諸子百家とは|儒家・道家・法家・墨家の違い、孔子・孟子(性善説)・荀子(性悪説)・老子・荘子・韓非子を図と年表で【漢文】

諸子百家とは|儒家・道家・法家・墨家の違い、孔子・孟子(性善説)・荀子(性悪説)・老子・荘子・韓非子を図と年表で【漢文】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

諸子百家は、春秋・戦国時代に「国をどう治めるか」を説いた思想家たちです。儒家(孔子・孟子=性善説・荀子=性悪説)は徳と礼、道家(老子・荘子)は無為自然、法家(韓非・李斯)は法と賞罰、墨家(墨子)は兼愛を説きました。

このページのポイント

  • 諸子百家=春秋・戦国時代の思想家たち
  • 儒家:孔子(仁・礼)・孟子(性善説)・荀子(性悪説)
  • 道家:老子・荘子=無為自然、仁義を批判
  • 法家:商鞅・韓非・李斯=法治・信賞必罰
  • 墨家=兼愛・非攻、兵家=孫子、縦横家=合従(蘇秦)・連衡(張儀)

はじめて(やさしく)

諸子百家(しょしひゃっか)とは、中国の春秋・戦国時代(紀元前8世紀〜前3世紀)に現れた、たくさんの思想家とその学派のことです。「諸子」は「多くの先生」、「百家」は「多くの学派」という意味です。周の王の力が弱まり、国どうしが争った時代に、「国をどう治めればよいか」「人はどう生きればよいか」を、それぞれの先生が王たちに説いて回りました。

漢文の授業や入試で読む『論語』『孟子』『荀子』『老子』『荘子』『韓非子』『孫子』などは、みな諸子百家の本です。そして「矛盾」「五十歩百歩」「胡蝶の夢」など、今も使う故事成語の多くが、ここから生まれました。

諸子百家の一覧(学派・人物・キーワード)

学派代表的な人物キーワード本ここから出た言葉
儒家孔子・孟子・荀子仁・礼・徳治・性善説(孟子)・性悪説(荀子)『論語』『孟子』『荀子』温故知新・五十歩百歩・青は藍より出でて藍より青し
道家老子・荘子道・無為自然・柔弱『老子』『荘子』上善は水の如し・胡蝶の夢・朝三暮四
法家商鞅・韓非・李斯法治・信賞必罰『韓非子』『商君書』矛盾・株を守る・逆鱗に触れる
墨家墨子兼愛(へだてない愛)・非攻(侵略反対)『墨子』墨守(守りがかたいこと)
兵家孫子(孫武)戦わずして勝つ『孫子』彼を知り己を知れば百戦殆うからず・呉越同舟
縦横家蘇秦・張儀合従・連衡(外交の策)『戦国策』『史記』鶏口牛後・漁夫の利
名家公孫竜・恵施名(ことば)と実(もの)・論理『公孫竜子』白馬は馬に非ず
陰陽家鄒衍陰陽・五行(木火土金水)(まとまった本は残らない)陰陽五行説
農家許行君主も民と一緒に耕すべき(『孟子』に登場)—
諸子百家の主な学派儒家孔子・孟子・荀子仁・礼・徳で治める道家老子・荘子無為自然法家商鞅・韓非・李斯法と賞罰で治める墨家墨子兼愛・非攻兵家孫子(孫武)戦わずに勝つ縦横家蘇秦・張儀合従・連衡(外交)名家公孫竜・恵施名と実(論理)陰陽家鄒衍陰陽五行農家許行君も民も耕す雑家呂不韋諸説をまとめる上の段(儒家・道家)が入試にいちばんよく出る
諸子百家の主な学派。とくに儒家と道家が大切

まずは、いちばん有名な孔子の言葉から読んでみましょう。孔子とその弟子たちの言葉を集めた本が『論語』です。丸の数字が読む順番です。

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儒家:孔子(温故知新)

白文子曰、温故而知新、可以為師矣。

書き下し文子曰はく、故きを温めて新しきを知れば、以て師と為なるべし。

(『論語』為政)

