五里霧中(ごりむちゅう)の意味と由来|後漢書の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

五里霧中(ごりむちゅう)の意味と由来|後漢書の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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五里霧中ごりむちゅう

ひとことで言うと

様子がまったく分からず、どうしてよいか迷うこと。後漢の張楷が術で起こした「五里霧」の中にいるように、先が見えない状態のたとえ。

読み方ごりむちゅう
意味物事の様子や手がかりがつかめず、どうしてよいか見当がつかないこと。方針や見通しが立たず、迷うこと。
出典『後漢書』張霸伝に付く張楷の伝(原文は「能作五里霧」。「五里霧中」の4字は出てこない)
お話後漢の学者・張楷は道術で「五里霧」を起こせた。三里霧しか起こせない裴優は弟子入りを願ったが会ってもらえず、のちに霧を使って盗賊になった
似た言葉暗中模索・右往左往・途方に暮れる
反対の言葉一目瞭然・明明白白・見通しが立つ
漢文の句法可能(能く)・否定(肯んぜず)・受け身(被)

このページのポイント

  • 「五里霧中」は、様子が分からず、どうしてよいか迷うこと。「五里霧」+「中」と区切ります
  • 由来は『後漢書』の霧を起こす術を使った学者・張楷の話。4こまのイラストと原文で読めます
  • いちばん多いまちがいは「五里夢中」。「霧(きり)」と「夢(ゆめ)」のちがいを図で確かめます

「五里霧中」の意味と読み方

「五里霧中」はごりむちゅうと読みます。意味は「物事の様子がまったく分からず、どうしたらよいか見当がつかないこと」「方針や見通しが立たず、迷っていること」です。深い霧の中にいて、まわりが何も見えず、どちらへ進めばよいか分からない――そんな状態をたとえた言葉です。

この言葉は「五里霧(ごりむ)」と「中(ちゅう)」に分けると、なりたちがよく分かります。「五里霧」は、中国の後漢の時代に張楷(ちょうかい)という人が術で起こしたという、五里にわたる深い霧のこと。その霧の「中」にいる、というのが「五里霧中」です。

「五里霧中」はどこで区切る?○五里霧中「五里の霧」の「中」にいる(なりたちどおり)×五里霧中「霧中(むちゅう)」という言葉ではない張楷の霧
「五里霧」+「中」と区切ると、なりたちがよく分かります
うかるくん

うかるくん

「むちゅう」って聞くと、「夢中になる」の「夢中」かと思っちゃいました。

ミスターT先生

ミスターT先生

それは、とても多いまちがいなんだ。「五里霧中」の「む」は「霧(きり)」の音読みで、ゆめの「夢」じゃない。中国の歴史書『後漢書(ごかんじょ)』に出てくる、霧を起こす術を使った学者の話から生まれた言葉なんだよ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○事件の手がかりがなく、捜査は五里霧中のままだ。
  • ○新しい部活を作ったばかりで、何から始めればいいのか五里霧中だ。
  • ○志望校をどこにするか、まだ五里霧中の状態です。

「五里霧中だ」「五里霧中の状態」「五里霧中のまま」のように、いま見通しが立っていない状態を表すときに使うのが基本です。

白い霧と雲にかくれるように、うすい墨で山々と木々が描かれた、横長の古い中国の山水画
霧や雲に包まれた山を描いた中国の山水画。南宋の画家・米友仁(べいゆうじん)の「雲山図」です。五里霧の中では、このように山も木もかすんで、先が見えなかったのでしょう。画像:米友仁「雲山図(Cloudy Mountains)」(南宋・12世紀、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

絵で読む「五里霧中」のお話

お話の主人公は、後漢(1〜3世紀ごろの中国)の学者・張楷です。字(あざな。成人してからの呼び名)は公超(こうちょう)。もう一人の登場人物は、関西(かんせい。函谷関より西の地方)の人・裴優(はいゆう)です。

絵で読む「五里霧中」のお話(4こま)

