漢文の重要単語一覧|人間・故人・百姓・左右・丈夫・君子・寡人・城・兵など65語の意味(現代語との違い)【漢文】

漢文の重要単語一覧|人間・故人・百姓・左右・丈夫・君子・寡人・城・兵など65語の意味(現代語との違い)【漢文】

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ひとことで言うと

漢文の重要単語は、今の日本語と同じ字でも意味がちがう語が中心です。人間=世の中、故人=古くからの友人、百姓=人民、左右=側近、城=城壁で囲まれた町、兵=武器、走=逃げる。今の意味で訳して通らなければ、字のもとの意味にもどって考えます。

このページのポイント

  • 人間=世の中、故人=古くからの友人、百姓=人民
  • 左右=側近、丈夫=りっぱな男子、小人=つまらない人
  • 自称(朕・寡人・臣・妾)で話し手の身分がわかる
  • 城=城壁の町、兵=武器、走=逃げる、遊=よその土地へ行く
  • 今の意味で通らなければ、字のもとの意味にもどる

漢文の重要単語一覧(65語)

漢文には、今の日本語と同じ字なのに意味がちがう語や、漢文の中だけで使う語がたくさんあります。共通テストの語の意味の問題や、国公立二次の現代語訳でよくねらわれるものを、分類ごとに並べました。いちばん右の「現代語では」と比べながら覚えると、まちがえやすいところがはっきりします。読みは、音読みの語は現代仮名遣い、訓読みの語は歴史的仮名遣いで書いています。

分類語読み漢文での意味現代語では
人・身分人間じんかん世の中・世間にんげん(ひと)
故人こじん古くからの友人・昔なじみ亡くなった人
百姓ひゃくせい人民・一般の人々ひゃくしょう(農民)
左右さゆう側近・おそばの家来ひだりとみぎ
丈夫じょうふ一人前の男子・りっぱな男じょうぶ(健康・こわれにくい)
大丈夫だいじょうふりっぱな男子・大人物だいじょうぶ(安心だ)
君子くんし徳のあるりっぱな人/人の上に立つ人ふだんはあまり使わない
小人しょうじん徳のないつまらない人/身分の低い人しょうにん(子ども料金)
士し教養と身分のある男子・役人「武士」の士
大夫たいふ高い位の役人・家老ー
先生せんせい年長者・学問や徳のある人教師・医師
少年しょうねん若者(男女の区別なく若い人)小・中学生くらいの男の子
大人たいじん徳の高い人・身分の高い人/父おとな
匹夫ひっぷ身分の低い男・ふつうの男ー
布衣ふい官位のない人・庶民(麻の服の意)ー
学者がくしゃ学問をする人・学ぶ人研究者
呼び方(自称・対称)夫子ふうし先生(特に孔子)・あの方ー
子し先生(孔子など)/あなた/男子の敬称こども
吾子ごしあなた(親しみをこめて)わが子
君きみ・くん主君/あなた同輩や目下への呼び方
足下そっかあなた(対等の相手への敬称)「足もと」の意味だけ
寡人かじん王・諸侯の自称(徳の寡ない者の意)ー
朕ちん天子(皇帝)の自称ー
臣しん家来/(君主に対して)わたくしー
妾しょう女性がへりくだって言う自称めかけ
国・社会・場所天下てんか世界全体・国じゅう・天子の治める世「天下一」などに残る
国家こっか国(諸侯の「国」と卿大夫の「家」)国(ほぼ同じ)
社稷しゃしょく国家(土地の神と五穀の神)ー
城じょう・しろ城壁で囲まれた町・都市天守のある「しろ」
郷きょうふるさと・村里「郷土」に残る
鄙ひいなか・辺境/いやしいー
江こう長江(揚子江)入り江
河か黄河かわ一般
中国ちゅうごく天下の中央・文化の中心地国名
ものごと・時道みち道理・人の正しい生き方/方法/言う道路
兵へい武器/兵士/戦争兵士
師し先生/軍隊先生
文章ぶんしょう模様(あや)/礼儀・音楽などの教養文
春秋しゅんじゅう年月・年齢/歴史書の名春と秋
光陰こういん月日・時間(光=日、陰=月)「光陰矢のごとし」に残る
青山せいざん木の茂った山/骨を埋める土地ー
経済けいざい世を治め人々を救うこと(経世済民)お金の流れ
動詞去さる立ち去る・離れる(去年)過ぎ去った
走はしる逃げる・走るかける
遊あそぶよその土地へ行く(遊学)・旅をする・交際するあそぶ
謝しゃすあやまる/礼を言う/断る/去るあやまる
説とく・よろこぶ説き明かす・説得する(ぜい)/喜ぶ(=悦)説明する
質ち人質/抵当(しち)性質・質問
易かふ・やすし取りかえる(交易)/たやすいやさしい
遇あふ・ぐうす出会う/もてなす(待遇)ー
顧かへりみるふり返る・心にかける/(副詞)かえって回顧
愛あいす・をしむ惜しむ・けちる/かわいがるあいする
信しんず・まことに誠実さ・約束を守る/本当に/便り・使い信じる
聴きく聞き入れる・ゆるす・従う耳できく
遺のこす・おくる残す/贈るのこす
致いたす招く・届ける・つくすー
識しる見知る・覚えている知識
病やむ・へいす病気が重くなる/苦しむ・欠点とする病気
幸さいはひ・みゆきしあわせ/天子のお出まし(行幸)しあわせ
ようす・その他可憐かれんかわいそう・あわれ/愛すべきかわいらしい
少わかし・すくなし若い/少ないすくない
多少たしょうどれほど(の数)/多くのいくらか
不肖ふしょう愚か(父や師に似ない)・自分の謙称へりくだる語
無頼ぶらい頼るところがない・決まった仕事をしないならず者
勉強べんきょう無理につとめる・はげむ学習

