鶏口牛後(けいこうぎゅうご)の意味と由来|史記・戦国策の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

鶏口牛後(けいこうぎゅうご)の意味と由来|史記・戦国策の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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鶏口牛後けいこうぎゅうご

ひとことで言うと

大きな集団の後ろにつくより、小さな集団でもその長になるほうがよいということ。戦国時代の蘇秦が、秦に仕えようとする韓の王を「牛のしりになるな」と説いた話から。

読み方けいこうぎゅうご
意味大きな集団の後ろについて人に従うより、小さな集団でもその長(かしら)になるほうがよいということ。
もとの形寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ(寧為雞口、無為牛後)
出典『史記』蘇秦列伝・『戦国策』韓策
お話戦国時代、遊説家の蘇秦が韓の王に「秦に仕えるのは牛のしりになるのと同じ」と説き、6か国の合従に加わらせた
似た言葉鯛の尾より鰯の頭
反対の言葉寄らば大樹の陰・鰯の頭より鯛の尾・長い物には巻かれろ
漢文の句法選択(寧ろ〜無かれ)・反語(何ぞ〜んや)・逆接(雖も)

このページのポイント

  • 「鶏口牛後」は大きな集団のしりより、小さな集団の頭になれという意味。にわとりの口と牛のしりのたとえです
  • 出典は『史記』『戦国策』。蘇秦が韓の王を「合従」に加わらせた話を、4こまのイラストで読めます
  • 原文の「寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ」は、選択の句法の代表例。もとの字を「鶏尸・牛従」とする説もあります

「鶏口牛後」の意味と読み方

「鶏口牛後」はけいこうぎゅうごと読みます。意味は「大きな集団の後ろについて人に従うより、小さな集団でもその長(リーダー)になるほうがよい」ということです。

「鶏口(けいこう)」はにわとりの口、つまり小さな生き物の頭の部分です。「牛後(ぎゅうご)」は牛のしり、大きな生き物の後ろの部分です。小さくても先頭に立つか、大きくてもしっぽについて行くかを、にわとりと牛でくらべた言葉です。もとの形は「寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ(むしろけいこうとなるも、ぎゅうごとなるなかれ)」という漢文で、「鶏口となるも牛後となるなかれ」とも言います。

「鶏口」と「牛後」のちがい鶏口(けいこう)小さな集団の頭牛後(ぎゅうご)大きな集団のしり大きな集団のしりにつくより小さくても頭になるほうがよい
「鶏口」は小さな集団の頭、「牛後」は大きな集団のしり。どちらを選ぶかという言葉です
うかるくん

うかるくん

「鶏口牛後」って、にわとりと牛が出てくるんですね。なんで動物なんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

もとは中国の昔のことわざなんだ。戦国時代の遊説家・蘇秦(そしん)が、韓という国の王を説得するときに、このことわざを使った。その話が『史記』と『戦国策』にのっているよ。小さなにわとりでも口(頭)なら自分で決められるけど、大きな牛でもしりは前の頭について行くしかない。だれにでも分かるたとえだね。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○大企業で働くより、鶏口牛後で小さな会社を自分で起こしたい。
  • ○強豪校の補欠より、鶏口牛後の気持ちで、試合に出られる学校を選んだ。
  • ○「鶏口となるも牛後となるなかれ」と言うように、小さくても自分が中心になれる道を選ぶ。

この言葉は、大きい集団がだめだと言っているのではありません。大きい集団の中で人に従うだけの立場と、小さい集団で自分が責任を持つ立場をくらべて、「あとのほうがよい」とすすめる言葉です。だから「自分で決めたい」「先頭に立ちたい」という気持ちを表すときに使います。

赤いとさかの雄鶏と雌鶏、ひよこが、青い露草の花の前に描かれた木版画
葛飾北斎がにわとりの親子を描いたうちわの絵(団扇絵)。「鶏口」は、こうした小さな鳥の「口」、つまり頭の部分のことです。画像:葛飾北斎「Rooster, Hen and Chicken with Spiderwort(雄鶏・雌鶏・ひよこと露草)」1832年ごろ、メトロポリタン美術館蔵(Open Access・パブリックドメイン)

