は連用形の「れ」、文末の「被」は終止形の「る」になります。「而」は置き字で、送り仮名「ニシテ」に働きが表れています。
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例文9 使役の「使」は「しむ」

書き下し文王人をして之を取らしむ。

(自作)

現代語訳王は人に命じてそれを取らせた。

ここがポイント「使」は使役の助動詞「しむ」にあたるのでひらがな。一二三点で「之→取→使」と返ります。「人をして」の「をして」は、使役の相手を示す訓読特有の言い方です。
うかるくん

うかるくん

選択肢の書き下し文、どれも似ていて見分けがつかないよ……。

ミスターT先生

ミスターT先生

共通テストでは、ひらがなの部分を先に見るといい。「也」が漢字のまま残っていたり、置き字の「而」を「而して」と書いていたりする選択肢は、それだけで外せることが多いんだ。そのあとで読む順番を返り点と照らし合わせる。

サクラちゃん

サクラちゃん

「ひらがな→順番」の2段で見るんだね!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 書き下し文の「表記のゆれ」

書き下し文のきまりは、じつは細かいところで本によって違いがあります。たとえば副詞の「亦」は「亦た」とも「また」とも書かれ、「則」は「則ち」とも「すなはち」とも書かれます。禁止の「勿」も、「勿かれ」と「なかれ」の両方を見かけます。これらは日本語の副詞や形容詞にあたる字なので、漢字のまま書くのが基本ですが、読みやすさのためにひらがなにする本もあるのです。

表記がゆれる字(どちらも見かける)字漢字+送り仮名ひらがな亦亦たまた則則ちすなはち勿勿かれなかれ於於いておいて所所ところ也―なり(漢字「也」は×)迷ったら教科書・問題の指示に合わせる
書き下し文の表記のゆれ。亦・則・勿・於などはどちらも見かける。断定の也だけは必ず「なり」

一方で、「也(なり)」「不(ず)」「可(べし)」「之(の)」のように、日本語の助動詞・助詞にあたる字は、どの本でもひらがなにします。入試の記述問題では、本文に返り点・送り仮名があれば、それにそのまま従うのが鉄則です。「すべてひらがなで書け」「漢字は改めないで書け」などの指示があるときは、指示が最優先です。

「於」を「おいて」と読むとき(「是に於いて」)は、助詞ではなく動詞「おく」から来た言い方なので、「於いて」と漢字で書く本が多いのですが、「おいて」とひらがなで書く本もあります。置き字としての「於」(読まない)と、「おいて」と読む「於」の区別は、置き字のページでくわしく説明しています。

2. 再読文字・返読文字の書き下し

再読文字は、一度目を副詞として漢字+送り仮名で、二度目を助動詞としてひらがなで書きます。「未だ〜ず」「将に〜んとす」「当に〜べし」「宜しく〜べし」「須らく〜べし」「猶ほ〜ごとし」「盍ぞ〜ざる」です。二度目がひらがなになるのは、二度目が日本語の助動詞(ず・んとす・べし・ごとし)だからで、ここでもきまり③と同じ考え方が使われています。くわしくは再読文字(未・将・当・応・宜・須・猶・盍)の一覧と読み方へ。

難関大

例文10 再読文字「猶」の二度目は「ごとし」

書き下し文過ぎたるは猶なほ及ばざるがごとし。

(『論語』先進)

現代語訳やりすぎは、足りないのと同じようなものだ。

ここがポイント「猶」は一度目に副詞「猶ほ」と読み、レ点で返ってきたところで二度目を助動詞「ごとし」と読みます。二度目はひらがな。「不」も「ざる」とひらがなです。故事成語「過ぎたるは猶及ばざるが如し」は、ことわざとしては「如し」と漢字で書かれることもありますが、書き下し文では「ごとし」と書きます。

「有・無・多・少・難・易・不・非」などの返読文字(かならず下から返って読む字)は、ひらがなにするかどうかとは別の問題です。「不」はひらがな、「無(なし)」「非(あらず)」は漢字のまま書きます。どちらも打ち消しの意味ですが、「無」は形容詞「なし」、「非」は動詞「あり」+打消「ず」と考えるので、漢字のまま「無し」「非ず」となるのです。返読文字の一覧は返読文字(有・無・不・非・多・少・難・易)にあります。

難関大

例文11 「如」が動詞「しく」のときは漢字

書き下し文天の時は地の利に如かず。

(『孟子』公孫丑下)

現代語訳天が与えるよい時機も、地形の有利さにはかなわない。

ここがポイントこの「如」は「及ぶ・匹敵する」という意味の動詞「しく」なので、漢字のまま「如かず」と書きます。比況の「ごとし」(助動詞)ならひらがな。同じ字でも品詞で書き方が変わる、入試でねらわれやすい例です。

3. 漢詩の書き下し:句ごとに区切る

漢詩を書き下すときも、きまりは同じです。ただし、1句(1行)ずつ書き下し、句と句の間は読点や1字あけで区切ります。押韻(句の終わりの字の響きをそろえること)は書き下し文では見えなくなるので、押韻の問題は必ず白文で確かめます。

梁楷が描いた李白吟行図。白い衣の李白が、手を後ろに組み、顔を上げて歩いている。少ない筆数で描かれた水墨画
梁楷「李白吟行図」(南宋、13世紀)。詩を口ずさみながら歩く李白の姿と伝えられます。李白の「静夜思」は、日本の教科書でもよく読まれる五言絶句です。画像:梁楷「李白吟行図」(13世紀、東京国立博物館、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
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例文12 漢詩は1句ずつ書き下す

書き下し文頭を挙げて山月を望み、頭を低たれて故郷を思ふ。

(李白「静夜思」)

現代語訳頭を上げて山の上の月を眺め、頭をたれて故郷のことを思う。

ここがポイント第3句と第4句です。どちらも「レ点+一二点」の同じ形がくり返される対句。「思ふ」は歴史的仮名遣いで、「思う」と書くと誤りです。「低れて」は「たれて」と読みます。日本でよく読まれる本文は「挙頭望山月」ですが、中国の本では「明月」となっているものもあります。

4. 書き下し文と訓読の歴史

漢文を日本語の順に読みかえる「訓読」は、奈良時代から平安時代にかけて、お経や漢籍に点や小さな仮名を書きこむことから始まったとされます。漢字の四すみに点を打って「を」「に」などの助詞を表すヲコト点や、漢字の一部を取って作ったカタカナは、この書きこみの中で育ちました。送り仮名がいまもカタカナで書かれるのは、この歴史の名残です(送り仮名と訓読のことば)。

江戸時代には、訓点(返り点・送り仮名)をつけた漢籍が出版されて広く読まれ、林羅山の「道春点」、後藤芝山の「後藤点」、佐藤一斎の「一斎点」など、学者ごとの訓点の流儀がありました。明治時代になると、漢文訓読の言い回しをもとにした文体(漢文訓読調)が、法律や新聞などの文章に広く使われます。学校で教える訓読のしかたをそろえるため、明治45年(1912年)には文部省から訓読の基準についての報告が出され、これが今の教科書の読み方のもとの一つになったと説明されます。

訓読と書き下しのうつりかわり奈良〜平安漢文に点や仮名を書きこんで読むヲコト点・カタカナの始まり江戸時代訓点つきの本が広く出回る道春点・後藤点・一斎点など明治時代漢文訓読調の文体が広まる1912年 訓読の基準の報告今教科書の読み方が基本本によって少し違いがある
訓読と書き下しのうつりかわり。平安の書きこみから、江戸の訓点本、明治の基準づくりを経て今の教科書へ

こうした歴史があるため、書き下し文の細かい表記(送り仮名の量、ひらがなにする範囲)は、今でも本によって少しずつ違います。「どれが絶対に正しい」というより、「教科書と入試で一般的な形」があると考えるのがよいでしょう。この辞典の例文も、高校の教科書で一般的な読み方に合わせています。

5. 記述問題で差がつくポイント

  • 送り仮名が省かれた本文では、自分で活用語尾を補う。「欲」は「欲す(サ変)」、「学」は「学ぶ(四段)」など、文語の活用で考える(古文の活用形(未然形・連用形…))。
  • 「ば」の前の形に注意。「入らずんば」「聞かば」(未然形+ば=仮定)と「思はざれば」(已然形+ば=確定)は意味が違う(古文の接続助詞「ば」の未然形・已然形)。
  • 音便は使わないのが原則。「学んで」ではなく「学びて」、「思うて」ではなく「思ひて」。
  • 人名・地名など固有名詞は漢字のまま。書き下し文に読みがなを書く必要は、指示がなければない。
サクラちゃん

サクラちゃん

先生、書き下し文に「学んで」と書いたら×ですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

多くの採点では減点だね。書き下し文は漢文訓読の文語だから、音便のない「学びて」が基本。古文の文章なら音便も出てくるけれど、訓読では音便を避けるのが伝統なんだ。

よくあるまちがい

まちがい1:置き字を書き下し文に書いてしまう

「学而時習之」を「学び而時に之を習ふ」と書くのは誤り。置き字(而・於・于・矣・焉 など)は読まないので書きません。働きは送り仮名(て・に・より など)に表れています。

まちがい2:「也・不・可・之(の)」を漢字のまま書く

「欲する所也」「知ら不」は誤りで、「欲する所なり」「知らず」が正しい形です。日本語の助詞・助動詞にあたる字はひらがな。ただし、代名詞の「之(これ)」、動詞の「如(しく)」などは漢字のまま書きます。