副詞・接続詞の読み(嘗・遂・頗・蓋 など)は重要漢字の読み一覧(蓋・嘗・遂・頗・具)に、句法の形は漢文の句法一覧(句形のまとめ・印刷用)にまとめています。

はじめて(やさしく)

漢文の単語は、英単語ほど多くはありません。ただし、見た目は今の日本語と同じなので、つい今の意味で読んでしまうのが落とし穴です。たとえば「人間」。今は「ひと」のことですが、漢文では「じんかん」と読んで「世の中」という意味です。「故人」は今は「亡くなった人」ですが、漢文では「古くからの友人」です。

同じ字なのに、意味がちがう漢文の意味現代語の意味人間じんかん:世の中にんげん:ひと故人古くからの友人亡くなった人百姓人民・人々農民丈夫りっぱな男子健康・じょうぶ小人つまらない人子ども現代語の意味で訳すと、文が通らなくなる
人間・故人・百姓・丈夫・小人は、漢文と現代語で意味がちがう
まなぶくん

まなぶくん

「故人」が友だち!? お葬式の話かと思っちゃいました。

ミスターT先生

ミスターT先生

そう思う人が多いから、テストに出るんだ。「故」は「もと・昔からの」という意味。だから「故人」は昔からの人=古い友だち。「故郷」も「もとの里」だよね。

ハルちゃん

ハルちゃん

字の意味から考えると、わかりやすいですね。「百姓」は?

ミスターT先生

ミスターT先生

「百」は「たくさん」、「姓」は「名字」。たくさんの名字の人々=人民全体だ。農民という意味になったのは日本に入ってからなんだよ。

次の詩は、唐の王維(おうい)が、遠い西の国境へ旅立つ友人を見送ったときの作品「元二の安西に使ひするを送る」の結びです。ここの「故人」が、まさに「古くからの友人」です。丸の数字が読む順番です。

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故人(古くからの友人)

白文西出陽関無故人。

書き下し文西のかた陽関を出づれば故人無からん。

(王維「元二の安西に使ひするを送る」)

現代語訳西のかた陽関を出てしまえば、(もう酒をくみかわす)古くからの友人もいないだろう。

ここがポイント「故人」は「古くからの友人」。「亡くなった人」と訳すと、詩の意味がまったく通りません。陽関は、西域へ向かう関所です。この句の前に「君に勧む更に尽くせ一杯の酒(さあ、もう一杯飲みほしたまえ)」とあり、別れを惜しむ気持ちがこめられています。

