漢文の選択の句法|寧A無B・与其A寧B・与其A不若B・孰与の読み方と訳し方【鶏口牛後】

漢文の選択の句法|寧A無B・与其A寧B・与其A不若B・孰与の読み方と訳し方【鶏口牛後】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

選択の句法は2つをくらべて1つを選ぶ言い方で、「寧A無B=寧ろAすとも、Bする無かれ」は前のAを、「与其A寧B=其のAせんよりは、寧ろBせよ」は後ろのBを選びます。目印は「寧(むしろ)」がついた方が選ばれる方、という点です。

このページのポイント

  • 選択=2つをくらべて1つを選ぶ句法
  • 寧A無B=寧ろAすとも、Bする無かれ(Aを選ぶ)
  • 与其A寧B=其のAせんよりは、寧ろBせよ(Bを選ぶ)
  • 与其A不若B・与其A孰若B も後ろのBを選ぶ
  • 反語の「寧(いづくんぞ)」、2つの形の「孰与」に注意

はじめて(やさしく)

選択(せんたく)の句法とは、2つのことをくらべて、どちらか一方を選ぶ言い方です。「AよりBのほうがよい」「AしてもBはするな」のように、話し手がどちらをよしとするかをはっきり示します。日本語の「むしろ」「〜よりは」にあたり、漢文では「寧(むしろ)」と「与其(そのAせんよりは)」が二本の柱です。

選択の句形(公式の一覧)

句形読み(書き下し)意味(訳し方)
寧A、無B寧ろAすとも、Bする無かれたとえAしても、Bはするな(Bするより、Aのほうがよい)
寧A、不B寧ろAすとも、BせずたとえAしても、Bはしない
与其A、寧B其のAせんよりは、寧ろBせよAするよりはむしろBせよ(Bのほうがよい)
与其A、不若B其のAせんよりは、Bするに若かずAするよりはBするほうがよい
与其A、孰若B其のAせんよりは、Bするに孰若ぞAするよりはBするほうがよいではないか
A孰与BAはBに孰与ぞAはBとくらべてどうか(Bのほうが上だろう)
A与B孰〜AとBと孰れか〜なるAとBとではどちらが〜か

一覧の中で、まず覚えるのは上の3つです。見分けのコツは1つだけ。「寧(むしろ)」がついた方が、選ばれる方です。「寧A無B」では前のAに「寧」がつくのでAを選び、「与其A寧B」では後ろのBに「寧」がつくのでBを選びます。

2つをくらべて、1つを選ぶ鶏口牛後小さな集団のかしら大きな集団のしっぽ寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ「寧ろ」がついた方を選ぶ
選択の句法はてんびん。2つをのせて、「寧ろ」がついた方を選ぶ

たとえば、部活を選ぶ場面を考えてみましょう。「強豪チームの補欠になるより、弱小チームでもレギュラーになりたい」。これはまさに選択の言い方です。この気持ちを2000年以上前の中国で言い表したのが、故事成語の「鶏口牛後(けいこうぎゅうご)」です。「鶏口」はニワトリのくちばし、つまり小さな集団のかしら。「牛後」は牛のおしり、つまり大きな集団のしっぽです。

大学受験

寧A、無B(寧ろAすとも、Bする無かれ)

白文寧為鶏口、無為牛後。

書き下し文寧むしろ鶏口と為るとも、牛後と為る無なかれ。

(『史記』蘇秦列伝)

現代語訳たとえ小さな国の王(鶏のくちばし)になっても、大きな国の家来(牛のしり)にはなるな。

ここがポイント戦国時代の遊説家・蘇秦が、韓の王に「秦の家来になるな」と説いた場面で引いた、当時のことわざです(『戦国策』韓策にも同じ言葉があります)。「寧」は上から順に「寧ろ」と読みます。「為るとも」の「とも」は「たとえ〜しても」という意味です。「無」はレ点で返って「無かれ」と読み、「〜するな」という禁止を表します。
うかるくん

うかるくん

「無かれ」って「〜するな」でしょ? 選択なのに、どうして禁止の言葉が出てくるの?

