「於・于・乎」の読み方と用法|置き字か「おいて」か、乎の「や・か・かな」の見分け方【漢文】

「於・于・乎」の読み方と用法|置き字か「おいて」か、乎の「や・か・かな」の見分け方【漢文】

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大学受験難関大

ひとことで言うと

「於・于・乎」は、名詞の前では場所・対象・起点・比較・受身を示す読まない置き字です。ただし「於是(是に於いて)」「AのBに於ける」では「おいて・おける」と読み、文末の「乎」は疑問・反語・詠嘆の「や・か・かな」と読みます。

このページのポイント

  • 名詞の前の「於・于・乎」は置き字。働きは下の名詞の送り仮名(ニ・ヲ・ヨリ・ヨリモ)に出る
  • 形容詞+於=比較(よりも)、動詞+於+動作をする人=受身
  • 「於是」=是に於いて、「A之於B也」=AのBに於けるや、は読む
  • 文末の乎=疑問「か」・反語「〜んや」・詠嘆「かな」
  • 見分けは位置→決まった形→上の語の順

はじめて(やさしく)

「於(お)・于(う)・乎(こ)」は、漢文で毎日のように出てくる字です。この3字は、ほとんどの場合は読まない字(置き字)です。でも、ときどき読むことがあります。テストでねらわれるのは、まさにこの「読むか、読まないか」の見分けです。

このページでは、「於・于・乎」の読み分けと働きの見分けに重点をおいて説明します。置き字そのものの考え方は置き字(而・於・于・乎・矣・焉)の一覧と働きを先に読むとスムーズです。まず、読み分けの一覧表を見ましょう。

「於・于・乎」の読み分けの一覧表

読み働き意味(訳)見分け方の目印例
読まない場所・時〜に・〜で動詞の下+場所や時の名詞舟中より水に墜つ
読まない対象〜に・〜を動詞の下+人やものの名詞人に施す・学に志す
読まない起点〜より・〜から動詞の下+出発点の名詞足下より始まる
読まない比較〜よりも形容詞の下苛政は虎よりも猛なり
読まない受身〜に〜される動詞の下+動作をする人(見・被と組む)王に欺かる
おいて場所・時・事がら〜で・〜について「於是」「於A」が文頭・前置き是に於いて
おける〜にとっての・〜に対するAのBに対する態度「A之於B(也)」の形寡人の国に於けるや
や疑問・反語(乎)〜か/〜だろうか、いや〜ない文末。反語は「〜ン(や)」亦た説ばしからずや
か疑問(乎)〜か文末。連体形に付く楚を得たるか
かな詠嘆(乎)〜だなあ文末。感動の文其れ至れるかな

表を見ると、「読まない」グループ(名詞の前の置き字)と、「読む」グループ(おいて・おける・や・か・かな)に分かれることがわかります。どちらになるかは、まず字の位置で決まります。

「於・于・乎」は位置で3つの顔名詞の前(文の中)読まない(置き字)例:堂上に坐す・藍よりも青し「於是」「〜に於ける」読む「おいて・おける」例:是に於いて・国に於けるや文の終わりの「乎」読む「や・か・かな」例:亦た説ばしからずやまず「どこにあるか」を見る
「於・于・乎」は位置で3つの顔。名詞の前なら置き字、「於是」なら「おいて」、文末の乎なら「や・か・かな」

名詞の前の「於・于・乎」は、英語の前置詞(at・to・from・than・by)によく似ています。英語では前置詞を読みますが、漢文訓読では「於」は読まずに、下の名詞に送り仮名(ニ・ヲ・ヨリ・ヨリモ)をつけて、同じ働きを表します。

「於」は英語の前置詞に似ている英語働き送り仮名at・in場所・時ニ・デto対象ニ・ヲfrom起点ヨリthan比較ヨリモby受身ニ(〜ル・ラル)於は読まず、下の名詞に送り仮名をつける
「於」は英語の前置詞に似ている。働きは下の名詞の送り仮名(ニ・ヲ・ヨリ・ヨリモ)に出る

有名な「舟に刻みて剣を求む」の話の一文で確かめましょう。楚の人が川をわたる途中で、剣を水に落としてしまう場面です。丸の数字が読む順番で、うすい字が読まない置き字です。

