漢文の重要漢字の読み一覧|蓋・嘗・遂・頗・具・悉・殆・寧・是以・雖然など76語の読みと意味【共通テスト】

漢文の重要漢字の読み一覧|蓋・嘗・遂・頗・具・悉・殆・寧・是以・雖然など76語の読みと意味【共通テスト】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

漢文の重要漢字は、嘗(かつて)・遂(つひに)・頗(すこぶる)・具(つぶさに)・蓋(けだし)のように、音読みではなく送り仮名つきの訓で読む副詞・接続詞の字です。意味のグループと「同じ読みの仲間」でまとめて覚え、答えは歴史的仮名遣いで書きます。

このページのポイント

  • 読みが問われるのは副詞・接続詞の字(嘗・遂・頗・具・蓋・是以 など)
  • 時・回数・程度・判断・仮定・つなぐ語の6グループで覚える
  • 同じ読みの仲間:つひに=遂・竟・卒・終、たまたま=会・偶・適
  • 殆・数・卒・会・適は読みが複数。位置と返り点で決める
  • 答えは送り仮名をふくめ歴史的仮名遣い(つひに・やうやく)

重要漢字の読み一覧(76語)

共通テストや国公立二次の漢文で「読み」を問われやすい副詞・接続詞などの漢字を、意味のグループごとに並べました。読みは歴史的仮名遣いで書いています(送り仮名をふくめた読み方)。まずこの表で全体を見て、わからない字は下の「はじめて」「しっかり」で例文といっしょに確かめてください。

分類漢字読み意味例(書き下し文)
時(以前・すでに)嘗かつて以前に・これまでに(「なむ」=なめる、とも)嘗て終日食らはず
曾かつて以前に/「曾て〜ず」で、少しも〜ない曾て見ず
既すでにもう・〜してしまった日既に暮る
已すでにもう(文末は「のみ」、動詞は「やむ」)漢皆已に楚を得たるか
向さきに以前・さっき向に誌せし所
嚮さきに以前(「向」と同じ)嚮に言ふ所
曩さきに以前・むかし曩に見る所
素もとよりふだんから・以前から素より之を知る
固もとよりもともと・もちろん(「かたし」とも)固より然り
時(とうとう)遂つひにそのまま・その結果・とうとう遂に迷ひて
竟つひに結局・最後まで竟に帰らず
卒つひに最後に・結局(「にはかに」=急に、とも)卒に之を許す
終つひに最後には・とうとう終に成らず
時(すぐ・急に・だんだん)俄にはかに急に・突然俄かに雨降る
忽たちまちすぐに・急に・ふと忽ち桃花の林に逢ふ
輒すなはちそのたびにすぐ・いつも読む毎に輒ち笑ふ
便すなはちすぐに・そこで便ち要へて家に還る
即すなはちすぐに・つまり即ち去る
稍やうやく/ややしだいに/少し稍く進む
漸やうやくしだいに・だんだん漸く寒し
方まさにちょうど今(〜しているところ)方に食らふ
少焉しばらくして少したって(赤壁の賦など)少焉にして月出づ
回数・偶然会たまたまちょうどそのとき(「あふ」とも)会たま雨降る
偶たまたま偶然に・思いがけず偶たま之に遇ふ
適たまたまちょうど・偶然(「ゆく」「かなふ」とも)適たま至る
数しばしば何度も(「かず」「せむ」とも)数諫む
屢しばしば何度も屢空し
毎つねに/ごとにいつも/〜するたびに毎に言ふ
復またふたたび・もう一度復た路を得ず
亦また〜もまた・やはり亦た楽しからずや
又またそのうえ・さらに又之を問ふ
程度・数量頗すこぶるかなり・たいそう(少し、の意もある)頗る理有り
殆ほとんどもう少しで・おおかた(「あやふし」とも)殆ど死せんとす
幾ほとんどもう少しで(「いくばく」とも)幾ど亡ぶ
甚はなはだ非常に・ひどく甚だ之を異とす
尤もつともとりわけ・特に(「とがむ」とも)尤も善し
寡すくなし少ない(「寡人」は王の自称)徳寡し
鮮すくなし少ない仁鮮し
益ますますいっそう益す甚だし
愈いよいよますます(「まさる」とも)愈いよ急なり
全部・くわしく・自分で具つぶさにくわしく・もれなく(「そなふ」とも)具に之に答ふ
悉ことごとくすべて・残らず悉く之を取る
尽ことごとくすべて(「つくす」「つく」とも)尽く之を知る
咸みなすべて・全員咸来たる
凡およそだいたい・すべて(話の始めに)凡そ人の情は
審つまびらかにくわしく・はっきりと審らかに之を察す
窃ひそかにこっそり・心の中で(へりくだり)窃かに以為らく
徐おもむろにゆっくりと・静かに徐ろに行く
親みづから自分で・じきじきに親ら之を見る
自みづから/おのづから自分で/自然に(「より」とも)自ら知る
敢あへて進んで・思い切って(「敢へて〜ず」=決して〜しない)敢へて言はず
判断・反語・強調蓋けだし思うに・おそらく(「なんぞ〜ざる」とも)蓋し天の命ならん
豈あにどうして〜か(反語)豈に遠しと為さんや
寧むしろ/いづくんぞいっそ〜のほうがよい/どうして〜か寧くんぞ種有らんや
況いはんやまして(〜はなおさらだ)況んや人をや
宜よろしく〜べし〜するのがよい(再読文字)宜しく学ぶべし
須すべからく〜べしぜひ〜する必要がある(再読文字)須らく読むべし
誠まことに本当に・心から誠に然り
信まことに本当に(「しんず」とも)信に美なり
仮定・逆接縦たとひたとえ〜でも縦ひ死すとも
仮令たとひたとえ〜でも(縦と同じ)仮令敗るとも
苟いやしくもかりにも・もしも苟くも志有らば
雖いへども〜けれども・たとえ〜でも小なりと雖も
微なかりせばもし〜がなかったら管仲微かりせば
文と文をつなぐ然しかり/しかれども/しかるにそうだ/しかし/それなのに然れども
雖然しかりといへどもそうではあるが・しかし然りと雖も
然則しからばすなはちそうだとすると(しかればすなはち、とも)然らば則ち
然後しかるのちそうしてはじめて然る後に知る
於是ここにおいてそこで・こうして是に於いて
是以ここをもつてこういうわけで・だから是を以て
以是これをもつてこのことによって是を以て
是故このゆゑにだから是の故に
何則なんとなればなぜかというと何となれば
所謂いはゆる世間でいう・いわゆる所謂君子
以為おもへらく思うことには(「以て〜と為す」とも)以為らく
加之しかのみならずそればかりでなく加之家貧し

