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烏合の衆うごうのしゅう
ひとことで言うと
規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの集団。からすの群れのようにまとまりがないことから。後漢の耿弇が敵の軍をこう呼んだ話から。
| 読み方 | うごうのしゅう |
|---|---|
| 意味 | 規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの集団。まとまりがなく、いざというときに力を合わせられない人々。 |
| 出典 | 『後漢書』耿弇列伝(原文は「烏合之眾」)。同じ『後漢書』の邳彤伝にも見える |
| お話 | 王郎が「皇帝の子」を名乗って兵を挙げたとき、21歳の耿弇が、その軍は烏合の衆で、騎兵でふみつぶせばたやすいと言い切った |
| 似た言葉 | 寄せ集め・有象無象・付和雷同 |
| 反対の言葉 | 一致団結・一枚岩・精鋭 |
| 漢文の句法 | 限定(耳)・疑問(安)・比況(如) |
このページのポイント
- 「烏合の衆」はまとまりのない、寄せ集めの集団。からす(烏)がわっと集まりぱっと散る様子のたとえです
- 出典は『後漢書』。21歳の耿弇が、王郎の大軍を「烏合の衆」と見ぬいた話を、4こまのイラストで読めます
- 「烏」は「鳥」より一画少ない字。書きまちがいと、ほめ言葉に使うまちがいに注意しましょう
「烏合の衆」の意味と読み方
「烏合の衆」はうごうのしゅうと読みます。意味は「規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの集団」です。人数はそれなりにいても、まとめる人やきまりがなく、いざというときに力を合わせられない人の集まりを、少し見下して言うときに使います。
「烏(う)」はからす、「合」は集まる、「衆(しゅう)」は人の集まりのことです。からすは、えさがあるとどこからともなくわっと集まり、何かあるとてんでばらばらに飛び去っていきます。その様子にたとえて、「からすのような集まり方をした人々」=まとまりのない集団、という意味になりました。
うかるくん
「烏合の衆」って、からすの話なんですか? かわいそうな言われ方…。
ミスターT先生
からすは本当は頭のいい鳥なんだけどね。この言葉は中国の歴史の本『後漢書(ごかんじょ)』に出てくる、耿弇(こうえん)という21歳の若者の言葉から生まれたんだ。敵の軍を「からすの集まりのようなものだ、こわくない」と言い切った場面だよ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○リーダーのいないチームは、人数が多くても烏合の衆にすぎない。
- ○文化祭の準備は、役割分担を決めないと烏合の衆になってしまう。
- ○相手は烏合の衆だと油断していたら、思わぬ反撃を受けた。

絵で読む「烏合の衆」のお話
舞台は今からおよそ2000年前の中国です。前漢(ぜんかん)という王朝が、王莽(おうもう)という人に国をうばわれ、その王莽の国「新(しん)」もすぐにほろびて、各地でたくさんの人が兵を挙げていました。そんな中で起きた、若者の一言の話です。
絵で読む「烏合の衆」のお話(4こま)
耿弇は、父の使いとして、当時の漢の皇帝(更始帝)のところへ向かう途中でした。そこへ、王郎(おうろう)という男が「自分は前漢の成帝の子、劉子輿(りゅうしよ)だ」といつわって、邯鄲(かんたん)で兵を挙げたという知らせが入ります。従者の孫倉(そんそう)と衛包(えいほう)は、「本物の皇帝の子なら、そっちについたほうが得だ」と考えたのです。
しかし耿弇は、王郎の軍を「烏合の衆」と見ぬいていました。皇帝の子という名前だけで人が集まっていても、しっかりした中身もまとまりもない。強い騎兵でぶつかれば、枯れ木をくだくようにあっけなくくずれる、というわけです。

ミスターT先生
この話のポイントは、「人数が多い=強い」ではないと見ぬいたところだ。王郎の軍は人数こそ多かったけれど、まとまりがない「烏合の衆」。耿弇の言ったとおり、王郎は翌年、光武(劉秀)の軍にほろぼされるんだ。
このあと耿弇は光武の家来になり、たくさんの戦いで手がらを立てて、後漢という王朝を建てる大きな力になりました。21歳の若者の見立てが正しかったことが、歴史で証明されたわけです。
「烏合の衆」の原文・書き下し文・現代語訳
出典は『後漢書』耿弇列伝(こうえんれつでん)です。ここでは、従者のことば・耿弇のことば・その後の場面を、1文ずつ返り点と送り仮名をつけた訓読文で読みます(書き下し文は読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:従者のさそい
書き下し文劉子輿は成帝の正統なり、此を舎てて帰せず、遠く行きて安くにか之かん?
