備えあれば憂いなしの意味と由来|書経・左伝の原文「有備無患」の書き下し文・現代語訳【故事成語】

備えあれば憂いなしの意味と由来|書経・左伝の原文「有備無患」の書き下し文・現代語訳【故事成語】

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備えあれば憂いなしそなえあればうれいなし

ひとことで言うと

ふだんから準備をしておけば、いざというときに心配はない。殷の宰相・傅説が王をいましめた言葉「有備無患」から。

読み方そなえあればうれいなし
意味ふだんから準備をしておけば、いざというときに何も心配することはない。
出典『書経』(尚書)説命中「有備無患」。『春秋左氏伝』襄公十一年にも「居安思危,思則有備,有備無患」
お話殷の王・高宗(武丁)に、宰相の傅説が「事を事とすれば備へ有り、備へ有れば患ひ無し」と申し上げた
原文の字「憂」ではなく「患」(備へ有れば患ひ無し)
似た言葉転ばぬ先の杖・用意周到・治にいて乱を忘れず
反対の様子泥縄・後の祭り(心配しすぎは杞憂)
漢文の句法否定(無)・条件(則・已然形+ば)・返読(有・無)

このページのポイント

  • ふだんから準備しておけば、いざというときに心配はないという意味
  • もとは漢文の「有備無患(備へ有れば患ひ無し)」。『書経』と『春秋左氏伝』に出てきます
  • 原文の字は「患」。ことわざは「憂い」と書き、「愁い」や「嬉しいな」とまちがえない

「備えあれば憂いなし」の意味と読み方

「備えあれば憂いなし」はそなえあればうれいなしと読みます。意味は「ふだんから準備をしておけば、いざというときに心配することはない」です。災害、試験、試合、病気など、先のことに前もって手を打っておく大切さを言うときに使います。

「備え」は準備、「憂い」は心配ごとのことです。「あれば」は「あるならば」、「なし」は「ない」。言葉の形はやさしいですが、もとは中国の古い書物『書経(しょきょう)』や『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に出てくる「有備無患(備へ有れば患ひ無し)」という言葉です。

うかるくん

うかるくん

「備えあれば憂いなし」って、ことわざだと思っていました。故事成語なんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

もとは漢文の「有備無患(ゆうびむかん)」なんだ。殷の国の王に、宰相の傅説(ふえつ)が申し上げた言葉として『書経』に出てくる。原文の字は「憂」ではなく「患」だけれど、日本では「憂い」と書く形が広まった。中国の昔の本から来た言葉だから、故事成語の仲間に入れられることが多いよ。

この言葉の大事なところは、「心配ごとがなくなるのは、準備をした結果だ」という順番です。何もしないで「たぶん大丈夫」と思うのは、心配がないのではなく、心配に気づいていないだけかもしれません。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○非常用の水と食料を用意しておこう。備えあれば憂いなしだ。
  • ○試験の前の日に、受験票と筆記用具をかばんに入れておいた。備えあれば憂いなし。
  • ○雨の予報ではなかったが、折りたたみ傘を持ってきてよかった。備えあれば憂いなしだね。

絵で読む「備えあれば憂いなし」

この言葉は、だれかの失敗や成功の話から生まれたのではなく、王に仕える人が王をいましめた言葉です。そこで4こまの絵は、1こま目で『書経』の場面(傅説が高宗に申し上げるところ)を、2〜4こま目は言葉の意味を分かりやすくするための「たとえの場面」(作り話)にしました。

絵で読む「備えあれば憂いなし」(4こま)