絵で読む「鶏口牛後」のお話

まずは話の流れを、4つの場面で見てみましょう。登場するのは、遊説家の蘇秦と、韓(かん)の王です。『戦国策』では「韓王」とだけ書かれ、『史記』では「韓の宣王」となっています。この王は「宣恵王(せんけいおう)」とも呼ばれる人です。

絵で読む「鶏口牛後」のお話(4こま)

1蘇秦が韓の王をたずねる天下の強い弓はみな韓から出ます韓の王蘇秦
1西の秦がどんどん強くなっていた戦国時代。遊説家の蘇秦が韓の王をたずね、「天下の強い弓は、みな韓から出ます」と、韓の強さをほめます。
2にわとりの口と牛のしり寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ鶏口=小さくても頭牛後=大きくても後ろ
2蘇秦はたとえを出します。「ことわざに、寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ(小さなにわとりの口になっても、大きな牛のしりにはなるな)とあります」。
3韓の王が怒るわたしは秦には仕えぬ!韓の王蘇秦
3「秦に仕えるのは、牛のしりになるのと同じです」。韓の王は顔色を変え、腕をまくり、剣に手をかけて「秦には仕えぬ!」と天をあおぎました。
46か国が手を結ぶ燕趙韓魏斉楚秦合従=6か国で秦に対抗
4韓は蘇秦の「合従」に加わります。燕・趙・韓・魏・斉・楚の6か国が手を結び、西の秦に向き合うことになりました。

蘇秦は、まず韓をほめてから、「それなのに秦に仕えるのは、もったいない」という方向へ話を運びます。最後に「牛のしり」という、少しはずかしいたとえを持ち出して、王のほこりに火をつけたのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

この話のポイントは、ことわざそのものより、蘇秦の話し方だ。まずほめる、次に分かりやすいたとえを出す、最後に「このままでははずかしいですよ」と気持ちを動かす。蘇秦は、こういう話で国を動かす人(遊説家)だったんだね。

戦国時代(紀元前5世紀〜紀元前3世紀)の中国には、「戦国七雄」と呼ばれる7つの大きな国がありました。西の秦と、東の燕・趙・韓・魏・斉・楚です。秦がどんどん強くなると、ほかの6か国は「秦と戦うか、秦に従うか」を選ばなければなりませんでした。韓は秦のすぐ東にある、7か国の中では小さな国でした。

「鶏口牛後」の原文・書き下し文・現代語訳

ここでは『史記』蘇秦列伝の本文で読みます(原文の「雞」は「鶏」の古い形の字で、ここでは「鶏」で表示します)。書き下し文は代表的な読み方の一例です。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。

白文(『史記』蘇秦列伝より。句読点を補ったもの)臣聞鄙諺曰、「寧為雞口、無為牛後。」今西面交臂而臣事秦、何異於牛後乎。夫以大王之賢、挾彊韓之兵、而有牛後之名、臣竊為大王羞之。於是韓王勃然作色、攘臂瞋目、按劍仰天太息曰、「寡人雖不肖、必不能事秦。」

1文目:ことわざを持ち出す

書き下し文臣しん聞きく鄙ひ諺げんに曰いはく、「寧むしろ鶏けい口こうと為なるも、牛ぎゅう後ごと為なる無なかれ。」

(『史記』蘇秦列伝(原文は「雞」))

現代語訳わたしは、いなかのことわざに「むしろにわとりの口になっても、牛のしりにはなるな」とあると聞いています。

ここがポイント「臣(しん)」は、家来が王に話すときの「わたくし」。「鄙諺(ひげん)」は、いなかの人が言うことわざ。「寧ろAと為るも、Bと為る無かれ」は、AとBをくらべて「Aのほうがよい」と選ぶ選択の句法(寧ろ〜とも、〜無かれ)です。

2文目:秦に仕えるのは牛のしりと同じ

書き下し文今いま西せい面めんし臂ひぢを交まじへて秦に臣事しんじせば、何なんぞ牛ぎゅう後ごに異ことならんや。

(『史記』蘇秦列伝)

現代語訳今、西を向いて両手を胸の前で組み、家来として秦に仕えるならば、牛のしりと何がちがうでしょうか(何もちがいません)。

ここがポイント「西面(せいめん)」は、東の韓から見て西にある秦の方を向くこと。「臂(ひじ)を交ふ」は、両手を組んでかしこまる、家来の姿勢です。「何ぞ〜ん(や)」は、「どうして〜だろうか、いや〜ではない」と強く言う反語の句法。「而」と「於」は読まない置き字で、「於」の働きは「於」の読み方と働きへ。

