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ひとことで言うと
漢文の比較は、形容詞の下に「於」を置く「A+形容詞+於B(AはBよりも〜)」と、「A不如B(AはBに如かず=AはBに及ばない)」が基本です。「莫如B(Bに如くは莫し)」「莫A於B(BよりAなるは莫し)」は「Bがいちばん」という最上級になります。
このページのポイント
- A+形容詞+於B=AはBよりも〜(於は置き字)
- A不如B・A不若B=AはBに如かず=Bの方が上
- 莫如B・莫若B=Bに如くは莫し=Bがいちばんよい
- 莫(無)A於B=BよりAなるは莫し=Bがいちばん〜(最上級)
- 比較は選択(寧A無B・与其A寧B)につながる
はじめて(やさしく)
比較(ひかく)とは、「AはBよりも〜だ」「AはBに及ばない」のように、2つのものをくらべる言い方です。漢文では、形容詞のあとに置く「於(よりも)」、「不如・不若(〜に如かず)」、「莫如・莫若(〜に如くは莫し)」などで表します。まず公式の表を見ましょう。
比較の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| A 形容詞 於 B | AはBよりも形容詞 | AはBよりも〜だ |
| A 不如 B | AはBに如かず | AはBに及ばない(Bの方がよい) |
| A 不若 B | AはBに若かず | AはBに及ばない(不如と同じ) |
| 莫如 B | Bに如くは莫し | Bにまさるものはない(Bがいちばんよい) |
| 莫若 B | Bに若くは莫し | Bにまさるものはない(莫如と同じ) |
| 莫 A 於 B | BよりAなるは莫し | BよりAなものはない(Bがいちばん〜) |
| 無 A 於 B | BよりAなるは無し | BよりAなものはない(莫と同じ) |
| A 孰与 B | AはBに孰与ぞ | AはBとくらべてどうか |
日本語では「虎よりおそろしい」のように、くらべる相手に「より」をつけます。漢文では、形容詞(どんなだ)のすぐ下に「於+くらべる相手」を置きます。「於」は読まない置き字で、相手の語に送り仮名「ヨリ(モ)」をつけて表します。
孔子が泰山のふもとを通りかかったとき、家族を次々に虎に殺されても、この土地をはなれない女性に出会いました。理由をたずねると、「ここにはむごい政治がないから」という答え。そこで孔子が弟子たちに言った言葉です。丸の数字が読む順番です。
A+形容詞+於B(Bよりも〜)
白文苛政猛於虎也。
書き下し文苛政は虎よりも猛なり。
(『礼記』檀弓下)
現代語訳むごい政治は、人食い虎よりもおそろしいものだ。
うかるくん
「於」って、受身のときも出てきたよね? 同じ字なのに比較になるの?
ミスターT先生
よく覚えていたね。「於」は上の語の種類で役目が変わる。上が形容詞なら比較(〜よりも)、上が動詞で主語がされる側なら受身(〜に〜される)。くわしくは受身の句法(見・被・為〜所〜・於)で読めるよ。
サクラちゃん
「猛」「青」「寒」みたいな、ようすを表す字の下の「於」は比較なんですね!