1傅説のいましめ※『書経』説命の場面備へ有れば患ひ無し傅説(宰相)高宗(殷の王)
1殷の王・高宗(武丁)に、宰相の傅説が「事にあたっては備えをせよ。備えがあれば心配ごとはない」と申し上げました。
2晴れの日に※たとえの場面大雨にそなえよう雨なんて降らないよ
2【たとえの場面】晴れた日、左の村人は川ぞいの堤を高くしています。右の村人は「雨なんて降らないよ」と寝ころんでいます。
3大雨が降る堤が水を止める水があふれた!
3【たとえの場面】大雨が何日も降り、川の水があふれました。堤のある左側は、水を止めています。
4備えた人は安心備えてよかった!しまった…備へ有れば患ひ無し
4【たとえの場面】備えていた人は安心、備えなかった人は困ってしまいました。まさに「備へ有れば患ひ無し」です。

晴れた日に堤を高くしていた人は、そのときは「むだな苦労」に見えたかもしれません。でも大雨が来たとき、その準備が家と畑を守りました。反対に、のんびりしていた人は、水があふれてから困っても、もう間に合いません。備えは、困ったことが起きる「前」にしかできないのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

ポイントは「何もないときに備える」ことだ。大雨が降り出してから堤を作っても間に合わない。『左伝』の言い方を借りれば「安きに居りて危ふきを思ふ」、つまり平和なときこそ、危ないときのことを考えておくんだね。

紫の髪かざりをつけ、うす青い衣を着て、長いひげをたくわえた男性の上半身の肖像画。上に「商賢相」と書かれている
清の時代に描かれた傅説の肖像(『歴代名臣像解』より)。上の字は「商賢相」で、「商(殷)のかしこい宰相」という意味です。画像:『歴代名臣像解』傅説像(清・乾隆年間、作者不明、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

原文・書き下し文・現代語訳(『書経』説命中・『春秋左氏伝』)

この言葉は、『書経』の説命中(えつめいちゅう)という篇と、『春秋左氏伝』の襄公(じょうこう)十一年の記事に出てきます。返り点と送り仮名をつけた訓読文で、1文ずつ見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。

『書経』説命中(傅説の言葉の一部)惟事事、乃其有備。有備無患。

1文目:事にあたれば備えがある

書き下し文惟これ事ことを事こととすれば、乃すなはち其それ備そなへ有あり。

(『書経』説命中)

現代語訳物事にあたって、そのことにしっかり取り組んでいれば、そこには備えができる。

ここがポイント「事を事とす」は「仕事を自分の務めとしてしっかり行う」という意味。2つの「事」のうち、上の「事」は「〜とする(務めとする)」という動詞で、レ点で下の「事」から返って読みます。「惟(こ)れ」「其(そ)れ」は、調子を整えたり強めたりする字で、訳さないこともあります。

2文目:備えがあれば心配はない

書き下し文備そなへ有あれば患うれひ無なし。

(『書経』説命中)

現代語訳備えがあれば、心配ごとはない。

ここがポイントこの言葉のもとの形です。「有(あり)」「無(なし)」は、下の字から返って読む「返読文字」。「有備」は「備へ有り」、「無患」は「患ひ無し」と読みます。「無」は打ち消しの字で、否定の句法(不・無・非・莫)でくわしく説明しています。「有れば」は已然形+「ば」で「〜があるので・あると(いつも)」。条件の読み方は仮定・条件の句法(則・已然形+ば)へ。
原文で覚える句法4つ有備備へ有り〜がある(下から返る)返読無患患ひ無し〜がない否定則すなはち「AならばB」をつなぐ条件惟これ調子を整える・強める発語
「有」「無」の返読、「則」、「惟」。短い原文で4つの句法が練習できます

『春秋左氏伝』襄公十一年の形

同じ言葉は、春秋時代の歴史書『春秋左氏伝』(左伝)にも出てきます。紀元前562年、鄭(てい)の国から晋(しん)の悼公(とうこう)へ、楽器や楽人などがおくられました。悼公はその半分を、北方の異民族との和平や諸侯の取りまとめに力をつくした家臣・魏絳(ぎこう)に与えようとします。魏絳は「それは主君のおかげです」と遠慮したうえで、楽しみの中でもその先を考えてほしい、と次のように申し上げました。