もう1つ、今の意味とずれる代表が「城」です。日本で「城」といえば天守のある建物ですが、中国の「城」は城壁でぐるりと囲まれた町のこと。都も地方の町も、城壁の中に家や市場がありました。

漢文の「城」=城壁で囲まれた町城門城壁の中に家や市場日本の「城」天守のある建物城春にして草木深し=長安の町に春が来て
漢文の「城」は、城壁で囲まれた町。天守のある日本の城とはちがう
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国・城(都の町)

書き下し文国破れて山河在り、城春にして草木深し。

(杜甫「春望」)

現代語訳都は戦乱で荒れはてたが、山や川は昔のまま残っている。町には春が来て、草や木が深くおいしげっている。

ここがポイント「国」はここでは国の都(長安)、「城」は城壁に囲まれた町のこと。安史の乱で長安が荒れたようすを詠んだ詩です。「城」を「おしろ」と訳すとまちがいです。
大きな城門と、その前を行き交うらくだや荷車、人々を描いた中国の絵巻の一部
北宋の都・開封の城門(「清明上河図」の一部)。中国の「城」は、このような門と城壁で囲まれた町です。人も物も城門から出入りしました。画像:張択端「清明上河図」部分(北宋・12世紀、北京故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

ここまでのまとめ

  • 漢文の単語は、今の日本語と同じ字でも意味がちがうことがある
  • 人間=世の中、故人=古くからの友人、百姓=人民、城=城壁で囲まれた町
  • 字のもとの意味(故=昔からの、百=たくさん)から考える

しっかり(共通テスト)

1. 人を表す語:君子と小人

論語などの思想の文章で、いちばんよく出るのが「君子」と「小人」です。君子は「徳(人としてのりっぱさ)のある人」、小人は「徳のないつまらない人」。もとは身分の高い人・低い人を指すことばでしたが、孔子は人がらのちがいとして使いました。今の「小人(しょうにん)=子ども料金」とは関係ありません。

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君子・小人

書き下し文君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。

(『論語』子路)

現代語訳君子は人と調和するが、むやみに同調はしない。小人はむやみに同調するが、本当の調和はしない。

ここがポイント「君子」と「小人」を対比させる、論語によくある形です。「和」は心から仲よくすること、「同」は考えなしに合わせること。故事成語「君子は和して同ぜず」として知られます。
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君子(徳のある人)

書き下し文人知らずして慍うらみず、亦また君子ならずや。

(『論語』学而)

現代語訳人が自分(の値打ち)を認めてくれなくても、うらみに思わない。なんと君子らしいことではないか。

ここがポイント論語の最初の章の結びです。「慍む」は「うらむ」。「不亦〜乎」は「なんと〜ではないか」という詠嘆の句法です。ここの「人」は「他人・世間の人」の意味で、漢文の「人」は自分以外の人を指すことがよくあります。

2. 自分の呼び方・相手の呼び方

漢文では、話し手が自分をどう呼ぶかで、その人の身分がわかります。「朕」と言えば皇帝、「寡人」と言えば王や諸侯、「臣」と言えば家来です。共通テストでは、会話文の話し手がだれかを問う問題で、これがヒントになります。

人の呼び方:だれが、だれを自分を呼ぶ(自称)朕天子(皇帝)寡人王・諸侯臣家来が主君に妾女性が不肖へりくだって相手を呼ぶ(対称)子あなた・先生吾子親しいあなた君主君・あなた夫子先生・あの方足下あなた(対等)自称から、話し手の身分がわかる
自称(朕・寡人・臣・妾)と対称(子・吾子・君・夫子)
うかるくん

うかるくん

「朕」って、皇帝ならだれでも使えるの?

ミスターT先生

ミスターT先生

「朕」は、もとは身分に関係なく「わたし」の意味だったけれど、秦の始皇帝のときから天子だけが使う自称になった、と『史記』に書かれているよ。だから漢文で「朕」と出たら、話し手は皇帝だと考えていい。

サクラちゃん

サクラちゃん

「寡人」は王さま、「臣」は家来。呼び方だけで、会話の上下関係がわかりますね!