もう1つの大事な形が「不如(〜に如かず)」です。「如」は「しく(及ぶ・追いつく)」と読み、「不如」で「及ばない」。つまり「A不如B」は「AはBに及ばない=Bの方がよい」です。てんびんで言えば、B側が重いのです。
不如(〜に如かず)
書き下し文百聞は一見に如かず。
(『漢書』趙充国伝)
現代語訳百回話を聞くことは、一回自分の目で見ることに及ばない。

ミスターT先生
比較は「於」と「如」の2本柱。形容詞の下の「於」は「〜よりも」、「不如」は「〜に如かず(及ばない)」。どちらが上かを、訳でまちがえないようにしよう。
ここまでのまとめ
- 比較=2つのものをくらべる。形容詞+於+B=Bよりも〜
- A不如B=AはBに如かず=AはBに及ばない(Bの方がよい)
- 「於」は置き字で読まず、相手の語に「ヨリ(モ)」をつける
しっかり(共通テスト)
比較の4つの型
比較の句法は、2つのものをくらべる型(A+形容詞+於B、A不如B)と、いちばんを言う型(莫如B、莫A於B)に分けると整理できます。後ろの2つは、英語でいう最上級にあたります。
| 型 | 例(白文) | 書き下し | 訳 |
|---|---|---|---|
| A+形容詞+於B | 苛政猛於虎 | 苛政は虎よりも猛なり | むごい政治は虎よりもおそろしい |
| A不如B | 百聞不如一見 | 百聞は一見に如かず | 百回聞くのは一回見るのに及ばない |
| 莫如B | 莫如貴徳而尊士 | 徳を貴びて士を尊ぶに如くは莫し | 徳を重んじ士を尊ぶのがいちばんよい |
| 莫A於B | 莫柔弱於水 | 水より柔弱なるは莫し | 水よりやわらかく弱いものはない |
読み方の手順
- 比較の目印をさがす:形容詞の下の「於(于・乎)」、「不如・不若」、「莫如・莫若」、「莫・無+形容詞+於」。
- くらべる相手(B)に送り仮名をつける:「於」の形なら「ヨリ(モ)」、「如・若」の形なら「ニ」。
- 「如・若」は「しく」と読む:不如=如かず、莫如=如くは莫し。「不・莫」はレ点で最後に読む返読文字。
- どちらが上かを確かめて訳す:A不如BならB、莫如BならBがいちばん。
例文で確かめる
形容詞+於(藍よりも青し)
書き下し文青は之を藍より取りて、藍よりも青し。氷は水之を為して、水よりも寒し。
(『荀子』勧学)
現代語訳青色は藍草から取るが、もとの藍草よりも青い。氷は水からできるが、水よりも冷たい。
不如(AはBに如かず)
書き下し文之を知る者は之を好む者に如かず、之を好む者は之を楽しむ者に如かず。
(『論語』雍也)
現代語訳物事を知っている人は、それを好きな人に及ばない。好きな人は、それを楽しんでいる人に及ばない。
不若(〜に若かず)
書き下し文吾彼に若かず。
(自作)
現代語訳私はあの人に及ばない。
莫如(〜に如くは莫し)
書き下し文如し之を悪まば、徳を貴びて士を尊ぶに如くは莫し。
(『孟子』公孫丑上)
現代語訳もし(恥をかくのが)いやならば、徳を重んじ、りっぱな人物を尊重するのがいちばんよい。
莫若(〜に若くは莫し)
書き下し文国を治むるは賢を得るに若くは莫し。
(自作)
現代語訳国を治めるには、すぐれた人材を得るのがいちばんよい。
サクラちゃん
「如かず」と「如くは莫し」、どっちも「如」なのに、どう違うんですか?
ミスターT先生
「不如」は2つをくらべて「AはBに及ばない」。「莫如」は全部とくらべて「Bに及ぶものはない」、つまりBがいちばん。不は「ず」、莫は「なし」と読むところから区別しよう。
うかるくん
不如は2人の勝負、莫如はみんなの中で優勝!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 最上級:「莫A於B」「無A於B」
「莫(無)+形容詞+於+B」は、「BよりAなるは莫し(Bよりも〜なものはない)」と読み、「Bがいちばん〜だ」という最上級を表します。「莫」「無」は下から返って読む「なし」で、その上の形容詞には「なるは」「きは」をつけて名詞のようにします。
