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隗より始めよかいよりはじめよ
ひとことで言うと
大きなことは身近なことから、また物事は言い出した人から始めよということ。郭隗が燕の昭王に「人材を集めたいなら、まず隗を大切にせよ」と説いた話から。
| 読み方 | かいよりはじめよ |
|---|---|
| 意味 | ①大きなことをするには、まず身近なこと・手近なことから始めよ。②物事は、言い出した人から始めよ。 |
| 出典 | 『戦国策』燕策一(『史記』燕召公世家にも。死んだ馬の話は『戦国策』だけ) |
| お話 | 人材を集めたい燕の昭王に、郭隗が「死んだ千里の馬の首を五百金で買ったら名馬が三頭集まった」話をし、「まず隗から始めよ」と言った |
| 似た言葉 | 千里の道も一歩から・率先垂範・死馬の骨を買う |
| 関係する人 | 燕の昭王・郭隗・楽毅 |
| 漢文の句法 | 抑揚(且〜況…乎)・反語(安・豈)・受身(見) |
このページのポイント
- 「隗より始めよ」は身近なことから、また言い出した人から始めよということ
- 出典は『戦国策』燕策。死んだ千里の馬の首を五百金で買う話を4こまのイラストで読めます
- 原文の「死馬且買之五百金、況生馬乎」は、入試によく出る抑揚の句法の代表例です
「隗より始めよ」の意味と読み方
「隗より始めよ」はかいよりはじめよと読みます。「隗(かい)」は人の名前で、中国の戦国時代の燕(えん)の国の郭隗(かくかい)のことです。
今の意味は2つあります。1つは「大きなことをするには、まず身近なこと・手近なことから始めよ」。もう1つは「物事は、言い出した人から始めよ」です。もとは、郭隗が燕の昭王に「すぐれた人を集めたいなら、まずわたし郭隗を大切にすることから始めなさい」と言った言葉です。
うかるくん
「わたしから始めよ」って、自分を大事にしろってこと? ちょっとずうずうしくないですか?
ミスターT先生
そう聞こえるよね。でも郭隗には、ちゃんと計算があったんだ。「たいしたことのないわたしでさえ大切にされるなら、わたしより賢い人は、もっと大切にされると思って集まってくる」。その理屈を、死んだ馬の首を五百金で買った話にたとえて説明したんだよ。
ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。
- ○「教室をきれいにしよう」と言い出した学級委員が、隗より始めよで、まず自分の机のまわりから片づけた。(言い出した人から)
- ○大きな目標をかかげる前に、隗より始めよだ。毎朝の早起きから始めよう。(身近なことから)
- ○社長は「隗より始めよ」と言って、自分から残業をやめた。(言い出した人から)
絵で読む「隗より始めよ」のお話
話の流れを、4つの場面で見てみましょう。登場するのは、燕の昭王(しょうおう)と郭隗、そして郭隗の昔話に出てくる王と家来です。2こま目と3こま目は、郭隗が話した「たとえ話」の中の場面です。
絵で読む「隗より始めよ」のお話(4こま)
家来の考えは、「死んだ馬にさえ五百金を出す王だ、といううわさが広まれば、生きた名馬を持っている人は、もっと高く買ってもらえると思って売りに来る」というものでした。郭隗はこのたとえを使って、「わたしを大切にすること」が、人材を集めるいちばんの近道だと説いたのです。

ミスターT先生
この話のポイントは、「うわさ」の力だ。死んだ馬に五百金、たいしたことのない郭隗に宮殿。どちらも、それ自体より「そこまでする王だ」という評判が大事なんだ。

「隗より始めよ」の原文・書き下し文・現代語訳
話は『戦国策』燕策一にあります。少し長いので、大事な所を1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:燕の昭王、賢者を招く
書き下し文燕の昭王、破れたる燕を収めし後、位に即く。身を卑くし幣を厚くして、以て賢者を招く。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳燕の昭王は、(斉に)やぶられた燕の国を立て直してから、王の位についた。自分は身を低くし、贈り物を手厚くして、すぐれた人を招こうとした。
2文目:郭隗の昔話(千里の馬)