『春秋左氏伝』襄公十一年(句読点を補ったもの)書曰:居安思危,思則有備,有備無患。敢以此規。

左伝の形:安きに居りて危ふきを思ふ

書き下し文安やすきに居をりて危あやふきを思おもふ。思おもへば則すなはち備そなへ有あり、備そなへ有あれば患うれひ無なし。

(『春秋左氏伝』襄公十一年(魏絳が「書に曰く」と引いた言葉))

現代語訳(書物に言う)平和なときにも危ないときのことを考える。考えておけば準備ができ、準備があれば心配ごとはない。

ここがポイント「居安思危」は今も中国で「安きに居りて危ふきを思ふ」の四字熟語として使われます。「則(すなは)ち」は「AならばB」をつなぐ字。魏絳は「書に曰く」と言っているので、これは昔の書物の言葉を引いたものです。ただし、どこまでが引用で、どこからが魏絳自身の言葉かは、読み方が分かれます。
考える→備える→心配がない1安きに居りて危ふきを思ふ平和なときにも、危ないときのことを考える2思へば則ち備へ有り考えておけば、準備ができる3備へ有れば患ひ無し準備があれば、心配ごとはない
「考える→備える→心配がない」。左伝の3つの句は、1つずつ順につながっています
サクラちゃん

サクラちゃん

『書経』と『左伝』、どっちが先なんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

むずかしい問題なんだ。『書経』の話は殷の時代のことだけど、今伝わる「説命」の本文は、ずっと後の時代に作られたものだとする説が有力なんだよ(「偽古文尚書(ぎこぶんしょうしょ)」の問題という)。だから「有備無患」も、『左伝』などに引かれていた古い「書」の言葉を、後の人が「説命」に取り入れたのではないか、と考える人もいる。どちらが先かは諸説あり、と覚えておけば十分だ。

同じ説命中の「知ることは難しくない」

説命中には、ほかにもよく知られた言葉があります。傅説が最後に言う、次の言葉です。

説命中:行うことこそ難しい

書き下し文之これを知しることの艱かたきに非あらず、之これを行おこなふこと惟これ艱かたし。

(『書経』説命中)

現代語訳(よいことを)知るのが難しいのではない。それを行うことこそが難しいのだ。

ここがポイント「非(あら)ず」は「〜ではない」という否定。一二点とレ点を組み合わせて「之→知→艱→非」の順に読みます。備えも同じで、「準備が大事」と知っているだけでなく、実際にやることが大切だ、という意味でつながります。

出典『書経』と話の背景

『書経(しょきょう)』は、中国の古い時代の王や家臣の言葉・命令を集めた本で、もとは『書』『尚書(しょうしょ)』と呼ばれました。儒家が大切にした五つの経典「五経」(易・書・詩・礼・春秋)の一つです。孔子が編集したという言い伝えもありますが、はっきりしたことは分かっていません。儒家の考え方は諸子百家(儒家・道家・法家・墨家)の考え方で図にしています。

説命(えつめい)は上・中・下の3篇からなり、殷(商)の王・武丁(ぶてい)、のちに「高宗(こうそう)」と呼ばれた王と、宰相の傅説の話です。説命上によると、高宗は父の喪に服したあとも、なかなか口を開きませんでした。徳のある助け手を求めていた高宗は、天の神からよい補佐役を授かる夢を見ます。そこで夢で見た人の姿を描かせて国じゅうを探させると、傅巌(ふがん)という所で土木の仕事をしていた説がそっくりだったので、宰相にしました。歴史書『史記』の殷本紀にも、武丁が夢で聖人を見て、傅険(ふけん)で働いていた説を見つけ出し、宰相にしたところ殷の国はよく治まった、という話があり、場所の名をとって「傅説」と呼んだと書かれています。