莫A於B(最上級)
書き下し文天下に水より柔弱なるは莫し。
(『老子』第七十八章)
現代語訳この世に、水よりもやわらかく弱いものはない。
莫A於B(〜より善きは莫し)
書き下し文心を養ふは欲を寡くするより善きは莫し。
(『孟子』尽心下)
現代語訳心をやしなうには、欲を少なくすることよりよい方法はない。
2. 「孰与」と「何如」:くらべてたずねる形
「A孰与B」は「AはBに孰与ぞ(AはBとくらべてどうか)」と読み、2つをくらべて相手にたずねる形です。「孰与」を「いづれぞ」と2字まとめて読むほか、「AはBと孰れぞ」と読む教科書もあります。戦国策の「我孰与城北徐公美(我は城北の徐公と孰れか美なる)」が有名で、「どちらが〜か」という比較の疑問です。答えの多くは「Bの方がまさる」で、実質はA不如Bの気持ちをふくみます。疑問の形は疑問の句法(何・誰・安・孰・乎・哉)もあわせて読んでください。
3. 「於」の比較と、ほかの読み
比較の「於」は置き字ですが、「於」はほかに場所(〜で・〜に)、起点(〜から)、対象(〜に)、受身(〜に〜される)の働きもあります。比較かどうかは、上の語が形容詞(性質・ようす)かどうかで決めます。「青取之於藍、而青於藍」のように、1つの文に起点の「於」と比較の「於」が並ぶ例は、入試でもよくねらわれます。また、比較の「於」の代わりに「乎」「于」が使われることもあり、読み方は同じです。

4. 比較から選択へ:「寧A無B」「与其A寧B」
比較の考え方は、「どちらを選ぶか」を言う選択の句法につながります。「寧A無B(寧ろAとも、Bする無かれ)」はAを選び、「与其A寧B(其のAよりは寧ろB)」はBを選ぶ形です。どちらも「AとBをくらべて、こちらがよい」と判断している点で、比較と根っこは同じです。くわしくは選択の句法(寧〜無〜・与其〜寧〜)で扱います。
寧A無B(選択への橋わたし)
書き下し文寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ。
(『史記』蘇秦列伝)
現代語訳たとえ小さくても鶏のくちばし(小さな集団の長)になる方がよい。大きな牛のしり(大きな集団の下っぱ)にはなるな。
5. 「如」「若」の読み分けのまとめ
「如」「若」は、比較のほかにもいくつもの読みがある、漢文で特に大事な字です。上に「不・莫」があれば比較(しく)、文のはじめで下に「〜ば」の条件が続けば仮定(もし)、「〜の如し」と文末で受ければ比況(ごとし)です(比況の句法(如・若・猶))。「若」には代名詞「なんぢ(おまえ)」の読みもあります。白文では、位置と前後の字で読みを決めましょう。
6. 動詞でくらべる形(愈・勝・過)と、比較の記述のコツ
比較は、「愈(まさる)」「勝(まさる)」「過(すぐ)」のような、まさる・こえるという意味の動詞でも表されます。論語の公冶長篇で、孔子が弟子の子貢に「女と回と孰れか愈れる(おまえと顔回とでは、どちらがすぐれているか)」とたずねる場面は、疑問の「孰」と動詞「愈」を組み合わせた比較の例として知られます。このような動詞も、下に「於B」を置くと「Bより(も)まさる」となり、形容詞+於Bと同じしくみで読めます。
記述問題で比較の文を訳すときは、「何と何をくらべて、どちらが上か」が答案から読み取れるように書くのがコツです。「A不如B」なら「AはBに及ばない」だけで終わらせず、必要に応じて「(Bの方がよい)」とそえると、採点者に意味が正しく伝わります。最上級の「莫A於B」は、「Bよりも〜なものはない」と直訳したうえで、「Bがいちばん〜だ」と言いかえられるようにしておきましょう。

サクラちゃん
形容詞の下の「於」は「よりも」、「不如」は「如かず」、「莫如」は「如くは莫し」、「莫A於B」は「いちばん」。どちらが上かを訳ではっきり書くのがポイントですね!