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例文1 場所の「於」(水に)

白文其剣自舟中墜於水。

書き下し文其の剣舟中より水に墜おつ。

(『呂氏春秋』察今)

現代語訳その(楚の人の)剣が、舟の中から水に落ちた。

ここがポイント「墜於水」の「於」は、落ちた場所(水の中)を示す置き字です。読まずに「水ニ」の「ニ」で表します。前の「自」は「より」と読む字(起点)で、こちらは読むのでひらがなで書きます。同じ「〜から・〜に」の働きでも、「自」は読み、「於」は読みません。故事成語「刻舟求剣」の場面です。
うかるくん

うかるくん

「於」は置き字だから、いつも飛ばせばいいんでしょ?

ミスターT先生

ミスターT先生

そこが落とし穴なんだ。「於是」は「是に於いて」と読む。それに文末の「乎」は「や・か・かな」と読む。置き字だと決めつける前に、位置を見るくせをつけよう。

サクラちゃん

サクラちゃん

名詞の前なら飛ばす、「於是」なら読む、文末の乎も読む。位置で3つに分ければいいんですね!

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例文2 読む「於」(是に於いて)

書き下し文是ここに於おいて、張良軍門に至り、樊噲を見る。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳そこで、張良は陣営の門のところへ行き、樊噲に会った。

ここがポイント鴻門の会で、主君の劉邦があぶないと見た張良が、外にいた樊噲に知らせに行く場面です。文頭の「於是」は「是に於いて(そこで)」と読みます。レ点で「是」を先に読み、「於」に返ります。後ろの「至リ二軍門ニ一」には「於」がなく、送り仮名「ニ」だけで場所を表しています。
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

「於・于・乎」は3つの顔をもつ字だ。名詞の前=読まない、「於是・於ける」=おいて・おける、文末の乎=や・か・かな。位置→上の語の順に見れば、ほとんど迷わないよ。

ここまでのまとめ

  • 名詞の前の「於・于・乎」は置き字(読まない)。働きは下の名詞の送り仮名に出る
  • 「於是」「Aの B に於ける」は「おいて・おける」と読む
  • 文末の「乎」は「や・か・かな」と読む

しっかり(共通テスト)

見分け方の手順

  1. 位置を見る:文の終わりの「乎」なら、疑問・反語・詠嘆で「や・か・かな」と読む。
  2. 決まった形かを見る:「於是(是に於いて)」「至於A(Aに至りては・Aに至るまで)」「A之於B也(AのBに於けるや)」なら「おいて・おける」と読む。
  3. 残りは名詞の前の置き字:読まずに、上の語の種類を見る。
  4. 上が形容詞なら比較(〜よりも)。上が動詞なら、下の名詞が場所・時か(〜に・〜で)、相手か(〜に・〜を)、出発点か(〜より)、動作をする人か(受身:〜に〜される)を考える。
  5. 送り仮名を確かめる:ニ・ヲ・ヨリ・ヨリモ・ニ〜ラル のどれが意味に合うかを決めて、訳をつくる。
於・于・乎の見分け方(流れ図)於・于・乎を見つけた① 文の終わりにある?(乎)↓いいえ(はい→いちばん下の赤い箱)② 於是・至於・Aの B に於ける?↓いいえ(はい→下の緑の箱)③ 名詞の前の置き字:上の語は?形容詞比較 ヨリモ受ける動詞受身 ニ〜ラルふつうの動詞場所・対象・起点①→や・か・かな②→おいて・おける
見分けの流れ図:①文末の乎か→②於是・於けるか→③上の語は何か

名詞の前の「於・于・乎」(置き字)

置き字の「於・于・乎」は、どれも働きは同じです。いちばん多いのは「於」で、「于」は『書経』『詩経』など古い時代の文献や、「志于学」のような論語の一部によく出ます。文の中の「乎」は、「於」の代わりに使われることがあり、読み方も同じです。

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例文3 起点の「於」(〜より)

書き下し文千里せんりの行かうも、足下より始まる。

(『老子』第六十四章)

