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ひとことで言うと
返り点は、漢文を日本語の順番で読むために字の左下につける印です。レ点は1字上へ、一二点は一点まで読んだら二点へ、上下点は一二点をはさんで返り、返り点のある字はいったんとばしてあとで読みます。
このページのポイント
- 返り点は「読む順番」の指示。返り点のある字はとばして、あとで返って読む
- レ点=1字返る、一二点=2字以上返る、上下点=一二点をはさむ、甲乙点=上下点をはさむ
- 一レ点は「レ点で入って、一点で出る」。同じ字に2つつくのは 一レ・上レ・甲レ だけ
- 置き字は読む順番に入らず、再読文字は2回読む
- 白文に返り点をつけるときは、まず読む順番の番号をふる
はじめて(やさしく)
返り点は「読む順番」の指示
返り点(かえりてん)は、漢文を日本語の順番で読むための小さな印です。漢字の左下に小さく書かれ、「この字はとばして、あとで返って読みなさい」と教えてくれます。
なぜそんな印が要るのでしょうか。漢文はもともと中国の文章で、語の並ぶ順番が日本語とちがうからです。たとえば「本を読む」は、漢文では「読書」と書きます。「読む」が先、「本(書)」が後です。英語の read a book と同じ順番ですね。
日本人は昔から、この中国の文を日本語の順番に読みかえてきました。そのとき、どこから読んでどこへ返るかを、返り点で示します。返り点のしくみがわかれば、白い文字の列だった漢文が、日本語の文として読めるようになります。漢文の読み方の全体は漢文とは(白文・訓読文・書き下し文)で説明しています。
レ点:すぐ上の1字へ返る
いちばんよく出るのがレ点(れてん)です。カタカナの「レ」の形をしています。レ点がついた字はいったんとばし、すぐ下の字を読んだら、1字だけ上へ返って読みます。
書き下し文朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。
(『論語』里仁)
現代語訳朝に(人としての正しい)道を聞いて悟ることができたら、その日の夕方に死んでもかまわない。
一二点:2字以上はなれて返る
レ点は1字しか返れません。2字以上はなれた字へ返るときは一二点(いちにてん)を使います。一点の字まで読んだら、二点の字へ返る。これだけです。3字以上の段があれば「三」「四」と続きます。
書き下し文春眠暁を覚えず、処処啼鳥を聞く。
(孟浩然「春暁」)
現代語訳春の眠りは心地よく、夜が明けたのにも気づかない。あちこちで鳥のさえずる声が聞こえる。
まなぶくん
レ点と一二点って、どうちがうんですか? どっちも「返る」んですよね。
ミスターT先生
ちがいは返るきょりだ。となりの1字へ返るならレ点、2字以上はなれていたら一二点。「聞啼鳥」は「啼鳥」の2字をとびこえるから、レ点では足りないんだ。
ハルちゃん
じゃあ、数字の順番どおりに読めば、ぜったいまちがえないんですね!
ミスターT先生
そのとおり。最初は読む順番の番号を字の横に書きこんでみるといい。このページの例文の丸い数字がそれだよ。

ミスターT先生
返り点の読み方の基本は2つだけ。返り点のない字は上から順に読む。返り点のある字はとばして、返る合図が来たら戻る。これで中学の漢文はほぼ読めるよ。
ここまでのまとめ
- 返り点は、漢文を日本語の順番で読むための印。字の左下につく
- レ点:下の1字を読んで、すぐ上の字へ返る
- 一二点:一点の字まで読んだら、二点の字へ返る(2字以上はなれて返る)
しっかり(共通テスト)
返り点の種類の一覧
| 返り点 | 形 | 働き | 例 |
|---|---|---|---|
| レ点 | レ | すぐ下の1字を読んでから、1字上へ返る | 読レ書(書を読む) |
| 一二点 | 一・二・三・四 | 一点まで読んだら二点へ、二点のあと三点へ | 聞二啼鳥一(啼鳥を聞く) |
| 上下点 | 上・(中)・下 | 一二点をはさんで返る。上点まで読んだら(中点、)下点へ | 有下読二古書一者上(古書を読む者有り) |
| 甲乙点 | 甲・乙・丙・丁 | 上下点をはさんで返る | (入試ではまれ) |
| 一レ点 | 一レ | レ点で返った字が一点。すぐ二点へ返る | 鬻二盾与一レ矛(盾と矛とを鬻ぐ) |
| 上レ点 | 上レ | レ点で返った字が上点。すぐ下点へ返る | (自作の例は下の「もっと深く」) |