現代語訳先生がおっしゃった。「古いことを学び直して、そこから新しい知識や考えを得られる人なら、人の先生になることができる。」

ここがポイント四字熟語「温故知新」のもとです。「子」は孔子のこと。「温」は「たづねて」と読む本もあります。「可以」の「可」は一→二→三と返って最後に「べし」と読みます(可能の句法(可・能・得・足))。「而」「矣」は置き字です。
うかるくん

うかるくん

「百家」って、本当に100人もいたんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

「百」は「たくさん」という意味で、ちょうど100ではないんだ。漢の時代の本の目録『漢書』芸文志では、儒・道・陰陽・法・名・墨・縦横・雑・農の9つを「九流」、小説家を足して「十家」とまとめている。

サクラちゃん

サクラちゃん

入試では、どれがいちばん大事ですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

圧倒的に儒家(孔子・孟子・荀子)と道家(老子・荘子)。それに法家の韓非子。「孟子は性善説、荀子は性悪説」は、まず覚えておこう。

人の生まれつきは善か悪か孟子=性善説荀子=性悪説善の芽(四端)がある芽を育てれば仁・義・礼・智に水が低きに就くように欲のままだと争う礼と学問で矯正(偽=人為)曲がった木を矯めるようにどちらも「学び・修養が大事」という点は同じ
孟子の性善説と荀子の性悪説。人の生まれつきの考え方がちがう

同じ儒家でも、孟子は「人は生まれつき善い心を持っている(性善説)」と考え、荀子は「人は生まれつき欲が強く、放っておくと争う(性悪説)」と考えました。ただし荀子も、人は悪のままでよいと言ったのではなく、「だから礼と学問で自分を正そう」と説いたのです。「悪」は「わるもの」というより、「欲のままで、まだ整っていない」というイメージです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

諸子百家は「だれが・何派で・キーワードは何か」の3点セットで覚える。孔子=儒家=仁、老子=道家=無為自然、韓非子=法家=法治、墨子=墨家=兼愛。これだけで文学史・思想の問題の半分は解けるよ。

ここまでのまとめ

  • 諸子百家=春秋・戦国時代の思想家たち(「百」はたくさんの意味)
  • 儒家(孔子・孟子・荀子)、道家(老子・荘子)、法家(韓非 など)が特に大事
  • 孟子=性善説、荀子=性悪説

しっかり(共通テスト)

年表で見る諸子百家

諸子百家の時代は、春秋時代(前770〜前403年)と戦国時代(前403〜前221年)にまたがります。孔子は春秋時代の終わりごろの人で、孟子・荘子・荀子・韓非は戦国時代の人です。前221年に秦の始皇帝が中国を統一すると、法家の李斯が丞相(宰相)として政治を動かしました。

諸子の年表(紀元前・生没年はおよそ)春秋時代戦国時代秦老子(伝承)孫武(孫子)孔子墨子商鞅孟子荘子荀子韓非李斯前600前500前400前300前200
諸子の年表。孔子は春秋時代、孟子・荘子・荀子・韓非は戦国時代
人物生没年(おおよそ)学派ひとこと
孔子(名は丘)前551ごろ〜前479年儒家魯の人。仁と礼を説き、多くの弟子を育てた
老子不明(伝説では孔子と同じころ)道家実在や年代に諸説。『老子』(道徳経)の作者とされる
墨子(名は翟)前5世紀〜前4世紀はじめごろ墨家兼愛・非攻。城を守る技術集団も率いたと伝えられる
孟子(名は軻)前4世紀〜前3世紀はじめ(諸説)儒家性善説・王道政治。孔子の孫の子思の門人に学んだ
荘子(名は周)前4世紀ごろ(諸説)道家たとえ話(寓話)で自由な生き方を説く
荀子(名は況)前4世紀末〜前3世紀(諸説)儒家性悪説・礼による教育。韓非と李斯の先生
商鞅?〜前338年法家秦で法による改革(変法)を行う
韓非?〜前233年法家法家を集大成。『韓非子』
李斯?〜前208年法家秦の始皇帝の丞相

儒家:孔子・孟子・荀子

孔子は、思いやりの心である仁と、社会のきまりや作法である礼を重んじ、上に立つ人が徳を身につけて手本を示せば、人々は自然に従うと考えました(徳治主義)。次の言葉は、法と刑罰による政治と、徳と礼による政治をくらべたものです。

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儒家の徳治(法と刑罰だけでは足りない)

