漢文文法・句法辞典 › 句法
大学受験難関大
ひとことで言うと
漢文の仮定は、如・若(もし〜ば)・苟(いやしくも〜ば)・使(〜しめば)・微(〜なかりせば)の順接と、縦(たとひ〜とも)・雖(〜といへども)の逆接に分かれます。字がなくても、送り仮名の未然形+ば(もし〜ならば)・終止形+とも(たとえ〜でも)で仮定になります。
このページのポイント
- 順接の仮定:如・若(もし)・苟(いやしくも)+未然形+ば
- 逆接の仮定:縦(たとひ)+とも、雖=〜と雖も
- 微=〜なかりせば(もし〜がなかったら)、使=〜しめば
- 字がなくても未然形+ば・終止形+とも・ずんばで仮定
- 雖は事実なら確定(〜だけれども)、已然形+ばは確定・恒常
はじめて(やさしく)
仮定(かてい)とは、「もし〜ならば」「たとえ〜でも」のように、まだ起きていないことを仮に考える言い方です。漢文では「如・若(もし)」「苟(いやしくも)」「縦(たとひ)」「雖(いへども)」「使・令(しめば)」「微(なかりせば)」などの字で表し、送り仮名の「ば」「とも」で受けます。まず公式の表を見ましょう。
仮定の句形の公式(一覧表)
| 句形 | 読み(書き下し) | 意味 |
|---|---|---|
| 如 A, B | 如しAば、B | もしAならば、B |
| 若 A, B | 若しAば、B | もしAならば、B |
| 苟 A, B | 苟くもAば、B | かりにもAならば、B |
| 縦 A, B | 縦ひAとも、B | たとえAでも、B |
| 雖 A, B | Aと雖も、B | たとえAでも/Aだけれども、B |
| 使 A B, C | AをしてBしめば、C | もしAにBさせたら、C |
| 微 A, B | A微かりせば、B | もしAがなかったら、B |
| (字なし)A, B | A(未然形)ば、B | もしAならば、B |
仮定には2つの向きがあります。「もし雨がふったら、中止する」のように予想どおりにつながる順接の仮定と、「たとえ雨がふっても、決行する」のように予想とは逆につながる逆接の仮定です。漢文でも、順接は「ば」、逆接は「とも」「といへども」で受けます。
じつは漢文では、仮定の字がなくても送り仮名だけで仮定を表すことがよくあります。「未然形+ば」なら「もし〜ならば」、「終止形+とも」なら「たとえ〜しても」です。論語のいちばん有名な一節で確かめましょう。丸の数字が読む順番です。
送り仮名だけの仮定(〜ば・〜とも)
白文朝聞道、夕死可矣。
書き下し文朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。
(『論語』里仁)
現代語訳もし朝に(人の生きるべき)道を聞いて悟ることができたなら、その夕方に死んでもかまわない。
うかるくん
仮定の字がなくても仮定になるなら、白文ではどうやって見つけるの?
ミスターT先生
いい質問だね。白文では文の前半と後半の関係を考えるんだ。前半が「条件」、後半が「結果」になっていれば仮定や条件の形。「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」も、仮定の字がないのに「もし入らなければ」と読むよ。
サクラちゃん
前半が「もし〜なら」で、後半が「そのときどうなるか」。文の組み立てで決めるんですね!