ミスターT先生

ミスターT先生

するどいね。「寧A無B」は、選ぶ方(A)を「寧ろ」でおし、選ばない方(B)を「無かれ」で止めるしくみなんだ。だから訳は「AしてもBはするな」。結局、「Aのほうがよい」と言っているのと同じなんだよ。

サクラちゃん

サクラちゃん

「寧ろ」がつく方が○、「無かれ」がつく方が×ですね。てんびんで考えるとわかりやすいです!

もう一つの柱が「与其A、寧B」です。こちらは「其のAせんよりは、寧ろBせよ」と読み、「AするよりはむしろBせよ」と訳します。今度は後ろのBが選ばれる方です。「与」は「与ふ(あたえる)」の字ですが、ここでは「より(は)」と読み、くらべる相手を示します。

選ぶのは前? 後ろ?寧A 無B(前を選ぶ)寧ろ A無かれ Bと○ 選ぶ× 選ばない寧ろAすとも、Bする無かれ与其A 寧B(後ろを選ぶ)其の A よりは寧ろ Bと○ 選ぶ× 選ばない其のAせんよりは、寧ろBせよ
「寧A無B」は前のAを選び、「与其A寧B」は後ろのBを選ぶ。どちらも「寧」がついた方が○

2つの形を並べると、語順は逆でも、「寧」が選ばれる方の目印になっている点は同じです。この1点さえおさえれば、訳の向きをまちがえることはありません。

ここまでのまとめ

  • 選択の句法=2つをくらべて1つを選ぶ言い方
  • 「寧A無B」=寧ろAすとも、Bする無かれ(Aを選ぶ)
  • 「与其A寧B」=其のAせんよりは、寧ろBせよ(Bを選ぶ)
  • 目印は「寧(むしろ)」。寧がついた方が選ばれる

しっかり(共通テスト)

1. 「寧」の形:寧A無B・寧A不B

「寧」を先に置く形では、前のAが選ばれる方です。後ろには、禁止の「無・勿・毋(なかれ)」か、否定の「不(ず)」が来ます。禁止なら「Bするな」と相手に向けた言い方、否定なら「Bはしない」と自分の決意を言う言い方になります(禁止の字については句法のページ禁止(勿・毋・無・莫)の読み方でくわしく扱います)。

形書き下し訳ニュアンス
寧A、無B寧ろAすとも、Bする無かれたとえAしても、Bはするな相手への忠告・ことわざ
寧A、勿B寧ろAすとも、Bする勿かれ同上「勿」も禁止の字
寧A、不B寧ろAすとも、BせずたとえAしても、Bはしない自分の決意
寧A寧ろAせんいっそAしよう片方だけを言う形

「Aすとも」の「とも」は、古文で習う逆接の仮定条件(たとえ〜しても)です。教科書によっては「寧ろ鶏口と為るも」と「も」だけで読むものもありますが、意味は同じです(仮定の言い方は仮定(如・若・苟・縦・雖)の句法も参照)。

大学受験

寧A、不B(寧ろAすとも、Bせず)

書き下し文寧むしろ死すとも、降らず。

(自作)

現代語訳たとえ死んでも、降伏はしない。

ここがポイント後ろが禁止「無かれ」ではなく否定「ず」なので、相手への命令ではなく自分の強い決意になります。「不」は助動詞にあたるので、書き下し文ではひらがな「ず」で書きます。

2. 「与其」の形:与其A寧B・与其A不若B・与其A孰若B

「与其」で始まる形では、後ろのBが選ばれる方です。「与」はAを読み終えてから返って「よりは」と読みます。「其」は「その」と読みますが、指す内容はほとんどなく、調子をととのえる字と考えてかまいません。Aの最後の動詞には「ん」をつけて「Aせんよりは」とするのが一般的です。

  1. 「与其」を見つけたら、すぐに読まずにとばす。「其」だけ先に「其の」と読む。
  2. Aを読み、動詞を未然形+「ん」にする(奢る→奢らん、待つ→待たん)。
  3. 「与」に返って「よりは」と読む。返り点は一二点かレ点。
  4. 後半の形で結ぶ:寧(寧ろBせよ)/不若(Bするに若かず)/孰若(Bに孰若ぞ)。
  5. 訳は「AするよりはBのほうがよい」。選ばれるのは後ろのB。
「与」は最後に返って「よりは」与③よりは其①そのA②Aせん寧④むしろB⑤BせよAのあとで返る其のAせんよりは、寧ろBせよ
「与其A寧B」の読む順番。「与」はAのあとで返って「よりは」と読む
大学受験

