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助長じょちょう
ひとことで言うと
助けようとして、かえって悪くすること。今は「よくない傾向を強めること」の意味で多く使う。苗を早く伸ばそうと引っぱって枯らした宋の人の話から。
| 読み方 | じょちょう |
|---|---|
| 意味 | ①(もとの意味)成長を助けようとして、よけいな力を加え、かえって害すること。②(今の意味)ある傾向をいっそう強めること。多くはよくない傾向に使う。 |
| 出典 | 『孟子』公孫丑上(「心に忘るること勿かれ、助けて長ぜしむること勿かれ」) |
| お話 | 宋の人が、苗が伸びないのを心配して一本ずつ引っぱり、「苗を助けて伸ばしてやった」と言ったが、息子が見に行くと苗は枯れていた |
| 似た言葉 | 角を矯めて牛を殺す・ひいきの引き倒し・過ぎたるは猶及ばざるが如し |
| 反対の言葉 | (今の意味の反対)抑制・歯止めをかける |
| 漢文の句法 | 禁止(勿)・累加(非徒)・置き字(而・矣) |
このページのポイント
- 「助長」のもとの意味は助けようとして、かえって悪くすること。今はよくない傾向を強める意味で多く使います
- 出典は『孟子』。苗を引っぱって枯らした宋の人の話を、4こまのイラストで読めます
- 「成長を助ける」というよい意味で使うのは、もとの意味から外れるとされることがあるので注意しましょう
「助長」の意味と読み方
「助長」はじょちょうと読みます。もとの意味は「成長を助けようとして、よけいな力を加え、かえって悪くしてしまうこと」です。今は、「ある傾向をいっそう強めること」という意味でよく使い、「差別を助長する」「むだづかいを助長する」のように、よくない傾向に使うことが多い言葉です。
字を見ると「助ける」+「長ずる(伸びる)」で、「伸びるのを助ける」と読めます。ところが、もとになった話は苗を引っぱって枯らしてしまった農夫の失敗談。中国の思想家・孟子(もうし)の言葉を集めた『孟子』にある話です。
うかるくん
「成長を助ける」なら、いいことなんじゃないですか? なんで悪い意味なんだろう。
ミスターT先生
そこがこの言葉のおもしろいところだ。もとの話では、助けたつもりが、じつは苗を枯らしていたんだよ。だから「助長」には、ただ助けるのではなく、よけいなことをして悪くするという意味がこめられているんだ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○心ないうわさ話が、いじめを助長した。
- ○何でも買ってあげることが、子どものわがままを助長する。
- ○手を出しすぎて、かえって苗の成長をさまたげる――これが本来の助長だ。
絵で読む「助長」のお話
まずは話の流れを、4つの場面で見てみましょう。登場するのは、宋(そう)の国の農夫と、その息子です。早く大きくしたい、という気持ちが強すぎたために、大失敗をしてしまう話です。
絵で読む「助長」のお話(4こま)
農夫は、苗のためを思って引っぱりました。悪気はまったくなかったのです。けれども植物は、根から水や養分を吸って、自分の力で少しずつ伸びていきます。上から引っぱれば、背が高くなったように見えても、根が土から浮いて、水が吸えなくなってしまいます。

ミスターT先生
この話で大事なのは、農夫が「助けた」と思いこんでいたことだ。自分ではよいことをしたつもりなのに、結果は正反対。勉強でも、あせって無理をしすぎると、かえって力がつかないことがあるね。
宋は、今の中国の河南省のあたりにあった国です。昔の中国の本では、「株を守る」の農夫も宋の人で、宋の人は少しまのぬけた話の主人公にされることがよくありました。
「助長」の原文・書き下し文・現代語訳
中学・高校の教科書や問題集では、次の形で読むことが多いです(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:苗を引っぱる宋の人
書き下し文宋人に其の苗の長ぜざるを閔へて之を揠く者有り。
(『孟子』公孫丑上(教科書で多い形))
