彼を知り己を知れば百戦殆うからずの意味と由来|孫子・謀攻篇の原文・書き下し文・現代語訳【故事成語】

彼を知り己を知れば百戦殆うからずの意味と由来|孫子・謀攻篇の原文・書き下し文・現代語訳【故事成語】

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彼を知り己を知れば百戦殆うからずかれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず

ひとことで言うと

相手のことと自分のことを両方よく知っていれば、何度戦っても危ない目にあわない。兵法の本『孫子』謀攻篇の言葉。

読み方かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず
意味相手(敵)と自分(味方)の実情をよく知っていれば、何度戦っても危ないことはない。前もって相手と自分を調べる大切さ。
出典『孫子』謀攻篇「知彼知己,百戰不殆」(本によって「知彼知己者」の形も)。地形篇にも似た言葉
お話物語ではなく兵法の教え。両方知る→危なくない、自分だけ知る→一勝一負、どちらも知らない→戦うたびに危ない、の3段
似た言葉百聞は一見に如かず・用意周到・備えあれば憂いなし
反対の様子井の中の蛙・猪突猛進・無鉄砲
漢文の句法否定(不・非)・置き字(而)・重要漢字の読み(殆)

このページのポイント

  • 相手と自分を両方知れば、何度戦っても危なくないという意味。「必ず勝つ」ではありません
  • 出典は『孫子』謀攻篇。「両方知る」「自分だけ知る」「どちらも知らない」の3段で書かれています
  • 同じ篇に「百戦百勝は善の善なる者に非ず」。「百戦百勝」と混ぜるまちがいに注意

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の意味と読み方

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」はかれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからずと読みます。意味は「相手(敵)のことと自分(味方)のことを、両方よく知っていれば、何度戦っても危ない目にあうことはない」です。勝負や試合、仕事や受験など、だれかと競う場面で、前もって相手と自分をよく調べておくことの大切さを言うときに使います。

「彼(かれ)」は相手、「己(おのれ)」は自分のことです。「百戦」は百回の戦い、つまり「何度戦っても」という意味。「殆(あや)うからず」は「危なくない」という意味で、「殆うい」は「危うい」と同じです。ふだんは「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と、少し言いかえた形もよく使われます。

孫子が並べた3つの場合彼・己○○彼を知り 己を知る→ 百戦殆ふからず何度戦っても危なくない×○彼を知らず 己を知る→ 一勝一負す勝ったり負けたり××彼を知らず 己を知らず→ 戦ふ毎に必ず殆ふし戦うたびに必ず危ない○=知っている ×=知らない(左が彼、右が己)
孫子は「両方知る」「自分だけ知る」「どちらも知らない」の3つを並べています
うかるくん

うかるくん

「百戦殆うからず」って、「百回戦って百回勝つ」っていう意味ですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

そう思っている人は多いね。でも原文は「不殆(あやふからず)」。「危なくない」と言っているだけで、「必ず勝つ」とは言っていないんだ。勝てない相手だと分かれば、戦わない・守る、という選び方もできる。だから危ない目にあわない、ということなんだよ。出典は兵法の本『孫子(そんし)』だ。

原文の結びは3段になっていて、両方知っていれば危なくない、自分のことだけ知っていれば勝ったり負けたり、どちらも知らなければ戦うたびに必ず危ない、と順に述べています。いちばんよくないのは、相手も自分も分からないまま、勢いだけで戦うことです。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○決勝の前に相手チームの試合を見て研究した。彼を知り己を知れば百戦殆うからずだ。
  • ○過去問で志望校の傾向を知り、模試で自分の弱点を知る。彼を知り己を知れば百戦殆うからずで、受験も作戦が大事だ。
  • ○商品を出す前に、他社の商品とお客さんの声を調べる。敵を知り己を知れば百戦危うからずというからね。

絵で読む「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

この言葉は、だれかの出来事から生まれた話ではなく、兵法の本『孫子』の中の教えです。そこで4こまの絵は、1こま目で孫子の教えを示し、2〜4こま目は言葉の意味を分かりやすくするための「たとえの場面」(作り話)にしました。青い軍は「調べてから戦う軍」、赤い軍は「何も調べずに戦う軍」です。