与其A、寧B(其のAせんよりは、寧ろBせよ)

書き下し文礼は其の奢らんよりは、寧むしろ倹せよ。

(『論語』八佾)

現代語訳礼というものは、ぜいたくにするよりは、むしろつつましくせよ。

ここがポイント林放(りんぽう)という人が「礼の根本」をたずねたときの孔子の答えの前半です。後半は「喪は其の易めんよりは、寧ろ戚め」(葬儀は形をととのえるより、むしろ心から悲しめ)と続きます。「也」はここでは読まない置き字です。「与」は助詞にあたるので、書き下し文ではひらがなで「より」と書きます。
大学受験

与其A、不若B(其のAせんよりは、Bするに若かず)

書き下し文其の坐して死を待たんよりは、出でて戦ふに若しかず。

(自作)

現代語訳じっと座って死を待つよりは、打って出て戦うほうがよい。

ここがポイント後半の「不若B」は「Bに若かず(Bに及ばない)」という比較(不如・莫若)の句法です。「Aは、Bするのに及ばない」→「Bするほうがよい」と、結局Bを選ぶ意味になります。「若」は「如」と書いても同じ読み・意味です。
難関大

与其A、孰若B(其のAせんよりは、Bに孰若ぞ)

書き下し文其の富みて驕らんよりは、貧しくして楽しむに孰若いづれぞ。

(自作)

現代語訳金持ちになっておごりたかぶるよりは、貧しくても(道を)楽しむほうがよいではないか。

ここがポイント「孰若」は2字で「いづれぞ」と読み、「どちらがよいか(Bのほうがよいではないか)」と問いかけの形でBを選ばせます。「不若」より、相手に考えさせる調子が強い言い方です。

3. 「孰与」:AとBをくらべて問う

「孰与」も2つをくらべる言い方で、選択の句法といっしょに出題されます。形が2つあるので注意しましょう。

形書き下し意味
A孰与BAはBに孰与ぞAはBとくらべてどうか(ふつうBのほうが上という答えを引き出す)
A与B孰〜AとBと孰れか〜なるAとBとではどちらが〜か
A孰与B〜AはBと孰れか〜なる同上(孰と与を分けて読む)
大学受験

A孰与B(AはBに孰与ぞ)

書き下し文公の廉将軍を視ること、秦王に孰与いづれぞ。

(『史記』廉頗藺相如列伝)

現代語訳おまえたちが廉将軍を見る(おそれる)のは、秦王とくらべてどうか。

ここがポイント完璧や刎頸の交わりで知られる藺相如(りんしょうじょ)が、廉頗をおそれて逃げまわる自分を恥じた家来たちに問いかけた言葉です。家来たちが「若かざるなり(秦王には及ばない)」と答えると、藺相如は「その秦王さえしかりつけた私が、どうして廉将軍だけをおそれようか」と続けます。「孰与」は2字で「いづれ」と読みます。
難関大

A孰与B〜(AはBと孰れか〜なる)

書き下し文我は城北の徐公と孰いづれか美なる。

(『戦国策』斉策)

現代語訳私と城北の徐公とでは、どちらが美しいか。

ここがポイント斉の鄒忌(すうき)が妻にたずねた言葉です。こちらは「孰」と「与」を分けて、「与」を「と」(〜と)、「孰」を「孰れか」(どちらが)と読みます。疑問の「孰れか」を受けて文末は連体形「美なる」で結びます(疑問の句法は疑問(何・誰・安・孰・乎・哉)の読み方へ)。
選択の句形 結論はどっち?寧A無B寧ろAすともBする無かれA寧A不B寧ろAすともBせずA与其A寧B其のAせんよりは寧ろBせよB与其A不若B其のAせんよりはBするに若かずB与其A孰若B其のAせんよりはBに孰若ぞBA孰与BAはBに孰与ぞB右はしの字=選ばれる方(孰与はBが上とされることが多い)
選択の句形の早見図。右はしが「選ばれる方」
サクラちゃん

サクラちゃん

「不若」と「孰若」は、どちらも後ろのBを選ぶんですね。違いはなんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

「不若」は「Bに若かず」と言い切る形、「孰若」は「Bに孰若ぞ(どちらがよいか)」と問いかける形だ。訳すときは、孰若なら「〜のほうがよいではないか」と、問いかけの調子を残すといいよ。

うかるくん

うかるくん

結局どれも「Bのほうがいい」なんだ。「与其」が見えたら後ろが勝ちって覚えます!