「宜・須・豈・況・縦・苟・雖」などは、それぞれ再読文字(未・将・当・応・宜・須・猶・盍)・反語の句法(豈・安・何・誰)・抑揚の句法(且〜況〜乎)・仮定の句法(如・若・苟・縦・雖)のページでくわしく扱っています。

はじめて(やさしく)

漢文の問題には、「傍線部の漢字の読みを、送り仮名をふくめてひらがなで書きなさい」という形がよく出ます。ねらわれるのは、「遂(つひに)」「嘗(かつて)」「頗(すこぶる)」のような、副詞(ようすや程度を表すことば)や接続詞(文と文をつなぐことば)の字です。

これらの字は、ふだんの熟語では音読みで使います。「遂行(すいこう)」「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」のようにです。ところが漢文では、日本語の訓(意味をあてた読み)で、しかも送り仮名をつけて読みます。だから、音読みを知っていても答えられません。読みと意味をセットで覚えることが大切です。

音読みではなく「訓」で読む漢字音読み(熟語)漢文の読み遂スイ(遂行)つひにとうとう嘗ショウ(嘗胆)かつて以前に頗ハ(偏頗)すこぶるかなり副詞・接続詞の字は、送り仮名つきの訓で覚える
「遂・嘗・頗」は、熟語の音読みではなく「つひに・かつて・すこぶる」と訓で読む
うかるくん

うかるくん

「遂」は「すい」としか読めないよ……。「つひに」なんて、見ただけじゃわからない!