1張楷の五里霧五里霧(ごりむ)張楷
1後漢の学者・張楷(ちょうかい)は道術を好み、「五里霧(ごりむ)」と呼ばれる深い霧を起こすことができました。
2弟子入りを願う三里霧弟子にしてください!会わない裴優張楷の家
2「三里霧」なら起こせた裴優(はいゆう)は、張楷にかなわないと思い、弟子入りを願いました。でも張楷は会おうとしません。
3霧の中の悪事何も見えない!裴優
3やがて裴優は、霧を起こしてその中にかくれ、盗みをはたらく悪者になってしまいました。
4牢の中でも学ぶ牢で注釈を書いて学ぶ2年後、家に帰された(『尚書』の注)張楷
4とらえられた裴優が「張楷に習った」と言ったため、張楷も2年とらわれます。張楷は牢の中でも学問を続け、のちに家に帰されました。

張楷は、霧を起こす術を持っていても、それを使って何かをしたという話は伝わっていません。一方の裴優は、自分の術を悪いことに使ってしまいました。同じ「霧の術」でも、使う人によって、まったくちがう結果になったのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

このお話で大事なのは、「五里霧」がもとは張楷の術の名前だったということだ。そこから「深い霧の中にいて何も見えない」→「見通しが立たず迷う」という意味が生まれたんだね。

原文では、張楷が起こしたのは「五里霧」、裴優が起こしたのは「三里霧」と書かれています。数字の大きさで、二人の術の力の差を表しているのです。漢の時代の1里は約400メートルとされるので、五里はおよそ2キロメートルになります。ただし、原文は「五里霧」とだけ書いていて、霧が五里四方に広がったのか、五里の長さにわたったのかは書かれていません。辞典などでは「五里四方の霧」と説明されることも多いです。

張楷の「五里霧」と裴優の「三里霧」0里1里2里3里4里5里五里霧(張楷)およそ2キロメートル三里霧(裴優)およそ1.2キロメートル漢の時代の1里は約400メートルとされます※原文は「五里霧」だけ。広さか長さかは書かれていない
五里霧と三里霧。数字の差は、そのまま術の力の差です

「五里霧中」の原文・書き下し文・現代語訳

張楷の話は、『後漢書』の張霸(ちょうは)伝のあとに、子の張楷の伝として書かれています(巻三十六)。霧の話の部分を、1文ずつ読んでみましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。

白文(『後漢書』張霸伝付・張楷。字は今の字にした)性好道術、能作五里霧。時関西人裴優亦能為三里霧、自以不如楷、従学之、楷避不肯見。桓帝即位、優遂行霧作賊、事覚被考、引楷言従学術、楷坐繋廷尉詔獄。積二年、恒諷誦経籍、作尚書注。後以事無験、見原還家。

1文目:張楷は五里霧を起こせた

書き下し文性せい道術だうじゆつを好このみ、能よく五ご里り霧むを作なす。

(『後漢書』張霸伝付・張楷)

現代語訳(張楷は)生まれつき道術(仙人の術・まじない)を好み、五里霧を起こすことができた。

ここがポイント「性(せい)」は「生まれつきの性質」。「能(よ)く〜」は「〜できる」という可能の句法です。「五里霧」の3字がまとまって1つの名前になっていて、「五里霧を作す(なす)」と読みます。ここが「五里霧中」のもとです。

2文目:裴優も三里霧を起こせた

書き下し文時ときに関西くわんせいの人ひと裴優はいいうも亦また能よく三さん里り霧むを為なす。

(『後漢書』張霸伝付・張楷)

現代語訳そのころ、関西の人の裴優もまた、三里霧を起こすことができた。

ここがポイント「亦(ま)た」は「〜もまた(同じように)」。「張楷が五里霧を起こせたのと同じように、裴優も」という意味で、二人を比べるための字です。「為」は、ここでは「作」と同じ「なす(起こす)」の意味です。