書き下し文之を道みちびくに政を以てし、之を斉ととのふるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。

(『論語』為政)

現代語訳人々を法令で導き、刑罰でそろえようとすれば、人々は刑罰をうまくのがれても、恥じる心を持たなくなる。

ここがポイントこのあと孔子は「之を道くに徳を以てし、之を斉ふるに礼を以てすれば、恥有りて且つ格し」(徳と礼で導けば、恥を知って正しくなる)と続けます。「以+名詞」で手段を表す形は「以」の読みと用法(もつて・ゆゑに)で確かめられます。

孟子は、人には生まれつき「惻隠の心(あわれむ心)」「羞悪の心(悪をはじる心)」「辞譲の心(ゆずる心)」「是非の心(善悪を見分ける心)」の4つの芽(四端)があり、これを育てれば仁・義・礼・智になると説きました。また、武力で従わせる覇道ではなく、徳で治める王道をすすめました(「王道」と「覇道」の意味と違い(孟子))。

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孟子の性善説

書き下し文人性の善なるや、猶なほ水の下きに就くがごときなり。

(『孟子』告子上)

現代語訳人の本性が善であるのは、ちょうど水が低い方へ流れていくようなもの(自然なこと)だ。

ここがポイント「猶〜ごとし」は再読文字(未・将・当・猶)で、「猶ほ〜のごとし」と2回読みます。孟子は、水が必ず低い所へ流れるように、人の性は必ず善に向かうと、告子との論争の中で述べました。
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四端の説

書き下し文惻隠の心は、仁の端なり。

(『孟子』公孫丑上)

現代語訳人をあわれみいたむ心は、仁の芽生え(いとぐち)である。

ここがポイント「端」は「いとぐち・はじまり」。井戸に落ちそうな幼な子を見れば、だれでもはっとして助けたくなる、という例で説明されます。故事成語「惻隠の情」のもとです。

荀子は、人の性は欲が強く、放っておけば争いになると考え、礼と学問で人を正すことを重んじました(礼治主義)。『荀子』の最初の篇は「勧学(学問のすすめ)」です。

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荀子の性悪説

書き下し文人の性は悪にして、其の善なる者は偽ぎなり。

(『荀子』性悪)

現代語訳人の本性は悪であって、人が善であるのは、人の手による(努力の)結果である。

ここがポイント「偽」は「うそ」ではなく「人為(人のしわざ)」の意味で、ここがいちばんよく問われます。「イ(人)+為」と考えると覚えやすいでしょう。
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荀子:学問のすすめ

書き下し文学は以て已やむべからず。

(『荀子』勧学)

現代語訳学問は途中でやめてはならない。

ここがポイントこのあとに「青は之を藍より取りて、藍よりも青し」と続き、故事成語「青は藍より出でて藍より青し」のもとになりました。「不可」は「べからず」(可能・不可能の句法)。

道家:老子・荘子

道家は、宇宙のおおもとである道(タオ)に従い、人の手を加えない無為自然を理想としました。儒家が大切にする仁義や礼を、「道が失われたから必要になったもの」と批判します。老子と荘子を合わせて「老荘思想」と言います。

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道家:儒家への批判

書き下し文大道廃れて、仁義有り。智慧出でて、大偽有り。

(『老子』第十八章)

現代語訳大いなる道がすたれたから、仁義(を説く必要)が生まれた。人のさかしい知恵が現れたから、大きないつわりが生まれた。

ここがポイント儒家の「仁義」を、道が失われたあとに生まれたものとして低く見る、逆説的な言い方です。「有」は下から返って読む返読文字です。
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無為(何もしないのに、すべてをなしとげる)

書き下し文道は常に無為にして為なさざる無し。

(『老子』第三十七章)

現代語訳道はいつも何もしないでいるのに、なしとげないことは何もない。

ここがポイント「無不為」は二重否定(無不・非不)で「為さざる無し=すべてなしとげる」。「無為」なのに「すべてをなす」という逆説が老子らしさです。
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荘子:胡蝶の夢

書き下し文昔者むかし荘周夢に胡蝶と為なる。

(『荘子』斉物論)