ミスターT先生

ミスターT先生

だからこそ点数の差がつくんだ。英単語と同じで、覚えた人だけが答えられる問題だよ。ただし数は多くない。表の70語ほどで、入試の読みの問題はほとんどカバーできる。

サクラちゃん

サクラちゃん

70語……。全部ばらばらに覚えるのは大変そうです。

ミスターT先生

ミスターT先生

意味のグループと同じ読みの仲間でまとめれば、ぐっと楽になるよ。「つひに」と読む字は遂・竟・卒・終の4つ、という具合にね。

まず、意味で6つのグループに分けてみましょう。「時を表す字」「回数や偶然を表す字」「程度や全部を表す字」「判断や反語を表す字」「仮定や逆接を表す字」「文と文をつなぐ字」です。どのグループの字かがわかれば、訳すときに「いつ?」「どのくらい?」「どうつながる?」と意味の方向がすぐに見えます。

重要漢字の読みは6グループで覚える時嘗 曾 既 已 遂 竟 卒かつて・すでに・つひに回数・偶然数 屢 会 偶 適 毎しばしば・たまたま程度・全部頗 殆 甚 具 悉 尽 凡すこぶる・ほとんど判断・反語蓋 豈 寧 況 宜 須けだし・あに・むしろ仮定・逆接縦 苟 雖 微たとひ・いやしくも文をつなぐ然 雖然 於是 是以しかれども・ここをもつて同じ読みの字(遂・竟・卒=つひに)を1つの箱に
重要漢字の読みは、意味で6つのグループに分けると覚えやすい

では、有名な文章で読みを確かめましょう。陶淵明(とうえんめい)の「桃花源記(とうかげんき)」は、漁師が谷川をさかのぼって、外の世界から隔てられた村(桃源郷)にたどりつく話です。教科書によく載っていて、重要漢字の読みがたくさん出てきます。丸の数字が読む順番です。

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忽(たちまち)

白文縁渓行、忘路之遠近。忽逢桃花林。

書き下し文渓に縁よりて行き、路の遠近を忘る。忽たちまち桃花の林に逢ふ。

(陶淵明「桃花源記」)

現代語訳谷川にそって進んでいくうちに、どれほどの道のりを来たのかわからなくなった。すると急に、桃の花の林に出会った。

ここがポイント「忽」は「たちまち」と読み、「急に・ふと」の意味です。「忽然(こつぜん)と消える」の「忽」です。「之」はここでは「の」と読み、書き下し文ではひらがなにします。
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具(つぶさに)・便(すなはち)

書き下し文具つぶさに之に答ふ。便すなはち要むかへて家に還り、酒を設け鶏を殺して食を作る。

(陶淵明「桃花源記」)

現代語訳(漁師は)くわしく村人の問いに答えた。(村人は)すぐに(漁師を)招いて家に帰り、酒を用意し鶏をしめて、食事を作った。

ここがポイント「具」は「つぶさに(くわしく・もれなく)」。「道具」の「具」ですが、副詞では「つぶさに」と読みます。「便」は「すなはち(すぐに・そこで)」。「すなはち」と読む字は「則・即・乃・便・輒」と多いので、まとめて覚えましょう(「而・則・乃・即」の読みと用法)。
谷川ぞいに家々や田畑が広がり、まわりを緑の山が囲む村を描いた横長の絵巻
張宏が描いた桃花源(桃源郷)の絵巻の一部。漁師が迷いこんだ村は、外の世界と隔てられた平和な里として描かれます。「桃花源記」は、忽・具・便・遂・復など重要漢字の読みの宝庫です。画像:張宏「桃花源図(Peach Blossom Spring)」(1638年、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

ここまでのまとめ

  • 読みが問われるのは副詞・接続詞の字。音読みではなく訓+送り仮名で読む
  • 忽=たちまち、具=つぶさに、便=すなはち
  • 意味の6グループと、同じ読みの仲間でまとめて覚える

しっかり(共通テスト)

同じ読みの仲間でまとめる

重要漢字には、違う字なのに同じ読みのものがたくさんあります。たとえば「つひに」と読む字は「遂・竟・卒・終」。どれも「とうとう・結局」の意味です。このような仲間をまとめておくと、覚える量が半分ほどになります。また、選択肢に「遂に」「竟に」のような別の字が出てきても、意味の見当がつくようになります。

