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逆鱗に触れるげきりんにふれる
ひとことで言うと
目上の人を、ひどく怒らせてしまうこと。竜ののどの下の逆さのうろこに触れると必ず殺される、王にもそんな逆鱗がある、という『韓非子』のたとえから。
| 読み方 | げきりんにふれる |
|---|---|
| 意味 | 目上の人(王・上司・先生・親など)を、ひどく怒らせてしまうこと。 |
| 出典 | 『韓非子』説難(ぜいなん) |
| お話 | 竜はおとなしいが、のどの下の逆さのうろこ(逆鱗)に触れた者は必ず殺す。君主にも逆鱗があり、説く者はそれに触れなければよい、というたとえ |
| 似た言葉 | 怒りを買う・不興を買う・虎の尾を踏む |
| 反対の言葉 | 機嫌をとる・歓心を買う |
| 注意 | 同じ立場の人や目下の人には使わない |
| 漢文の句法 | 可能(可・能)・仮定(若し〜ば)・否定(無) |
このページのポイント
- 「逆鱗に触れる」は目上の人をひどく怒らせること。友だちや目下の人には使わないのが本来の使い方です
- 出典は『韓非子』説難。竜ののどの下の逆さのうろこのたとえを、4こまのイラストで読めます
- 原文の結論は「人主も亦逆鱗有り」。竜は王のたとえで、王に意見するむずかしさを説いた言葉です
「逆鱗に触れる」の意味と読み方
「逆鱗に触れる」はげきりんにふれると読みます。意味は「目上の人を、ひどく怒らせてしまうこと」です。王や社長、先生、親など、自分より上の立場の人のいちばん気にしているところに触れて、激しく怒らせてしまうときに使います。
「逆鱗(げきりん)」は、竜ののどの下に1枚だけ逆さに生えているうろこのことです。「鱗(りん)」は「うろこ」、「逆(げき)」は「さかさま」という意味です。ふだんは「ぎゃく」と読む「逆」を、この言葉では「げき」と読みます。
うかるくん
「逆鱗」って、竜のうろこのことだったんですね。どうしてそれが「怒らせる」って意味になるんですか?
ミスターT先生
これは中国の戦国時代の思想家・韓非(かんぴ)の本『韓非子』のたとえなんだ。竜はふだんはおとなしいけれど、のどの下の逆鱗に触れると、必ずその人を殺してしまう。そして「王さまにも逆鱗がある」と続く。だから、もとは王(君主)を怒らせることを言ったんだよ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○会議でうっかり社長の失敗を口にして、社長の逆鱗に触れてしまった。
- ○約束をやぶったことが、ついに父の逆鱗に触れた。
- ○監督の逆鱗に触れた選手は、次の試合に出してもらえなかった。
この言葉は、相手がとても怒ったことだけでなく、相手がだれか(目上の人か)が大事です。同じ立場の友だちや、自分より下の後輩を怒らせたときには使わないのが本来の使い方です(くわしくは「よくあるまちがい」で)。

絵で読む「逆鱗に触れる」のたとえ
「逆鱗」は、ほかの故事成語のように「ある人が何かをした」という出来事の話ではありません。韓非が、王に意見を述べることのむずかしさを説明するために使ったたとえ話です。4つの場面で見てみましょう。
絵で読む「逆鱗に触れる」のたとえ(4こま)
韓非は、竜の「おとなしさ」と「おそろしさ」の両方を描いています。ふだんは背中に乗れるほどなのに、たった1枚のうろこに触れただけで命を落とす。王もそれと同じで、ふだんは話を聞いてくれても、決して触れてはいけない所がある、というのです。

ミスターT先生
この話のポイントは、「竜=王」のたとえだ。中国では、竜は昔から皇帝(王)のしるしとされてきた。だから「逆鱗に触れる」は、えらい人の、いちばん触れてほしくない所に触れて、激しく怒らせるという意味になるんだね。
なお、中国では皇帝の顔を「竜顔(りゅうがん)」、皇帝の着る服を「竜袍(りゅうほう)」と言うなど、竜は皇帝と強く結びついた生き物です。日本の「登竜門」や「画竜点睛」にも竜が出てきますが、「逆鱗」は竜のこわい面を使ったたとえだと言えます。
「逆鱗に触れる」の原文・書き下し文・現代語訳
ここでは『韓非子』説難(ぜいなん)の最後の段を読みます。原文の「龍」「蟲」は、ここでは「竜」「虫」で表示します。書き下し文は代表的な読み方の一例です。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:竜はおとなしい
書き下し文夫れ竜の虫たるや、柔なれば狎れて騎るべきなり。
(『韓非子』説難(原文は「龍」「蟲」))
現代語訳そもそも竜という生き物は、おとなしいときには、なれ親しんで背中に乗ることもできる。