(『後漢書』耿弇列伝)
現代語訳劉子輿は成帝の正しい血すじの人だ。この人を捨てて従わずに、遠くまで行ってどこへ行こうというのか。
2文目:耿弇の答え(その1)
書き下し文子輿は弊賊なり、卒に降虜と為らんのみ。
(『後漢書』耿弇列伝(原文は「爲」))
現代語訳子輿などぼろぼろの賊だ。最後には降参して捕虜となるだけだ。
3文目:耿弇の答え(その2)=「烏合の衆」が出てくる文
書き下し文帰りて突騎を発し以て烏合の衆を轔まば、枯を摧き腐を折るがごときのみ。
(『後漢書』耿弇列伝(原文は「歸」「眾」))
現代語訳(長安から)帰ってきて、突撃する騎兵を出して烏合の衆をふみつぶせば、枯れ木をくだき、くさった木を折るようなもの(たやすいこと)だ。
4文目:従者は去る
書き下し文倉、包従はず、遂に亡げて王郎に降る。
(『後漢書』耿弇列伝(原文は「從」))
現代語訳孫倉と衛包は(耿弇に)従わず、とうとう逃げて王郎のもとに降参した。
その後:光武のひとこと
書き下し文小児曹乃ち大意有るかな!
(『後漢書』耿弇列伝)
現代語訳(光武は笑って言った)「この若者に、なんと大きな志があることよ!」
サクラちゃん
原文には「烏合の衆」の4文字が、そのまま出てくるんですね!
ミスターT先生
そうなんだ。「烏合之眾(うごうのしゅう)」と、今の言葉とほぼ同じ形で出てくる。しかも同じ『後漢書』の邳彤(ひとう)伝でも、邳彤が光武に「王郎は烏合の衆をかり集めただけだ」という意味のことを言っている。王郎の軍=烏合の衆という見方は、光武の家来たちに共通していたんだね。
出典『後漢書』と話の背景
「烏合の衆」の出典は『後漢書(ごかんじょ)』です。後漢(25〜220年)という王朝の歴史をまとめた本で、中国の正式な歴史書(正史)のひとつです。書いたのは南北朝時代の宋の范曄(はんよう)で、後漢がほろびてから200年ほどあとにまとめられました。『登竜門』のもとになった李膺(りよう)の話も、この『後漢書』に出てきます。
『後漢書』のように、王さまの記録(本紀)と、人物一人ひとりの伝記(列伝)を組み合わせて書く歴史書の形を「紀伝体」といいます。司馬遷の『史記』から始まった形で、漢文の授業でよく出てくる「〜列伝」は、この人物の伝記の部分です。中国の歴史書と文学の流れは漢文の文学史(史記・論語・唐詩など)にまとめています。
王郎はなぜ「烏合の衆」だったのか
王郎は、もとは占い師だったと伝えられています(『後漢書』邳彤伝には「卜者(ぼくしゃ)王郎」とあります)。前漢の皇帝の子だとうそをつき、その名前の力で、河北(黄河の北)の人々を一時は大勢味方につけました。
でも、集まった人たちは「皇帝の子らしいから」「勝ちそうだから」という理由で寄ってきただけで、王郎のために命をかける理由も、軍としての訓練もありません。耿弇は、そこを「烏合の衆」と見ぬいたのです。実際、王郎は光武の軍に攻められ、挙兵から1年もたたないうちに邯鄲を落とされてほろびました。
21歳の耿弇は、その後どうなったか
耿弇は、扶風茂陵(今の陝西省のあたり)の人で、若いころから学問を好み、兵の訓練を見るのが好きだったと書かれています。父の使いで旅に出たのが21歳のとき。王郎の話を聞いても少しもまよわず、北にいた光武のもとへかけつけました。
その後の耿弇は、光武の大将として各地で戦い、「平らげた郡は46、落とした城は300、一度も負けたことがなかった」と記されるほどの名将になりました。東の斉(せい)の地を平定したとき、光武は耿弇を、漢の高祖の大将軍・韓信(背水の陣の人)とくらべてほめ、「志有る者は事竟(つひ)に成る(強い志を持つ者は、最後には物事をなしとげる)」と言いました。この言葉も、今にのこる名言として知られています。
「烏合の衆」と「志有る者は事竟に成る」は、どちらも耿弇列伝から生まれた言葉です。まとまりのない大勢と、強い志を持った一人。この2つを並べると、耿弇という人物がよく分かります。
「烏合の衆」の使い方と例文・似た言葉
「烏合の衆」は、「〜は烏合の衆だ」「烏合の衆にすぎない」「烏合の衆と化す」の形でよく使います。まとまりやきまりがないために、力を発揮できない集団を、少し見下したり、注意したりするときの言葉です。
- ○指示がばらばらでは、どんなに優秀な人を集めても烏合の衆だ。(まとまりがない)