「ずんば」の仮定
書き下し文虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳もし虎の住む穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない(危険をおかさなければ大きな成功は得られない)。

ミスターT先生
仮定の文ははじめの字と結びがセット。「如し」なら「〜ば」、「縦ひ」なら「〜とも」、「雖も」は「と」から返る。はじめの字を見たら、どこまでが仮定かを結びの送り仮名でさがそう。
ここまでのまとめ
- 仮定=「もし〜ならば」(順接)と「たとえ〜でも」(逆接)
- 順接:如・若・苟・使+「ば」 逆接:縦・雖+「とも・といへども」
- 字がなくても未然形+ば、終止形+ともで仮定になる
しっかり(共通テスト)
仮定の字の読み方と意味
共通テストでは、仮定の字の読み(もし・いやしくも・たとひ)と、訳の向き(順接か逆接か)がよく問われます。次の表で、字・読み・結びの形・訳をまとめて覚えましょう。
| 字 | 読み | 結び | 訳 | 向き |
|---|---|---|---|---|
| 如・若 | もシ | 未然形+ば | もし〜ならば | 順接 |
| 苟 | いやしクモ | 未然形+ば | かりにも〜ならば・もし本当に〜ならば | 順接 |
| 使・令 | (しめば) | AをしてBしめば | もしAにBさせたら | 順接 |
| 縦・縦令・仮令 | たとヒ | 終止形+とも | たとえ〜しても | 逆接 |
| 雖 | いへどモ | 〜と雖も | たとえ〜でも・〜だけれども | 逆接 |
| 微 | なカリセバ | 〜微かりせば | もし〜がなかったら | 順接(反実仮想) |
読み方の手順
- 仮定の字をさがす(如・若・苟・縦・雖・使・令・微)。字がなければ、前半と後半が「条件と結果」になっていないか考える。
- はじめの字を副詞として読む(如し・若し・苟くも・縦ひ)。「雖」「微」は下から返って読む返読文字。
- 仮定の範囲の終わりに結びをつける。順接は未然形+ば、逆接は終止形+とも、雖は「〜と雖も」。
- 後半(結果)を読む。推量の「ん(む)」で結ぶことが多い。
- 訳は「もし〜ならば」「たとえ〜でも」と、向きをはっきり書く。
例文で確かめる
如(もし〜ば)
書き下し文如し王者有らば、必ず世にして後に仁ならん。
(『論語』子路)
現代語訳もし(天命を受けた)王者が現れたとしても、必ず一世代(三十年)たってはじめて、世の中に仁が行きわたるだろう。
若(もし〜ば)
書き下し文若し学ばずんば、必ず悔いん。
(自作)
現代語訳もし学ばなかったら、きっと後悔するだろう。
苟(いやしくも〜ば)
書き下し文丘や幸ひなり、苟くも過ち有らば、人必ず之を知る。
(『論語』述而)
現代語訳私(丘)は幸せ者だ。かりにもあやまちがあれば、人が必ずそれに気づいて(教えて)くれる。
縦(たとひ〜とも)
書き下し文縦ひ江東の父兄憐れみて我を王とすとも、我何の面目ありて之に見えん。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳たとえ江東の(若者たちの)父や兄たちが私をあわれんで王にしてくれたとしても、私はどの面さげて彼らに会えようか(会えはしない)。
雖(〜といへども)
書き下し文千万人と雖も、吾往かん。
(『孟子』公孫丑上)
現代語訳(自分が正しいと確信できるなら)たとえ相手が千万人であっても、私は進んで行こう。
雖+ずんば(仮定が重なる形)
書き下し文嘉肴有りと雖も、食らはずんば、其の旨きを知らざるなり。
(『礼記』学記)
現代語訳たとえおいしいごちそうがあっても、食べなければそのうまさはわからない。
微(なかりせば)
書き下し文管仲微かりせば、吾其れ被髪左衽せん。
(『論語』憲問)
現代語訳もし管仲がいなかったら、私たちは(異民族に支配されて)髪をざんばらにし、着物を左前に着ていただろう。
サクラちゃん
「縦ひ」と「雖も」、どっちも「たとえ〜でも」なんですか?