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寡人(王の自称)

書き下し文寡人の国に於おけるや、心を尽くすのみ。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳わたしは国の政治に対して、心を尽くしているばかりである。

ここがポイント梁の恵王が孟子に語りかける場面で、このあと「五十歩百歩」のたとえ話が続きます。「寡人」は「徳の寡ない人」という意味の、王のへりくだった自称です。「焉」「矣」は読まない置き字、「耳」は「のみ」(限定の句法)。
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夫子(先生)・文章(教養)

書き下し文夫子の文章は、得て聞くべきなり。

(『論語』公冶長)

現代語訳先生(孔子)の教養(礼や詩書などの表れ)については、聞くことができる。

ここがポイント弟子の子貢(しこう)の言葉です。「夫子」は「先生」で、論語ではふつう孔子を指します。「文章」は今の「文」ではなく、外に表れた教養・礼儀作法などをいいます(もとは「あや・模様」の意味)。このあと、性(人の本性)と天道については聞くことができなかった、と続きます。

3. 動詞:今とちがう意味を持つ字

動詞にも、今の意味とずれるものがあります。「走」は「走る」のほかに「逃げる」、「去」は「立ち去る・離れる」、「遊」は「よその土地へ行く・旅をする」。「謝」は4つも意味があります。

「謝」は4つの意味を文脈で選ぶあやまる罪をわびる礼を言う感謝する断る辞退する去る別れを告げる謝「謝罪」「感謝」「謝絶」「代謝」の謝
「謝」は、あやまる・礼を言う・断る・去る
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兵(武器)・走(逃げる)

書き下し文甲を棄て兵を曳きて走る。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳よろいを捨て、武器を引きずって逃げる。

ここがポイント「五十歩百歩」のたとえの一部です。「兵」は兵士ではなく武器、「走」は逃げる。兵士が武器を引きずって逃げるようすです。孟子の話の全体は五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)で読めます。
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遊(よその土地へ行く)

書き下し文父母在いませば、遠く遊ばず。遊ぶこと必ず方有り。

(『論語』里仁)

現代語訳父母が生きている間は、遠くへ出かけない。出かけるときは、必ず行き先を決めて(知らせて)おく。

ここがポイント「遊」は「遊ぶ」ではなく、学問や仕事のためによその土地へ行くこと(遊学・遊説の「遊」)。「方」は「方角・行き先」です。

4. 語の意味を問われたときの考え方

  1. 今の意味で読んでみて、文が通るか確かめる:通らなければ、漢文特有の意味を疑う。
  2. 字のもとの意味から考える:故=昔からの、百=たくさん、寡=少ない、左右=そば。
  3. だれが言っているか・だれに言っているかを見る:自称(寡人・臣)や対称(子・夫子)で人物関係をつかむ。
  4. 対になる語をさがす:君子⇔小人、天下⇔一国、士⇔民 など、対比で意味が決まることが多い。
本を開いて説明するミスターT先生

ミスターT先生

単語の問題は、今の意味で読んで通らなければ漢文の意味を考える。そして字のもとの意味にもどるのがコツだ。

もっと深く(難関大・上級者)

1. 日本語の中で意味が変わった語

「百姓」「丈夫」「勉強」「経済」などは、漢語が日本に入ってから、日本語の中で意味が変わった語です。漢文を訳すときは、もとの意味にもどして考えなければなりません。たとえば「勉強」は、もとは「無理をしてつとめる」という意味で、学習の意味は日本で広まったものです。「経済」は「経世済民(世を経め民を済ふ)」の略で、政治のことを言いました。

日本語の中で意味が変わった語漢文(もとの意味)現代の日本語百姓人民(多くの姓の人々)農民丈夫りっぱな男子じょうぶ・健康勉強無理につとめる学習する経済世を治め民を救うお金の流れ訳では「もとの意味」にもどして考える
百姓・丈夫・勉強・経済は、日本語の中で意味が変わった
難関大

人間(世の中)・青山(骨を埋める地)