現代語訳むかし、荘周(荘子)は夢の中で蝶になった。

ここがポイント夢の中で蝶になった荘子が、目覚めたあと「自分が蝶になった夢を見たのか、蝶が自分になった夢を見ているのか」と考える話で、「胡蝶の夢」のもとです。「昔者」は2字で「むかし」と読みます。

法家:商鞅・韓非・李斯

法家は、人は利益を求めて動くものだと考え、はっきりした法と、手がらには賞、罪には罰を必ず与える信賞必罰で国を治めるべきだと説きました(法治主義)。秦の商鞅が改革で国を強くし、韓非がその考えを集大成し、李斯が始皇帝のもとで実行しました。『韓非子』には、たとえ話の形で儒家などを批判する話が多く、故事成語の宝庫です。

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法家:矛盾

書き下し文子の矛を以て、子の盾を陥さば、何如いかん。

(『韓非子』難一)

現代語訳あなたの矛で、あなたの盾を突いたら、どうなるのか。

ここがポイント「矛盾」の話。韓非は、伝説の聖人である堯と舜を両方ほめる儒家の考えは、この矛と盾のようにつじつまが合わないと批判するために、この話を使いました。「何如」は状態をたずねる「いかん」(疑問の句法)。
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法家:株を守る(守株)

書き下し文因りて其の耒すきを釈すてて株を守り、復た兎を得んことを冀こひねがふ。

(『韓非子』五蠹)

現代語訳そこで(その農民は)すきを捨てて切り株を見張り、また兎が手に入ることを願った。

ここがポイント「株を守る」の話。昔の王のやり方をそのまま今に当てはめようとする儒家を、切り株の番をする農民にたとえて批判しています。「冀」は願望の句法の字で「こひねがふ」。

墨家・兵家・縦横家ほか

墨子は、自分の家族も他人も区別なく愛する兼愛と、侵略戦争に反対する非攻を説きました。儒家の「仁」は身近な人ほど深く愛する(差別のある愛)として批判し、また、儒家が重んじるぜいたくな葬式や音楽にも反対しました(節葬・非楽)。墨家は戦国時代には儒家と並ぶ大きな集団でしたが、秦・漢以後はほとんど絶えました。

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墨家:兼愛

書き下し文天下兼ねて相あひ愛すれば則ち治まり、交こもごも相あひ悪にくめば則ち乱る。

(『墨子』兼愛上)

現代語訳世の中の人々がへだてなくたがいに愛し合えば世は治まり、たがいに憎み合えば世は乱れる。

ここがポイント「則」は「〜すれば(そのときは)」の意味の「すなはち」(「而・則・乃・即」の読みと用法)。読み方は本によって少しちがいます。

兵家の孫子(孫武)は、戦いに勝つ方法を説きましたが、その中心は「戦わずして人の兵を屈する」こと、つまりなるべく戦わずに勝つことでした(孫子の兵法の原文・書き下し・意味)。

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兵家:孫子

書き下し文彼を知り己を知れば、百戦殆あやふからず。

(『孫子』謀攻)

現代語訳敵の実情を知り、自分の実情を知っていれば、百回戦っても危ういことはない。

ここがポイント「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」。「殆」は「ほとんど」ではなく「あやふし(危ない)」と読みます(重要漢字の読み(殆・蓋・嘗 など))。

縦横家は、弁舌で各国の王に外交策を説いた人々です。蘇秦は六国が同盟して秦に対抗する合従を、張儀は六国が個別に秦と結ぶ連衡を説いたとされます。蘇秦が韓の王を説いたときの言葉が「鶏口牛後」です。

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縦横家:鶏口牛後

書き下し文寧むしろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ。

(『史記』蘇秦列伝)

現代語訳たとえ小さくても鶏のくちばし(小国の長)になる方がよい。大きな牛のしり(大国の家来)にはなるな。

ここがポイント秦に仕えるより、独立した国の王でいるべきだと説いた言葉です。「寧A無B」は選択の句法(寧〜無〜・与其〜寧〜)。
国をどう治める? 4つの答え儒家徳治徳と礼で人を導く上に立つ人が手本に法家法治法と賞罰で従わせる人の利己心を利用道家無為何もしないのが最高小さな国・少ない民墨家兼愛へだてなく愛し合う侵略戦争に反対(非攻)国
国の治め方:儒家の徳治、法家の法治、道家の無為、墨家の兼愛