2文目:のどの下の逆鱗
書き下し文然れども其の喉下に逆鱗の径尺なる有り、若し人之に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。
(『韓非子』説難(原文は「徑」))
現代語訳しかし、そののどの下に、さしわたし一尺ほどの逆さに生えたうろこがあり、もし人でそれに触れる者がいれば、竜は必ずその人を殺す。
3文目:王にも逆鱗がある
書き下し文人主も亦逆鱗有り。
(『韓非子』説難)
現代語訳君主にもまた、逆鱗がある。
4文目:逆鱗に触れなければ
書き下し文説く者能く人主の逆鱗に嬰るること無くんば、則ち幾し。
(『韓非子』説難)
現代語訳君主に意見を説く者が、君主の逆鱗に触れないでいることができれば、(説得は)ほぼうまくいく。
韓非が言いたかったこと
原文の最後は「則ち幾し」(ほぼうまくいく)です。韓非は「逆鱗に触れるな」と注意しているのであって、「王をこわがれ」と言っているのではありません。相手のいちばん大事にしている所、いちばんいやがる所を見ぬいて、そこをさけて話せば、説得はうまくいくという、とても実用的な教えです。
サクラちゃん
原文には「逆鱗に触れる」っていう形そのものが出てくるんですか?
ミスターT先生
原文の言い方は「逆鱗に嬰(ふ)るる」だ。「嬰」は「触れる」という意味の字で、日本ではこれを分かりやすく「触れる」と言いかえて使っている。中国語では「批逆鱗(逆鱗を批〈う〉つ)」のような言い方も知られているよ。日本でいつごろから「逆鱗に触れる」の形が広まったかは、はっきりした資料が見つからなかったので、ここでは書かないでおくね。
出典『韓非子』説難と話の背景
「逆鱗に触れる」の出典は『韓非子(かんぴし)』の「説難(ぜいなん)」という篇です。「説」は「人に説く・説得する」、「難」は「むずかしい」。つまり説難は、王を説得することのむずかしさについて書いた文章です。「説」をこの意味では「ぜい」と読みます(遊説〈ゆうぜい〉の「ぜい」)。
韓非は、戦国時代の終わりごろ、韓(かん)の国の王族に生まれた思想家で、法律と賞罰で国を治める「法家(ほうか)」の代表的な人物です。『史記』によると、韓非は話すことが苦手(口がどもりがち)でしたが、文章はとても鋭かったと伝えられています。法家と、孔子・孟子の儒家とのちがいは、諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。
説難の中の「弥子瑕(びしか)」の話
説難には、逆鱗のたとえのすぐ前に、衛(えい)の国の王に愛された弥子瑕という家来の話があります。弥子瑕は、母が病気だと聞いて、王の車をかってに使って会いに行きました。王の車をかってに使うのは重い罪でしたが、王は「母を思うあまり罪もおそれなかった」とほめました。また、果樹園で食べた桃があまりにおいしかったので、食べかけの桃を王にさし出すと、王は「自分を愛してくれている」と喜びました。
ところが、弥子瑕の美しさがおとろえ、王の気持ちがさめると、王は「あいつは前に、わたしの車をかってに使い、食べかけの桃をわたしに食べさせた」と、同じ行いを罪として責めたのです。韓非は、同じことでも、相手に好かれているときと嫌われているときで、受け取られ方がまったく変わると言います。この話から「余桃の罪(よとうのつみ)」という言葉も生まれました。そして、その次に置かれているのが、竜の逆鱗のたとえです。
韓非自身は……
司馬遷の『史記』は、説難の文章をまるごと引用したうえで、韓非が秦に使いとして行き、そこで命を落としたことを書いています。そして、「説難」を書くほど説得のむずかしさをよく知っていた韓非が、自分自身はそのわざわいからのがれられなかったことを悲しむ、という意味のことばをそえています。同じ『韓非子』からは「矛盾」「株を守る」「和氏の璧」なども生まれました。
「逆鱗に触れる」の使い方と例文・似た言葉
「逆鱗に触れる」は、「(目上の人)の逆鱗に触れる」の形で使います。「逆鱗に触れた」「逆鱗に触れてしまう」のように、自分(や話題の人)が目上の人を怒らせた、という場面で使うのがふつうです。ニュースでは「国民の逆鱗に触れる」「世論の逆鱗に触れる」のように、多くの人々の激しい怒りを買う意味で使われることもあります。
- ○店長に口答えをして、逆鱗に触れてしまった。(上司)
- ○宿題を出さずにうそをついたことが、先生の逆鱗に触れた。(先生)
- ○家臣の一言が殿様の逆鱗に触れ、その家臣は国を追われた。(主君)
- ○増税の決定が国民の逆鱗に触れ、大きな反対運動が起きた。(多くの人々)
- ×弟のおやつを食べたら、弟の逆鱗に触れた。(目下の人には使わない。「弟を怒らせた」)