3文目:王のためにはずかしく思う

書き下し文夫それ大だい王の賢を以もつて、彊きやう韓の兵を挾さしはさみて、牛ぎゅう後ごの名有るは、臣しん竊ひそかに大だい王の為ために之これを羞はづ。

(『史記』蘇秦列伝)

現代語訳そもそも、大王ほどのかしこさで、強い韓の兵を持ちながら、「牛のしり」という呼び名を受けるのは、わたくしはひそかに大王のためにはずかしく思います。

ここがポイント「以(もつ)て」は「〜で」、「為(ため)に」は「〜のために」。どちらも上下に返って読む字です。「為」は「なる」「なす」「ために」など読み方が多いので、「為」の読み方(ため・なる・なす・たり)でまとめて覚えましょう。「之(これ)」は、ここでは「牛後の名を受けること」を指します。

4文目:韓の王の答え

書き下し文寡くわ人じん不肖ふせうなりと雖いへども、必かならず秦に事つかふる能あたはず。

(『史記』蘇秦列伝)

現代語訳わたしはおろか者ではあるが、決して秦に仕えることはできない。

ここがポイント「寡人(かじん)」は、王が自分をへりくだって言う「わたし」。「〜と雖(いえど)も」は「たとえ〜でも」の逆接の句法です。「不能〜(〜能はず)」は「〜できない」。レ点が3つ続くので、下から「秦に→事ふる→能は→ず」と順に返ります。
「鶏口牛後」の原文で覚える句法4つ寧A無B寧ろAと為るも、Bと為る無かれAのほうがBよりよい選択何異〜乎何ぞ〜に異ならんや〜と何も変わらない反語雖〜〜と雖もたとえ〜でも逆接不能〜〜能はず〜できない不可能
「鶏口牛後」の話の原文で覚えたい句法は4つ。選択・反語・逆接・不可能が1つの話で練習できます

『戦国策』韓策の本文では

同じ話は『戦国策』の韓策(韓の国の巻)にも、「蘇秦、楚の為に合従して韓王に説く」という題でのっています。維基文庫(中国語のウィキソース)の本文とくらべると、次のようなちがいがあります。

  • 「鄙諺」が「鄙語」:どちらも「いなかのことわざ」という意味です。ことわざの文「寧為雞口、無為牛後」は同じです。
  • 「何異於牛後乎」が「何以異於牛後乎」:「何を以て牛後に異ならんや」(何によって牛のしりとちがうと言えようか)と、少し言い方がちがいます。
  • 王の答え:『史記』は「寡人不肖なりと雖も」、『戦国策』は「寡人死すと雖も、必ず秦に事ふる能はず」(たとえ死んでも秦には仕えない)です。『戦国策』のほうが、王の怒りがいっそう強く書かれています。
サクラちゃん

サクラちゃん

「鶏口牛後」って4字の言葉は、原文にそのまま出てくるんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

いい質問だ。原文は「寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ」ということわざの文で、「鶏口牛後」の4字は出てこない。大事なところの4字を取り出して、四字熟語のように使うようになったんだ。いつごろから4字の形で言うようになったかは、はっきりした資料が見つからなかったよ。

出典『史記』『戦国策』と話の背景

「鶏口牛後」の出典は、前漢の司馬遷(しばせん)が書いた歴史書『史記』の「蘇秦列伝」と、戦国時代の遊説家たちの話を集めた『戦国策』の「韓策」です。『戦国策』は、前漢の劉向(りゅうきょう)がまとめた本として知られています。どちらの本でも、蘇秦が韓の王を説得する場面で、このことわざが使われています。

蘇秦はどんな人?