現代語訳宋の国の人で、自分の苗が伸びないのを心配して、苗を引っぱった者がいた。
2文目:家で得意そうに話す
書き下し文芒芒然として帰り、其の人に謂ひて曰はく、「今日病れたり。予苗を助けて長ぜしめたり。」
(『孟子』公孫丑上(教科書で多い形))
現代語訳つかれきったようすで帰って来て、家の人に言うには、「今日はつかれた。わたしは苗を助けて伸ばしてやったよ。」
3文目:苗は枯れていた
書き下し文其の子趨りて往きて之を視れば、苗則ち槁れたり。
(『孟子』公孫丑上(教科書で多い形))
現代語訳その息子が走って行って苗を見ると、苗はすっかり枯れていた。
4文目:孟子のまとめ(世の中の人も同じ)
書き下し文天下の苗を助けて長ぜしめざる者寡なし。
(『孟子』公孫丑上(教科書で多い形))
現代語訳世の中で、苗を助けて伸ばそうとしない者は少ない(=多くの人が、この農夫と同じことをしている)。
5文目:「益が無いうえに、害がある」
書き下し文徒だに益無きのみに非ず、又之を害す。
(『孟子』公孫丑上(教科書で多い形))
現代語訳ただ役に立たないだけではない。そのうえ、苗をだめにしてしまうのだ。
話の前の一文:孟子の教え
書き下し文心に忘るること勿かれ、助けて長ぜしむること勿かれ。
(『孟子』公孫丑上)
現代語訳心にかけることを忘れてはいけないが、助けて無理に伸ばそうとしてもいけない。
原典(『孟子』公孫丑上)の本文では
維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる『孟子』公孫丑上の本文は、教科書の形とほぼ同じです。ただ、話の前後に孟子の言葉があり、それを読むと話の意味がよく分かります。
- 話の前:「必ず事とする有りて正(あらかじ)めすること勿かれ。心に忘るること勿かれ、助けて長ぜしむること勿かれ。宋人の然るがごとくする無かれ」。「助長」の2字は、すでに孟子の教えの中に出てきます。「正」の読み方・意味には古くから諸説あります。
- 話のあと:「以て益無しと為して之を舎(す)つる者は、苗を耘(くさぎ)らざる者なり。之を助けて長ぜしむる者は、苗を揠く者なり」。放っておく人も、引っぱる人も、どちらもよくないと言っています。
サクラちゃん
孟子は、なんで苗の話なんかしたんですか? 農業の先生じゃないですよね。
ミスターT先生
いい質問だ。この話は、弟子の公孫丑(こうそんちゅう)に「浩然の気(こうぜんのき)」の育て方を説明する場面に出てくるんだ。浩然の気は、正しい行いを積み重ねて生まれる、何にもおそれない大きな心のこと。心も苗と同じで、無理に引っぱっても育たない、と言いたかったんだね。
出典『孟子』と話の背景
「助長」の出典は『孟子』です。中国の戦国時代の思想家・孟子(孟軻)の言葉や、王たちとの問答をまとめた本で、『論語』『大学』『中庸』とともに「四書」の一つに数えられます。孟子は孔子の教えを受けつぐ儒家の思想家で、人はもともと善い心をもっているという「性善説」で知られています。儒家と法家などのちがいは諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。

孟子は、たとえ話がとても上手な人でした。戦で逃げた兵が「50歩逃げた者が100歩逃げた者を笑う」という「五十歩百歩」も、孟子が王に話したたとえです。どちらも、身近な場面を使って、相手に自分のことを考えさせる話し方になっています。
「浩然の気」と「助長」
「助長」の話が出てくる公孫丑上の章は、「浩然の気」という言葉が生まれた有名な章です。弟子の公孫丑に「先生の得意なことは何ですか」と聞かれた孟子は、「わたしは言葉を知り、わたしはよく浩然の気を養う」と答えます。
浩然の気は、正しいことを積み重ねて自然に生まれるもので、一度よいことをしたからといって急に身につくものではありません。だから孟子は、「いつも心にかけて忘れないこと」と「無理に早く育てようとしないこと」の両方が大切だと言い、そのたとえとして苗を引っぱった宋の人の話をしたのです。
この話からは、勉強やスポーツにも通じる教えが読みとれます。毎日少しずつ続けることを忘れず、それでいて、あせって無理なつめこみをしない。「助長」は、失敗の言葉であると同時に、育て方のコツを教えてくれる言葉でもあるのです。