ミスターT先生
「縦」は上から「たとひ」と読み、結びに「とも」をつける。「雖」は下から返って「〜と雖も」と読む。読む場所が違うんだ。それから「雖」は「〜だけれども」という確定の意味にもなる。くわしくは「もっと深く」で見よう。
うかるくん
「縦」は前、「雖」は後ろ。位置で覚えるとわかりやすい!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 「ば」の上が未然形か已然形か
送り仮名の「ば」は、上の形で意味が変わります。未然形+ばは「もし〜ならば」の仮定、已然形+ばは「〜ので」「〜すると(いつも)」の確定・恒常です。これは古文の接続助詞「ば」と同じしくみです(古文の接続助詞「ば」(未然形+ば・已然形+ば))。白文に送り仮名をつける記述問題では、どちらの形にするかで意味が変わるので要注意です。
已然形+ば(恒常の条件)
書き下し文学びて思はざれば則ち罔し、思ひて学ばざれば則ち殆ふし。
(『論語』為政)
現代語訳学んでも自分で考えなければ、(知識が)はっきりしない。考えても学ばなければ、(独りよがりで)危うい。
2. 「雖」の仮定と確定
「雖」には、まだ起きていないことを仮定する「たとえ〜でも」と、実際にそうであることを認める「〜だけれども」の2つの使い方があります。読み方はどちらも「〜と雖も」で同じなので、下の内容が事実かどうかで訳し分けます。共通テストや二次試験の訳の問題では、この区別がよくねらわれます。
逆接の確定(〜だけれども)は、逆接・条件の句法(雖・而・然・則)でくわしく扱います。
3. 使役の字が仮定になるとき
「使・令」は本来使役(使・令・教・遣「AヲシテBセしむ」)の字ですが、文の初めにあって後に結果の句が続くと、「もしAにBさせたら」「もしAがBしたら」という仮定になります。「しむ」の未然形「しめ」に「ば」をつけて「しめば」と読みます。
使(しめば=仮定)
書き下し文但だ龍城の飛将をして在らしめば、胡馬をして陰山を度らしめず。
(王昌齢「出塞」)
現代語訳ただ龍城の飛将軍がいてくれさえしたら、胡の騎馬兵に陰山を越えさせはしないのに。

4. 「苟」「如」「若」の仮定以外の読み
- 苟:「苟日新(苟に日に新たに)」(『大学』)のように「まことに」と読む例もあります。ここを「苟くも日に新たならば」と仮定に読む説もあり、教科書で読みが分かれる所です。また「苟も」は「かりそめに・いいかげんに」の意味になることもあります。
- 如・若:「ごとし(〜のようだ)」(比況の句法(如・若・猶))、「しく(およぶ)」(不如=如かず、比較の句法(於・不如・莫若))、「若」は「なんぢ(おまえ)」とも読みます。下に「〜ば」で受ける条件があるか、上に「不・莫」があるかで見分けます。
- 縦:「ほしいままにす(思いのままにする)」と読む動詞の用法もあります(例:縦酒=酒をほしいままにす)。
苟=まことに(仮定ではない読み)
書き下し文苟に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり。
(『大学』)
現代語訳本当に一日(自分を)新たにしたならば、毎日新たにし、さらにまた一日一日と新たにしていく。
5. 「仮令」「縦令」「向使」:2字の仮定
仮定の字は2字で書かれることもあります。「仮令・縦令・設令」はどれも「たとひ」と読み、「縦」と同じく逆接の仮定(たとえ〜でも)を表します。「向使(さきに〜しめば)」は「もしあのとき〜していたら」という、過去の事実に反する仮定です。「如使」「若使」も「もし〜ならば」と読みます。2字のまとまりは、訓読文では〈仮令〉のように1語として読みます。

サクラちゃん
「雖」は事実かどうかで訳し分け、「ば」は未然形か已然形かで仮定か確定かが決まる! 送り仮名1つで意味が変わるから、記述問題では送り仮名までていねいに書くんですね。
よくあるまちがい
まちがい1:「如し〜ば」の「ば」の上を已然形にする
「如し王者有れば」は「王者がいるので」になってしまいます。仮定は未然形+ばで「如し王者有らば」。
まちがい2:「縦ひ」の結びを「ば」にする
「縦ひ〜ば」は誤り。「縦」は逆接の仮定なので、結びは終止形+とも(縦ひ〜王とすとも)です。
まちがい3:「雖」をいつも「たとえ〜でも」と訳す
下の内容が事実なら「〜だけれども」(確定)と訳します。「家貧しと雖も」は、家は実際に貧しいので「貧しいけれども」です。
まちがい4:「微」を「かすか」と訳す
「微管仲」の「微」は「なかりせば(もし〜がなかったら)」。「わずか・かすか」の意味ではありません。下が人名や名詞で、後に結果が続くときは仮定を考えます。
まちがい5:「苟」を「いやしい」と訳す
「苟くも〜ば」は「かりにも〜ならば」。「いやしい(身分が低い)」とは関係がありません。
練習問題
やさしい