3文目:弟子入りを願う

書き下し文自みづから楷かいに如しかざると以おもひ、従したがひて之これに学まなばんとす。

(『後漢書』張霸伝付・張楷(原文は「従学之」))

現代語訳(裴優は)自分は張楷にはかなわないと思い、弟子になって張楷に学ぼうとした。

ここがポイント「AはBに如かず」は「AはBに及ばない」という比較の句法。レ点が3つ続くので、「楷に→如か→ざると→以ひ」と、下から1字ずつ返ります。「以(おも)ふ」は「思う」です。

4文目:張楷は会おうとしない

書き下し文楷かい避さけて見まみゆるを肯がへんぜず。

(『後漢書』張霸伝付・張楷)

現代語訳張楷はさけて、会おうとしなかった。

ここがポイント「肯(がへ)んぜず」は「〜しようとしない・承知しない」という否定の句法の形です。「見(まみ)ゆ」は「お会いする」。「見」を「みる」と読まないのがポイントです。

5文目:裴優は霧を使って悪事をはたらく

書き下し文優いう遂つひに霧きりを行おこなひて賊ぞくと作なる。

(『後漢書』張霸伝付・張楷(前に「桓帝即位」とある))

現代語訳(桓帝が位につくと)裴優はとうとう霧の術を使って、盗賊になった。

ここがポイント「遂(つひ)に」は「とうとう・そのまま」。「賊と作(な)る」は「盗賊になる」で、「作」を「なる」と読む使い方です。同じ「作」でも、1文目の「作す(なす)」とは読み方がちがいます。

6文目:取り調べを受ける

書き下し文事こと覚あらはれて考かんがへらる。

(『後漢書』張霸伝付・張楷)

現代語訳悪事がばれて、取り調べを受けた。

ここがポイント「被(る)」は「〜される」という受け身の句法の字で、書き下し文ではひらがなの「る・らる」になります。「考」は、ここでは「取り調べる」の意味です。このあと裴優は「張楷から術を学んだ」と言い、張楷も牢につながれました。
原文で覚える句法4つ能能く五里霧を作す〜できる(可能)不肯見ゆるを肯んぜず〜しようとしない(否定)亦裴優も亦〜もまた(同じく)被考へらる〜される(受け身)
五里霧中の原文で覚えたい句法。可能・否定・受け身がそろっています

原文はこのあと、「積むこと二年、恒に経籍を諷誦し、尚書の注を作る」(2年のあいだ、いつも経書を口ずさみ、『尚書』の注釈を書いた)、「後に事の験無きを以て、原(ゆる)されて家に還る」(のちに証拠がないということで許されて家に帰った)と続きます。とらわれても学問をやめなかった張楷の姿が、短い文で書かれています。

「五里霧中」の4字は原文にない

原文に出てくるのは「五里霧」の3字だけで、「五里霧中」という4字の言葉は出てきません。この「五里霧」に「中」をつけて「五里霧の中にいる=迷う」という意味で使うようになったのは、後の時代のことです。中国でも「五里霧の中に落ちたよう」という言い方があるとされますが、いつ、だれが使い始めたのかについては、はっきりした資料が見つかりませんでした。

サクラちゃん

サクラちゃん

張楷って、霧の術を使う魔法使いみたいな人だったんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

『後漢書』を読むと、張楷はまずりっぱな学者として書かれているんだ。門人は百人もいて、人が集まりすぎるので山の中に引っこしたら、そこにまで人が集まって市場ができた。霧の術は、その伝の中のひとつの話として出てくるんだね。術が本当にあったかどうかは、もちろん分からない。そういう言い伝えがあったと読むのがいいよ。

出典『後漢書』と話の背景

『後漢書(ごかんじょ)』は、後漢(25〜220年)の歴史を書いた本で、南朝宋の范曄(はんよう)がまとめました。皇帝の記録(本紀)や人物の伝記(列伝)がならんでいます。『史記』『漢書』とともに、中国の歴史書の代表として読まれてきました。