同じ読みをもつ字の仲間つひに遂・竟・卒・終すでに既・已さきに向・嚮・曩もとより素・固たまたま会・偶・適しばしば数・屢やうやく稍・漸ことごとく悉・尽すくなし寡・鮮すなはち則・即・乃・便・輒たとひ縦・仮令まことに誠・信
同じ読みをもつ字の仲間。1つの読みに2〜5字が集まっている

ただし、仲間の字でも意味が少しずつ違うことがあります。「遂」は「そのまま・その結果」と、前のできごとから自然に続く感じが強い字です。一方、「竟」「卒」は「結局・最後には」と、長い時間のあとの結末を表すことが多い字です。共通テストの訳の選択肢では、この違いまでは問われにくいので、まずは読みと大まかな意味を確実にしましょう。

読みの問題の解き方

  1. 字の位置を見る:述語(動詞・形容詞)の前にあれば副詞、文の頭にあれば接続詞のことが多い。
  2. 下に返る語があるかを見る:「数」「適」「会」などは、下に名詞があって返るなら動詞(せむ・ゆく・あふ)、返らなければ副詞(しばしば・たまたま)。
  3. 前後の文のつながりを考える:「然」「是以」「何則」などは、前の文と逆接・結果・理由のどれでつながるかで意味を確かめる。
  4. 送り仮名をふくめて、歴史的仮名遣いで答える:「つひに」「やうやく」「いはんや」のように書く。
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嘗(かつて)

書き下し文吾嘗かつて終日食らはず、終夜寝ねず、以もつて思ふ。益無し。学ぶに如しかざるなり。

(『論語』衛霊公)

現代語訳私は以前、一日中食事もせず、一晩中寝ないで考えたことがある。しかし得るものはなかった。(先人の教えを)学ぶほうがよい。

ここがポイント「嘗」は「かつて(以前に)」。孔子が、ひとりで考えるだけでは足りず、学ぶことが大切だと言った言葉です。「嘗」は「臥薪嘗胆」では「なめる」の意味(臥薪嘗胆)。「未だ嘗て〜ず(今まで一度も〜ない)」の形もよく出ます。後半の「不如」は比較の句法(不如・莫如)です。
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已(すでに)

書き下し文漢皆已すでに楚を得たるか。是れ何ぞ楚人の多きや。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳漢はもう楚の地をすっかり手に入れてしまったのか。なんと楚の人の多いことよ。

ここがポイント垓下(がいか)で漢軍に囲まれた項羽が、四方から楚の歌が聞こえてきたときに驚いて言った言葉で、「四面楚歌」の由来です。「已」は「すでに」。文末に置かれると「のみ」(限定)と読むので、位置で区別します(限定の句法(唯・耳・而已))。「何〜也」は詠嘆の句法の形です。
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向(さきに)・遂(つひに)・復(また)

書き下し文向さきに誌せし所を尋ぬるに、遂つひに迷ひて復また路を得ず。

(陶淵明「桃花源記」)

現代語訳以前に目印をつけておいた所をさがしたが、そのまま迷ってしまい、二度と道を見つけられなかった。

ここがポイント「向」は「さきに(以前に)」、「遂」は「つひに(そのまま・とうとう)」、「復」は「また(ふたたび)」。「不復〜」は「二度とは〜しない」という部分否定(不復・不常)の形です。「尋ぬるも」と読む教科書もあります。
サクラちゃん

サクラちゃん

「向」が「さきに」なんて意外です。「向かう」しか知りませんでした。

ミスターT先生

ミスターT先生

「向」は「以前・さっき」という時の意味で使うことがあって、「向者(さきには)」という言い方もあるよ。動詞の前にあって、下から返らないなら副詞と考えるのがコツだ。

うかるくん

うかるくん

位置で読みが変わるんだね。「已」も文末だと「のみ」だったし!