現代語訳千里もの長い旅も、足もとの一歩から始まる。

ここがポイント「始於足下」は、始まる出発点を示す「於」で、「足下ヨリ」と読みます。上の「始まる」は動詞なので、比較ではありません。大きなことも身近な小さなことから、という意味でよく引かれます。「之」は「の」と読む字で、ひらがなで書きます(「之」の読みと用法)。
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例文4 受身の「於」(〜に〜される)

書き下し文臣王に欺あざむかる。

(自作)

現代語訳わたくしは王にだまされた。

ここがポイント動詞「欺く」の下に「於+王(動作をする人)」があり、受身の助字「見」もあるので受身です。「見」は「る」と読んでひらがなにし、「欺かる」となります。「見」がなくても、動詞+於+人で受身になることがあります。くわしくは受身の句法(見・被・為〜所〜・於)へ。
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例文5 文の中の「乎」は「於」と同じ

書き下し文沂に浴し、舞雩に風し、詠じて帰らん。

(『論語』先進)

現代語訳沂水で湯あみをし、雨ごいの舞台(舞雩)のあたりで風にふかれ、歌を口ずさみながら帰ってきたい。

ここがポイント弟子の曽皙(そうせき)が、自分の願いを語った有名な場面です。「浴乎沂」「風乎舞雩」の「乎」は文の中にあり、場所を示す置き字(「於」と同じ)です。文末ではないので「や・か」とは読みません。「風じ」と読む教科書もあります。

読む「於」:「於是」「至於」「AのBに於ける」

「於」を読むのは、決まった形のときです。「於是」は「是に於いて(そこで)」、「於A」が文の前置きになるときは「Aに於いて(Aでは・Aについては)」、「A之於B」は「AのBに於ける(AのBに対する態度・関係)」と読みます。「至於A」は、「Aに至りては(Aについて言えば)」「Aに至るまで(Aまでも)」と読み、「於」は読まない置き字のままです。

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例文6 「AのBに於けるや」

書き下し文寡人くわじんの国に於おけるや、心を尽くすのみ。

(『孟子』梁恵王上)

現代語訳わたし(王)の国の治め方について言えば、心をつくしているばかりだ。

ここがポイント梁の恵王が孟子に語った言葉で、このあと孟子の「五十歩百歩」のたとえが続きます。「A之於B也」は「AのBに於けるや」と読み、「AのBに対するやり方は」という意味。この「於」は読む字で、一二点で「国に」から返ります。「也」は主題を示す「や」、文末の「焉・矣」は置き字、「耳」は限定の句法(唯・惟・独・但・耳・而已)の「のみ」です。
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例文7 「至於」と文末の「乎」

書き下し文犬馬に至るまで、皆能よく養ふこと有り。敬せずんば、何なにを以もつて別わかたんや。

(『論語』為政)

現代語訳犬や馬でさえ、みな養うことはしている。うやまう心がなければ、(親を養うことと犬馬を養うことを)何で区別しようか(区別できない)。

ここがポイント弟子の子游が「孝」についてたずねたときの孔子の答えです。前半の「至於」は「〜に至るまで」で、「於」は置き字です。後半の文末の「乎」は「何を以て〜んや」と読む反語で、こちらは読む字です。1つの文章に、読まない「於」と読む「乎」が並んでいます。「何を以て」の「以」は「以」の読みと用法で扱います。

文末の「乎」:や・か・かな

文の終わりの「乎」は、疑問・反語・詠嘆のどれかで、必ず読みます。読み方の目安は次のとおりです。

働き読み形の目印例(書き下し)
疑問か(や)連体形+か。疑問詞(何・誰)がないことが多い漢皆已に楚を得たるか
反語や「〜ん(や)」。安・寧・豈などと組む王侯将相寧くんぞ種有らんや
詠嘆・確認や「不亦〜乎(亦た〜ずや)」亦た説ばしからずや
詠嘆かな感動の文。「哉」と同じ其れ至れるかな
文末の「乎」は3つの読み疑問〜か連体形+か漢皆已に楚を得たるか反語〜(ン)や「ん」+や寧くんぞ種有らんや詠嘆〜かな感動の文末其れ至れるかな文の中の乎は「於」と同じ置き字
文末の「乎」は、疑問「か」・反語「〜んや」・詠嘆「かな」
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例文8 「不亦〜乎」(亦た〜ずや)