4. 選択の疑問:「Aか、将たBか」

2つのうちどちらかを相手にたずねる言い方もあります。「A乎、将B乎」で「Aか、将たBか(Aか、それともBか)」と読みます。「将」はここでは再読文字ではなく、「はた(それとも)」と1回だけ読みます。「抑(そもそも)」「且(はた)」が入る形もあります。

大学受験

A乎、将B乎(Aか、将たBか)

書き下し文子は帰るか、将はた留まるか。

(自作)

現代語訳あなたは帰るのか、それとも残るのか。

ここがポイント文末の「乎」は疑問の助詞なので、ひらがなで「か」と書きます。「将」に返り点がなく、下に「〜せんとす」の形もないので、再読しません。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「寧」の読み分け:むしろ・いづくんぞ・やすし

白文で「寧」を見たら、いつも「むしろ」と読むわけではありません。反語の「いづくんぞ」と読む用法があり、難関大の読み問題でよくねらわれます。見分けは、くらべる相手(無・不・与其など)があるか、文末が「乎・哉」で反語になっているかです。

「寧」の読みは3通り寧むしろ寧A無B・与其A寧Bどちらかといえば・いっそ寧いづくんぞ寧〜乎(反語)どうして〜か(いや〜ない)寧やすし・やすんず安寧・寧日安らか・安心させるくらべる相手があるか? 文末が「乎・哉」か?
「寧」の3つの読み。選択なら「むしろ」、反語なら「いづくんぞ」
難関大

寧(いづくんぞ)=反語

書き下し文王侯将相寧いづくんぞ種有らんや。

(『史記』陳渉世家)

現代語訳王や諸侯、将軍や宰相に、どうして(生まれつきの)家柄などあろうか(いや、ない)。

ここがポイント秦の末に反乱を起こした陳勝(陳渉)が仲間をはげました言葉。くらべる相手がなく、文末が「乎(や)」なので、「寧」は「いづくんぞ」と読む反語(豈・安・何・誰〜乎)の句法です。同じ陳勝の若いころの言葉が、故事成語「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」です。

2. 「寧〜乎、寧〜乎」:どちらを選ぶかを問う

「寧」を2回重ねて、「寧ろAせんか、寧ろBせんか」と2つの道を並べ、相手に選ばせる言い方もあります。有名なのは『荘子』秋水篇の話です。楚の王から宰相にと招かれた荘子は、使者に「死んで骨を大切に祭られる亀と、生きて泥の中で尾を引きずる亀と、どちらがよいか」とたずね、「寧ろ其れ死して骨を留めて貴ばれんか、寧ろ其れ生きて尾を塗中に曳かんか」と問いかけます(読みは教科書によって少し違います)。使者が「生きているほうがよい」と答えると、荘子は「では帰れ。私も泥の中で尾を引きずっていよう」と言いました。これが故事成語「尾を泥中に曳く」のもとです。

縦長の掛け軸。下の方で荘子がほおづえをついて眠り、上の方に小さな蝶が一匹飛んでいる水墨画
柴田是真「荘子胡蝶の夢」(1888年)。荘子は、夢の中で蝶になった自分が「周(荘子)が蝶になった夢を見たのか、蝶が周になった夢を見ているのか」と問いかける「胡蝶の夢」でも知られます。画像:柴田是真「荘子胡蝶の夢」(1888年、ホノルル美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

この「胡蝶の夢」(『荘子』斉物論)の一節も、文末に疑問の「与(か)」を2回置いて「AかBか」と問う、選択の疑問の形になっています。故事成語としては胡蝶の夢を見てください。ここでの「与」は、比較の「より」でも並列の「と」でもなく、文末の疑問の助詞「か」(「歟」と同じ)です。