- 次の字の読み方を答えなさい。(1)如 (2)苟 (3)縦
答えと解説を見る
(1)もし(如し〜ば) (2)いやしくも(苟くも〜ば) (3)たとひ(縦ひ〜とも)。如・苟は順接の仮定、縦は逆接の仮定。
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)若シ有ラバレ暇。
※「暇」は「いとま」と読む。答えと解説を見る
若し暇有らば。(若し暇有らば。)意味は「もしひまがあれば」。「若し〜ば」で順接の仮定、「有ら」は未然形。
ふつう
- 次の文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)縦ヒ人不トモレ知ラ、吾不レ悔イ。
答えと解説を見る
書き下し文:縦ひ人知らずとも、吾悔いず。 訳:たとえ人が(私のことを)知らなくても、私は後悔しない。「縦ひ〜とも」で逆接の仮定。「ず」は終止形なので「ずとも」。
- 「雖」を使った次の2文は、それぞれ仮定・確定のどちらか。理由も答えなさい。(自作)
A「雖死不悔(死すと雖も悔いず)」 B「雖富不驕(富むと雖も驕らず)」※Bは実際に富んでいる人について言った文とする。答えと解説を見る
A:仮定。まだ死んでいないことを「たとえ死んでも」と仮に考えている。B:確定。実際に富んでいるので「富んでいるけれども、おごらない」と訳す。読みは同じ「〜と雖も」でも、下の内容が事実かどうかで訳し分ける。
むずかしい
- 「微管仲、吾其被髪左衽矣」(『論語』憲問)を書き下し文にし、「微」の働きを説明しなさい。
答えと解説を見る
書き下し文:管仲微かりせば、吾其れ被髪左衽せん。 「微」は「〜なかりせば」と読み、「もし〜がなかったら」という反実仮想の仮定を表す。実際には管仲がいたので、事実と反対のことを仮定し、「異民族の風俗になっていただろう」と管仲の功績をたたえている。
- 次の白文に送り仮名をつけるとき、「聞」を「聞かば」とするか「聞けば」とするかで意味はどう変わるか。(自作)
「聞之喜」答えと解説を見る
「之を聞かば喜ばん」(未然形+ば)なら「もしこれを聞いたら喜ぶだろう」という仮定。「之を聞けば喜ぶ」(已然形+ば)なら「これを聞いたので(聞くといつも)喜ぶ」という確定・恒常。まだ聞いていないなら未然形、すでに聞いたなら已然形にする。
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仮定の「ば」は古文と同じしくみです。古文の接続助詞「ば」、反実仮想の古文の助動詞「まし」もあわせて読むと、仮定の表現がまとめて身につきます。「虎穴に入らずんば」などの言葉は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で読めます。
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よくある質問
漢文の仮定の字にはどんなものがありますか?
如・若(もし〜ば)、苟(いやしくも〜ば)、縦(たとひ〜とも)、雖(〜といへども)、使・令(〜しめば)、微(〜なかりせば)などです。
「如し〜ば」の「ば」の上は何形ですか?
未然形です。如し王者有らば のように、未然形+ばで「もし〜ならば」という仮定になります。已然形+ばにすると「〜ので」という確定になります。
「縦」と「雖」の違いは?
どちらも逆接ですが、縦は上から「たとひ」と読んで結びに「とも」をつけ、雖は下から返って「〜と雖も」と読みます。また雖は「〜だけれども」という確定の意味にもなります。
「微」はどう読みますか?
「〜なかりせば」と読み、「もし〜がなかったら」という意味です。例:微管仲(管仲微かりせば)=もし管仲がいなかったら。
仮定の字がない仮定はありますか?
あります。送り仮名で未然形+ば(朝に道を聞かば)、終止形+とも(夕べに死すとも)、ずんば(虎穴に入らずんば)とすると仮定になります。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(里仁・子路・述而・憲問・為政)、『後漢書』班超伝、『史記』項羽本紀、『孟子』公孫丑上、『礼記』学記、『大学』、王昌齢「出塞」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
- 高校の漢文句法の標準的な説明(仮定の句形・未然形+ばと已然形+ば・雖の仮定と確定)にもとづいて作成。読みが分かれる所は本文中に記した
- 画像:韓幹「照夜白図」(唐・750年ごろ、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・CC0)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