書き下し文学びて時に之を習ふ、亦また説よろこばしからずや。

(『論語』学而)

現代語訳学んだことを、機会があるたびに復習する。なんとうれしいことではないか。

ここがポイント論語の最初の一節です。「不亦〜乎」は「亦た〜ずや」と読み、「なんと〜ではないか」という詠嘆をこめた確認(反語に近い)です。「乎」は文末にあるので読み、ひらがなで「や」と書きます。同じ文の「而」は読まない置き字です。
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例文9 疑問の「乎」(〜か)

書き下し文漢皆已すでに楚を得たるか。是これ何なんぞ楚人の多おほきや。

(『史記』項羽本紀)

現代語訳漢はもう楚の地をすっかり手に入れてしまったのか。なんと楚の人の多いことか。

ここがポイント四面楚歌の場面で、まわりから楚の歌が聞こえてきて、項羽がおどろいて言った言葉です。「乎」は疑問で、連体形「得たる」に付いて「か」と読みます。後ろの「何ぞ〜也」は「なんと〜ことか」という詠嘆の句法(嗚呼・哉・何〜也)です。
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例文10 詠嘆の「乎」(〜かな)

書き下し文中庸ちゆうようの徳たるや、其それ至れるかな。

(『論語』雍也)

現代語訳かたよらず、ちょうどよいという「中庸」の徳は、なんとこの上ないものだなあ。

ここがポイント文末の「矣乎」は、「矣」が置き字、「乎」が詠嘆の「かな」です。「其れ〜かな」は感動をこめた言い方で、疑問の「か」とはちがいます。この文は「民鮮久矣(民鮮なきこと久し)」と続きます。「為」は「たり」と読む断定の字で、ここでは「たる」とひらがなで書きます。
サクラちゃん

サクラちゃん

文末の「乎」が「か」なのか「や」なのか、どうやって決めるんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

目安は2つ。反語(〜ん)や「不亦〜乎」なら「や」、上が連体形でふつうにたずねるなら「か」。ただ、疑問でも「や」と読む教科書があるから、試験では問題文の送り仮名にしたがうのがいちばん安全だよ。

うかるくん

うかるくん

感動しているなら「かな」。訳すときは「〜だなあ」だね!

もっと深く(難関大・上級者)

1. 「おいて」「おける」の正体:「に置きて」から

訓読の「於いて」は、もともと動詞「置く」に「て」が付いた「に置きて」が、音が変わって(イ音便)「において」になったものと説明されます。「於ける」も同じく「置く」の連体形から来ています。漢文の「於」を日本語で読むために生まれたことばが、今の「会議において」「学校における」のような日本語に残っているのです。

「おいて」は「に置きて」からAに置きて(Aという所に置いて)動詞「置く」+「て」イ音便Aに於いて(Aで・Aにおいて)訓読のことばとして定着Aに於ける BAにとってのB是に於いてそこで今の「において」「における」も同じ
「おいて」は「に置きて」から。今の日本語の「において」「における」も漢文訓読から

ですから、「於」を「おいて」と読む場合、その「於」は動詞のように扱われている、と考えると整理しやすくなります。だから書き下し文では漢字のまま「於いて」と書き、ひらがなにはしません(「おいて」とひらがなで書く本もあります)。

2. 「A之於B也」と「至於A」のくわしい読み

「A之於B也」は、A(人)のB(もの・こと)に対するかかわり方を話題として出す形で、「AのBに於けるや」と読みます。孟子の「寡人之於国也」のほか、「君子之於天下也(君子の天下に於けるや)」のように、論語・孟子で主題を立てるときに使われます。訳は「AはBに対して」「AのBに対する態度は」がよいでしょう。

「至於A」は、話題をAまで広げる形です。「Aに至りては(Aについて言えば)」と読む場合と、「Aに至るまで(Aでさえも)」と読む場合があり、文脈で決めます。いずれも「於」は読まず、「至る」が返読して読まれます。

3. 「乎」の特別な読み:「〜乎として」「於乎(ああ)」

「乎」には、文末の「や・か・かな」のほかに、次のような使い方もあります。

形読み意味例
形容語+乎〜乎として(〜こ)ようすを表すことばを作る巍巍乎(巍巍乎として)・確乎・断乎
於乎・嗚呼ああ感動・なげきの声於乎(ああ)
文中の乎読まない(置き字)於と同じ沂に浴し