3. 「与」の読み分け:選択の句法での位置

「与」はとても多くの読みを持つ字です(くわしくは重要語のページ「与」の読みと用法(と・あづかる・与其)で扱います)。選択の句法にかかわる読みだけを整理すると次のとおりです。

位置・形読み働き例
与其〜より(は)くらべる相手を示す(返読)其の奢らんよりは
A与BとAとB(並列)城北の徐公と
孰与いづれ(ぞ)2字で「くらべてどうか」秦王に孰与ぞ
文末の与か・や疑問・反語(=歟)胡蝶と為るか
与+名詞(動詞)あたふ・くみす与える・味方する之に与ふ

4. 「孰与」と「何如」「孰若」の関係

「孰与」は、文法的には疑問の「孰(いづれ)」と、くらべる相手を示す「与」が結びついた語と説明されます。だから「AはBに孰与ぞ」は、もとは「AとBとでは、どちらが上か」という問いです。けれども実際の文章では、Bのほうが上だという答えを相手に言わせるために使われることが多く、史記の藺相如の場面でも家来は「(廉将軍は秦王に)若かざるなり」と答えています。このため、参考書によっては「孰与」を比較の句法に、「与其〜孰若〜」を選択の句法に分類しています。名前の分け方は本によって違いますが、「2つをくらべて、一方を選ばせる」という働きは共通です。

「孰与」は2つの形① A 孰与 B(孰与=ひとまとまり)AはBに孰与ぞAはBとくらべてどうか② A 孰 与 B 〜(孰と与を分ける)AはBと孰れか〜なるAとBとではどちらが〜か
「孰与」は、2字まとめて「いづれぞ」と読む形と、「孰れか」「と」に分けて読む形がある

5. 選択の句法が使われる場面と、記述の書き方

選択の句法は、ことわざ・忠告・人生の決断の場面でよく使われます。鶏口牛後のように「名誉より独立」を選ぶもの、論語の八佾篇のように「形より心」を選ぶもの、荘子のように「地位より自由」を選ぶものなど、話し手の価値観がはっきり表れるのが特徴です。記述問題で「筆者は何を重んじているか」と問われたら、選ばれた方(寧のつく方)をそのまま答えの中心にします。

また、孟子の「魚を捨てて熊掌を取る」の章(『孟子』告子上)では、魚と熊の手のひら(ごちそう)の両方はとれないなら熊掌を取る、同じように、命と正義の両方はとれないなら命を捨てて正義を取る、と述べています。ここには「寧」も「与其」も出てきませんが、二者択一の考え方そのものです。句法の形がなくても、内容が選択になっている文章は多いので、読解では「何と何をくらべ、どちらを選んだか」を図にして整理すると、筆者の主張がつかみやすくなります。

  • 訳は「AよりはBのほうがよい」「AしてもBはするな」の2つの型にあてはめる。
  • 「孰若」「孰与」の問いかけは、記述では「〜のほうがよいではないか」「〜とくらべてどうか」と問いの形を残す。
  • 「寧ろ〜すとも」の「とも」は仮定。「たとえ〜しても」と訳さないと減点されやすい。
本を開いて説明するミスターT先生

ミスターT先生

選択の句法は、形を覚えたら「選ばれたのはどっち?」と自分に問いかける習慣をつけよう。記述問題では、その「選ばれた方」がそのまま筆者の主張になることが多いんだ。

よくあるまちがい

まちがい1:「与其A寧B」でAを選んでしまう

「其のAせんよりは」は「Aするよりは」なので、Aは選ばれない方です。選ぶのは「寧ろ」のつく後ろのB。「与其が見えたら後ろが勝ち」と覚えましょう。

まちがい2:「与」を「と」「あたふ」と読んでしまう

「与其」の「与」は、Aを読んでから返って「よりは」と読みます。上から「与ふ」「其と」と読むと意味が通りません。

まちがい3:「寧ろAすとも」の「とも」を「〜と」と訳す

「とも」は逆接の仮定「たとえ〜しても」。「鶏口となっても」と訳します。「鶏口と、牛後と」のような並列ではありません。

まちがい4:反語の「寧(いづくんぞ)」を「むしろ」と読む

「王侯将相寧有種乎」のように、くらべる相手がなく、文末が「乎・哉」で終わるときは反語の「いづくんぞ」。「むしろ種有らんや」では意味が通りません。

練習問題

やさしい

  1. 「寧為鶏口、無為牛後」で、選ばれているのは「鶏口」と「牛後」のどちらか。
    答えと解説を見る

    鶏口。「寧(むしろ)」がついている方が選ばれる方です。「寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ」で、「牛後」には禁止の「無かれ」がついています。