書き下し文臣聞く、古の君人に、千金を以て千里の馬を求むる者有り。三年得る能はず。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳わたしはこう聞いております。昔の君主に、千金を出して千里を走る馬を手に入れようとした者がいました。(ところが)三年たっても手に入れることができませんでした。
3文目:死んだ馬の首を五百金で
書き下し文三月にして千里の馬を得たり。馬已に死す。其の首を五百金に買ひ、反りて以て君に報ず。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳(家来が出かけると)三か月で千里の馬を見つけた。ところが馬はもう死んでいた。(家来は)その首を五百金で買い、帰って君主に報告した。
4文目:君主が怒る
書き下し文君大いに怒りて曰はく、「求むる所の者は生馬なり。安んぞ死馬を事として五百金を捐てん。」
(『戦国策』燕策一)
現代語訳君主はたいへん怒って言うには、「求めていたのは生きた馬だ。どうして死んだ馬などのために五百金を捨てたのか。」
5文目:家来の答え
書き下し文涓人対へて曰はく、「死馬すら且つ之を五百金に買ふ、況んや生馬をや。」
(『戦国策』燕策一)
現代語訳家来が答えて言うには、「死んだ馬でさえ五百金で買ったのです。まして生きた馬ならなおさら(高く買ってもらえると、天下の人は思う)でしょう。」
6文目:千里の馬が三頭
書き下し文是に於いて、期年なる能はずして、千里の馬の至る者三あり。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳こうして、一年もたたないうちに、千里の馬が三頭もやって来た。
7文目:まず隗より始めよ
書き下し文今王誠に士を致さんと欲せば、先づ隗より始めよ。
(『戦国策』燕策一(原文は「先從隗始」))
現代語訳いま王が、本当にすぐれた人物を招きたいとお思いなら、まずこの隗から始めてください。
8文目:隗より賢い者なら
書き下し文隗すら且つ事へらる、況んや隗より賢なる者をや。豈に千里を遠しとせんや。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳この隗でさえ大切にされるのです。まして隗よりすぐれた者なら、なおさらでしょう。(そういう人たちが)どうして千里の道を遠いと思うでしょうか(いや、遠いとは思わずにやって来ます)。
9文目:郭隗のための宮殿
書き下し文是に於いて昭王隗の為に宮を築きて之を師とす。
(『戦国策』燕策一)
現代語訳そこで昭王は、郭隗のために宮殿を建てて、彼を先生としてうやまった。
原典(『戦国策』燕策一)の本文では
維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる『戦国策』燕策一の本文と、上の訓読文には、次のようなちがいがあります。
- 旧字体:原典は「從」「於」「築」「爲」などの字で書かれています。上では今の日本の字体にしています。
- 郭隗の前置き:昔話の前に、郭隗は「帝者は師と処(を)り、王者は友と処り、覇者は臣と処る」と、王が人とどうつきあうかで、集まる人の質が変わると説いています。
- 本による字のちがい:同じ本でも、版によって「以」の字があるかないかなど、小さな字のちがいがあることが注に書かれています。
サクラちゃん
「死馬の骨を買う」って聞いたことがあるけど、原文は「首」なんですね。
ミスターT先生
そうなんだ。原文は「其の首を五百金に買ふ」。日本では「死馬の骨を買う」という言い方が広く使われていて、意味は「つまらないものでも大切にして、すぐれたものが集まるのを待つ」こと。原文の字と、日本で広まった言い方がちがう例だね。いつから「骨」と言うようになったかは、はっきりした資料が見つからなかったよ。
出典『戦国策』と話の背景
「隗より始めよ」の出典は『戦国策(せんごくさく)』燕策一です。『戦国策』は、戦国時代に各国をめぐって王に策を説いた人たち(遊説家)の言葉や話を、前漢の劉向(りゅうきょう)がまとめた本です。蛇足・漁夫の利・虎の威を借る狐なども、同じ『戦国策』の話です。
同じ場面は、司馬遷の『史記』燕召公世家にも出てきます。ただし『史記』では、郭隗は「王必ず士を致さんと欲せば、先づ隗より始めよ。況んや隗より賢なる者、豈に千里を遠しとせんや」と言うだけで、死んだ馬の話は出てきません。
燕と斉の争い
昭王が人材を集めたかったのは、となりの大国・斉(せい)への仕返しのためでした。燕は、王の位をめぐる国の乱れにつけこまれ、斉に攻めこまれてやぶれていました。昭王はその直後に位につき、「先王のはじをすすぎたい」と郭隗に相談したのです。