絵で読む「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」(4こま)

1孫子の教え知彼知己百戦不殆彼を知り己を知れば百戦殆ふからず孫子竹簡(竹の札の本)
1兵法家の孫子は、戦う前に「敵(彼)」と「自分(己)」の両方をよく知ることが大切だと説きました。
2調べてから考える※たとえの場面敵は山のかげに千人います!己を知る彼を知る食料将軍物見
2【たとえの場面】青い軍の将軍は、物見に敵のようすを探らせ、自分の軍の食料や兵の数も確かめます。
3知らずに戦うと※たとえの場面数など知らん!進め!待ちぶせ赤い軍の将軍
3【たとえの場面】赤い軍の将軍は何も調べずに「進め!」。山のかげの待ちぶせに気づいていません。
4危ない戦いをしない※たとえの場面青勝てるときにだけ戦えばよい百戦殆ふからず
4【たとえの場面】調べていた青い軍は、勝てないときは守りを固めて待ちます。だから何度戦っても危なくないのです。

青い軍の将軍は、物見(ようすを探る兵)から「敵は山のかげに千人」と聞き、自分の軍の食料も確かめました。そのうえで「今は守りを固め、勝てるときにだけ戦う」と決めます。赤い軍の将軍は、相手の数も自分の力も調べずに飛び出し、待ちぶせに気づいていません。知っているかどうかで、同じ戦いでも危なさがまったく変わるのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

ポイントは、「知る」の中身が2つあることだ。相手の強さを知るだけでも、自分の力を知るだけでも足りない。両方を比べて、はじめて「戦うか、待つか」が決められるんだね。

孫子の考えでは、戦いはそもそも国の大事(たいじ)で、人の生き死にと国の存亡がかかったものです。だから、戦う前によく調べ、よく比べ、勝てる見こみがあるときにだけ動くべきだ、と考えました。この慎重さが、『孫子』全体をつらぬく考え方です。

原文・書き下し文・現代語訳(『孫子』謀攻篇)

この言葉は『孫子』の謀攻篇(ぼうこうへん)の最後にあります。謀攻篇の結びの3文を、返り点と送り仮名をつけた訓読文で1文ずつ見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。

白文(『孫子』謀攻篇の結び)故曰、知彼知己、百戦不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戦必殆。

1文目:彼を知り己を知れば

書き下し文彼かれを知しり己おのれを知しれば、百戦殆あやふからず。

(『孫子』謀攻篇)

現代語訳相手を知り、自分を知っていれば、百回戦っても危ないことはない。

ここがポイント「知彼」は「彼を知る」。動詞が先、目的語があとに来るので、レ点で下から返って読みます。「不(ず)」は打ち消しの否定の句法の字で、「殆ふからず」で「危なくない」。「殆」は「ほとんど」とも読む字で、読み分けは漢文の重要漢字の読み(殆・蓋・遂など)にまとめています。

2文目:自分だけ知っていると

書き下し文彼かれを知しらずして己おのれを知しれば、一勝一負す。

(『孫子』謀攻篇)

現代語訳相手を知らないで自分だけを知っているならば、勝ったり負けたりする。

ここがポイント「而」は読まない置き字で、ここでは前の「知らず」に「して」をつけて読み、あとへつなぐ働きをしています。「不知彼」はレ点が2つ続くので、「彼→知→不」の順に下から読みます。「一勝一負」は「いっしょういっぷ」で、1回勝って1回負けること。

3文目:どちらも知らないと

書き下し文彼かれを知しらず己おのれを知しらざれば、戦たたかふ毎ごとに必かならず殆あやふし。

(『孫子』謀攻篇)

現代語訳相手も知らず、自分も知らないならば、戦うたびに必ず危ない目にあう。

ここがポイント「毎戦」は「戦ふ毎に」と、下の「戦」から返って読みます(「〜するたびに」)。2つ目の「不」は「ざれば」と読み、「〜しないならば」という条件を表します。同じ「不」でも、あとに続く形で「ず」「ざれ」と読み方が変わります。
原文で覚える句法4つ不殆殆ふからず危なくない否定而(読まない)「〜して」をつなぐ置き字毎戦戦ふ毎に戦うたびに返読非〜也〜に非ざるなり〜ではない否定
謀攻篇の結びと、同じ篇の「百戦百勝は善の善なる者に非ず」で、否定・置き字・返読が練習できます