  2. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    其の生きて辱められんよりは、寧むしろ死せよ。(其の生きて辱められんよりは、寧ろ死せよ。)訳は「生きてはずかしめを受けるよりは、むしろ死ね」。「与」はあとで返って「より」、「而」は置き字です。

ふつう

  1. 「与其A、不若B」と「与其A、孰若B」は、それぞれどちらを選ぶ形か。訳し方の違いも答えなさい。
    答えと解説を見る

    どちらも後ろのBを選ぶ形。「不若B」は「AするよりはBするほうがよい」と言い切り、「孰若B」は「AするよりはBするほうがよいではないか」と問いかけの調子で訳します。

  2. 次の白文を、選択の句法に注意して書き下し文にし、訳しなさい。(自作)
    「寧為玉砕、不為瓦全」(玉砕=玉のように美しくくだける、瓦全=瓦のように無事に残る)
    答えと解説を見る

    書き下し文:寧ろ玉砕と為るとも、瓦全と為らず。 訳:たとえ玉のようにくだけ散っても、瓦のように(むなしく)生き残ることはしない。前のAを選び、後ろは否定「ず」なので自分の決意の言い方です。

むずかしい

  1. 次の二文の「寧」の読みと意味の違いを説明しなさい。
    ア「寧為鶏口、無為牛後」
    イ「王侯将相寧有種乎」
    答えと解説を見る

    アは「むしろ」で選択。後ろに「無(なかれ)」というくらべる相手があります。イは「いづくんぞ」で反語。くらべる相手がなく、文末が「乎(や)」で、「どうして家柄などあろうか(いや、ない)」の意味になります。

  2. 「我孰与城北徐公美」を書き下し文にし、「孰」と「与」がそれぞれどんな働きをしているか説明しなさい。
    答えと解説を見る

    書き下し文:我は城北の徐公と孰れか美なる。 「与」は「と」と読み、くらべる相手(城北の徐公)を示します。「孰」は疑問の「いづれか(どちらが)」で、2人のうちどちらが美しいかをたずねます。「孰れか」を受けて文末は連体形「美なる」で結びます。

関連ページ

この句法に出てくる言葉は、故事成語の一覧(意味・由来・出典)の「鶏口牛後」「尾を泥中に曳く」「胡蝶の夢」でも読めます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

漢文の選択の句法とは何ですか?

2つのことをくらべて、どちらか一方を選ぶ言い方です。「寧A無B(寧ろAすとも、Bする無かれ)」や「与其A寧B(其のAせんよりは、寧ろBせよ)」が代表的な形です。

「寧A無B」と「与其A寧B」では、どちらを選びますか?

「寧A無B」は前のAを、「与其A寧B」は後ろのBを選びます。どちらも「寧(むしろ)」がついている方が選ばれる方です。

「与其」の「与」はどう読みますか?

其のあとのAを読み終えてから返って「よりは」と読みます。書き下し文では助詞にあたるので、ひらがなで「其のAせんよりは」と書きます。

「鶏口牛後」の書き下し文は?

「寧為鶏口、無為牛後」を「寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為る無かれ」と読みます(「為るも」と読む教科書もあります)。『史記』蘇秦列伝などに出てくる言葉です。

「寧」を「いづくんぞ」と読むのはどんなときですか?

くらべる相手がなく、文末が「乎・哉」などで反語になっているときです。例:「王侯将相寧くんぞ種有らんや」(『史記』陳渉世家)。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『史記』(蘇秦列伝・廉頗藺相如列伝・陳渉世家)、『論語』八佾、『戦国策』斉策。『荘子』(秋水・斉物論)と『孟子』告子上は内容の紹介。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文句法の標準的な説明(選択・比較の句形)にもとづいて作成。「孰与」を比較に入れるか選択に入れるかなど、分類は本によって違いがある
  • 画像:柴田是真「荘子胡蝶の夢」(1888年、ホノルル美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