- ×社長は部下の逆鱗に触れたことを反省した。(立場が逆。社長が部下を怒らせたなら「部下の怒りを買った」)
言いかえで使い分けを確かめよう
「逆鱗に触れる」を使ってよいかどうかは、だれがだれを怒らせたかで決まります。次の言いかえで確かめてみましょう。
- 「わたしが校長先生を激しく怒らせた」→「校長先生の逆鱗に触れた」(目上なので○)
- 「わたしがクラスの友だちを怒らせた」→「友だちを怒らせた」「友だちの怒りを買った」(同じ立場なので「逆鱗」は使わない)
- 「キャプテンが新入部員を怒らせた」→「キャプテンは新入部員の怒りを買った」(目下の人の怒りなので「逆鱗」は使わない)
- 「大臣の発言が多くの国民を怒らせた」→「大臣の発言が国民の逆鱗に触れた」(国民全体を、えらい人より上の存在と見る言い方として、ニュースなどで使われる)
また、「逆鱗に触れる」はとても強い怒りを表す言葉です。少しむっとさせた、機嫌が悪くなった、という程度なら「機嫌をそこねる」「不興を買う」のほうがぴったりです。言葉の強さを考えて選ぶと、文章がぐっと正確になります。
似た言葉
- 怒りを買う:人を怒らせること。相手の立場に関係なく使えます。目上の人以外にはこちらを使いましょう。
- 不興を買う(ふきょうをかう):目上の人の機嫌をそこねること。「逆鱗に触れる」より、怒りの程度が軽い言い方です。
- 虎の尾を踏む:ひじょうに危険なことをすること。こわい相手を怒らせかねない、という点で近い言葉です。
- 怒髪天を衝く(どはつてんをつく):髪の毛がさか立つほど激しく怒る様子。怒った人の様子を言う言葉なので、「逆鱗に触れる」(怒らせること)とは使い方が少しちがいます。
反対の言葉
- 機嫌をとる:相手の気に入るようにふるまうこと。
- 歓心を買う(かんしんをかう):相手に気に入られようとして、喜ばれることをすること。
- 気に入られる・覚えがめでたい:目上の人から好意を持たれること。
「逆鱗に触れる」のよくあるまちがい
- 同じ立場の人や目下の人に使う:「友だちの逆鱗に触れた」「後輩の逆鱗に触れた」は、本来の使い方ではありません。もとは「人主(君主)にも逆鱗がある」という話なので、目上の人を激しく怒らせたときに使います。
- 「ぎゃくりん」と読む:正しくは「げきりん」。「逆」を「げき」と読むのは、この言葉の大事なポイントです。字の形は「逆」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
- 「逆鱗に障る(さわる)」と言う:決まった言い方は「逆鱗に触れる」です。「触」の字は「触」の読み方・書き順・部首へ。「障る」は「気に障る(不快になる)」の言い方で、別の言葉です。
- 「怒る」の意味で使う:「社長が逆鱗に触れた」は、「社長が怒った」の意味にはなりません。逆鱗に触れるのは怒らせる側です。怒った人について言うなら「社長の逆鱗に触れた(だれかが社長を怒らせた)」です。
- 「鱗」を「隣」「燐」と書く:「鱗(うろこ)」はうおへんの字です。となりの「隣」(こざとへん)、「燐」(ひへん)とまちがえないようにしましょう。「竜」の字は「竜」の読み方・書き順・部首で確かめられます。
うかるくん
友だちが本気で怒ったとき、「逆鱗に触れた!」って言っちゃってました…。
ミスターT先生
ふだんの会話で、冗談めかして使う人もいるけれど、テストや作文では「目上の人」と覚えておこう。原文は「人主も亦逆鱗有り」。竜=王さまのたとえだから、上の立場の人に使う。友だちなら「友だちを怒らせた」「友だちの怒りを買った」でいいんだよ。
入試ではこう出る
「逆鱗に触れる」は、中学受験から大学受験まで、意味と使い方を中心に出てきます。
- 中学受験・高校受験:慣用句・故事成語の意味を選ぶ問題、「げきりん」の読みを答える問題、使い方の正しい文を選ぶ問題(同じ立場や目下の人に使っている文がまちがい、というパターン)がよく問われます。
- 高校受験:漢文の入門として「人主亦有逆鱗」の書き下しや、「人主」が何を指すかを答える問題。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
- 大学受験:『韓非子』説難の本文として、「竜」が何のたとえか、「則幾矣」の意味、「若〜則…」の仮定の訳を問う問題。法家の思想(韓非)の文学史の知識と合わせて問われることもあります。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

サクラちゃん
「竜は何のたとえか」と聞かれたら、「君主(王)」。「逆鱗」は「君主が最も触れられたくないこと(怒りをまねく点)」と答えればいいですね!