『戦国策』によると、郭隗のために宮殿を建てると、魏から楽毅(がくき)、斉から鄒衍(すうえん)、趙から劇辛(げきしん)がやって来ました。昭王は死者をとむらい、生きている人を見まい、民と苦楽をともにしました。二十八年たって燕は豊かになり、楽毅を上将軍として、秦・楚・三晋(韓・魏・趙)と組んで斉を攻めます。斉の城で落ちなかったのは、莒(きょ)と即墨(そくぼく)だけだった、と書かれています。郭隗の「まず隗から」は、こうして本当に国を動かすことになりました。
「隗より始めよ」の使い方と例文・似た言葉
「隗より始めよ」は、①大きなことは身近なことから、②言い出した人がまず実行する、のどちらかの意味で使います。今は②の意味で使われることも多く、「言い出しっぺから」という気持ちをあらたまって言うときに使われます。
- ○「ごみを減らそう」と提案したからには、隗より始めよで、自分がマイボトルを持ち歩く。(言い出した人から)
- ○国際協力も、隗より始めよ。まずは地域のボランティアから参加してみよう。(身近なことから)
- ○部長は「隗より始めよだ」と、自分から新しいやり方を試した。(言い出した人から)
- ○すぐれた人を集めたいなら、まず今いる人を大切にすることだ。隗より始めよである。(もとの意味に近い使い方)
- ×順番はくじで決めよう。隗より始めよだ。(「最初の人から順番に」という意味ではない)
- ×まず貝より始めよ。(「隗」は人の名前で、「貝」ではない)
似た言葉
- 千里の道も一歩から:大きなことも、手近な一歩から始まる。意味①に近い言葉です。
- 率先垂範(そっせんすいはん):人の先に立って行い、手本を示すこと。意味②に近い言葉です。
- 有言実行(ゆうげんじっこう):言ったことを、きちんと実行すること。
- 死馬の骨を買う:つまらない者でも大切にすれば、すぐれた者が集まってくるということ。同じ話から生まれた言葉です。
反対に近い言葉
- 人任せ・言うだけ:自分は動かず、人にやらせること。意味②の反対です。
「隗より始めよ」のよくあるまちがい
- 「隗」を「塊」「魁」と書く:「隗」は、こざとへんに「鬼」の字で、人の名前(郭隗)です。「始」の字は「始」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
- 「会より」「貝より」と思う:「かい」は人の名前の「隗」。「会議から始めよ」という意味ではありません。
- 「先着順に」「最初の人から」の意味だと思う:順番の話ではなく、「身近なことから」「言い出した人から」という意味です。
- 「死馬の骨」が原文どおりだと思う:原文は「首」です。日本では「死馬の骨を買う」という言い方が広まりました。
- 出典を『史記』だけだと思う:死んだ馬のたとえ話があるのは『戦国策』燕策のほうです。
うかるくん
「死馬且買之五百金、況生馬乎」の訳し方がよく分かりません…。
ミスターT先生
「AすらB、況んやCをや」は「AでさえBだ。ましてCはなおさらだ」と、型どおりに訳せばいい。A=死馬、C=生馬。「死んだ馬でさえ五百金で買う。まして生きた馬ならなおさら高く買う」。後半の省略された部分(なおさら〜)を補えるかが、よく問われるポイントだよ。くわしくは抑揚の句法(況んや〜をや)で練習しよう。
入試ではこう出る
- 中学受験:故事成語の意味を選ぶ問題で、「言い出した人から始めよ」「手近なことから始めよ」の意味が問われます。「隗」が人の名前であることも知っておきましょう。
- 高校受験:漢文の資料として、返り点に従って書き下す問題、郭隗が死んだ馬の話をした理由などが問われます。高校受験の漢文の対策は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
- 大学受験:「死馬且買之五百金、況生馬乎」の抑揚、「安事死馬」「豈遠千里哉」の反語、「見事」の受身の訳が中心です。たとえ話と郭隗の主張の対応を説明させる問題もよく出ます。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

サクラちゃん
郭隗が死んだ馬の話をした理由は、「たいしたことのない自分を大切にすれば、自分より賢い人がもっと大切にされると思って集まってくる」ことを、分かりやすくたとえるため、ですね!
