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虎穴に入らずんば虎子を得ずこけつにいらずんばこじをえず
ひとことで言うと
危険をおかさなければ、大きな成功は得られない。後漢の班超が、わずか36人で匈奴の使者の陣に夜討ちをかける前に、部下をはげました言葉から。
| 読み方 | こけつにいらずんばこじをえず |
|---|---|
| 意味 | 危険をおかさなければ、大きな成功や手がらは得られないということ。 |
| 出典 | 『後漢書』班超伝(「不入虎穴,不得虎子」) |
| お話 | 西域の鄯善に使いに行った班超が、匈奴の使者が来ていると見ぬき、部下36人と大風の夜に火を放って攻め、鄯善を漢に従わせた |
| 似た言葉 | 危ない橋も一度は渡れ・当たって砕けろ・乾坤一擲 |
| 反対の言葉 | 君子危うきに近寄らず・石橋をたたいて渡る |
| 漢文の句法 | 仮定(〜ずんば)・疑問(安くにか)・反語(安くんぞ) |
このページのポイント
- 危険をおかさなければ、大きな成功は得られないという意味。「虎穴」は危険な場所、「虎子」は大きな成果のたとえです
- 出典は『後漢書』。班超が36人で百人以上の匈奴の使者に夜討ちをかけた話を、4こまのイラストで読めます
- 読みは「こけつ」「こじ」。「入らずんば」は「もし入らないならば」という仮定です
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意味と読み方
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」はこけつにいらずんばこじをえずと読みます。意味は「危険をおかさなければ、大きな成功や手がらは得られない」ということです。何か大きなことをなしとげたいなら、こわがってばかりいないで、思い切って行動しなければならない、という教えです。
「虎穴(こけつ)」は虎のすむほら穴、「虎子(こじ)」は虎の子どもです。虎の子をつかまえたければ、おそろしい虎のいる穴に入るしかない。ここから、「虎穴」は危険な場所、「虎子」は大きな成果のたとえになっています。中国の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』の班超(はんちょう)の伝記に出てくる言葉です。
うかるくん
「入らずんば」って、なんだかむずかしい言い方ですね。「入らずに」っていう意味ですか?
ミスターT先生
ちがうんだ。「入らずんば」は「もし入らないならば」という仮定の言い方。「〜ずは」が変化して「〜ずんば」になった形だよ。だから全体で「もし虎の穴に入らないならば、虎の子は手に入らない」という意味になるんだ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○強豪校の練習に参加するのはこわいが、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。思い切って申しこもう。
- ○第一志望は難関だけれど、虎穴に入らずんば虎子を得ずと考えて、受けることにした。
- ○新しい市場に打って出るのは危険もあるが、虎穴に入らずんば虎子を得ずだと社長は言った。

絵で読む「虎穴に入らずんば虎子を得ず」のお話
まずは話の流れを、4つの場面で見てみましょう。登場するのは、後漢の使者班超とその部下36人、西域の鄯善(ぜんぜん)の王、そして北の遊牧の国匈奴(きょうど)の使者たちです。時は後漢の永平16年(73年)ごろのことです。
絵で読む「虎穴に入らずんば虎子を得ず」のお話(4こま)
班超たちは、わずか36人。相手の匈奴の使者は百人をこえていました。ふつうに考えれば勝ち目はありません。それでも班超は、このまま何もしなければ、鄯善は匈奴につき、自分たちは捕らえられて匈奴に送られると考えました。じっとしていても命はない。それなら、危険を覚悟で先に動くしかない――そう決めて口にしたのが「虎穴に入らずんば虎子を得ず」だったのです。

ミスターT先生
この話のポイントは、班超がただ向こう見ずに飛びこんだのではないところだ。大風の夜を選び、太鼓で人数を多く見せ、門に兵をふせた。覚悟と作戦の両方があったから、虎の子を手に入れられたんだね。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の原文・書き下し文・現代語訳
『後漢書』班超伝の、話の中心になる文を1文ずつ読んでいきましょう。書き下し文は、よく見られる読み方の一例です。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:見張りの者にかまをかける
書き下し文匈奴の使ひ来たること数日、今安くにか在る。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳匈奴の使いが来て数日になるが、今どこにいるのか。
2文目:部下たちの覚悟
書き下し文今危亡の地に在り、死生司馬に従はん。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳今わたしたちは、命の危ない土地にいる。生きるも死ぬも、司馬(班超)どのに従います。
3文目:虎穴に入らずんば虎子を得ず
書き下し文虎穴に入らずんば、虎子を得ず。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳もし虎のすむ穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない。
4文目:運命は今日決まる
書き下し文吉凶は今日に決す。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳よい結果になるか悪い結果になるかは、今日決まるのだ。
参考:若いころの班超の言葉
書き下し文小子安くんぞ壮士の志を知らんや。
(『後漢書』班超伝)
現代語訳おまえたちに、どうして男子の大きな志が分かるものか(いや、分かりはしない)。
『三国志』にもある、よく似た言い方
同じような言葉は、三国時代の呉の武将呂蒙(りょもう)の伝記(『三国志』呉書・呂蒙伝)にも出てきます。少年の呂蒙が、親に内緒で戦について行ってしかられたとき、「虎穴を探らずんば、安くんぞ虎子を得ん(虎の穴を探らなければ、どうして虎の子が手に入るだろうか)」と答えたという話です。維基文庫の本文では「不探虎穴,安得虎子」となっています。呂蒙は、のちに「呉下の阿蒙」の話でも知られる人物です。
サクラちゃん
班超と呂蒙、どっちが先に言ったんですか?
ミスターT先生
班超は後漢の初め(1世紀)の人、呂蒙は三国時代(2〜3世紀)の人だから、出来事としては班超のほうが先だ。ただ、『後漢書』がまとめられたのは5世紀で、『三国志』(3世紀)より後なんだ。ことわざの出典としては、班超の『後漢書』をあげるのがふつうだよ。どちらの言葉がもう一方をもとにしたのかは、はっきりした資料が見つからなかった。
出典『後漢書』班超伝と話の背景
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の出典は、『後漢書(ごかんじょ)』の「班超伝」(班梁列伝)です。『後漢書』は、後漢(25〜220年)の歴史を書いた本で、南朝宋の范曄(はんよう)が5世紀にまとめました。『史記』『漢書』とならぶ、中国の代表的な歴史書の一つです。中国の歴史書の流れは漢文の文学史(史記・漢書・後漢書など)でも紹介しています。
筆を投げ捨てた班超
班超(32〜102年)は、歴史家の班彪(はんぴょう)の子で、兄は『漢書』を書いた班固(はんこ)、妹は学者の班昭(はんしょう)という学者一家に生まれました。家が貧しかった班超は、役所の書類を書き写す仕事で母を養っていましたが、ある日、筆を投げ捨てて「男子たるもの、遠い国で手がらを立てて、侯(とのさま)になるべきだ。いつまでも筆と硯の間で働いていられるか」と言ったといいます。この話から「投筆(とうひつ)」は、学問や文の仕事をやめて武の道に進むことを表す言葉になりました。
人相見からは「燕のようなあご、虎のような首(燕頷虎頸)。飛んで肉を食らう、万里のかなたで侯になる相だ」と言われた、という話も伝記に残っています。
手がらを独り占めしなかった班超
夜討ちのあくる日、班超は、いっしょに使いに来ていた従事(役人)の郭恂(かくじゅん)に結果を知らせました。郭恂はおどろき、やがて顔色を変えます。自分だけ手がらに加われなかったからです。班超はその気持ちを見ぬき、「あなたは行かなかったけれど、この班超がどうして手がらを独り占めしようと思うでしょう」と言いました。郭恂は、それを聞いて喜んだといいます。
報告を受けた将軍の竇固(とうこ)は大喜びし、班超の手がらを皇帝(明帝)に伝えました。皇帝は「班超のような者がいるのに、なぜ別の使者を選ぶのか」と言って、班超をもう一度西域に送ります。竇固が兵を増やそうとすると、班超は「もとの三十人あまりで十分です。思いがけないことが起きたとき、人数が多いとかえって足手まといになります」と答えました。少ない人数で動くことの強さを、班超はよく知っていたのです。
鄯善(ぜんぜん)はどんな国?
鄯善は、今の中国の西の端、タリム盆地の東にあった小さな国です。前漢の時代には「楼蘭(ろうらん)」とよばれ、のちに鄯善と名前を改めました。東の中国と西の国々を結ぶシルクロードの入口にあたるため、漢と匈奴の両方から味方につけようとねらわれる国でした。鄯善が漢につくか匈奴につくかは、西域全体の行方を左右する大問題だったのです。
西域での約30年
鄯善での夜討ちのあと、班超は西域にとどまり、于闐(うてん)・疏勒(そろく)など、西域の国々を次々と漢の側につけていきました。のちに西域都護(せいいきとご)という、西域をまとめる役につき、定遠侯(ていえんこう)に取り立てられます。部下の甘英(かんえい)を、はるか西の大秦(ローマ帝国のこととされる)に向けて送り出したことでも知られています。年老いてようやく都の洛陽に帰ったのは、西域に向かってから約30年後のことでした。
36人で百人以上の相手に立ち向かった勇気は、まさに「虎穴に入る」ものでした。ただし、班超は相手の動きを見ぬき、天候を味方につけ、人数を多く見せる工夫をしたうえで動いています。勇気だけでなく、知恵があったことも、この話の大事なところです。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の使い方と例文・似た言葉
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、危険や困難を覚悟して、思い切って挑戦するときに使います。自分をはげますとき、人の背中をおすとき、新しいことに挑むときによく使われます。「虎穴に入る」だけで「危ない所にあえて飛びこむ」という意味で使うこともあります。
スピーチや作文では、「失敗をおそれず挑戦したい」という決意を表すときにぴったりの言葉です。ただし、班超の話のように、覚悟を決めたうえで、しっかり準備して挑むという意味をこめて使うと、言葉の重みがよく伝わります。
- ○全国大会の常連校に練習試合を申しこんだ。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。
- ○留学は不安も大きいが、虎穴に入らずんば虎子を得ずと思って決めた。
- ○取材のために、記者はあえて虎穴に入る覚悟で現地へ向かった。
- ×赤信号だけど、虎穴に入らずんば虎子を得ずで渡ってしまおう。(ルールをやぶったり、むだな危険をおかしたりすることには使わない)
- ×危ないことはしないほうがいい。虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。(意味が逆。この場合は「君子危うきに近寄らず」)
似た言葉
- 危ない橋も一度は渡れ:成功するためには、ときには危険をおかすことも必要だ、ということわざ。
- 当たって砕けろ:うまくいくか分からなくても、思い切ってやってみよ、という意味。
- 乾坤一擲(けんこんいってき):運命をかけて、一か八かの大勝負をすること。
- 英語の言い方:Nothing ventured, nothing gained.(冒険しなければ何も得られない)、No pain, no gain.(苦労なくして得るものなし)。
反対の意味の言葉
- 君子危うきに近寄らず:かしこい人は、はじめから危ない所には近づかない。
- 石橋をたたいて渡る:とても用心深く、安全を確かめてから行動すること。
- 触らぬ神にたたりなし:よけいなことにかかわらなければ、わざわいを受けることもない。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」のよくあるまちがい
- 「虎子」を「とらこ」「とらのこ」と読む:このことわざでは「こじ」と音読みします。「虎穴」も「こけつ」です。字の形は「虎」の読み方・書き順・部首と「穴」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
- 「入らずんば」を「入らずに」と思う:「〜ずんば」は「もし〜しないならば」という仮定です。「虎穴に入らずに虎子を得よう」という意味ではありません。
- 「虎の子」と混同する:「虎の子」は「大切にしてためこんでいるもの」(虎の子の貯金)という別の言い方です。このことわざの「虎子」は「大きな成果」のたとえです。
- 無茶をすすめる言葉だと思う:班超は、相手の動きを見ぬき、作戦を立ててから動きました。むだな危険やルール違反をすすめる言葉ではありません。
- 出典を『史記』や『三国志』と答える:ことわざの形の出典は『後漢書』班超伝です。『三国志』呂蒙伝の「虎穴を探らずんば〜」は、よく似た別の言い方です。
うかるくん
「ずんば」って、ほかの文にも出てきますか?
ミスターT先生
出てくるよ。「完璧」の話の「城入らずんば、臣請ふ璧を完うして趙に帰らん」も同じ形だ。「不+返り点」で「〜ずんば」と読んだら、「もし〜しないならば」と訳す。漢文の仮定は、この形をまず覚えておけば大丈夫だよ。
入試ではこう出る
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、中学受験から大学受験まで、ことわざ・故事成語の問題でよく出ます。
- 中学受験:ことわざの意味を選ぶ問題、「虎穴」「虎子」が何のたとえかを答える問題、反対の意味のことわざ(君子危うきに近寄らず・石橋をたたいて渡る)をえらぶ問題がよく出ます。
- 高校受験:「不入虎穴、不得虎子」に返り点をつける問題、書き下し文に直す問題、「ずんば」の意味を問う問題が中心です。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
- 大学受験:班超伝や呂蒙伝の本文の中で、仮定や反語の句法を訳す問題として出ることがあります。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

サクラちゃん
「不入虎穴、不得虎子」に返り点をつける問題は、「不」にレ点、「入」に二、「穴」に一。後ろも同じ形で「不」にレ点、「得」に二、「子」に一ですね!
練習問題
やさしい
- 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の意味として正しいものを選びましょう。
ア 危ない所には近づかないほうがよい イ 危険をおかさなければ、大きな成功は得られない ウ 虎の子どもを大切に育てるべきだ エ 強い者のまねをしてもうまくいかない答えと解説を見る
イ。アは反対の意味の「君子危うきに近寄らず」です。 - 「虎穴」「虎子」の読み方を答えましょう。
答えと解説を見る
虎穴=こけつ、虎子=こじ。どちらも音読みです。
ふつう
- 「不入虎穴、不得虎子」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
虎穴に入らずんば、虎子を得ず。「不」はひらがなの「ず」にし、前半は仮定なので「ずんば」と読みます。 - 班超は、なぜ36人という少ない人数で、夜に火を放って攻めたのですか。
答えと解説を見る
このままでは鄯善王が匈奴につき、自分たちは捕らえられてしまうから。少ない人数でも、夜と大風を利用して火を放ち、太鼓で大軍のように見せれば、相手は人数が分からず大あわてになると考えたからです。
むずかしい
- 「小子安知壮士志哉」を書き下し文に直し、句法の名前と現代語訳を答えましょう。
答えと解説を見る
小子安くんぞ壮士の志を知らんや。句法は反語(安くんぞ〜んや)。訳は「おまえたちに、どうして男子の大きな志が分かるものか(いや、分かりはしない)」。
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よくある質問
虎穴に入らずんば虎子を得ずの意味を簡単に言うと何ですか?
危険をおかさなければ、大きな成功や手がらは得られないという意味です。虎の子をつかまえるには、虎のすむ穴に入るしかないことから、思い切って挑戦することの大切さを表します。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの由来は何ですか?
『後漢書』班超伝の話です。後漢の班超が西域の鄯善へ使いに行ったとき、匈奴の使者が来ていると見ぬき、部下36人に「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と言って、大風の夜に火を放って匈奴の使者たちを攻め、鄯善を漢に従わせました。
「虎子」は何と読みますか?
「こじ」と読みます。「虎穴」も「こけつ」と音読みします。全体で「こけつにいらずんばこじをえず」です。
「入らずんば」とはどういう意味ですか?
「もし入らないならば」という仮定の意味です。「〜ずは」が変化した「〜ずんば」という言い方で、漢文では「不入〜」を「〜に入らずんば」と読みます。
虎穴に入らずんば虎子を得ずの反対の意味のことわざは何ですか?
「君子危うきに近寄らず」や「石橋をたたいて渡る」などです。どちらも、危ないことをさけ、用心深く行動することをすすめる言葉です。
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出典・参考
- 原文:『後漢書』巻四十七 班梁列伝・班超(維基文庫の本文で確認)、『三国志』呉書 巻五十四 呂蒙伝(同)
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(よく見られる読み方をもとにした一例)
- 絵:馬駘「投筆封侯」(Wikimedia Commons、パブリックドメイン)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