『史記』によると、蘇秦は東周の洛陽の人で、鬼谷先生(きこくせんせい)に学んだとされます。はじめは各地をまわっても認められず、家族にまで笑われましたが、くじけずに書物を読み続けたと伝えられます。やがて、強い秦に対抗するため、東の6か国をたてに結ぶという策を考え、燕・趙・韓・魏・斉・楚の王を次々に説得しました。これを「合従(がっしょう)」と言います。『史記』では、蘇秦は合従の約束のまとめ役となり、6か国の宰相を兼ねたと書かれています。

蘇秦の「合従」と張儀の「連衡」合従(がっしょう)燕趙韓魏斉楚秦6か国が力を合わせる連衡(れんこう)燕趙韓魏斉楚秦それぞれが秦と結ぶ秦に仕える=「牛後」だ、と蘇秦は説いた
蘇秦の「合従」は6か国でまとまって秦に対抗する策。張儀の「連衡」は、各国が秦と結ぶ策です

これに対して、同じく鬼谷先生に学んだとされる張儀(ちょうぎ)は、6か国をそれぞれ秦と横に結ばせる「連衡(れんこう)」を説きました。この2つを合わせた言葉が、四字熟語の合従連衡(がっしょうれんこう)です。今では「その時々の利益のために、いくつかの集団が手を組んだりはなれたりすること」という意味で、会社や政党の動きなどを言うときに使われます。

韓の王にとって、秦に仕えることは、大きな国の後ろについて行くだけの「牛のしり」になることでした。いっぽう、合従に加われば、小さくても自分の国のことを自分で決める「にわとりの口」でいられます。蘇秦は、この2つの道をことわざ一つでくらべて見せたのです。

話のあと、どうなった?

合従はしばらくの間、秦を東へ出にくくしたとされます。しかし、6か国はそれぞれ自分の国の利益を考えていたので、まとまりは長く続きませんでした。蘇秦はのちに斉の国で殺されたと『史記』は伝えています。最後には、紀元前221年に秦の始皇帝が6か国をすべてほろぼし、中国を統一しました。

なお、蘇秦や張儀の話は、『史記』と、のちに見つかった資料とで、年代や順番が合わないところがあるとする研究もあります。ここで紹介した話は、『史記』や『戦国策』に書かれているとおりの話として読んでください。同じ戦国時代の話には、孟嘗君の「鶏鳴狗盗」や、燕の昭王と郭隗の「隗より始めよ」などもあります。

「口」と「後」はもとの字?(諸説あり)

「鶏口牛後」の字については、昔から別の説があります。北斉の顔之推(がんしすい)が書いた『顔氏家訓』の書証篇は、後漢の延篤(えんとく)の『戦国策音義』という注釈を引いて、「尸(し)は鶏の中の主、従(じゅう)は牛の子」と説明し、「口は尸、後は従と書くべきで、ふつうの書き写しのまちがいだ」と述べています。この説によると、もとは「寧ろ鶏尸と為るも、牛従と為る無かれ」(にわとりの群れのかしらになっても、牛の子として親について行く者になるな)だったことになります。

もとの字は「口・後」か「尸・従」か今の本文鶏口・牛後口=くち・頭後=しり・後ろ『史記』『戦国策』『顔氏家訓』の説鶏尸・牛従尸=鶏の群れの主従=牛の子延篤『戦国策音義』を引くどちらがもとの形かは諸説あり意味は「小さくても長に」で同じ
「鶏口・牛後」と「鶏尸・牛従」。どちらがもとの形かは、はっきり決められていません

ただし、今伝わっている『史記』や『戦国策』の本文は、どちらも「鶏口」「牛後」です。どちらがもとの形かは諸説あり、はっきりとは決められていません。どちらの形でも「小さな集団のかしらになるほうが、大きな集団で人に従うよりよい」という意味は変わりません。日本の辞書や教科書では「鶏口牛後」の形で覚えれば大丈夫です。

「鶏口牛後」の使い方と例文・似た言葉

「鶏口牛後」は、進路や仕事、チームを選ぶときなどに、「大きなところの下っぱより、小さなところでも中心になりたい」という考えを表すときに使います。「鶏口牛後の精神」「鶏口牛後を選ぶ」のような言い方もします。

  • ○鶏口牛後と考えて、大きな会社をやめて自分の店を開いた。(独立する)
  • ○レギュラーになれる部を選んだのは、鶏口牛後の考えからだ。(自分が中心になれる場所を選ぶ)
  • ○大手の下請けではなく、小さくても自分たちで決められる会社にしたいという、鶏口牛後の思い。
  • ○「鶏口となるも牛後となるなかれ」と言うが、本当に大事なのは、どこでも自分の頭で考えることだ。(もとの形で使う)
  • ×にわとりと牛を飼っているので、うちは鶏口牛後だ。(動物を飼うことではない)
  • ×大きなチームの一員として仲間を支えるのは鶏口牛後だ。(大きな集団に入ることをすすめる意味ではない。むしろ反対)