文と文をつなぐ語

「然」「於是」「是以」「何則」などは、前の文と後ろの文がどうつながるかを示します。共通テストでは、本文の流れ(筆者の主張と理由など)をつかむ問題で、これらの語がヒントになります。読みと同時に、逆接・順接・結果・理由のどれかを押さえましょう。

前の文とのつながりを示す語前の文(A)然・雖然しかれども・しかりといへども逆接(しかし)然則しからばすなはち仮定(それなら)於是ここにおいて順接(そこで)是以・是故ここをもつて・このゆゑに結果(だから)何則なんとなれば理由(なぜなら)後ろの文(B)
文と文をつなぐ語は、前の文とのつながり方(逆接・仮定・順接・結果・理由)で整理する
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是以(ここをもつて)

書き下し文其の人賢なり。是ここを以もつて人皆之を敬ふ。

(自作)

現代語訳その人はかしこい。だから人々はみなその人を尊敬する。

ここがポイント「是以」は「是を以て(ここをもつて)」と読み、「こういうわけで・だから」。前の文が原因、後ろの文が結果です。逆の順の「以是」は「是を以て(これをもつて)=このことによって」と読みます。「以」のくわしい用法は「以」の読みと用法で。
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雖然(しかりといへども)

書き下し文学ぶは難し。然りと雖いへども、已やむべからず。

(自作)

現代語訳学ぶことはむずかしい。そうではあるが、やめてはならない。

ここがポイント「雖然」は「然りと雖も」と、下の「然」から読みます。「そうではあるが・しかし」という逆接。ここでは「已」を「やむ(やめる)」と読む点にも注意しましょう。
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以為(おもへらく)

書き下し文王以為おもへらく、民皆富めりと。

(自作)

現代語訳王が思うことには、人民はみな豊かだと。

ここがポイント「以為」は2字まとめて「おもへらく(思うことには)」と読み、思った内容の最後に「と」をつけて受けます。「以A為B(AをもつてBとなす=AをBと考える)」の形もあるので、間にことばがはさまるかどうかを見ます(「為」の読みと用法)。
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

読みの問題は、字の位置と下に返るかどうかで読みを決めるのがコツ。答えは送り仮名をふくめて歴史的仮名遣いで書こう。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 1字に読みがいくつもある字

難関大の読みの問題は、ふだんの読みとは違う読みをねらってきます。たとえば「殆」は「ほとんど」と覚えている人が多いのですが、「あやふし(危ない)」と読む場合があります。「数」は「しばしば」のほか、「かず」「せむ(責める)」とも読みます。白文では、品詞(副詞か動詞か形容詞か)を見きわめてから読みを決めましょう。

1字に読みがいくつもある字副詞の読みほかの読み殆ほとんど(もう少しで)あやふし(危ない)数しばしば(何度も)かず/せむ(責める)卒つひに(最後に)にはかに/そつ(兵)会たまたま(ちょうど)あふ/かならず適たまたま(偶然)ゆく/かなふ蓋けだし(思うに)なんぞ〜ざる/ふた下に返る語・前後の文脈で読みを決める
殆・数・卒・会・適・蓋は、副詞の読みのほかにも読み方がある
難関大

殆(あやふし)

書き下し文彼を知り己を知れば、百戦殆あやふからず。

(『孫子』謀攻)

現代語訳敵を知り、自分を知っていれば、百回戦っても危険なことはない。

ここがポイント「殆」は述語の位置にあり、上の「不」から返ってくるので形容詞「あやふし(危ない)」です。副詞の「ほとんど」と読むと意味が通りません。故事成語「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」として有名で、孫子の兵法の原文・書き下し・意味でもくわしく紹介しています。
難関大

寧(いづくんぞ)

書き下し文王侯将相寧いづくんぞ種有らんや。

(『史記』陳渉世家)

現代語訳王・諸侯・将軍・大臣に、どうして生まれつきの家柄などあるものか(いや、ない)。

ここがポイント秦の末に反乱を起こした陳勝(陳渉)の言葉として有名です。「寧」はふつう「むしろ(いっそ〜のほうがよい)」と読みますが、文末の「乎」と組んで反語になるときは「いづくんぞ」と読みます(反語の句法(豈・安・寧))。「むしろ」の用法は選択の句法(寧〜無〜)で扱っています。