思想の文章の読み方の手順

  1. だれの言葉かを確かめる:「子曰」は孔子、「孟子曰」は孟子。出典(『論語』『老子』など)もヒントになります。
  2. キーワードをさがす:仁・礼・徳(儒家)、道・無為・自然(道家)、法・賞罰(法家)、兼愛(墨家)。
  3. たとえ話の「たとえる物」と「たとえられる物」を分ける:矛と盾=儒家の主張、株を守る農民=昔のやり方にこだわる人。
  4. だれを批判しているかを読む:道家・法家・墨家の文章の多くは、儒家への批判をふくみます。
  5. 筆者の主張を一文にまとめる:「〜ではなく、〜すべきだ」の形にすると、記述問題に答えやすくなります。
サクラちゃん

サクラちゃん

儒家と道家って、どっちが正しいんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

入試ではどちらが正しいかは聞かれない。聞かれるのは「この文章の筆者はどの立場で、何を批判しているか」だ。道家の文章に「仁義」が出てきたら、たいていは批判の対象だよ。

うかるくん

うかるくん

「矛盾」も、ただのおもしろい話じゃなくて、儒家への皮肉だったんですね!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 師弟と思想のつながり

『史記』によると、孟子は孔子の孫である子思の門人に学びました。子思は孔子の弟子曾子に学んだと伝えられ、この「孔子→曾子→子思→孟子」の流れは、のちに朱子学で儒学の正統とされました。いっぽう荀子は孟子の性善説を批判し、その荀子のもとから、法家の韓非と李斯が出ています。儒家の先生から法家の大成者が出たことは、「礼で外から人を正す」荀子の考えが、「法で外から人を従わせる」法家につながったと説明されます。

思想のつながり(師弟・影響)儒家孔子曾子子思孟子子思の門人に学ぶ(史記)荀子孟子を批判学ぶ韓非李斯法家を集大成秦の丞相商鞅先輩の法家道家老子荘子思想を受けつぐ合わせて「老荘思想」点線=実在や直接の師弟がはっきりしないもの
孔子→曾子→子思→孟子、荀子→韓非・李斯、老子→荘子

『史記』老子韓非列伝は、老子・荘子・申不害・韓非を1つの伝にまとめています。司馬遷は、韓非の考えは「黄老(黄帝・老子の道家)」にもとづくと述べており、法家と道家の「人の手を加えない」「君主は表に出ない」という考えのつながりを示しています。

2. 合従と連衡

縦横家の外交:合従と連衡合従(がっしょう)蘇秦:六国が縦に同盟秦燕趙斉魏韓楚対抗連衡(れんこう)張儀:一国ずつ秦と結ぶ秦燕趙斉魏韓楚「合従連衡」=その時々の利害で手を組むこと
合従は六国の縦の同盟、連衡は一国ずつ秦と結ぶ策

戦国時代の後半、西の強国秦に対して、東の六国(燕・趙・斉・魏・韓・楚)がどう生き残るかが大問題でした。『史記』では、蘇秦が六国の同盟(合従)をまとめ、のちに張儀がそれをくずして各国を秦と結ばせた(連衡)と書かれています。ただし、1973年に馬王堆漢墓から出た帛書(絹に書いた本)の『戦国縦横家書』などから、蘇秦は張儀より後の時代の人だったとする説が有力になっています。『史記』の記事が、そのまま歴史の事実とは限らない例として知っておくとよいでしょう。今の日本語の「合従連衡」は、その時々の利害で手を組んだり離れたりすることを言います。

3. 「性善」「性悪」と「偽」の読み

荀子の「其の善なる者は偽なり」の「偽」は、「人+為」=人為のことで、荀子自身が、生まれつきの「性」に対して、学んでできるようになり、努力して身につくものを「偽」と呼んで区別しています。記述問題で「偽」を「いつわり」と訳すのは誤りです。また、孟子の性善説も「人はみな善人だ」という意味ではなく、「善になる芽を生まれつき持っている」という意味です。両者は「人は学び努力すべきだ」という点では一致しており、ちがうのは善の出どころ(内にあるか、外から身につけるか)です。

