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大学受験難関大
ひとことで言うと
二重否定は否定の字を2つ重ねて強い肯定を表す形で、無不A=Aざるは無し(みなAする)、不可不A=Aざるべからず(Aしなければならない)、未嘗不A=未だ嘗てAずんばあらず(いつもAした)などがあります。直訳してから肯定に言いかえるのがコツです。
このページのポイント
- 二重否定=否定×否定=強い肯定
- 無不・莫不=Aざるは無し(みなAする)
- 不可不=Aざるべからず(義務)、不得不=Aざるを得ず
- 不敢不・未嘗不=〜ずんばあらず(下の不=ずんば、上=あらず)
- 非不・非無は「〜でないわけではない」というひかえめな肯定
はじめて(やさしく)
二重否定(にじゅうひてい)とは、否定の字を2つ重ねて、強い肯定(「必ず〜する」「みんな〜だ」)を表す言い方です。たとえば「無不笑」は「笑はざるは無し」と読み、「笑わない者はいない」、つまり「みんな笑う」という意味になります。数学の「マイナス×マイナス=プラス」と同じしくみです。
二重否定の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| 無不A | Aざる(は)無し | Aしないものはない(みなAする) |
| 莫不A | Aざる(は)莫し | Aしないものはない(みなAする) |
| 無非A | Aに非ざる(は)無し | Aでないものはない(すべてAだ) |
| 莫非A | Aに非ざる(は)莫し | Aでないものはない(すべてAだ) |
| 無A不B | AとしてBざる(は)無し | どんなAでもBする |
| 非不A | Aざるに非ず | Aしないのではない |
| 非無A | A無きに非ず | Aがないのではない(Aはある) |
| 不可不A | Aざるべからず | Aしなければならない |
| 不能不A | Aざる(こと)能はず | Aしないではいられない |
| 不得不A | Aざるを得ず | Aしないわけにはいかない |
| 不敢不A | 敢へてAずんばあらず | 決してAしないことはない |
| 未嘗不A | 未だ嘗てAずんばあらず | Aしなかったことは一度もない |
数が多く見えますが、どれも否定の字+否定の字+Aの形です。読むときは、いちばん下のAから読み、近い否定の字から順に上へ返るだけです。それぞれの否定の字の読み方は否定(不・弗・無・莫・非・未)の読み方で確かめておきましょう。
うかるくん
「笑わない者はいない」って、ふつうに「みんな笑った」って言えばよくない?
ミスターT先生
そこがポイントだ。「みんな笑った」よりも「笑わない者は一人もいなかった」のほうが、例外がないことをはっきり言えて強く聞こえるだろう? 二重否定は、ただの肯定より強調したいときに使うんだ。
サクラちゃん
日本語でも「行かないわけにはいかない」って言うと、「行く」より気持ちがこもりますね。
無不(Aざるは無し)
白文村人無不喜。
書き下し文村人喜ばざるは無し。
(自作)
現代語訳村人で喜ばない者はいなかった(村人はみな喜んだ)。

ミスターT先生
二重否定は、まず直訳(〜しないものはない)してから、肯定に言いかえる(みな〜する)。この2段で考えれば、選択肢の訳でまよわないよ。
ここまでのまとめ
- 二重否定=否定を2つ重ねた強い肯定
- 読み方は下から順に返る(笑はざるは無し)
- 訳は「〜しないものはない」→「みな〜する」と言いかえる
しっかり(共通テスト)
二重否定の4つの型
二重否定は、読み方の終わり方で4つの型に分けると覚えやすくなります。共通テストでは、書き下し文の選択肢で「ざるは無し」「ざるべからず」「ずんばあらず」の形が正しいかどうかがよく問われます。
| 型 | 句形 | 読み | 意味の強さ |
|---|---|---|---|
| ざるは無し型 | 無不・莫不・無非・莫非 | Aざる(に非ざる)は無し | すべて・例外なし(最も強い) |
| ざるべからず型 | 不可不・不能不・不得不 | Aざるべからず・Aざる能はず・Aざるを得ず | 義務・必然 |
| ずんばあらず型 | 不敢不・未嘗不 | 敢へて(未だ嘗て)Aずんばあらず | いつも・決して〜しないことはない |
| に非ず型 | 非不・非無 | Aざるに非ず・A無きに非ず | 〜でないわけではない(ひかえめ) |
読み方の手順
- 否定の字が2つ続いているか確かめる(無不・非不・不可不・未嘗不 など)。間に「可・能・得・敢・嘗」などが入ることもある。
- いちばん下のAを読む。Aは「ず」に続くので未然形にする(笑ふ→笑は、知る→知ら)。
- 下の否定の字を読む。上の語へ続くので「ざる」(連体形)か「ずんば」になることが多い。
- 上の否定の字を読む。「無し・莫し・非ず・べからず・あらず」で結ぶ。
- 直訳してから肯定に言いかえる。強さ(すべて・義務・ひかえめ)も訳に出す。
例文で確かめる
不可不(Aざるべからず)
書き下し文父母の年は、知らざるべからざるなり。
(『論語』里仁)
現代語訳父母の年齢は、知っておかなければならない。
莫非(Aに非ざるは莫し)
書き下し文溥天の下、王土に非ざるは莫し。
(『詩経』小雅「北山」)
現代語訳広い天の下で、王の土地でない所はない(天下の土地はすべて王のものだ)。

不敢不(敢へてAずんばあらず)
書き下し文喪事は敢へて勉めずんばあらず。
(『論語』子罕)
現代語訳葬式のことは、決して力をつくさないということはない(必ず力をつくす)。
非不(Aざるに非ず)
書き下し文城高からざるに非ざるなり、池深からざるに非ざるなり。
(『孟子』公孫丑下)
現代語訳城壁が高くないわけではない。堀が深くないわけではない。
莫不(Aざるは莫し)
書き下し文天下其の名を知らざるは莫し。
(自作)
現代語訳世の中でその名前を知らない者はいない(だれもが知っている)。
無A不B(AとしてBざるは無し)
書き下し文聞く者一人として泣かざるは無し。
(自作)
現代語訳聞いた人は一人残らず泣いた。
サクラちゃん
「敢へて勉めずんばあらず」の「ずんば」と「あらず」、どっちの「不」がどっちですか?
ミスターT先生
下の「不」が先に読まれるから「ずんば」、上の「不」があとで「あらず」だ。「ずんばあらず」と1つの言葉として口で覚えてしまうのがいちばんだよ。「未だ嘗て〜ずんばあらず」も同じ形だ。
うかるくん
「ざるべからず」も「ずんばあらず」も、声に出すとリズムで覚えられるね!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「ずんばあらず」の成り立ち
「〜ずんばあらず」は、打消の「ず」に係助詞「は」がついた「ずは」が、発音の変化で「ずんば」になったものに、上の否定「あらず」が続いた形だと説明されます。直訳すると「〜しないということはない」です。「未だ嘗て〜ずんばあらず」「敢へて〜ずんばあらず」のほか、「不A不B(AずんばBず)」の「ずんば」も同じ形です。
未嘗不(未だ嘗てAずんばあらず)
書き下し文先生未だ嘗て笑はずんばあらず。
(自作)
現代語訳先生は今まで一度も笑わなかったことはない(いつも笑顔だった)。
2. 「非不」「非無」はひかえめな肯定
同じ二重否定でも、「非」を使う形は強い肯定とはかぎりません。「非無A(A無きに非ず)」は「Aがないわけではない(少しはある)」というひかえめな言い方になることが多く、訳で「Aがたくさんある」と強く言いすぎると誤りになります。難関大の記述では、この強さのちがいまで訳に出すことが求められます。
非無(A無きに非ず)
書き下し文彼才無きに非ず、学ばざるのみ。
(自作)
現代語訳彼は才能がないわけではない。学ばないだけだ。
3. 「不能不」「不得不」:気持ち・事情による二重否定
「不可不」は義務(〜しなければならない)ですが、「不能不A(Aざる能はず)」は「Aしないではいられない」と気持ちをおさえられないこと、「不得不A(Aざるを得ず)」は「Aしないわけにはいかない」と事情でしかたなくすることを表します。現代語の「〜せざるを得ない」はこの漢文訓読から来た言い方です。
不能不(Aざる能はず)
書き下し文之を見て泣かざる能はず。
(自作)
現代語訳これを見て、泣かずにはいられなかった。
不得不(Aざるを得ず)
書き下し文吾去らざるを得ず。
(自作)
現代語訳私は立ち去らないわけにはいかない。
4. 反語と否定の組み合わせ
反語(「どうして〜か、いや〜ない」)は、それ自体が打ち消しの働きをもちます。そのため「豈不A乎(豈にAざらんや)」のように反語と否定が組むと、二重否定と同じく強い肯定になります。「どうしてAしないことがあろうか、いや必ずAする」と訳します。くわしくは反語(豈・安・何〜乎)で扱います。また、韓愈「師説」の「弟子は必ずしも師に如かずんばあらず」は、部分否定と二重否定が組み合わさった形で、部分否定と全部否定(不常・常不、不必・必不)で読み解きます。
5. 二重否定とまちがえやすい形
否定の字が2つ出てきても、二重否定ではない形があります。白文で否定の字が2つ並んでいたら、上の否定が下の否定を打ち消しているのか、それとも別々の語を打ち消しているのかを確かめます。
| 形 | 読み | 意味 | 二重否定か |
|---|---|---|---|
| 不A不B | AずんばBず | AしなければBしない(条件) | ちがう(否定が2か所) |
| 無A無B | Aと無くBと無く | AでもBでも区別なく | ちがう(並べる形) |
| 不亦A乎 | 亦たAならずや | なんとAではないか(詠嘆) | ちがう(詠嘆の形) |
| 莫敢不A | 敢へてAざるは莫し | だれもAしない者はいない | 二重否定(無不の仲間) |
たとえば「不入虎穴、不得虎子(虎穴に入らずんば、虎子を得ず)」は、「虎の穴に入らなければ、虎の子は手に入らない」という条件の文で、否定はそれぞれ別の動詞にかかっています(返読文字の一覧(有・無・不・非)の例文)。また「不亦説乎(亦た説ばしからずや)」は「なんとうれしいことではないか」という詠嘆(嗚呼・哉・不亦〜乎)の形で、打ち消しの意味はありません。「否定の字の数」ではなく、どの語がどの語を打ち消しているかで判断しましょう。

サクラちゃん
二重否定は強さまで見る! 「無不・莫不」はみんな、「不可不」は義務、「非不・非無」は〜でないわけではない。訳の選択肢はここで分かれるんですね。
よくあるまちがい
まちがい1:否定のまま訳して終わる
「笑はざるは無し」を「笑わない」と訳すのは誤り。否定が2つで肯定です。「笑わない者はいない(みな笑う)」と訳します。
まちがい2:「ざる」を「ず」のままにする
「知らずべからず」「笑はずは無し」は誤り。下の否定の字は上へ続くので連体形「ざる」(知らざるべからず、笑はざるは無し)にします。
まちがい3:「ずんば」と「あらず」の位置を逆にする
「不敢不勉」は「敢へて勉めずんばあらず」。下の不=ずんば、上の不=あらず。「あらずんば」とはなりません。
まちがい4:「非不」「非無」を強く訳しすぎる
「才無きに非ず」は「才能がないわけではない」。「才能にあふれている」と訳すと言いすぎです。
まちがい5:「不得不」の「を」を落とす
「去らざる得ず」は誤り。「去らざるを得ず」と「を」を入れます。
練習問題
やさしい
- 次の句形の読み方を答えなさい。
(1)無不A (2)不可不A答えと解説を見る
(1)Aざる(は)無し(Aしないものはない=みなAする) (2)Aざるべからず(Aしなければならない)。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)人莫シレ不ルハレ笑ハ。
答えと解説を見る
人笑はざるは莫し。(人笑はざるは莫し。)意味は「笑わない人はいない(みな笑った)」。
ふつう
- 次の訓読文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)学ハ不ルレ可カラレ不ルレ勉メ。
答えと解説を見る
書き下し文:学は勉めざるべからず。 訳:学問は努めなければならない。「不可不A」は義務。
- 「無不A」と「非不A」は、どちらがより強い肯定か。理由もあわせて答えなさい。
答えと解説を見る
無不Aのほうが強い。「無不A」は「Aしないものはない」で例外がないことを言うが、「非不A」は「Aしないのではない」と、ある考えを打ち消すだけで、ひかえめな肯定になることが多いから。
むずかしい
- 次の白文を書き下し文にし、訳しなさい。(自作)
「無一日不読書」答えと解説を見る
書き下し文:一日として書を読まざるは無し。 訳:一日も本を読まない日はない(毎日必ず本を読む)。「無A不B」は「AとしてBざるは無し」。
- 「未嘗不泣」の書き下し文を書き、「未」の読み方について説明しなさい。
答えと解説を見る
書き下し文:未だ嘗て泣かずんばあらず(泣かなかったことは一度もない)。「未」は再読文字で、一度目は「未だ」、二度目はふつう「ず」と読むが、下の「不」と二重否定になるため、二度目は「あらず」と読む。下の「不」は「ずんば」となる。
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よくある質問
漢文の二重否定とは何ですか?
否定の字を2つ重ねて、強い肯定を表す句法です。例えば無不Aは「Aざるは無し」と読み、Aしないものはない、つまりみなAするという意味になります。
「ずんばあらず」はどう読み、どう訳しますか?
不敢不Aや未嘗不Aで、下の不を「ずんば」、上の不(未)を「あらず」と読みます。「Aしないということはない」、つまり必ずAするという意味です。
「不可不」と「不得不」の違いは?
不可不Aは「Aざるべからず」でAしなければならない(義務)、不得不Aは「Aざるを得ず」でAしないわけにはいかない(事情でしかたなく)という意味です。
「不入虎穴、不得虎子」は二重否定ですか?
ちがいます。「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」と読み、2つの否定はそれぞれ別の動詞を打ち消しています。「Aしなければ、Bできない」という条件の文です。
二重否定はいつも強い肯定ですか?
無不・莫不・不可不などは強い肯定ですが、非不A・非無Aは「Aでないわけではない」というひかえめな肯定になることが多く、強さに差があります。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(里仁・子罕)、『詩経』小雅「北山」、『孟子』公孫丑下。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による。「自作」とした例文は合格大作戦の作例
- 高校の漢文句法の標準的な説明(二重否定の読み・意味)にもとづいて作成。「ずんば」の成り立ちは一般的な説明による
- 画像:馬和之の作と伝える「詩経小雅鴻雁之什六篇図」(南宋、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・CC0)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