この言葉が出てくる2つの本『書経』説命中(殷の時代の話として)宰相の傅説が、殷の王・高宗(武丁)に「事を事とすれば備へ有り、備へ有れば患ひ無し」※今の本文は後の時代に作られたとする説が有力『春秋左氏伝』襄公十一年(紀元前562年)晋の魏絳が、主君の悼公に「書に曰く」と引いて「安きに居りて危ふきを思ふ…備へ有れば患ひ無し」※どこまでが引用かは、読み方が分かれるどちらも「有備無患」(備へ有れば患ひ無し)日本では「患ひ」を「憂い」と書く形が広まった
「有備無患」は『書経』説命中と『春秋左氏伝』の両方に出てきます

説命中は、宰相になった傅説が高宗にさまざまな心がまえを説く篇です。役人は身内ではなく能力で選ぶこと、自分の能力を自慢すると功績を失うこと、そして「事を事とすれば備へ有り、備へ有れば患ひ無し」。王が気をゆるめず、一つ一つの仕事に向き合っていれば、自然と備えができ、国に心配ごとはなくなる、というわけです。

「偽古文尚書」の問題(諸説あり)

『書経』は、秦の始皇帝の焚書などで一度多くが失われ、漢の時代以後に何度も集め直されました。その中で、東晋の時代に世に出た「古文尚書」の一部は、後の時代に作られたもの(偽作)ではないかと、宋の時代から疑われてきました。清の時代の学者・閻若璩(えんじゃくきょ)らの研究以来、説命をふくむ25篇は偽作とする説が有力です。維基文庫でも、説命の篇には「偽」の印がついています。ただし、篇の中に古い時代の言葉が取り入れられていることはあり、「有備無患」が『左伝』に「書に曰く」として引かれていることも、その手がかりの一つとされます。くわしいことには諸説あります。

使い方と例文・似た言葉

「備えあれば憂いなし」は、前もって準備しておくことをすすめるときや、準備しておいたおかげで助かったときに使います。防災の呼びかけや、受験・スポーツ・仕事など、いろいろな場面で使える、とても身近な言葉です。

  • ○台風が来る前に、懐中電灯の電池を確かめておこう。備えあれば憂いなしだ。(防災)
  • ○本番と同じ時間で過去問を解いておいたので、当日もあわてなかった。備えあれば憂いなしだね。(受験)
  • ○大事なデータは、別の場所にも保存しておく。備えあれば憂いなし。(仕事・パソコン)
  • ○遠足のしおりを前の日に読み、持ち物をそろえておいた。備えあれば憂いなしだ。(学校)
  • ×何も準備しなかったけれど、備えあれば憂いなしで、きっと大丈夫だ。(準備をしていない場面では使えない)
  • ×宿題が終わらなくて、備えあれば憂いなしの気持ちだ。(「心配でたまらない」という意味ではない)
ふだんの「備え」の例防災水・食料・ライト・避難場所の確認受験過去問・持ち物・会場までの道の下見健康早寝早起き・手洗い・予防接種お金使う前に計画・少しずつ貯金「いざ」というときの前に、できることをしておく
防災・受験・健康・お金。「備え」は身近なところにたくさんあります

日本では、9月1日の「防災の日」(1923年の関東大震災が起きた日)のころなどに、防災の呼びかけでよくこの言葉が使われます。水や食料、懐中電灯、家族との連絡のしかた、避難場所の確認など、「いざ」というときの前にできることはたくさんあります。受験生なら、過去問で本番の形に慣れる、受験票や筆記用具を前の日にそろえる、会場までの道を下見しておくことが、そのまま「備え」になります。

受験生の「備え」のコツ

受験の備えでいちばん大切なのは、「本番で起こりそうなこと」を前もって考えておくことです。『左伝』の言い方なら「安きに居りて危ふきを思ふ」。たとえば、試験の日に電車がおくれたらどうするか、時計が止まったらどうするか、見たことのない問題が出たらどの大問から解くか。こうしたことを、時間のある今のうちに考え、決めておけば、当日にあわてることはぐっと減ります。