「助長」の使い方と例文・似た言葉
今の「助長」は、「〜を助長する」の形で、ある傾向や動きをいっそう強めるときに使います。新聞やニュース、評論文では、よくない傾向について使うのがふつうです。
- ○SNSの書きこみが、差別を助長するおそれがある。
- ○甘やかしすぎは、子どもの依存心を助長する。
- ○政府の発表のおくれが、人々の不安を助長した。
- ○手を貸しすぎて、かえって本人の力をうばうのは、まさに「助長」だ。(もとの意味)
- ×先生のていねいな指導が、わたしの学力の成長を助長してくれた。(よい意味で使うと、もとの意味とずれて誤解されやすい。「のばしてくれた」と言いかえる)
国語辞典の中には、「成長・発展を助ける」というよい意味をのせているものもあります。ただし、もとの話の「よけいな手出しで悪くする」という意味から外れた使い方だとされることがあるため、作文や面接では、よい意味では使わないほうが安全です。
似た言葉(もとの意味に近いもの)
- 角を矯めて牛を殺す(つのをためてうしをころす):小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまうこと。
- ひいきの引き倒し:ひいきしすぎて、かえってその人を不利にしてしまうこと。
- 過ぎたるは猶及ばざるが如し:やりすぎは、足りないのと同じようによくない、という『論語』の言葉。
- 小さな親切、大きなお世話:親切のつもりが、相手にとっては迷惑になること。
反対の言葉(今の意味の反対)
- 抑制(よくせい):勢いや動きをおさえること。「物価の上昇を抑制する」。
- 歯止めをかける・食い止める:よくない動きがそれ以上進まないようにすること。
「助長」のよくあるまちがい
- 「成長を助ける」というよい意味だと思いこむ:字の形から、よい意味だと思う人がとても多い言葉です。もとは「よけいな助けで、かえって悪くする」、今は「よくない傾向を強める」が中心です。
- 「じょうちょう」と読む:正しくは「じょちょう」。「冗長(じょうちょう)」は「話や文章がむだに長いこと」で、別の言葉です。字は「助」の読み方・書き順・部首・「長」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
- 苗を「抜いた」話だと思う:農夫は苗を抜き取ったのではなく、伸ばそうとして上へ引っぱったのです。その結果、根がいたんで枯れてしまいました。
- 「病矣」を「病気になった」と訳す:漢文の「病(つか)る」は「つかれる」の意味。「今日病れたり」は「今日はつかれた」です。
- 「其人」を「その人(他人)」と訳す:ここでの「其の人」は家の人(家族)のことです。
うかるくん
じゃあ「助長」って、ほめるときには使えないんですね。作文で書いちゃいそうでした…。
ミスターT先生
そう、「助長する」の前には、たいてい「よくないこと」が来ると覚えておくといい。「差別を助長」「不安を助長」。よいことを言いたいときは「のばす」「うながす」「後おしする」を使おう。
入試ではこう出る
「助長」は、中学受験から大学受験まで、それぞれ形を変えて出てきます。
- 中学受験:故事成語の意味を選ぶ問題で、「成長を助けること」というひっかけの選択肢が入ることがよくあります。「じょちょう」を漢字で書く問題や、評論文の中の「〜を助長する」の意味を問う問題も出ます。
- 高校受験:漢文の入門として、「宋人」が何をしたか・苗が枯れた理由・「助長」のもとになった3字を書き抜く問題などが出ることがあります。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
- 大学受験:『孟子』の浩然の気の章の一部として、「非徒〜而又〜」の累加、「勿〜」の禁止、孟子が苗の話で何を言いたかったかを説明させる問題が考えられます。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

サクラちゃん