同じ謀攻篇の「百戦百勝は善の善なる者に非ず」

謀攻篇は、はじめのほうで次のように述べています。この言葉と合わせて読むと、孫子が「勝ち続けること」より「危ない戦いをしないこと」を大事にしていたことがよく分かります。

謀攻篇のはじめ:百戦百勝はいちばんではない

書き下し文是この故ゆゑに百戦百勝は、善ぜんの善ぜんなる者ものに非あらざるなり。

(『孫子』謀攻篇)

現代語訳だから、百回戦って百回勝つのは、最もよいやり方ではない。

ここがポイント「非(あら)ず」は「〜ではない」という否定の句法。一二点で「者」まで読んでから「非」に返ります。「者」の読み方は「者・所・所以」の読み方へ。

謀攻篇のはじめ:戦わずに勝つのが最上

書き下し文戦たたかはずして人ひとの兵へいを屈くつするは、善ぜんの善ぜんなる者ものなり。

(『孫子』謀攻篇)

現代語訳戦わないで相手の軍を降参させるのが、最もよいやり方である。

ここがポイントここでも「而」は置き字です。「戦はずして」の「して」が、送り仮名で表されています。「人の兵」は「相手の軍」。漢文の「人」は「他人・相手」を指すことが多いです。
「殆うからず」は「必ず勝つ」ではない百戦殆ふからず百回戦っても危なくならない負けない戦い方百戦百勝百回戦って百回勝つ勝ち続けること(戦わない・守るもふくむ)同じ謀攻篇で孫子は言う百戦百勝は善の善なる者に非ず戦はずして人の兵を屈するが最上
「百戦殆うからず」は「百戦百勝」とはちがいます。孫子自身が、百戦百勝は最上ではないと言っています

原典の本文のちがい(「者」の有無など)

『孫子』には古くからいくつもの本(テキスト)があり、字が少しずつ違います。維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる本文では、次のような違いがあります。

『孫子』謀攻篇の結び(句読点を補ったもの)故曰:知彼知己,百戰不殆;不知彼而知己,一勝一負;不知彼不知己,每戰必殆。
  • 「知彼知己者」:宋の時代にまとめられた注釈書『十一家注孫子』の本文では「知彼知己者,百戰不殆」と「者」が入ります。この形なら「彼を知り己を知る者は、百戦殆ふからず」と読みます。
  • 「每戰必敗」:『四庫全書』に入っている本では、最後が「必ず敗る」になっています。多くの本は「必ず殆ふし」です。
  • 「殆」の意味:『十一家注孫子』の注の一つ(王晳)は「殆は危なり」と説明しています。「殆」は「あやうい」の意味だと、昔の注釈でも読まれていたことが分かります。

また、同じ『孫子』の地形篇にも「彼を知り己を知れば、勝乃(すなは)ち殆ふからず。天を知り地を知れば、勝乃ち全(まった)かるべし」と、よく似た言葉があります。相手と自分に加えて、天候(天)と土地(地)まで知れば、勝ちが完全になる、という言い方です。

サクラちゃん

サクラちゃん

教科書や本によって「者」があったりなかったりするんですね。どっちが正しいんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

古い本は手で書き写して伝わったから、少しずつ違う形が残っているんだ。どれか1つが絶対に正しい、とは言いきれない。意味はどちらでもほとんど同じだから、入試では問題文に出てきた形のとおりに読めば大丈夫だよ。

出典『孫子』と話の背景

出典の『孫子(そんし)』は、中国の春秋時代の兵法家・孫武(そんぶ)の兵法をまとめた本とされ、13篇からなります。歴史書『史記』の孫子呉起列伝によると、孫武は斉の国の人で、兵法をもって呉の王・闔閭(こうりょ)に仕えたと伝えられます。ただし、孫武の生涯には分からないことが多く、『孫子』のどこまでを孫武本人が書いたのかには諸説あります。兵法家(兵家)は、孔子・孟子の儒家や韓非子の法家と並ぶ「諸子百家」の一つで、そのちがいは諸子百家(儒家・道家・法家・墨家)の考え方で図にしています。