もう一つのコツは、準備を「見える形」にしておくことです。持ち物のリストを紙に書いてかばんに入れておく、過去問を解いた日と点数を記録しておく、苦手な単元をノートにまとめておく。そうすると、「何ができていて、何がまだか」がひと目で分かり、心配ごとが「やることのリスト」に変わります。心配の正体が分かれば、あとはそれを1つずつ片づけるだけです。これが「思へば則ち備へ有り、備へ有れば患ひ無し」の、今の時代の使い方だと言えるでしょう。

備えあれば憂いなし似た言葉転ばぬ先の杖用意周到治にいて乱を忘れず石橋を叩く反対の様子泥縄後の祭り心配しすぎ杞憂
似た言葉・反対の様子を表す言葉。「杞憂」は心配しすぎること

似た言葉

  • 転ばぬ先の杖(ころばぬさきのつえ):転ぶ前に杖を持つように、失敗しないよう前もって用心すること。
  • 用意周到(よういしゅうとう):準備がすみずみまで行き届いていること。
  • 治にいて乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず):世の中が平和なときにも、争いのときのことを忘れずに備えること。『易経』繋辞伝の「治まれども乱を忘れず」がもとです。
  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):じょうぶな石の橋でも、たたいて確かめてから渡るほど、用心深いこと。
  • 彼を知り己を知れば百戦殆うからず:相手と自分をよく調べておけば危なくない。「前もって手を打つ」点で近い言葉です。

反対の様子を表す言葉

  • 泥縄(どろなわ):「泥棒を捕らえて縄をなう」の略。事が起きてからあわてて準備をすること。
  • 後の祭り(あとのまつり):時機をのがして、もう手おくれであること。
  • 杞憂(きゆう):心配しなくてよいことを、あれこれ心配すること。「備え」とは反対に、役に立たない心配です。

なお、「油断大敵」(ゆだんたいてき)は、気をゆるめることがいちばんの敵だ、といういましめで、「備えあれば憂いなし」と同じ方向の言葉です。

よくあるまちがい

「うれい」の字のちがい憂憂い先のことを心配すること○ ふつう患患い(原文)心配ごと・わずらい△ 原文の字愁愁いもの悲しい気持ち× 使わないことわざは「備えあれば憂いなし」と書きます
「憂い」「患い」「愁い」。ことわざは「憂い」で書きます
  • 「憂い」を「愁い」と書く:「愁い」はもの悲しい気持ちのことで、この言葉には使いません。ふつうは「憂い」と書きます。「憂」の読み方・書き順・部首のページで書き順も確かめましょう。原文の字は「患」で、「患」の読み方・書き順・部首は「患者」「疾患」の字です。
  • 「備えあれば嬉しいな」と覚える:音が似ているので、だじゃれとして言われることがありますが、正しくは「うれい(心配ごと)なし」です。テストで書くときは注意しましょう。
  • 「準備さえすれば、あとは何もしなくてよい」と思う:この言葉は、心配ごとがなくなる理由が「準備」にある、という意味です。準備をしたあとも気をゆるめないことは別に大切で、「油断大敵」とあわせて使われます。
  • 「備え」を「供え」と書く:「供え」はお供えものの「そなえ」で、別の字です。準備の意味は「備」の読み方・書き順・部首(備品・準備の「備」)。
  • 出典を『論語』と答える:出典は『書経』説命中、また『春秋左氏伝』襄公十一年です。どちらも孔子の言葉をまとめた『論語』とは別の本です。
うかるくん

うかるくん

「有備無患」の書き下し、「備へ有り患ひ無し」でもいいんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

「備へ有れば患ひ無し」と、「ば」でつなぐのがふつうだ。「備えがあるから、心配がない」という、原因と結果の関係だからね。「有」と「無」は、どちらも下の字から返って読むこと。ここは返り点をつける問題でよく問われるよ。

入試ではこう出る

  • 中学受験:ことわざ・故事成語の意味を選ぶ問題や、「□□あれば□□なし」のような空らんうめ、似た意味のことわざ(転ばぬ先の杖など)を選ぶ問題で出ます。
  • 高校受験:意味や漢字(備・憂)を問う問題、「有備無患」に返り点をつけて書き下す問題。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:『左伝』や『書経』が出題されたとき、「居安思危」「有備無患」の書き下しや、「則」の働きが問われます。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「有備無患」は、「有」も「無」もレ点で下から返るから「備へ有れば患ひ無し」。原文の字は「憂」じゃなくて「患」なのもポイントですね!