意味の問題では「成長を助けること」という選択肢にひっかからないようにしないと! もとは「よけいな助けで、かえって悪くすること」ですね。
練習問題
やさしい
- 「助長」のもとの意味として正しいものを選びましょう。
ア 成長を助けて、うまく育てること イ 助けようとしてよけいなことをし、かえって悪くすること ウ 人に助けを求めること エ 長い間助け合うこと答えと解説を見る
イ。苗を引っぱって枯らした宋の人の話から、よけいな手出しでかえって害することを言います。アは、字の形からくるまちがいです。 - 宋の人は、苗に何をしましたか。また、苗はどうなりましたか。
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苗が伸びないのを心配して、苗を一本ずつ上へ引っぱった。その結果、苗は枯れてしまった。
ふつう
- 「其子趨而往視之、苗則槁矣。」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
其の子趨りて往きて之を視れば、苗則ち槁れたり。「而」と「矣」は読まない置き字です。 - 「差別を助長する」の「助長」は、どういう意味で使われていますか。
答えと解説を見る
(差別という)よくない傾向を、いっそう強めるという意味です。今の「助長」は、このようによくない傾向に使うことが多い言葉です。
むずかしい
- 「非徒無益、而又害之」は何という句法ですか。句法の名前と現代語訳を答えましょう。
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累加(徒だに〜のみに非ず=ただ〜だけでなく)。訳は「ただ役に立たないだけでなく、そのうえ苗をだめにしてしまう」。 - 孟子は、宋の人の話を何を説明するために持ち出しましたか。
答えと解説を見る
浩然の気の育て方です。浩然の気は、いつも心にかけて忘れないようにしながらも、無理に早く育てようとしてはいけない、ということを、苗を引っぱって枯らした宋の人にたとえて説明しました。
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よくある質問
助長の意味を簡単に言うと何ですか?
もとの意味は、成長を助けようとして、よけいな力を加え、かえって悪くしてしまうことです。今は「差別を助長する」のように、ある傾向(多くはよくない傾向)をいっそう強めるという意味でよく使います。
助長の由来となった話はどんな話ですか?
『孟子』公孫丑上にある話です。宋の国の人が、苗が伸びないのを心配して一本ずつ引っぱり、家に帰って「苗を助けて伸ばしてやった」と言いました。息子が畑へ見に行くと、苗はすっかり枯れていました。
助長を「成長を助ける」というよい意味で使ってもいいですか?
よい意味をのせている辞書もありますが、もとの話の「よけいな手出しで悪くする」という意味から外れた使い方だとされることがあります。作文などでは「のばす」「うながす」と言いかえるほうが安全です。
助長の書き下し文はどう読みますか?
もとになった部分「予助苗長矣」は「予苗を助けて長ぜしめたり」と読みます。孟子の教えの部分「勿助長也」は「助けて長ぜしむること勿かれ」と読みます。
助長の似た言葉・反対の言葉は何ですか?
もとの意味に似た言葉は、角を矯めて牛を殺す・ひいきの引き倒し・過ぎたるは猶及ばざるが如しなど。今の意味の反対の言葉は、抑制・歯止めをかけるなどです。
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出典・参考
- 原文:『孟子』公孫丑上(維基文庫の本文で確認。教科書で多い形は、読みやすいように字や句読点を整えたもの)
- 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(教科書で多い読み方をもとにした一例)
- 絵:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
- お話の絵・図:合格大作戦
最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