受験でも「鶏口牛後」はよく話題になります。たとえば「ぎりぎりで難しい学校に入るか、余裕を持って入れる学校で上位をめざすか」という迷いです。どちらがよいかは人によってちがいますが、「鶏口牛後」は小さくても中心になる道を選ぶ考え方を表す言葉です。

鶏口牛後似た言葉鯛の尾より鰯の頭反対の言葉寄らば大樹の陰鰯の頭より鯛の尾長い物には巻かれろ関係が深い合従連衡鶏鳴狗盗
似た言葉・反対の言葉。「寄らば大樹の陰」は、鶏口牛後とちょうど反対の考え方です

似た言葉

  • 鯛の尾より鰯の頭(たいのおよりいわしのかしら):大きな集団のしたっぱより、小さな集団のかしらのほうがよい、という日本のことわざ。鶏口牛後とほぼ同じ意味です。
  • 合従連衡:意味は似ていませんが、同じ蘇秦(と張儀)の話から生まれた四字熟語です。

反対の言葉

  • 寄らば大樹の陰(よらばたいじゅのかげ):たよるなら、力の強い大きなもののほうが安心だ、ということわざ。鶏口牛後と反対の考え方です。
  • 鰯の頭より鯛の尾(いわしのかしらよりたいのお):小さな集団のかしらより、大きな集団の末のほうがよい、ということわざ。「鯛の尾より鰯の頭」を逆にした形です。
  • 長い物には巻かれろ:力の強い人や大きなものには、さからわずに従うほうがよい、ということわざ。

英語では、似た意味のことわざに「Better be the head of a dog than the tail of a lion.」(ライオンのしっぽより犬の頭のほうがよい)があります。国はちがっても、同じような考え方があるのはおもしろいですね。

「鶏口牛後」のよくあるまちがい

  • 「牛後」を「ごご」「うしご」と読む:正しくは「ぎゅうご」。「鶏口」は「けいこう」です。全体で「けいこうぎゅうご」。
  • 「鶏口」を「鶏頭」「鶏首」と書く:「頭」の意味ですが、字は「口」です。また「牛後」を「牛尾」「牛尻」と書くのもまちがいです。
  • 「鶏」を「鳥」や「渓」と書く:「鶏」は「にわとり」の字で、右が「鳥」の形です。字の形は「鶏」の読み方・書き順・部首、「牛」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
  • 大きな集団に入ることをすすめる意味だと思う:反対です。「大きな集団のしりより、小さな集団の頭」です。にわとりの「口」と牛の「後(しり)」の、どちらが前でどちらが後ろかを思いうかべれば、まちがえません。
  • 「牛後」を「牛のあとから来る人」の意味だと思う:「後」は「しり・後ろの部分」です。「牛について行く人」ではなく、牛という大きな体のしっぽのほうのことです。
  • 漢文で「寧ろ」を「なし」「やすらか」と読む:「寧(むし)ろ」は「〜するよりは、いっそ」の意味の選択の字です。「無かれ」と組んで「寧ろAと為るも、Bと為る無かれ」と読みます。
うかるくん

うかるくん

「寧ろ〜とも、〜無かれ」って、どっちがいいほうか、ごちゃごちゃになっちゃいます…。

ミスターT先生

ミスターT先生

「寧ろ」がついているほうが、選ぶほう、「無かれ」がついているほうが、やめておくほうと覚えよう。「寧ろ鶏口と為るも」で鶏口を選び、「牛後と為る無かれ」で牛後をやめる。似た形の「其のAよりは寧ろB」(与其A、寧B=AよりはむしろB)も選択の句法で、こちらは後ろのBを選ぶから気をつけてね。