1972年には、中国の山東省の銀雀山(ぎんじゃくざん)にある漢の時代のお墓から、竹の札に書かれた『孫子』が見つかりました。2000年以上前にも、この本が読まれていたことを示す大切な発見です。のちには三国時代の曹操(そうそう)が注をつけた本も作られ、日本にも古くから伝わりました。『孫子』の他の言葉は孫子の兵法の原文・書き下し・意味(風林火山など)でも読めます。

謀攻篇は「戦わずに勝つ」を説く篇

「謀攻(ぼうこう)」とは、はかりごと(作戦)で攻めるという意味です。謀攻篇は、相手の国や軍をこわさずに、まるごと従わせるのが最上という考えから始まります。そして、戦いのよしあしを次のような順番で並べています。

謀攻篇の「よい勝ち方」の順番1.上兵は謀を伐つ相手のたくらみをくじく2.其の次は交を伐つ相手の味方(同盟)を切りはなす3.其の次は兵を伐つ軍どうしで戦う4.其の下は城を攻む城を攻める(いちばん下策)上にいくほど「戦わずに勝つ」に近い
謀攻篇の順番。城を攻めるのは、ほかに方法がないときの最後の手段です

城を攻めるのは、道具の準備に何か月もかかり、兵をたくさん失うので、いちばん下の方法だとされます。続けて孫子は、兵の数が相手の10倍なら囲み、5倍なら攻め、同じくらいなら戦い、少なければ守り、かなわなければ避ける、と相手と自分の力の比べ方を述べます。さらに「勝ちを知るに五あり」として、戦うべきか戦わざるべきかを知る者、兵の多い少ないの使い方を知る者、上の者と下の者の気持ちがそろっている者などが勝つ、と5つをあげます。

そして篇の最後に、それらをまとめるように置かれているのが「彼を知り己を知れば、百戦殆ふからず」です。つまりこの言葉は、「相手と自分を比べて、戦うか避けるかを正しく決められる者は危なくない」という、謀攻篇全体の結論なのです。

同じ『孫子』から生まれた言葉

『孫子』からは、ほかにも多くの言葉が生まれています。仲の悪い者どうしでも同じ危険の中では助け合う「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」は九地篇のたとえ、武田信玄の旗で知られる「風林火山」は軍争篇の「疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し」がもとです。逃げ場のない所で兵を必死に戦わせる考えは、のちの「背水の陣」の話にも通じます。

使い方と例文・似た言葉

この言葉は、前もって相手と自分をよく調べ、比べてから行動することの大切さを言うときに使います。戦争だけでなく、スポーツ、受験、仕事、交渉など、相手がいる場面ならどこでも使えます。長いので、会話では「彼を知り己を知る」「敵を知り己を知れば」と前半だけで言うこともあります。

  • ○相手校のビデオを何度も見て作戦を立てた。彼を知り己を知れば百戦殆うからずだ。(スポーツ)
  • ○面接の前に会社のことを調べ、自分の強みも書き出しておく。彼を知り己を知ることが大切だ。(就職)
  • ○共通テストの過去問を時間を計って解き、苦手な大問を見つけた。敵を知り己を知れば百戦危うからずだね。(受験)
  • ○交渉の前に、相手が何をいちばん求めているかを調べておこう。彼を知り己を知れば百戦殆うからずだ。(仕事)
  • ×練習も研究もしていないけれど、彼を知り己を知れば百戦殆うからずだから、きっと勝てる。(何も調べていない場面では使えない)
  • ×あのチームは百戦殆うからずで、今年は全勝した。(「全勝」の意味で使うのは本来の意味とずれる)
受験にあてはめると彼(相手)志望校の入試・出題の形と分野・時間と配点・合格に必要な点己(自分)自分の実力・得意な分野・苦手な分野・時間内に解ける量両方を知ると何をどれだけやるかが決まる
受験では、志望校の入試が「彼」、自分の実力が「己」。両方を知ると勉強の作戦が決まります