2. 「復」と「又」と「亦」:3つの「また」

「また」と読む字は「復・又・亦」の3つです。復は「ふたたび(もう一度)」、又は「そのうえ・さらに」、亦は「〜もまた(同じように)・やはり」と、意味が違います。難関大の記述では、この違いを訳に出せるかが問われます。「不亦説乎(亦た説ばしからずや)」の「亦」は「なんと」と詠嘆を強める働きで、ここでは「も」とは訳しません(詠嘆の句法(嗚呼・哉・不亦〜乎))。

難関大

復(また)

書き下し文因りて其の耒を釈てて株を守り、復また兎を得んことを冀こひねがふ。兎復また得べからずして、身は宋国の笑ひと為なる。

(『韓非子』五蠹)

現代語訳そこで(農夫は)すきを捨てて切り株を見張り、もう一度兎を手に入れたいと願った。しかし兎は二度と手に入らず、その身は宋の国じゅうの笑い者になった。

ここがポイント「株を守る」の話です。「復」は「ふたたび」。「不可復得」は「二度とは手に入らない」という部分否定で、「復」が否定の下にあるのがポイントです。「冀ふ」は「こひねがふ(強く願う)」で、願望の句法(願・請・庶幾)の「冀」と同じ字です。

3. 「蓋」と「盍」、「已」と「己」と「巳」:形の似た字

白文の読みでは、形の似た字の取り違えにも注意が必要です。「蓋(けだし=思うに)」と再読文字の「盍(なんぞ〜ざる)」は、上の部分が違うだけです。ただし「蓋」にも「なんぞ〜ざる」と読む用法があり、これは「盍」の代わりに使われたものと説明されます。また「已(すでに・やむ・のみ)」「己(おのれ)」「巳(み=十二支)」は、線の閉じ方で区別します。版本や入試の白文では字がつぶれて見えることもあるので、文脈で読める読みを選びましょう。

難関大

蓋(けだし)

書き下し文此れ蓋けだし天の命ならん。

(自作)

現代語訳これはおそらく天の定めであろう。

ここがポイント「蓋」は文頭や主語の後ろにあって「けだし(思うに・おそらく)」と読み、筆者の推量を表します。文末は推量の「ん(む)」で結ぶことが多いです。故事成語の「蓋棺事定まる」の「蓋」は「棺を蓋ふ(おおう)」で、動詞の読みです。

4. 答案での書き方:歴史的仮名遣い

読みの問題は、ふつう「送り仮名をふくめて、ひらがな(現代仮名遣いでもよい/歴史的仮名遣いで)」のように指示があります。指示がなければ、古典なので歴史的仮名遣いで書くのが安全です。「つひに」「やうやく」「いはんや」など、現代仮名遣いと違う語は特に注意しましょう。

読みの答えは「歴史的仮名遣い」が基本歴史的仮名遣い現代仮名遣い遂つひについに漸やうやくようやく俄にはかににわかに況いはんやいわんや雖いへどもいえども縦たとひたとえ敢あへてあえて問題の指示(現代仮名遣いで)があればそれに従う
遂=つひに、漸=やうやく、況=いはんや。現代仮名遣いとの違いに注意

また、読み方そのものに流派の違いがある字もあります。たとえば「稍」は「やや(少し)」と「やうやく(しだいに)」のどちらで読むかが文脈と教科書で分かれます。「然則」は「しからばすなはち」とも「しかればすなはち」とも読みます。「頗」は「かなり」の意味が中心ですが、古い用法では「少し」の意味もあると説明されます。入試では、文脈に合う意味の読みであれば正解とされるのがふつうです。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「殆」は「ほとんど」だけじゃなくて「あやふし」! 読みが2つ以上ある字は、下に返るかどうかと文脈で決めるんですね。