書き下し文人間じんかん到る処青山有り。

(月性「将に東遊せんとして壁に題す」)

現代語訳世の中には、どこにでも骨を埋めるのにふさわしい青々とした山がある(だから故郷を出て大いに活躍しよう)。

ここがポイント江戸時代の末の僧・月性(げっしょう)の詩の結びの句です。「人間」は「じんかん(世の中)」。「青山」は木の茂った山で、ここでは骨を埋める場所(墓所)の意味をこめています。「にんげん」と読むと誤り、と覚えておきましょう。

2. 「道」「信」「易」:1字の意味の広がり

1字の語は、意味がいくつにも広がっていることが多く、難関大ではその使い分けが問われます。「道」は、道路→方法→道理・人の正しい生き方と広がり、さらに「道ふ(いふ)」と動詞で「言う」の意味にもなります。論語や孟子の「道」は、たいてい「人の正しい生き方・道理」です。

「道」の意味の広がり道路みち(通り道)方法やり方・手段道理人の正しい生き方言う「道ふ」(いふ)論語の「道」はたいてい「人の正しい生き方」
「道」は、道路→方法→道理と広がり、「道ふ(言う)」の意味も
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道(人の正しい生き方)

書き下し文朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。

(『論語』里仁)

現代語訳朝に人の正しい生き方を聞いて理解できたなら、その日の夕方に死んでもかまわない。

ここがポイント「道」は道路ではなく人として守るべき道理。故事成語「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」として知られます。「〜ば」は仮定、「〜とも」は逆接の仮定です。

「易」は、「やすし(たやすい)」のほかに「かふ(取りかえる)」の意味があり、「交易」「貿易」の「易」がこれです。孟子の中で、斉の宣王が、いけにえにされる牛を見てかわいそうに思い、羊に取りかえさせる話は有名です。

難関大

易(かふ=取りかえる)

書き下し文羊を以もつて之に易かへよ。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳羊でこの牛の代わりにせよ。

ここがポイント「易」は「かふ(取りかえる)」。この話では、人々が王の行いを「牛を惜しんだのだ(愛しむ)」とうわさしたことも語られます。ここの「愛」は「をしむ(惜しむ・けちる)」の意味で、今の「愛する」とはちがいます。「以〜」の働きは「以」の読みと用法で扱います。

「信」も、「信じる」のほかに「誠実さ・約束を守ること」「まことに(本当に)」、さらに「便り・使者」の意味があります。論語の「信」は、ほとんどが「うそをつかないこと・約束を守ること」です。辞書には多くの意味が並びますが、入試では文の中でどれが通るかを一つずつ当てはめて決めるのが確実です。

3. 「左右」「百姓」:文脈で人を指す語

「左右」は「ひだりとみぎ」の意味でも使いますが、史記などの歴史の文章では、ほとんどが「王のそばにつかえる家来(側近)」です。「左右に問ふ」は「側近にたずねる」。「百姓」も、国の政治を論じる文章では「人民」です。どちらも人を指す語だと気づけば、主語や目的語を取りちがえることがなくなります。

難関大

左右(側近)

書き下し文王左右に問ふ。

(自作)

現代語訳王はそばにいる家来たちにたずねた。

ここがポイント「左右」は「側近の家来」。「ひだりとみぎにたずねる」では意味が通りません。
難関大

百姓(人民)

書き下し文君百姓を愛せずんば、国必ず危ふし。

(自作)