石に彫られた浮き彫りを紙に写し取った拓本。上段に竜や鳥の文様、中段に冠をつけた人物たちが横一列に並ぶ
「孔子見老子(孔子、老子に見ゆ)」を表した漢代の画像石の拓本。孔子が老子に礼についてたずねたという話は『史記』にも記され、漢代の墓の石に好んで彫られました。儒家と道家の出会いを伝える話ですが、事実かどうかには諸説あります。画像:「孔子見老子」画像石の拓本(漢代、作者不明、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

4. 新しく見つかった竹簡と諸子の本

20世紀後半から、古い墓から竹簡・帛書が次々に見つかり、諸子の本の研究が大きく進みました。1972年には山東省の銀雀山漢墓から『孫子』と、長く失われていた『孫臏兵法』の竹簡が出て、孫武と孫臏(孫武の子孫とされる兵法家)が別人で、それぞれに兵法書があったことがはっきりしました。1993年には湖北省の郭店楚墓から、今の『老子』の一部にあたる竹簡が見つかり、『老子』の成り立ちについての議論が進んでいます。教科書の本文は、こうした研究をふまえつつ、伝わってきた本(伝世本)によっています。

5. 諸子の思想のその後

諸子の思想のその後戦国諸子百家が争う(百家争鳴)秦法家で統一。焚書坑儒漢武帝のころ儒学が国の学問に魏晋老荘思想が流行(清談)宋朱熹が朱子学を大成(四書)明王守仁(王陽明)の陽明学日本江戸幕府が朱子学を重んじる
法家の秦、儒学の漢、朱子学の宋、そして江戸時代の日本へ

秦は法家の政治で中国を統一しましたが、李斯の進言で焚書(医学・占い・農業以外の書物を焼く、前213年)が行われ、翌年には学者を穴埋めにした坑儒が起こったと伝えられます。秦が短く滅びたあと、漢の武帝のころには儒学が国の学問とされ、五経(詩・書・易・礼・春秋)を教える博士が置かれました。魏晋の時代には老荘思想が流行し、宋の朱熹は『論語』『孟子』『大学』『中庸』を四書として重んじる朱子学を大成しました。日本では江戸幕府が朱子学を重んじ、寺子屋や藩校で『論語』が読まれました。日本の漢文訓読の伝統も、こうした儒学の学習の中で育ってきたものです(漢文の文学史(四書五経・史記・唐詩))。

6. 入試で問われる「思想の比較」

テーマ儒家道家法家
理想の政治徳治(徳・礼)・王道無為・小国寡民法治・信賞必罰
人間の見方孟子:性善/荀子:性悪人の知恵・欲がわざわいのもと人は利益で動く
仁義・礼最も大切道が失われた結果役に立たない(法で足りる)
よく使う表現「君子」「小人」「道」「自然」「柔弱」「法」「術」「勢」
有名な故事助長・五十歩百歩朝三暮四・井の中の蛙矛盾・和氏の璧

難関大の問題では、たとえば「この寓話は、どの立場の人のどんな考え方を批判しているか」「孟子と荀子は人の本性をどうとらえたか、くらべて説明せよ」のように、2つの立場を対比させて説明させる問いがよく見られます。上の表の「人間の見方」と「理想の政治」を、自分の言葉で1〜2文にまとめる練習をしておきましょう。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

儒家=徳と礼、道家=無為自然、法家=法と賞罰、墨家=兼愛。孟子は性善で「芽を育てる」、荀子は性悪で「礼と学問で矯める」。「偽」は人為!