入試ではこう出る

「鶏口牛後」は、高校入試から大学入試まで、いろいろな形で出てきます。

  • 中学受験・高校受験:四字熟語・故事成語の意味を選ぶ問題、「けいこうぎゅうご」を漢字で書く問題、反対の意味の言葉(寄らば大樹の陰など)を選ぶ問題。
  • 高校受験:漢文の入門として、「寧為鶏口、無為牛後」に返り点をつける・書き下し文に直す問題。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:「寧ろ〜とも、〜無かれ」の選択の句法、「何ぞ〜に異ならんや」の反語の訳、蘇秦の「合従」と張儀の「連衡」の区別。史記の列伝は、長文の漢文としても読まれます。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

蘇秦がなぜ「牛のしり」なんて言ったのかを書く問題は、「秦に仕えることは大きな国に従うだけの立場になることだと、はずかしいたとえで示し、王に合従を決心させるため」とまとめればいいですね!

練習問題

やさしい

  1. 「鶏口牛後」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 大きな集団に入れば安心だ イ 小さな集団でも長になるほうがよい ウ 動物を大切にせよ エ にわとりより牛のほうが強い
    答えと解説を見るイ。大きな集団の後ろについて人に従うより、小さな集団でもその長になるほうがよい、という意味です。アは反対の「寄らば大樹の陰」の考えです。
  2. 「鶏口牛後」の読み方を、ひらがなで書きましょう。
    答えと解説を見るけいこうぎゅうご。「牛後」は「ぎゅうご」と読みます。

ふつう

  1. 「寧為鶏口、無為牛後」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ。「寧ろAと為るも、Bと為る無かれ」は、AのほうをBより選ぶ選択の句法です。
  2. 蘇秦は、韓が何をすることを「牛後」にたとえたのですか。
    答えと解説を見る韓が西の大国・秦に家来として仕えることです。大きな国の後ろについて行くだけの立場を、牛のしりにたとえました。

むずかしい

  1. 「今西面交臂而臣事秦、何異於牛後乎」の「何異於牛後乎」を、句法の名前を答えたうえで現代語訳しましょう。
    答えと解説を見る反語。「(秦に仕えるのは)牛のしりと何がちがうでしょうか、いや、何もちがわない」。
  2. 『顔氏家訓』では、「鶏口牛後」のもとの字についてどんな説を述べていますか。
    答えと解説を見る延篤の『戦国策音義』を引いて、「尸は鶏の中の主、従は牛の子」と説明し、「口」は「尸」、「後」は「従」が正しく、書き写すときのまちがいだという説を述べています。ただし、今の『史記』『戦国策』の本文は「鶏口」「牛後」で、どちらがもとの形かは諸説あります。

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よくある質問

鶏口牛後の意味を簡単に言うと何ですか?

大きな集団の後ろについて人に従うより、小さな集団でもその長になるほうがよい、という意味です。にわとりの口(頭)と牛のしりをくらべたたとえです。

鶏口牛後の由来となった話はどんな話ですか?

中国の戦国時代、遊説家の蘇秦が、強い秦に仕えようとしていた韓の王に「寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ」ということわざを引いて、秦に仕えるのは牛のしりになるのと同じだと説きました。王は怒って秦には仕えないと言い、6か国の合従に加わりました。

鶏口牛後の出典は何ですか?

前漢の司馬遷の『史記』蘇秦列伝と、『戦国策』の韓策です。どちらも蘇秦が韓の王を説得する場面にこのことわざが出てきます。

鶏口牛後の書き下し文はどう読みますか?

もとの文「寧為鶏口、無為牛後」は「寧ろ鶏口と為るも、牛後と為る無かれ」と読みます。「むしろにわとりの口になっても、牛のしりにはなるな」という意味です。

鶏口牛後の反対の言葉は何ですか?

寄らば大樹の陰、鰯の頭より鯛の尾、長い物には巻かれろ、などです。どれも大きくて強いものにたよったり従ったりするほうがよいという考え方です。

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出典・参考

  • 原文:『史記』蘇秦列伝、『戦国策』韓策一「蘇秦為楚合従説韓王」(いずれも維基文庫の本文で確認。原文の「雞」はここでは「鶏」で表示)
  • 「口は尸、後は従」とする説:『顔氏家訓』書証篇(延篤『戦国策音義』を引く。維基文庫の本文で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(代表的な読み方をもとにした一例)
  • 絵:葛飾北斎「Rooster, Hen and Chicken with Spiderwort」(メトロポリタン美術館、Open Access・パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