練習問題
やさしい
- 「隗より始めよ」の意味として正しいものを選びましょう。
ア 先に来た人から順番に始めよ イ 物事は言い出した人から始めよ ウ 貝の料理から食べ始めよ エ 会議を開いてから始めよ答えと解説を見る
イ。もう1つ、「大きなことをするには身近なことから始めよ」という意味もあります。 - 「隗より始めよ」の「隗」とは何ですか。
答えと解説を見る
中国の戦国時代、燕の国の郭隗(かくかい)という人の名前です。
ふつう
- 「今王誠欲致士、先従隗始」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
今王誠に士を致さんと欲せば、先づ隗より始めよ。 - 郭隗の話の中で、家来が死んだ千里の馬の首を五百金で買ったのはなぜですか。
答えと解説を見る
「死んだ馬にさえ五百金を出すのなら、生きた馬ならもっと高く買ってくれる」と天下の人が思い、名馬が集まってくると考えたからです。
むずかしい
- 「死馬且買之五百金、況生馬乎」は何という句法ですか。句法の名前と、省略をおぎなった現代語訳を答えましょう。
答えと解説を見る
抑揚。「死んだ馬でさえ五百金で買ったのだ。まして生きた馬ならなおさら(高く買うだろう)」という意味です。 - 郭隗のたとえ話の「死んだ馬」と「生きた千里の馬」は、それぞれ何をたとえていますか。
答えと解説を見る
「死んだ馬」は郭隗自身(たいしたことのない人物)、「生きた千里の馬」は郭隗より賢い、すぐれた人物をたとえています。
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よくある質問
隗より始めよの意味を簡単に言うと何ですか?
大きなことをするには、まず身近なことから始めよ、という意味です。また、物事は言い出した人から始めよ、という意味でも使います。
隗より始めよの由来はどんな話ですか?
『戦国策』燕策の話です。人材を集めたい燕の昭王に、郭隗が「死んだ千里の馬の首を五百金で買ったら、一年もたたずに千里の馬が三頭集まった」という昔話をして、「まず隗を大切にすることから始めよ。隗より賢い人は、千里を遠いと思わずにやって来る」と言いました。
隗より始めよの「隗」とはだれですか?
中国の戦国時代、燕の国の郭隗(かくかい)という人物です。昭王は郭隗のために宮殿を建てて先生とし、その後、楽毅・鄒衍・劇辛などのすぐれた人が燕に集まりました。
隗より始めよの出典は何ですか?
『戦国策』燕策一です。『史記』燕召公世家にも「先づ隗より始めよ」の言葉がありますが、死んだ馬のたとえ話は『戦国策』にしかありません。
「死馬の骨を買う」とはどういう意味ですか?
同じ話から生まれた言葉で、つまらない者でも大切にすれば、すぐれた者が集まってくるという意味です。ただし原文は「其の首を買ふ」で、「骨」ではなく「首」と書かれています。
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出典・参考
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- 原文:『史記』燕召公世家(維基文庫の本文で確認)
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最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