よくあるまちがい

まちがい1:孟子を性悪説、荀子を性善説と逆に覚える

孟子=性善説、荀子=性悪説。「孟子の母(孟母三遷)は子の善い芽を育てた」と結びつけると覚えやすくなります。

まちがい2:荀子の「偽」を「うそ・いつわり」と訳す

荀子の「偽」は人為(人の努力・はたらきかけ)です。「善は人の努力によるものだ」という意味になります。

まちがい3:韓非を儒家に入れる

韓非は儒家の荀子に学びましたが、法家の大成者です。李斯も法家です。

まちがい4:「無為」を「何もしない怠け者」と考える

老子の「無為」は、人のさかしらな手を加えず、自然のままにまかせることです。「無為にして為さざる無し」のように、むしろすべてがうまくいくと考えます。

まちがい5:「百家」を百人の思想家と考える

「百」はたくさんの意味です。『漢書』芸文志では九流十家に分けています。

練習問題

やさしい

  1. 次の人物を、儒家・道家・法家に分けなさい。
    孔子・老子・韓非・孟子・荘子・荀子・李斯
    答えと解説を見る

    儒家:孔子・孟子・荀子/道家:老子・荘子/法家:韓非・李斯

  2. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(『孫子』謀攻)
    答えと解説を見る

    彼を知り己を知れば(彼を知り己を知れば)。レ点で「彼を→知り」「己を→知れば」と1字返ります。

ふつう

  1. 孟子の性善説と荀子の性悪説のちがいを、それぞれ1文で説明しなさい。
    答えと解説を見る

    孟子は、人は生まれつき善の芽(四端)を持ち、それを育てれば善になると考えた。荀子は、人は生まれつき欲が強く争うものなので、礼と学問によって正す必要があると考えた。

  2. 次の白文を書き下し文にしなさい。(自作)
    「民不可使知之」(ヒント:「使」は使役、「不可」は「べからず」)
    答えと解説を見る

    書き下し文:民は之を知らしむべからず。 「使A〜」の使役で「Aをして〜しむ」ですが、ここでは「民」が文頭に出ているので「民は之を知らしむべからず」と読みます(使役の句法(使・令・教・遣))。『論語』泰伯の「民は之に由らしむべし、之を知らしむべからず」をもとにした問題です。

むずかしい

  1. 『韓非子』の「矛盾」の話は、もともと何を批判するために使われたか。説明しなさい。
    答えと解説を見る

    伝説の聖人である堯と舜の両方を聖人としてほめる儒家の考えを批判するため。堯が完全な聖人なら舜が世を正す必要はなく、舜が世を正したなら堯は完全ではない。両方をほめるのは、どんな盾も通す矛と、どんな矛も防ぐ盾を同時に売るのと同じで、つじつまが合わない、という論法。

  2. 『老子』の「大道廃れて、仁義有り」は、儒家に対するどのような批判をふくんでいるか。説明しなさい。
    答えと解説を見る

    儒家が最も大切にする仁義は、本来の大いなる道が失われたからこそ必要になったものにすぎず、仁義を説くこと自体が世の中が乱れているしるしである、という批判。仁義を高い価値とする儒家の考えを、逆の方向から見直している。

関連ページ

諸子の本から生まれた言葉は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で、孟子の話は五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)でも読めます。論語の「楽しむ者に如かず」は「好きこそものの上手なれ」と論語で紹介しています。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

諸子百家とは何ですか?

中国の春秋・戦国時代に現れた多くの思想家と学派のことです。儒家・道家・法家・墨家・兵家・縦横家・名家・陰陽家・農家などがあり、「百」はたくさんという意味です。

性善説と性悪説のちがいは?

孟子の性善説は、人は生まれつき善の芽(四端)を持つという考えです。荀子の性悪説は、人は生まれつき欲が強く争うので、礼と学問で正すべきだという考えです。

儒家と道家と法家のちがいは?

儒家は徳と礼による政治(徳治)、道家は人の手を加えない無為自然、法家は法と賞罰による政治(法治)を説きました。道家と法家は儒家を批判しました。

荀子の「偽」はどういう意味ですか?

「うそ」ではなく「人為」、つまり人の努力やはたらきかけのことです。「其の善なる者は偽なり」は、人の善は努力によるものだという意味です。

韓非子と荀子の関係は?

『史記』によると、韓非と李斯はともに荀子に学びました。荀子は儒家ですが、韓非は法家を集大成しました。

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出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『論語』為政、『孟子』(告子上・公孫丑上)、『荀子』(性悪・勧学)、『老子』(第十八章・第三十七章)、『荘子』斉物論、『韓非子』(難一・五蠹)、『墨子』兼愛上、『孫子』謀攻、『史記』(蘇秦列伝・孟子荀卿列伝・老子韓非列伝・李斯列伝)、『漢書』芸文志。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 人物の生没年は諸説あるものを「ごろ」「諸説」と記した。蘇秦と張儀の年代については馬王堆帛書『戦国縦横家書』による説を紹介した
  • 画像:「孔子見老子」画像石の拓本(漢代、作者不明、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