練習問題

やさしい

  1. 「備えあれば憂いなし」の「憂い」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア うれしいこと イ 心配ごと ウ 悲しい気持ち エ 準備
    答えと解説を見るイ。「憂い」は先のことを心配する気持ちのことです。
  2. 「備えあれば憂いなし」と似た意味のことわざを、次から一つ選びましょう。
    ア 転ばぬ先の杖 イ 後の祭り ウ 泥縄 エ 急いては事をし損じる
    答えと解説を見るア。イとウは「手おくれ」「あわてて準備する」で、反対の様子を表します。

ふつう

  1. 「有備無患」に返り点をつけ、書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る有レ備無レ患。書き下し文は「備へ有れば患ひ無し。」(現代仮名遣いでは「備え有れば患い無し」)。
  2. 『春秋左氏伝』の「居安思危」を書き下し文に直し、意味を答えましょう。
    答えと解説を見る安きに居りて危ふきを思ふ。意味は「平和なときにも、危ないときのことを考える」。

むずかしい

  1. 「有備無患」は『書経』説命中と『春秋左氏伝』の両方に出てきます。それぞれ、だれがだれに言った言葉ですか。また、『書経』の説命について注意すべき点を説明しましょう。
    答えと解説を見る『書経』説命中は、殷の宰相傅説が王の高宗(武丁)に言った言葉。『春秋左氏伝』襄公十一年は、晋の魏絳が主君の悼公に「書に曰く」と昔の書物を引いて言った言葉です。説命の今の本文は、後の時代に作られた「偽古文尚書」の一篇とする説が有力で、どちらが先かには諸説があります。

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よくある質問

「備えあれば憂いなし」の意味を簡単に言うと?

ふだんから準備をしておけば、いざというときに心配することはない、という意味です。災害や試験など、先のことに前もって手を打っておく大切さを言います。

出典は何ですか?

中国の『書経』(尚書)説命中の「有備無患(備へ有れば患ひ無し)」です。殷の宰相・傅説が王の高宗(武丁)に言った言葉とされます。『春秋左氏伝』襄公十一年にも、晋の魏絳が「書に曰く」と引いた形で出てきます。

原文の字は「憂」ですか?

いいえ、原文は「患」で「備へ有れば患ひ無し」です。日本では「憂い」と書く形が広まりました。「愁い」はもの悲しい気持ちのことなので使いません。

「居安思危」とはどういう意味ですか?

「安きに居りて危ふきを思ふ」と読み、平和なときにも危ないときのことを考える、という意味です。『春秋左氏伝』では、このあとに「思へば則ち備へ有り、備へ有れば患ひ無し」と続きます。

似た意味の言葉は何ですか?

「転ばぬ先の杖」「用意周到」「治にいて乱を忘れず」「石橋を叩いて渡る」などです。反対の様子を表す言葉には「泥縄」「後の祭り」があります。

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出典・参考

  • 原文:『書経』(尚書)説命上・説命中(維基文庫「尚書」の本文で確認。古文尚書の篇で、後の時代の偽作とする説が有力)、『春秋左氏伝』襄公十一年(維基文庫「春秋左氏傳/襄公」で確認)、『史記』殷本紀(維基文庫「史記/卷003」で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(よく使われる読み方をもとにした一例)
  • 絵:『歴代名臣像解』傅説像(Wikimedia Commons、パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦(2〜4こま目は言葉の意味を表すたとえの場面)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