張楷(ちょうかい)ってどんな人?1学者として名高い『春秋』『尚書』に通じ、門人は百人2山に移り住む人が集まりすぎ、弘農の山中へ3「公超市」ができる慕う人が集まり、市場ができた4五里霧を起こす道術を好み、霧を作れた5裴優の事件で牢へ2年とらわれ、『尚書』の注を書く6疑いが晴れ家へ招かれても仕えず、70歳で没
張楷の伝の流れ。霧の話は、学者としての一生の中のひとこまです

学者・張楷

張楷は、儒学の経典である『春秋(しゅんじゅう)』(厳氏の学)と『古文尚書(こぶんしょうしょ)』に通じ、門人はいつも百人ほどいたと書かれています。屋敷の前の通りは車や馬でいっぱいになり、宦官や皇后の親族の家までが、道ばたに宿を建てて、訪ねてくる人を相手にもうけようとしたほどでした。張楷はそれをいやがって、何度も引っこしました。

やがて弘農(こうのう)の山の中にかくれ住みますが、学ぼうとする人がついてきて、住まいのまわりが市場のようになりました。そのため、華陰山(かいんざん)の南には「公超市(こうちょうし)」という名前の市ができた、と『後漢書』は伝えています。「公超」は張楷の字です。

家は貧しく、ろばの車で町へ行って薬を売り、食べる分だけかせぐと帰ってきたとも書かれています。朝廷から何度も役人に招かれましたが、病気を理由にことわり続けました。のちの順帝は、張楷を、孔子の弟子で清貧で知られる原憲(げんけん)にたとえてほめる詔(みことのり)を出しています。

なぜ霧の術の話が書かれたのか

張楷が「道術を好んだ」というのは、仙人の術や不思議な術に心をひかれていた、ということです。『後漢書』には「方術列伝(ほうじゅつれつでん)」という、占いや不思議な術で知られた人々をまとめた巻もあります。張楷の伝で霧の話が書かれているのは、裴優の事件にまきこまれて牢に入れられたいきさつを説明するためでもあります。

裴優は、桓帝(かんてい)が位につくと、霧の術を使って盗賊になりました。つかまった裴優が「張楷から術を学んだ」と言ったため、張楷は2年ものあいだ牢につながれます。それでも張楷は、毎日経書を口ずさみ、『尚書』の注釈を書きました。最後は証拠がないとして許され、家に帰っています。建和三年(149年)に再び朝廷から招かれましたが、重い病を理由に行かず、70歳で亡くなりました。

「五里霧中」という言葉だけを聞くと、張楷が人をまどわせたように思うかもしれません。でも原文では、張楷はむしろまきこまれた側です。言葉のなりたちと、もとの話の中身は分けて理解しておきましょう。

「霧」が入るほかの言葉

「五里霧中」のほかにも、「霧」の字を使った言葉はいくつもあります。どれも、霧の「先が見えない」「すっと消える」という性質をうまく使っています。

  • 雲散霧消(うんさんむしょう):雲が散り、霧が消えるように、あとかたもなく消えてしまうこと。「不安が雲散霧消した」のように使います。
  • 霧散(むさん):霧が晴れるように、散って消えること。「計画が霧散する」。
  • 濃霧(のうむ)・霧笛(むてき):こい霧・霧の中で船が鳴らす笛。「霧」を「む」と読む熟語です。

「霧」を「む」と音読みする熟語を知っていれば、「五里霧中」の「む」が「夢」ではなく「霧」だと、すぐに分かります。

「五里霧中」の使い方と例文・似た言葉

「五里霧中」は、手がかりや情報がなく、どうすればよいか分からない状態に使います。「五里霧中だ」「五里霧中の状態」「五里霧中のまま」の形が多く、事件の捜査・交渉・研究・進路などの場面でよく見かけます。