受験にあてはめると、「彼」は志望校の入試問題、「己」は自分の実力です。過去問で出題の形や時間配分を知り、模試や問題集で自分の得意・苦手を知る。両方が分かってはじめて、「どの分野を、いつまでに、どれだけやるか」という作戦が立てられます。過去問を見ずに参考書を1冊目から順番に進めるだけでは、孫子の言う「彼を知らず」の状態かもしれません。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず近い言葉百聞は一見に如かず用意周到備えあれば憂いなし同じ『孫子』風林火山呉越同舟反対の様子井の中の蛙猪突猛進無鉄砲
近い言葉・同じ『孫子』の言葉・反対の様子を表す言葉

似た言葉

  • 百聞は一見に如かず:人から何度も聞くより、自分の目で一度見るほうが確かだということ。相手のことを「自分で確かめて知る」大切さという点で近い言葉です。
  • 用意周到(よういしゅうとう):準備がすみずみまで行き届いていること。
  • 備えあれば憂いなし:ふだんから準備をしておけば、いざというときに心配がないこと。「前もって手を打つ」点で近い言葉です。
  • 百戦錬磨(ひゃくせんれんま):たくさんの戦いできたえられていること。「百戦」という言葉は同じですが、こちらは「経験が豊富」という意味です。

反対の様子を表す言葉

  • 井の中の蛙:せまい世界にいて、広い世界(相手)を知らないこと。「彼を知らず」の状態です。
  • 猪突猛進(ちょとつもうしん):まわりを見ずに、まっしぐらに突き進むこと。
  • 無鉄砲(むてっぽう):結果を考えずに行動すること。

英語では、19世紀末〜20世紀初めに『孫子』を英訳した人の訳が知られていて、「敵を知り、自分を知っていれば、百の戦いの結果をおそれる必要はない」という意味の文になっています。英語でも「Know your enemy and know yourself」の形で、ことわざのように使われます。

よくあるまちがい

  • 「百戦百勝(必ず勝つ)」の意味だと思う:原文は「百戦不殆(殆ふからず)」で、「危なくない」という意味です。孫子は同じ謀攻篇で「百戦百勝は善の善なる者に非ず」と、勝ち続けることを最上とはしていません。勝てない相手だと分かれば、戦わない・守るという選び方をふくめて「危なくない」のです。「百戦百勝」と書く・答えるのはまちがいです。
  • 「殆」を「ほとんど」と読む:「殆」には「ほとんど」という読みもありますが、ここでは「あやうし(危うい)」と読みます。「百戦殆うからず」を「ひゃくせんほとんどからず」と読むのは誤りです。「殆」は常用漢字ではないので、新聞などでは「百戦危うからず」と、常用漢字の「危」の読み方・書き順・部首を使って書くことも多いです。
  • 「彼」を「彼氏」「あの男の人」の意味だと思う:漢文の「彼」は「相手・あちら側」のことです。男女の区別はありません。反対の「己」は「自分・こちら側」。「彼」の読み方・書き順・部首・「己」の読み方・書き順・部首のページで、字の形と読みも確認できます。「己」は「已(すでに)」「巳(み)」と形が似ているので注意しましょう。
  • 「相手を知る」だけで十分だと思う:原文は「彼を知らずして己を知れば一勝一負す」と、自分だけ知っている場合も述べていて、両方そろって初めて「殆ふからず」になります。相手の研究ばかりで自分の弱点を見ないのも、「己を知らず」です。
  • 出典を『論語』や『孟子』と答える:出典は兵法の本『孫子』の謀攻篇です。孔子の弟子たちがまとめた『論語』とは別の本です。
形の似た字と「殆」の読み己おのれ・こ・き上があいている○ この言葉の字已すでに・やむ半分までとじる別の字巳み(へび)上までとじる別の字殆ほとんど(もう少しで)…別の読みあやうし(危ない)…この言葉百戦殆うからず=危なくない
「己・已・巳」は形がそっくり。「殆」は読み方が2つあります
うかるくん