よくあるまちがい

まちがい1:音読みで答える

「遂」を「すい」、「嘗」を「しょう」と答えるのは誤り。読みの問題は訓+送り仮名(つひに・かつて)で答えます。

まちがい2:「已」をいつも「すでに」と読む

「已」は、述語の前なら「すでに」、文末なら「のみ」(限定)、動詞なら「やむ」。位置で読み分けます。

まちがい3:「殆」をいつも「ほとんど」と読む

「百戦殆ふからず」のように、述語の位置で否定がかかるときは「あやふし(危ない)」です。

まちがい4:「是以」と「以是」を同じ意味に訳す

「是以(ここをもつて)」は「だから」、「以是(これをもつて)」は「このことによって」。書き下し文はどちらも「是を以て」ですが、読み(ルビ)と働きが違います。

まちがい5:歴史的仮名遣いで書かない

「ついに」「ようやく」と書くと、指示によっては減点されます。「つひに」「やうやく」と書く練習をしておきましょう。

練習問題

やさしい

  1. 次の漢字の読みを、送り仮名をふくめて歴史的仮名遣いのひらがなで答えなさい。
    ①嘗 ②遂 ③忽 ④具
    答えと解説を見る

    ①かつて(以前に) ②つひに(とうとう) ③たちまち(急に) ④つぶさに(くわしく)

  2. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    其の家頗すこぶる富めり。(其の家頗る富めり。)「頗」は「すこぶる」で、「かなり・たいそう」。訳は「その家はたいそう豊かだ」。

ふつう

  1. 「然則」と「雖然」の読みと意味を答えなさい。
    答えと解説を見る

    「然則」=しからばすなはち(しかればすなはち):そうだとすると。「雖然」=しかりといへども:そうではあるが。前者は前の内容を受けた仮定・帰結、後者は逆接です。

  2. 次の文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    書き下し文:友数之を諫む。 訳:友人が何度もその人をいさめた。「数」は動詞「諫む」の前にある副詞なので「しばしば(何度も)」と読みます。

むずかしい

  1. 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    「病殆不可救」
    答えと解説を見る

    書き下し文:病殆ど救ふべからず。 訳:病気はもう少しで救えないところだ(ほとんど助からない状態だ)。「殆」は述語「不可救」の前にある副詞なので「ほとんど」。「百戦殆ふからず」の「あやふし」との違いを、位置で区別します。

  2. 「卒」の読みを3つあげ、それぞれの意味を答えなさい。
    答えと解説を見る

    ①つひに:最後に・結局(副詞) ②にはかに:急に(副詞。「猝」と同じ) ③そつ:兵士(名詞。「士卒」)。ほかに「をはる(終わる)」「しす(死ぬ)」の意味もあります。

関連ページ

「四面楚歌」「株を守る」「臥薪嘗胆」などの話は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で、熟語の読み方は漢字合格大作戦(常用漢字の読み・書き順)で確かめられます。

読みもの(合格大作戦の記事)

受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう

よくある質問

漢文でよく出る重要漢字の読みは?

嘗(かつて)・遂(つひに)・頗(すこぶる)・具(つぶさに)・悉(ことごとく)・殆(ほとんど)・蓋(けだし)・寧(むしろ)・数(しばしば)・是以(ここをもつて)・雖然(しかりといへども)・所謂(いはゆる)・以為(おもへらく)などです。

重要漢字の読みはどう覚えればいいですか?

時・回数や偶然・程度や全部・判断や反語・仮定や逆接・文をつなぐ語の6グループに分け、「つひに=遂・竟・卒・終」のように同じ読みの仲間をまとめると、覚える量が減ります。

読みの答えは歴史的仮名遣いで書くべきですか?

問題の指示に従います。指示がなければ、古典なので歴史的仮名遣い(つひに・やうやく・いはんや)で書くのが安全です。

「是以」と「以是」の違いは?

是以は「ここをもつて」と読み「だから」、以是は「これをもつて」と読み「このことによって」の意味です。書き下し文はどちらも「是を以て」と書きます。

「殆」は「ほとんど」以外にどう読みますか?

述語として「危ない」の意味のときは「あやふし」と読みます。『孫子』の「百戦殆ふからず」が有名です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:陶淵明「桃花源記」、『論語』衛霊公、『史記』(項羽本紀・陳渉世家)、『孫子』謀攻、『韓非子』五蠹。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文の重要語の読みの標準的な説明にもとづいて作成。読みが分かれる所(稍・然則・頗など)は本文中に記した
  • 画像:張宏「桃花源図(Peach Blossom Spring)」(1638年、メトロポリタン美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