  • ○原因がつかめず、研究は五里霧中の状態が続いている。(見通しが立たない)
  • ○転校したばかりで、学校のきまりも分からず五里霧中だった。(様子が分からない)
  • ○交渉は五里霧中のまま、期限をむかえた。(先が見えない)
  • ○受験勉強を始めたころは五里霧中だったが、計画を立ててから道が見えてきた。(あとで抜け出す)
  • ×ゲームに五里霧中になって、宿題を忘れた。(「夢中」とまちがえている)
  • ×朝、外は五里霧中で何も見えなかった。(本当の霧の天気には、ふつう使わない)
五里霧中似た言葉暗中模索右往左往途方に暮れる一寸先は闇反対の言葉一目瞭然明明白白見通しが立つ
似た言葉と反対の言葉。「暗中模索」は、見えない中で手さぐりで探すこと

似た言葉

  • 暗中模索(あんちゅうもさく):手がかりがない中で、いろいろ試してさがすこと。五里霧中が「迷っている状態」なら、暗中模索は「それでもさがしている動き」に重点があります。
  • 右往左往(うおうさおう):あわてて、あちこち動き回ること。
  • 途方に暮れる・一寸先は闇:どうしてよいか分からなくなる・先のことはまったく分からない、という意味の言い方。
  • 疑心暗鬼(ぎしんあんき):「暗」の字が入りますが、こちらは「疑うと何でもあやしく見える」こと。意味はちがうので注意。

反対の言葉

  • 一目瞭然(いちもくりょうぜん):ひと目見ただけで、はっきり分かること。
  • 明明白白(めいめいはくはく)・見通しが立つ:はっきりしていて疑いのないこと・先のことが分かること。

英語では、be completely in the dark(まったく暗やみの中にいる=何も分からない)や be in a fog(霧の中にいる=頭がぼんやりして分からない)が近い言い方です。

勉強が「五里霧中」になったときは

受験勉強でも、「何から手をつけてよいか分からない」という五里霧中の時期はだれにでもあります。そんなときは、霧の中で一歩ずつ足もとを確かめるように、今日やることを1つだけ決めるのが近道です。問題集の1ページ、単語10個でもかまいません。小さな「見えた!」を積み重ねるうちに、少しずつ霧が晴れていきます。行きづまったら、先生や友だち、受験掲示板で質問して、まわりの人に道を照らしてもらうのも大切です。

「五里霧中」のよくあるまちがい

「霧」と「夢」を書きまちがえない霧きり(部首:雨)五里霧中・濃霧○ 五里霧中夢ゆめ夢中・無我夢中× 五里夢中霧が出て先が見えないから「迷う」意味になります
「霧(きり)」と「夢(ゆめ)」。「五里夢中」は書きまちがいです
  • 「五里夢中」と書く:いちばん多いまちがいです。正しくは「霧」。「霧」の読み方・書き順・部首は雨かんむりで、空からおりてくる水のつぶ(きり)を表します。「夢」の読み方・書き順・部首(ゆめ)とは別の字です。
  • 「無我夢中」と混ぜる:「無我夢中」は、一つのことに心をうばわれて我を忘れること。「五里霧中」は、迷って分からないこと。読みは似ていても、意味は反対に近いほどちがいます。
  • 「五里・霧中」と区切る:なりたちは「五里霧(張楷の霧)+中」です。「霧中(むちゅう)」という言葉からできたわけではありません。「里」の読み方・書き順・部首・「中」の読み方・書き順・部首もあわせて確かめましょう。
  • 「ごりむなか」「ごりきりなか」と読む:すべて音読みで「ごりむちゅう」です。
  • 張楷が人をまよわせた話だと思う:原文で霧を悪いことに使ったのは裴優のほうで、張楷はまきこまれて牢に入れられた側です。
うかるくん

うかるくん

「五里霧中になって勉強した」って書いたら、まちがいですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

うん、それは「夢中」と混ざっているね。「熱中して勉強した」なら「無我夢中で勉強した」。「何をしていいか分からなかった」なら「五里霧中だった」。霧は「見えない」、夢は「我を忘れる」と、字の意味で区別しよう。