「確乎たる信念」「断乎として反対する」の「乎」は、この使い方が日本語に残ったものです。また「於乎」の「於」は、「ああ」という感動の声を表す字で、置き字とはまったく別物です。「嗚呼」と同じに読みます(詠嘆の句法(嗚呼・哉・何〜也))。

4. 「于」の特別な読み:『詩経』の「ここに」

「于」は、『書経』『詩経』など古い文献で「於」の代わりによく使われる字です。たとえば論語の「吾十有五にして学に志す(吾十有五而志于学)」の「于」も、「於」と同じ置き字です。また『詩経』では、「黄鳥于飛(黄鳥于に飛ぶ)」のように、動詞の前の「于」を「ここに」と読む例があります。これは「場所」を示すのではなく、詩のリズムをととのえる字と説明されることが多く、読み方は本によって分かれます。

5. 於・于・乎のちがいと、白文での判断

於・于・乎のちがい於于乎名詞の前◎ 置き字○ 置き字○ 置き字おいて◎ 読む△ まれ×文末××◎ や・かよく出る散文全般書経・詩経文末の問い◎よく使う ○使う △まれ ×使わない
於・于・乎のちがい。置き字の働きは同じ。「おいて」と読むのは主に於、文末で読むのは乎だけ

白文の書き下しや返り点の記述問題では、次の2点がよくねらわれます。

  • 形容詞の下か、動詞の下か:「青於藍」(形容詞+於)は比較で「藍よりも青し」。「取之於藍」(動詞+目的語+於)は起点で「之を藍より取る」。上の語の種類で送り仮名が変わります(比較の句法(於・不如・莫若))。
  • 受身かどうか:「治於人」は「人に治めらる」。動詞の下の「於+人」は、その人が動作をする側なら受身です。「人を治む」との違いに注意。受身の印「見・被・為〜所〜」があれば、まず受身を疑います。

「於」の位置にも注目しましょう。漢文では「動詞+目的語+於+名詞」の順が基本で、「於」の句は動詞のあとに来ます(漢文の語順(主語・述語・目的語・補語))。この「於+名詞」は、返り点では一二点で動詞へ返る部分になります。例文1の「墜ツ二於水ニ一」が典型です。

頭に布を巻き、ゆったりした衣を着た年配の男性の上半身を描いた肖像画
司馬遷の肖像。『史記』には「於是(是に於いて)」が数多く出てきて、話の場面を進める合図になっています。画像:「司馬遷像」(作者・年代不明、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

6. 置き字を読む流派と、今の教科書

江戸時代の訓読では、今の教科書よりも多くの字を読む読み方(たとえば「而」を「しかして」と読むなど)が行われていたと言われます。明治時代以降、文部省の調査などをへて、置き字を読まない今の読み方が広まりました。そのため、古い版本では「於」に送り仮名が付いて「おいて」と読ませている所が、今の教科書では置き字になっていることがあります。入試では今の教科書の読み方で答え、問題文に送り仮名があればそれにしたがうのが原則です。

ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「於いて」は「に置きて」から来ていて、今の「において」につながっているんですね。位置→決まった形→上の語、の順で見れば、於・于・乎はこわくないです!