表の「例」は、返り点を字の右に書いた横書きの書き方です。縦書きの本では、返り点は字の左下にあります。
返り点の読み方の手順(1歩ずつ)
返り点がいくつ混ざっていても、次の手順で上から順にたどれば、かならず読めます。テストの前に何度も声に出して確かめましょう。
- いちばん上の字から見ていく。返り点のない字は、そのまま読む。
- 返り点のついた字は、いったんとばす(レ点・二点・三点・下点などの字は、まだ読まない)。
- レ点の字は、すぐ下の字を読んだ直後に読む。レ点が続いていれば、さらに1字上へ。
- 一点の字を読んだら、とばしておいた二点の字へ。三点があれば二点の次に三点へ。
- 上点の字を読んだら(中点、)下点の字へ。上下点は、一二点をふくむ大きな返り。
- 返った字を読み終えたら、まだ読んでいない、いちばん上の字から続ける。
- 置き字(而・於・矣など、うすい字)は読まない。再読文字は2回読む。
コツは、返り点を「宿題のメモ」と思うことです。二点の字に来たら「あとで読む」とメモして先へ進み、一点の字を読んだらメモを思い出して戻ります。
レ点と一二点を組み合わせる
共通テストの訓読文では、レ点と一二点が1文に混ざるのがふつうです。手順どおりにたどってみましょう。
レ点+一二点
書き下し文百聞は一見に如かず。
(『漢書』趙充国伝)
現代語訳人から百回聞くより、自分の目で一度見るほうがよい。
漢詩の対句
書き下し文頭を挙げて山月を望み、頭を低れて故郷を思ふ。
(李白「静夜思」)
現代語訳頭を上げて山の上の月をながめ、頭をたれて故郷を思う。
一二三点:3段で返る
二点の字のあと、さらに上へ返る字があるときは三点を使います。読む順は「一→二→三」。数字が大きいほど、あとで読みます。
一二三点
書き下し文故きを温めて新しきを知れば、以て師と為るべし。
(『論語』為政)
現代語訳昔のことをよく学び直して、そこから新しい知識や考えを得るなら、人の師となることができる。
上下点:一二点をはさむ
一二点をふくむ部分の外側から、さらに上へ返るときは上下点(じょうげてん)を使います。上点の字まで読んだら下点の字へ返る。3段なら「上・中・下」です。一二点の中にレ点が入ることがあるように、上下点の中には一二点やレ点が入ります。
上下点
書き下し文古書を読む者有り。
(自作)
現代語訳古い書物を読む人がいる。
一レ点:レ点で返った字から二点へ
一レ点は、一点とレ点が同じ字についたものです。まずレ点として下の字から1字返り、その字が一点なので、続けて二点の字へ返ります。「レ点が先、一点があと」と覚えましょう。
一レ点(矛盾)
書き下し文楚人に盾と矛とを鬻ぐ者有り。
(『韓非子』難一)
現代語訳楚の国の人に、盾と矛とを売る者がいた。
一レ点(守株)
書き下し文復た兎を得んことを冀ふ。
(『韓非子』五蠹)
現代語訳もう一度うさぎを手に入れたいと願った。
サクラちゃん
一レ点のとき、「一」と「レ」のどっちを先に使うのか、いつも迷っちゃう…。
ミスターT先生
レ点が先だ。レ点は「すぐ下の字を読んだら返る」印だから、その字に来た時点ではまだ読めない。下の字を読んで返ってきて、その字を読んだあとで一点の役目(二点へ返る)が働くんだ。
うかるくん
「レで入って、一で出る」って覚えればいいんですね!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 甲乙点・天地人点:さらに外側の返り
上下点の外側から、さらに返るときは甲乙点(こうおつてん)を使います(甲・乙・丙・丁)。それでも足りなければ天地人点(てんちじんてん)(天・地・人)を使うと説明されます。入試の問題文で甲乙点を見ることはまれですが、しくみは同じで、内側の返りをすべて終えてから外側へ返るだけです。
甲乙点
書き下し文書を読む者を好む人有り。
(自作)
現代語訳本を読む人を好む人がいる。
2. 上レ点
上レ点は、一レ点と同じしくみで、レ点で返った字が上点になっているものです。レ点で1字返り、続けて下点の字へ返ります。同じ字に2つの返り点がつく組み合わせは、一レ・上レ・甲レのように「レ点+いちばん下の段(一・上・甲)」に限られます。「二レ」「下レ」のような組み合わせはありません。
上レ点
書き下し文名声の為に古書を読まず。
(自作)
現代語訳評判(を得ること)のために古い書物を読むのではない。
3. 竪点(たててん):熟語に返るとき