入試ではこう出る

「五里霧中」は、中学受験の四字熟語の定番で、高校受験・大学受験でも漢字の書き取りや意味の問題でよく出てきます。

  • 中学受験:「ごりむちゅう」を漢字で書く問題(「霧」を「夢」と書かないか)、四字熟語の意味を選ぶ問題、似た意味の四字熟語(暗中模索など)を選ぶ問題がよく問われます。
  • 高校受験:漢字の書き取り、四字熟語の空らん(五里□中)、文の中で正しい使い方を選ぶ問題。高校受験の漢文の基本は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:評論文の中で「五里霧中の状態」などの言葉として出てきて、意味を問われることがあります。漢文としては、「能く〜」の可能、「肯んぜず」、「被」の受け身など、原文に出てくる句法がそのまま基本問題になります。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

漢字の問題では、「霧が出て先が見えない」から「迷う」と、意味と字をセットで覚えておけば、「夢」と書きまちがえませんね!

練習問題

やさしい

  1. 「五里霧中」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 一つのことに熱中すること イ 様子が分からず、どうしてよいか迷うこと ウ 遠くまでよく見えること エ 霧の深い天気のこと
    答えと解説を見るイ。深い霧の中で何も見えないように、見通しが立たず迷っている状態のことです。アは「無我夢中」の意味です。
  2. 次の文の中のまちがった字を直しましょう。「捜査は五里夢中だ。」
    答えと解説を見る夢→霧。正しくは「五里霧中」です。

ふつう

  1. 「五里霧中」は、だれの、どんな話から生まれた言葉ですか。
    答えと解説を見る後漢の学者張楷が、道術で「五里霧」という深い霧を起こせたという『後漢書』の話からです。その霧の「中」にいるように、先が見えず迷う意味になりました。
  2. 「能作五里霧」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る能く五里霧を作す。「能く〜」は「〜できる」という可能の意味です。

むずかしい

  1. 「楷避不肯見」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る書き下し文:楷避けて見ゆるを肯んぜず。訳:張楷はさけて、(裴優に)会おうとしなかった。「肯んぜず」は「〜しようとしない」、「見ゆ」は「会う」の意味です。
  2. 原文の「五里霧」と、四字熟語「五里霧中」とのちがいを説明しましょう。
    答えと解説を見る原文の「五里霧」は、張楷が術で起こした霧の名前(3字)で、原文に「五里霧中」の4字は出てきません。後に「中」をつけ、五里霧の中にいるように、見通しが立たず迷うという意味の四字熟語として使われるようになりました。

「五里霧中」とあわせて覚えたい関連ページ

『後漢書』から生まれた故事成語(絵で読む)

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よくある質問

五里霧中の意味を簡単に言うと何ですか?

様子がまったく分からず、どうしてよいか迷うことです。深い霧の中で何も見えず、どちらに進めばよいか分からない状態にたとえた言葉です。

五里霧中の由来は何ですか?

『後漢書』にある、後漢の学者・張楷の話です。張楷は道術を好み「五里霧」という深い霧を起こせたと書かれています。その五里霧の中にいるように、先が見えず迷うことを「五里霧中」と言うようになりました。

五里霧中の「む」は「夢」ですか?

いいえ、「霧(きり)」です。「五里夢中」と書くのはまちがいです。「夢中(むちゅう)」や「無我夢中」とは別の言葉で、意味もちがいます。

五里霧中はどこで区切りますか?

「五里霧」と「中」で区切ります。「五里霧」は張楷が起こした霧の名前で、その「中」にいる、という意味です。「五里」と「霧中」に分けるのは、なりたちから見るとまちがいです。

五里霧中の似た言葉・反対の言葉は何ですか?

似た言葉は暗中模索・右往左往・途方に暮れるなど、反対の言葉は一目瞭然・明明白白・見通しが立つなどです。

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出典・参考

  • 原文:『後漢書』巻三十六・張霸伝に付く張楷の伝(維基文庫の本文で確認。白文・訓読文は今の字にした)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(一般的な読み方をもとにした一例)
  • 絵:米友仁「雲山図」(メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