よくあるまちがい

まちがい1:「於是」まで置き字として飛ばす

「於是」を飛ばして「是に、王怒る」とするのは誤り。「是に於いて」と読み、「そこで」と訳します。

まちがい2:文の中の「乎」を「や・か」と読む

「浴乎沂」の「乎」は文の中にあり、「於」と同じ置き字です。「や・か」と読むのは文末の乎だけです。

まちがい3:比較の「於」を「〜に」と訳す

「青於藍」は「藍よりも青い」。形容詞の下の「於」は比較です。「藍に青い」では意味が通りません。

まちがい4:受身の「於」を見落とす

「治於人」を「人を治む」と読むと、意味が正反対になります。動詞の下の「於+人」で、その人が動作をする側なら「人に治めらる」(受身)です。

まちがい5:「於いて」をひらがな「おいて」だけで覚える

今の教科書では、読む「於」は漢字のまま「是に於いて」「国に於けるや」と書くのがふつうです。ひらがなで書く本もあるので、問題文の表記に合わせましょう。

練習問題

練習問題はすべて合格大作戦の自作です。答えと解説は押すと開きます。

やさしい

  1. 次の①〜③の下線部の字のうち、読むものをすべて選びなさい。
    ①「坐於堂上」 ②「於是王怒」 ③「不亦楽乎」
    答えと解説を見る

    ②と③。②は「是に於いて」と読む。③は文末の「乎」で「亦た楽しからずや」の「や」。①は場所を示す置き字で読まない(堂上に坐す)。

  2. 次の訓読文を書き下し文にしなさい。
    答えと解説を見る

    花春に開く。(自作)

    「於」は時を示す置き字で読まない。働きは「春ニ」の「に」に出ている。

ふつう

  1. 「山高於丘、海深於河。」(自作)の「於」の働きを答え、書き下し文と現代語訳を書きなさい。
    答えと解説を見る

    どちらも形容詞(高・深)の下の「於」なので比較。書き下し文「山は丘よりも高く、海は河よりも深し。」、訳「山は丘よりも高く、海は川よりも深い」。

  2. 次の訓読文を書き下し文にし、「乎」の働きを答えなさい。
    答えと解説を見る

    書き下し文:「子之を知るか。」(自作)。文末の「乎」で、連体形「知る」に付く疑問の「か」。訳は「あなたはそれを知っているか」。

むずかしい

  1. 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
    「君子之於学也、終身不倦。」
    答えと解説を見る

    書き下し文:君子の学に於けるや、終身倦まず。 訳:りっぱな人の学問に対する態度は、一生あきることがない。「A之於B也」は「AのBに於けるや」と読み、この「於」は読む字。

  2. 「寧有種乎」と「浴乎沂」の「乎」の違いを、位置と読みにふれて説明しなさい。
    答えと解説を見る

    「寧有種乎」の「乎」は文末にあり、「寧くんぞ種有らんや」と読む反語の字。「浴乎沂」の「乎」は文の中の名詞「沂」の前にあり、場所を示す置き字で読まない(沂に浴す)。同じ「乎」でも、文末なら読み、文の中なら「於」と同じで読まない。

関連ページ

例文に出てきた「刻舟求剣」「鴻門の会」「四面楚歌」「五十歩百歩」は故事成語の一覧(意味・由来・出典)で由来を読めます。孟子の「寡人の国に於けるや」の続きは五十歩百歩の意味と由来(孟子の白文・書き下し文)でくわしく読めます。

読みもの(合格大作戦の記事)

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よくある質問

「於」はいつ読み、いつ読まないのですか?

名詞の前にあって場所・対象・起点・比較・受身を示す「於」は置き字で読みません。「於是(是に於いて)」や「A之於B也(AのBに於けるや)」のような決まった形では「おいて・おける」と読みます。

「乎」の読み方は?

文末の乎は、疑問なら「か」、反語なら「〜んや」、「不亦〜乎」なら「や」、詠嘆なら「かな」と読みます。文の中の名詞の前の乎は「於」と同じ置き字で読みません。

「於是」はどう読み、どう訳しますか?

「是に於いて」と読み、「そこで・こうして」と訳します。この「於」は置き字ではなく、レ点で「是」から返って読みます。

「於」「于」「乎」の違いは?

名詞の前の置き字としての働きは同じです。「おいて」と読むのは主に於、古い文献(書経・詩経)では于が多く、文末で「や・か・かな」と読むのは乎だけです。

比較の「於」と受身の「於」はどう見分けますか?

上の語を見ます。形容詞の下なら比較(Bよりも〜)、動詞の下で、下の名詞が動作をする人なら受身(Bに〜される)です。

あわせて読みたい

出典・参考

  • 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
  • 例文の本文:『呂氏春秋』察今、『史記』項羽本紀、『老子』第六十四章、『論語』(学而・為政・雍也・先進)、『孟子』梁恵王上。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
  • 高校の漢文句法の標準的な説明(置き字・於の働き・乎の疑問反語詠嘆)にもとづいて作成。読みが分かれる所は本文中に記した
  • 画像:「司馬遷像」(作者・年代不明、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