現代語訳君主が人民を大切にしなければ、国は必ず危うくなる。

ここがポイント「百姓」は「ひゃくせい(人民)」。農民に限らず、国の人々全体をいいます。「ずんば」は「〜しなければ」という仮定の言い方です。
ひらめいたハルちゃん

ハルちゃん

「人間」は世の中、「故人」は昔の友だち、「兵」は武器、「走」は逃げる! 今の意味で訳して変だったら、漢文の意味を思い出せばいいんですね。

よくあるまちがい

まちがい1:「故人」を「亡くなった人」と訳す

漢文の「故人」は「古くからの友人」。「故」は「昔からの」の意味です。

まちがい2:「人間」を「にんげん(ひと)」と訳す

「人間」は「じんかん」と読み、「世の中・世間」の意味です。

まちがい3:「百姓」を「農民」と訳す

漢文の「百姓(ひゃくせい)」は「人民・人々」。農民に限りません。

まちがい4:「兵」をいつも「兵士」と訳す

「兵を曳きて走る」の「兵」は武器。兵士・戦争の意味もあるので、文脈で決めます。

まちがい5:「小人」を「子ども」と訳す

論語の「小人」は「徳のないつまらない人」。君子と対になる語です。

練習問題

やさしい

  1. 次の語の、漢文での意味を答えなさい。
    ①人間 ②故人 ③百姓
    答えと解説を見る

    ①世の中・世間(じんかん) ②古くからの友人 ③人民・一般の人々(ひゃくせい)

  2. 次の訓読文を書き下し文にし、「左右」の意味を答えなさい。(自作)
    答えと解説を見る

    王左右に問ふ。(王左右に問ふ。)「左右」は側近の家来。訳は「王はそばにいる家来たちにたずねた」。

ふつう

  1. 杜甫「春望」の「城春にして草木深し」の「城」は、何を指しますか。
    答えと解説を見る

    城壁で囲まれた町(ここでは都の長安)。日本の「おしろ(天守のある建物)」ではありません。

  2. 孟子の「甲を棄て兵を曳きて走る」の「兵」と「走」の意味を答えなさい。
    答えと解説を見る

    「兵」=武器、「走」=逃げる。全体で「よろいを捨て、武器を引きずって逃げる」。

むずかしい

  1. 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    「王遇之甚厚」
    答えと解説を見る

    書き下し文:王之を遇すること甚だ厚し。 訳:王はその人をたいへん手厚くもてなした。「遇」は「会う」ではなく「もてなす(待遇する)」の意味。「甚だ」は程度の副詞です。

  2. 孟子に「百姓皆以王為愛也(百姓は皆王を以て愛しむと為すなり)」という一文がある。「百姓」と「愛」の意味を答え、全体を訳しなさい。
    答えと解説を見る

    「百姓」=人民、「愛」=をしむ(物惜しみする・けちる)。訳:人々はみな、王が(牛を)惜しんだのだと思った。「愛する」と訳すと意味が通りません。

関連ページ

「五十歩百歩」「君子は和して同ぜず」などは故事成語の一覧(意味・由来・出典)で、四字熟語に残る漢文の語(経世済民・光陰矢の如し など)は四字熟語の一覧(読み・意味)で確かめられます。

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よくある質問

漢文でよく出る重要単語は?

人間(世の中)・故人(古くからの友人)・百姓(人民)・左右(側近)・丈夫(りっぱな男子)・君子(徳のある人)・小人(つまらない人)・夫子(先生)・寡人(王の自称)・城(城壁で囲まれた町)・兵(武器)・走(逃げる)などです。

「故人」は漢文でどういう意味ですか?

古くからの友人という意味です。王維の「西のかた陽関を出づれば故人無からん」が有名で、亡くなった人という今の意味ではありません。

「人間」はなぜ「じんかん」と読むのですか?

漢文の「人間」は「人の間」、つまり人の住む世の中を表す語で、「じんかん」と読みます。人そのものを指す「にんげん」とは意味がちがいます。

「寡人」「朕」「臣」の違いは?

どれも自分を指す語です。朕は天子(皇帝)、寡人は王や諸侯、臣は家来が主君に向かって使います。話し手の身分がわかる手がかりになります。

漢文の単語はどう覚えればいいですか?

一覧表で今の意味と比べ、例文の中で覚えるのが効果的です。訳して文が通らないときは、故=昔からの、百=たくさん、のように字のもとの意味から考えます。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:王維「元二の安西に使ひするを送る」、杜甫「春望」、『論語』(学而・子路・公冶長・里仁)、『孟子』梁恵王上、月性「将に東遊せんとして壁に題す」。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文の重要語の標準的な説明にもとづいて作成。意味が分かれる所(多少・頗など)は本文中に記した
  • 画像:張択端「清明上河図」部分(北宋・12世紀、北京故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