まちがい3:現代仮名遣いで書く

「曰はく」を「曰わく」、「習ふ」を「習う」、「思ひて」を「思いて」と書くのは誤り。書き下し文は歴史的仮名遣いで書きます(歴史的仮名遣いの読み方・書き方)。

まちがい4:再読文字の二度目を漢字で書く、または書き忘れる

「未だ知ら未」や「未だ知る」は誤り。「未だ知らず」のように、二度目はひらがなの「ず」で書きます。

まちがい5:送り仮名をカタカナのまま書く

「学ビテ時ニ」のようにカタカナを残すのは訓読文の書き方です。書き下し文ではすべてひらがなにして「学びて時に」と書きます。

練習問題

練習問題はすべて合格大作戦の自作です。答えと解説は押すと開きます。

やさしい

  1. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。
    答えと解説を見る

    我之を知らず。

    レ点が二つ続くので「之→知→不」の順。「不」は助動詞「ず」なのでひらがな、「之」は代名詞「これ」なので漢字のまま。

  2. 次のうち、書き下し文でひらがなにする字をすべて選びなさい。 ア 山 イ 不 ウ 也 エ 書 オ 可
    答えと解説を見る

    イ・ウ・オ。「不(ず)」「也(なり)」「可(べし)」は日本語の助動詞にあたるのでひらがなにする。「山」「書」は名詞・動詞で漢字のまま。

ふつう

  1. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。
    答えと解説を見る

    学びて思はざれば則すなはち罔くらし。(『論語』為政)

    「而」は置き字なので書かない。「不」は已然形「ざれ」+「ば」でひらがな。「罔し(くらし)」は「はっきりしない」の意味。

  2. 「花与月皆美也。」(自作)に返り点はいらない。書き下し文にしなさい(与は「と」、也は「なり」と読む)。
    答えと解説を見る

    「花と月と皆美なり。」 「与」は「AとBと」の助詞「と」なのでひらがな。「AとB」でなく「AとBと」と、後ろにも「と」を補うのが訓読の言い方。「也」は断定「なり」でひらがな。「美」は「美なり」(形容動詞)として読む。

むずかしい

  1. 次の書き下し文には誤りが二つある。正しく直しなさい。「己の欲せ不る所は、人に施すこと勿かれ於。」
    答えと解説を見る

    正しくは「己の欲せざる所は、人に施すこと勿かれ。」(『論語』衛霊公)。①「不る」→打消の助動詞なのでひらがなの「ざる」。②「於」は置き字なので書かない(しかも位置も誤り)。

  2. 「如」の書き下し方について、「天の時は地の利に如かず」では漢字で書き、「人生は朝露のごとし」ではひらがなで書く理由を説明しなさい。
    答えと解説を見る

    前者の「如」は「及ぶ・匹敵する」という意味の動詞「しく」なので漢字のまま書く。後者の「如」は「〜のようだ」という比況の助動詞「ごとし」にあたるので、書き下し文のきまりにしたがってひらがなで書く。日本語の助詞・助動詞にあたるかどうかで書き分ける。

関連ページ

例文に出てきた言葉は、故事成語の一覧(意味・由来・出典)でも由来を読めます。歴史的仮名遣いに自信がない人は、古文文法辞典の「歴史的仮名遣い」で先に確かめておきましょう。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

書き下し文とは何ですか?

漢文の訓読文を、返り点にしたがって日本語の語順に並べ、送り仮名をひらがなにして書いた漢字かな交じりの文です。現代語訳ではなく、昔の日本語(文語)の文で、歴史的仮名遣いのまま書きます。

書き下し文でひらがなにする字はどれですか?

日本語の助詞・助動詞にあたる字です。不・弗(ず)、可(べし)、也(なり)、之(の)、与(と)、自・従(より)、乎・哉(や・か・かな)、如・若(ごとし)、使・令(しむ)、見・被(る・らる)、為(たり)、耳・已(のみ)などがあります。

置き字は書き下し文に書きますか?

書きません。而・於・于・乎・矣・焉などの置き字は読まない字なので、書き下し文からは消します。働きは、前の字の送り仮名(て・に・より など)に表れます。

再読文字は書き下し文でどう書きますか?

一度目は漢字に送り仮名をつけ、二度目はひらがなで書きます。たとえば「未」は「未だ〜ず」、「将」は「将に〜んとす」、「猶」は「猶ほ〜ごとし」です。

書き下し文は現代仮名遣いで書いてもいいですか?

いいえ。書き下し文は歴史的仮名遣いで書くのがきまりです。「曰はく」「習ふ」「思ひて」のように書き、「曰わく」「習う」とは書きません。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)、「中学校学習指導要領(平成29年告示)」国語
  • 例文の本文:『論語』(学而・衛霊公・里仁・子罕・先進・為政)、『孟子』公孫丑下、『史記』(陳渉世家・屈原賈生列伝)、孟浩然「春暁」、李白「静夜思」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 書き下し文のきまりは、高校の教科書・漢文句法の参考書で一般的な説明にもとづく。表記(亦た/また、勿かれ/なかれ など)は本によって違いがあり、本文中に記した
  • 画像:梁楷「李白吟行図」(13世紀、東京国立博物館、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