うかるくん

「殆ふからず」と「殆ふし」、どっちがどっちだったか、こんがらがります…。

ミスターT先生

ミスターT先生

「不(ず)」がついたら「殆ふからず」=危なくない、ついていなければ「殆ふし」=危ない、だ。両方知る→不殆、どちらも知らない→必殆。知っている数が多いほど安全、と覚えると、3つの文の順番もすぐに思い出せるよ。

入試ではこう出る

  • 高校受験:故事成語・ことわざの意味を選ぶ問題、「彼」「己」が何を指すかを答える問題。漢文の入門として、「知彼知己」に返り点をつける、書き下し文に直す問題もよく問われます。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:「殆」の読み(あやうし)と意味、「不知彼而知己」の「而」が置き字であること、「毎戦」の返読などが問われやすい所です。評論文では、相手と自分を客観的に知る、という意味で引用されることがあります。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
  • 中学受験:故事成語の意味を選ぶ問題や、似た意味の言葉を選ぶ問題で出ることがあります。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「百戦殆うからず」の意味を書く問題は、「何度戦っても負けない」より「何度戦っても危ない目にあわない」と、「殆=あやうい」が分かるように書くと安心ですね!

練習問題

やさしい

  1. 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の「彼」と「己」は、それぞれ何を指しますか。
    答えと解説を見る彼=相手(敵)、己=自分(味方)。
  2. 「百戦殆うからず」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 百回戦えばほとんど勝てる イ 何度戦っても危ないことはない ウ 百回戦うのは危ない エ 百回戦って百回勝つ
    答えと解説を見るイ。「殆(あや)うし」は「危ない」、「不(ず)」で打ち消して「危なくない」。エの「百戦百勝」とはちがいます。

ふつう

  1. 「知彼知己、百戦不殆。」に返り点をつけ、書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る知レ彼知レ己、百戦不レ殆。書き下し文は「彼を知り己を知れば、百戦殆ふからず。」(現代仮名遣いでは「殆うからず」)。
  2. 原文で「彼を知らずして己を知れば」どうなると言っていますか。また、「而」は何と呼ばれる字ですか。
    答えと解説を見る一勝一負す(勝ったり負けたりする)。「而」は読まない置き字で、ここでは「知らずして」の「して」の働きをしています。

むずかしい

  1. 同じ謀攻篇の「百戦百勝、非善之善者也」を書き下し文に直し、この文と「百戦不殆」を合わせて、孫子が何を大事にしていたかを説明しましょう。
    答えと解説を見る「百戦百勝は、善の善なる者に非ざるなり。」孫子は、勝ち続けることよりも、戦わずに相手を従わせることや、相手と自分を比べて危ない戦いをしないことを大事にしていました。だから結論も「百戦百勝」ではなく「百戦殆ふからず(危なくない)」になっています。

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よくある質問

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の意味を簡単に言うと?

相手と自分のことを両方よく知っていれば、何度戦っても危ない目にあうことはない、という意味です。前もって相手と自分を調べ、比べてから行動する大切さを言います。

出典は何ですか?

中国の兵法書『孫子』の謀攻篇です。原文は「知彼知己,百戰不殆」で、本によっては「知彼知己者」となっています。同じ『孫子』の地形篇にも「知彼知己,勝乃不殆」という似た言葉があります。

「百戦百勝」とはどうちがいますか?

「百戦殆うからず」は「危なくない」という意味で、「必ず勝つ」とは言っていません。孫子は同じ謀攻篇で「百戦百勝は善の善なる者に非ず」と述べ、戦わずに相手を従わせるのが最もよいとしています。

「殆うからず」は何と読み、どういう意味ですか?

「あやうからず」と読み、「危なくない」という意味です。「殆」には「ほとんど」という読みもありますが、ここでは「あやうい」の意味です。新聞などでは「百戦危うからず」と書くこともあります。

原文の続きはどうなっていますか?

「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す(勝ったり負けたりする)。彼を知らず己を知らざれば、戦ふ毎に必ず殆ふし(戦うたびに必ず危ない)」と続きます。

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出典・参考

  • 原文:『孫子』謀攻篇・地形篇(維基文庫「孫子兵法」の本文で確認。「知彼知己者」は『十一家注孫子』、「每戰必敗」は四庫全書本の形)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(よく使われる読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦(2〜4こま目は言葉の意味を表すたとえの場面)

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