- ○選挙のためだけに集まった政党は、すぐに烏合の衆と化した。(理由もなく寄り集まる)
- ○「我々は烏合の衆ではない」と、キャプテンが全員に声をかけた。(打ち消しの形)
- ○大軍といっても烏合の衆にすぎず、少数の精鋭に敗れた。(人数だけ多い)
- ×公園に烏合の衆が集まって、えさをついばんでいた。(本物のからすの群れのことは言わない)
- ×応援席は烏合の衆で、すばらしいまとまりだった。(ほめ言葉ではない)
相手の集団を「烏合の衆」と呼ぶと、かなり失礼な言い方になります。目の前の人たちに向かって使うより、「このままでは烏合の衆になってしまう」と自分たちへの注意として使うほうが、角が立ちません。英語では a disorderly crowd(まとまりのない群衆)、a rabble(やじうまの集まり)などと言います。
似た言葉
- 寄せ集め:あちこちから集めただけで、まとまっていないもの。ふだんの言い方での「烏合の衆」に近い言葉です。
- 有象無象(うぞうむぞう):数ばかり多くて、役に立たない人や物の集まり。もとは仏教の言葉です。
- 付和雷同(ふわらいどう):自分の考えを持たず、人の意見にすぐ同調すること。「烏合の衆」が集団の様子を言うのに対し、こちらは一人ひとりの態度を言う言葉です。
- 右往左往(うおうさおう):あわててあっちへ行ったりこっちへ来たりすること。烏合の衆が混乱したときの様子です。
- 四分五裂(しぶんごれつ):まとまっていたものが、ばらばらに分かれること。
反対の言葉
- 一致団結(いっちだんけつ):多くの人が、ひとつの目的のために力を合わせること。
- 一枚岩(いちまいいわ):組織がしっかりまとまっていて、くずれないこと。
- 精鋭(せいえい):えりぬきの、すぐれた強い人たち。「少数精鋭」とも言います。
- 一糸乱れぬ(いっしみだれぬ):少しの乱れもなく、整っている様子。
「烏合の衆」のよくあるまちがい
- 「烏」を「鳥」と書く:「烏(からす)」は「鳥」の目にあたる横画が1本ない、10画の字です。「烏」は常用漢字ではないので、「鳥」の読み方・書き順・部首の形と見くらべて「横画が1本少ない」と覚えましょう。
- 「とりあいのしゅう」「からすごうのしゅう」と読む:正しくは「うごうのしゅう」。「烏」の音読みは「う」で、「烏龍茶(ウーロン茶)」の「烏」と同じ字です。
- 「衆」を「集」「種」と書く:「衆」は「多くの人」という意味の字で、「民衆」「観衆」の「衆」です。「衆」の読み方・書き順・部首で書き順も確かめましょう。
- ほめ言葉や、ふつうの「たくさんの人」の意味で使う:烏合の衆は「まとまりがない」という悪い意味の言葉です。「大勢の人」という意味だけで使うのはまちがいです。
- からすの群れそのものに使う:本物の鳥の群れは「からすの群れ」と言います。烏合の衆は人の集団をたとえる言葉です。
うかるくん
「烏」と「鳥」、テストでいつも書きまちがえそうです…。
ミスターT先生
からすは真っ黒で、目がどこにあるか見えにくい。だから目の一画がない、と覚えるといい。字の成り立ちとしてよく言われる説明だよ。「烏合の衆」「烏龍茶」「金烏(きんう=太陽)」と、からすの字の言葉をまとめて覚えておこう。
入試ではこう出る
「烏合の衆」は、中学受験・高校受験の故事成語の問題によく出てくる言葉です。
- 中学受験:意味を選ぶ問題、「うごうのしゅう」を漢字で書く問題(「烏」と「鳥」のちがい)、「( )合の衆」の空らんに動物を入れる問題。物語文で「烏合の衆のようなチーム」がどういう様子かを答える問題も考えられます。
- 高校受験:故事成語の意味と使い方。「烏合の衆」「付和雷同」「呉越同舟」など、集団や人間関係を表す言葉の区別がよく問われます。漢文の入門としては高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)へ。
- 大学受験:評論文で「群衆」「大衆」を論じる文章の中に、比ゆとして出てくることがあります。漢文では、『後漢書』のような歴史の文章で「耳(のみ)」「如(ごと)し」の読み方が問われます。

サクラちゃん
「烏合の衆」は「烏(からす)」+「合(あつまる)」+「衆(人々)」。一字ずつ意味を分けると、書きまちがいも意味のまちがいも防げますね!
練習問題
やさしい
- 「烏合の衆」の意味として正しいものを選びましょう。
ア からすのように黒い服を着た人々 イ 規律も統制もなく寄り集まっただけの集団 ウ とても強い軍隊 エ 朝早く集まる人々答えと解説を見る
イ。からすがわっと集まりばらばらに散る様子にたとえて、まとまりのない集団のことを言います。 - 「うごうのしゅう」を漢字で書きましょう。また、まちがえやすい字を1つ挙げましょう。
答えと解説を見る
烏合の衆。「烏(からす)」を「鳥」と書くまちがいが多いです。「烏」は目にあたる横画がない10画の字です。
ふつう
- 「子輿弊賊、卒為降虜耳。」を書き下し文に直しましょう。また「耳」は何という働きの字ですか。
答えと解説を見る
子輿は弊賊なり、卒に降虜と為らんのみ。「耳(のみ)」は「ただ〜だけだ」という限定の字です。 - 耿弇は、なぜ王郎の軍を「烏合の衆」と言ったのですか。本文の話をもとに説明しましょう。
答えと解説を見る
王郎の軍は、「皇帝の子」という名前につられて寄り集まっただけで、まとまりや訓練がなく、強い騎兵でぶつかれば枯れ木をくだくようにたやすくくずれると考えたからです。
むずかしい
- 「遠行安之」の「安」と「之」の読みと意味を答えましょう。
答えと解説を見る
「安」はいづ(く)にかと読み、「どこへ」と場所をたずねる疑問の字。「之」はゆ(く)と読み、「行く」という動詞です。全体で「遠く行きて安くにか之かん(遠くまで行ってどこへ行こうというのか)」。 - 「烏合の衆」と「付和雷同」の使い分けを説明しましょう。
答えと解説を見る
「烏合の衆」は、まとまりのない集団の様子を言う言葉。「付和雷同」は、自分の考えを持たずに人に合わせる一人ひとりの態度を言う言葉です。付和雷同する人ばかりの集団は、烏合の衆になりやすい、という関係です。
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よくある質問
烏合の衆の意味を簡単に言うと何ですか?
規律も統制もなく、ただ寄り集まっただけの集団のことです。人数は多くても、まとまりがないために力を発揮できない集まりを、少し見下して言うときに使います。
烏合の衆の由来は何ですか?
『後漢書』耿弇列伝の話です。王郎が皇帝の子を名乗って兵を挙げたとき、21歳の耿弇が、その軍はからすの集まりのような烏合の衆で、騎兵でふみつぶせば枯れ木をくだくようにたやすいと言いました。
烏合の衆の「烏」は何ですか?
「からす」のことです。音読みは「う」で、「鳥」より一画少ない10画の字です。からすがわっと集まり、ばらばらに散っていく様子にたとえています。
烏合の衆の反対の言葉は何ですか?
一致団結・一枚岩・精鋭などです。どれも、多くの人がしっかりまとまって力を合わせている様子を表します。
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出典・参考
- 原文:『後漢書』耿弇列伝・邳彤伝(維基文庫の本文で確認)
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(読み方の一例)
- 絵:メトロポリタン美術館(Open Access、パブリックドメイン)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