2字の熟語へ返るとき、2字の間に短い線(竪点。「合符(ごうふ)」ともいう)を入れて、2字で1語であることを示す書き方があります。竪点のある2字は続けて読み、それからまとめて返ります。返り点は熟語の上の字の左下につけるのがきまりです。
教科書や問題集では竪点を省いて、熟語の上の字に返り点をつけるだけのことも多いので、熟語は2字続けて読むと覚えておけば困りません。
4. 白文に返り点をつける問題
国公立二次や難関私大では、白文(返り点のない文)に返り点をつける問題や、書き下し文にしたがって返り点をつける問題が出ます。返り点を「読む」だけでなく「つける」側に回ると、手順は次のようになります。
- 書き下し文(または自分の訳)を見て、白文の各字に読む順番の番号を書きこむ。
- 番号が1つ前の字へ戻るところにレ点をつける。
- 2字以上もどるところは、返る先に二点、返る直前の字に一点をつける。
- 一二点の外側からさらに返るところは上下点にする(中に一二点があれば外は上下。中がレ点だけなら一二点のまま)。
- 最後に、番号どおりに読めるかを手順でたどって確かめる。
このとき大事なのは、返り点は「どの字からどの字へ返るか」だけを示し、送り仮名とは別だということです。書き下し文に「を」「に」があれば、それは送り仮名の仕事です(送り仮名と訓読のことば)。また「不・無・有・使・為・於」などは、下から返って読むことの多い字(返読文字)なので、これらを見たら「返り点がつくかも」と考えるのが近道です。
5. 返り点と再読文字・置き字
再読文字(未・将・当・応など)は、1回目は返り点を無視して読み、2回目は返り点にしたがって返って読みます。番号が2つつくのはそのためです(再読文字(未・将・当・応)の一覧)。いっぽう置き字(而・於・于・矣など)は読まない字なので番号がつかず、返り点の数え方からも外して考えます。「施二於人一」のように、置き字が一二点の間にはさまっていても、読むのは「人」→「施」です。
再読文字と返り点
書き下し文未だ生を知らず、焉くんぞ死を知らん。
(『論語』先進)
現代語訳まだ生きることさえわかっていないのに、どうして死のことがわかろうか。
6. 返り点の歴史:昔は今と同じではなかった
日本で漢文に読み方の印をつけることは、平安時代の仏教のお経や漢籍の書き入れから広まったと考えられています。当時は、字の四すみなどに打つ点の位置で「を」「こと」などを表すヲコト点も使われました。返り点の形や使い方は時代や学派によって少しずつちがい、今の学校で習う形は、明治時代の終わりに文部省がまとめた報告(1912年の「漢文教授ニ関スル調査報告」)などをもとにそろえられてきたと説明されます。江戸時代の版本には、今のきまりと少しちがう返り点のつけ方が見られることもあります。

江戸時代の版本を見ると、返り点と送り仮名だけで、漢文を日本語の文として読めるように工夫されていたことがよくわかります。訓読のしくみの歴史は漢文とは(白文・訓読文・書き下し文)のページでもくわしく扱っています。
うかるくん
返り点って、昔からずっと同じルールだと思ってました。
ミスターT先生
大きなしくみは同じだが、細かいところは人や時代でちがったんだ。だから入試でも、学校で習う標準のきまりで読み、つけるのがいちばん安全だよ。
よくあるまちがい
まちがい1:二点の字を先に読んでしまう
返り点のついた字はいったんとばすのが基本です。「聞二啼鳥一」を「聞く啼鳥」と上から読むのはまちがい。一点の「鳥」まで読んでから「聞」へ返ります。
まちがい2:一レ点で、先に二点へ返ってしまう
一レ点の字は、まずレ点としてすぐ下の字のあとに読み、そのあとで一点として二点へ返ります。「レで入って、一で出る」と覚えましょう。
まちがい3:2字以上返るのにレ点をつける
白文に返り点をつける問題で多いミスです。レ点は1字だけ返る印。2字以上はなれて返るなら一二点を使います。逆に、1字だけ返るのに一二点をつけるのも誤りです。
まちがい4:置き字に番号をふってしまう
而・於・矣などの置き字は読まないので、読む順番には入りません。書き下し文にも書きません(置き字の一覧)。
練習問題
やさしい
- 次の訓読文の読む順番を、字で答えなさい。読ムレ書ヲ。
答えと解説を見る
「書 → 読」。レ点なので、下の「書」を読んでからすぐ上の「読」へ返る。書き下し文は「書を読む。」
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。登ル二高山ニ一。
答えと解説を見る
「高山に登る。」二点の「登」をとばし、「高山」を読んで一点の「山」まで来たら「登」へ返る。(自作の文)
ふつう
- 次の訓読文の読む順番を、番号で答えなさい(上から①②…とする)。不レ如カ二一見ニ一。
答えと解説を見る
上から①不 ②如 ③一 ④見 とすると、読む順は③→④→②→①(一・見・如・不)。書き下し文は「一見に如かず。」
- 次の書き下し文になるように、白文「有読書人」に返り点をつけなさい。
書き下し文:「書を読む人有り。」(自作)答えと解説を見る
読む順は「書・読・人・有」。「読」は1字下の「書」から返るのでレ点。「有」は「読書人」の3字をこえて返るので二点、返る直前の「人」に一点。答え:有二読レ書人一(有の左下に二、読の左下にレ、人の左下に一)。
むずかしい
- 次の訓読文を書き下し文にし、どの返り点がどの順で働くか説明しなさい。楚人ニ有リ下鬻グ二盾ト与ヲ一レ矛者上。
答えと解説を見る
書き下し文:「楚人に盾と矛とを鬻ぐ者有り。」まず「矛」からレ点で「与」へ、「与」は一点でもあるので二点の「鬻」へ、次に「者」(上点)から下点の「有」へ返る。内側から レ点→一二点→上下点 の順。
- 次の書き下し文になるように、白文「不為利読書」に返り点をつけなさい。
書き下し文:「利の為に書を読まず。」(自作)答えと解説を見る
読む順は「利・為・書・読・不」。「為」へは1字返るのでレ点(為レ利)。「読」へも1字返るのでレ点(読レ書)。「不」は4字をこえて返るので一二点。中にあるのはレ点だけなので、上下点にしなくてよい。「不」へ返る直前に読むのは「読」で、「読」はすでにレ点がつく字。そこで「読」に一レ点、「不」に二点をつける。答え:不二為レ利読一レ書。
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- 漢文文法・句法辞典の目次
この返り点のページに出てきた故事は、「矛盾」の意味と由来(韓非子)・「守株(株を守る)」の意味と由来(韓非子)で、話の全体を読めます。
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宋の詩人・杜黙の故事 - 古典と古文と漢文の違い
作品年表と共通テストの配点
受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
よくある質問
返り点とは何ですか?
漢文を日本語の語順で読むために、漢字の左下に小さく書く記号です。返り点のある字はいったんとばし、指示にしたがって下から上へ返って読みます。
レ点と一二点のちがいは?
レ点はすぐ上の1字へ返る印、一二点は2字以上はなれた字へ返る印です。一点の字まで読んだら二点の字へ返ります。
一レ点はどう読みますか?
まずレ点として、すぐ下の字を読んだあとにその字を読み、続けて一点として二点の字へ返ります。「レ点が先、一点があと」です。
上下点はいつ使いますか?
一二点をふくむ部分をはさんで、さらに上の字へ返るときに使います。上点の字まで読んだら下点の字へ返ります。
返り点の種類はいくつありますか?
基本はレ点・一二点・上下点・甲乙点の4種類で、組み合わせの一レ点・上レ点などがあります。さらに外側の天地人点もあると説明されますが、入試ではまれです。
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出典・参考
- 文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」国語、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(里仁・為政・先進)、『漢書』趙充国伝、『韓非子』(五蠹・難一)、孟浩然「春暁」、李白「静夜思」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による。「自作」とした例文は合格大作戦の作例
- 返り点の歴史:文部省「漢文教授ニ関スル調査報告」(1912年)などについての一般的な説明による
- 画像:風来山人訳『刪笑府』(1776年刊)の頁、撮影:ウィキ太郎(WikiTaro)、Wikimedia Commons・パブリックドメイン
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