よくあるまちがい
まちがい1:「A不如B」を「AはBのようではない」と訳す
「如」を「ごとし」と読んで「〜のようではない」とするのは誤り。「不如」は「如かず=及ばない」で、「AはBに及ばない(Bの方がよい)」です。
まちがい2:どちらが上かを逆にする
「百聞は一見に如かず」は、一見(B)の方が上。「百聞の方がよい」と訳すと正反対になります。不如の下の語が勝ちと覚えましょう。
まちがい3:比較の「於」を「おいて」と読む
「猛於虎」を「虎に於いて猛なり」と読むのは誤り。比較の「於」は読まない置き字で、「虎よりも猛なり」と送り仮名で表します。
まちがい4:「莫如」を「如くこと莫し(似ていない)」と訳す
「莫如B」は「Bに如くは莫し(Bに及ぶものはない)」で、Bがいちばんよいという意味です。否定の訳だけで終わらせないようにしましょう。
まちがい5:「莫A於B」を「AはBではない」と訳す
「莫柔弱於水」は「水より柔弱なるは莫し」=水がいちばん柔弱。「水は柔弱ではない」と否定に訳すと意味が逆になります。
練習問題
やさしい
- 「不如」の読み方と意味を答えなさい。
答えと解説を見る
読み:「しかず(如かず)」。意味:「及ばない」。「A不如B」で「AはBに如かず(AはBに及ばない=Bの方がよい)」。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)山ハ高シ二於丘ヨリモ一。
答えと解説を見る
山は丘よりも高し。(山は丘よりも高し。)意味は「山は丘よりも高い」。形容詞「高し」の下の「於」は比較で、読まない。
ふつう
- 次の文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)言フハ不レ如カレ行フニ。
答えと解説を見る
書き下し文:言ふは行ふに如かず。 訳:口で言うことは、実際に行うことに及ばない(言うより行う方がよい)。「不如」の下の「行ふ」の方が上。
- 「莫如」と「不如」の違いを、例を使って説明しなさい。
答えと解説を見る
「不如」は2つをくらべて「AはBに及ばない」(例:百聞は一見に如かず=聞くより見る方がよい)。「莫如」は「Bに如くは莫し」で、「Bに及ぶものはない=Bがいちばんよい」という最上級(例:徳を貴びて士を尊ぶに如くは莫し=それがいちばんよい)。
むずかしい
- 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
「莫大於孝」答えと解説を見る
書き下し文:孝より大なるは莫し。 訳:親孝行より大切なものはない(親孝行がいちばん大切だ)。「莫A於B」の最上級で、Aが形容詞「大」、Bが「孝」。
- 『荀子』の「青取之於藍、而青於藍」には「於」が2つある。それぞれの働きの違いを説明しなさい。
答えと解説を見る
前の「取之於藍」の「於」は、動詞「取る」の下にあり「藍より取る」で起点(〜から)。後ろの「青於藍」の「於」は、形容詞「青し」の下にあり「藍よりも青し」で比較。どちらも置き字で読まないが、上の語が動詞か形容詞かで働きが変わる。
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よくある質問
漢文の比較の形は?
形容詞+於B(Bよりも〜)、A不如B(AはBに如かず)、莫如B(Bに如くは莫し)、莫A於B(BよりAなるは莫し)が基本です。
「不如」はどう読み、どう訳しますか?
「如かず」と読み、「及ばない」と訳します。A不如Bは「AはBに及ばない」で、Bの方がまさっているという意味です。
「莫如」と「不如」の違いは?
不如は2つをくらべて「AはBに及ばない」、莫如は「Bに及ぶものはない」でBがいちばんよいという最上級です。
比較の「於」はどう読みますか?
読まない置き字です。くらべる相手の語に送り仮名「ヨリ(モ)」をつけて、「虎よりも猛なり」のように書き下します。
「莫A於B」はどう訳しますか?
「BよりAなるは莫し(Bよりも〜なものはない)」と読み、「Bがいちばん〜だ」という最上級の意味になります。例:天下に水より柔弱なるは莫し=水がいちばんやわらかく弱い。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『礼記』檀弓下、『漢書』趙充国伝、『荀子』勧学、『論語』雍也、『孟子』(公孫丑上・尽心下)、『老子』第七十八章、『史記』蘇秦列伝。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
- 高校の漢文句法の標準的な説明(比較の句形・不如と莫如・最上級)にもとづいて作成。読みが分かれる所は本文中に記した
- 画像:「戦国時楚蘭陵令荀況」(清代、作者不明、中国国家博物館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