練習問題
やさしい
- 「逆鱗に触れる」の読み方をひらがなで書き、意味として正しいものを選びましょう。
ア 目上の人をひどく怒らせる イ 竜をかわいがる ウ 自分が激しく怒る エ 目下の人をしかる答えと解説を見る
げきりんにふれる、ア。目上の人を激しく怒らせることです。ウは「怒髪天を衝く」のような、怒った人の様子です。 - 次のうち、「逆鱗に触れる」の使い方が正しいものを選びましょう。
ア 弟の逆鱗に触れた イ 部長の逆鱗に触れた ウ 後輩の逆鱗に触れた答えと解説を見る
イ。「逆鱗に触れる」は目上の人を怒らせたときに使います。弟や後輩(目下)には使いません。
ふつう
- 「人主亦有逆鱗」を書き下し文に直し、「人主」の意味を答えましょう。
答えと解説を見る
人主も亦逆鱗有り。「人主」は君主・王のことです。 - 『韓非子』説難で、竜の逆鱗のたとえは何を教えるために使われていますか。
答えと解説を見る
王(君主)に意見を説くときは、王がいちばん触れられたくない所(逆鱗)に触れないようにすれば、説得はほぼうまくいくということを教えるためです。
むずかしい
- 「若人有嬰之者、則必殺人」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
答えと解説を見る
書き下し文:若し人之に嬰るる者有らば、則ち必ず人を殺す。現代語訳:もし人でそれ(逆鱗)に触れる者がいれば、(竜は)必ずその人を殺す。「若し〜ば、則ち…」は仮定の句法です。 - 説難で、逆鱗のたとえの前に置かれた弥子瑕の話は、どんなことを示していますか。
答えと解説を見る
同じ行いでも、王に愛されているときはほめられ、王の気持ちがさめると罪にされるということです。説く者は、相手の心(好き嫌い)を知らなければならない、という説難の考えを示しています。
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よくある質問
逆鱗に触れるの意味を簡単に言うと何ですか?
目上の人をひどく怒らせてしまうことです。王・上司・先生・親など、自分より上の立場の人のいちばん触れてほしくない所に触れて、激しく怒らせるときに使います。
逆鱗とは何ですか?
竜ののどの下に1枚だけ逆さに生えているといううろこのことです。『韓非子』では、さしわたし一尺ほどで、これに触れた者は竜に必ず殺される、と書かれています。
逆鱗に触れるの出典は何ですか?
中国の戦国時代の思想家・韓非の考えをまとめた『韓非子』の説難という篇です。王を説得することのむずかしさを説いた文章の最後に、竜の逆鱗のたとえが出てきます。
逆鱗に触れるは友だちや後輩に使ってもいいですか?
本来の使い方ではありません。もとは「人主(君主)にも逆鱗がある」というたとえなので、目上の人をひどく怒らせたときに使います。同じ立場や目下の人には「怒らせる」「怒りを買う」を使いましょう。
逆鱗の読み方は何ですか?
「げきりん」です。「逆」をふだんの「ぎゃく」ではなく「げき」と読みます。「逆鱗に触れる」で「げきりんにふれる」です。
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出典・参考
- 原文:『韓非子』説難(維基文庫の本文で確認。原文の「龍」「蟲」「徑」は、ここでは「竜」「虫」「径」で表示)
- 韓非の人物・説難の引用:『史記』老子韓非列伝
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(代表的な読み方をもとにした一例)
- 写真:メトロポリタン美術館(Open Access、パブリックドメイン)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



