漢文文法・句法辞典 › 重要語の読みと識別
大学受験難関大
ひとことで言うと
漢文の「与」は、名詞のあいだなら「AとBと」、与+人+動詞なら「Aと〜す」、文末なら疑問・詠嘆の「か」、文の動詞なら「あたふ・くみす・あづかる」と読みます。「与其A寧B」は選択、「A孰与B」は比較の形です。
このページのポイント
- 名詞+与+名詞=「AとBと」(Bにも「ト」)
- 与+人+動詞=「Aと〜す」(相手)、すぐ下が動詞なら「与に」
- 文の動詞ならあたふ(与える)・くみす(味方する)・あづかる(関わる)
- 文末の与=「か・や」(疑問・詠嘆、=歟)
- 与其A寧B=Bを選ぶ、A孰与B=AとBとどちらが〜か
はじめて(やさしく)
「与」は、ふだんは「与える」の字ですね。でも漢文では、いちばん多い読みは「と」です。「AとB」の「と」、「友だちと遊ぶ」の「と」。ほかにも「ともに」「あたふ」「くみす(味方する)」「あづかる(関わる)」、文末の「か・や」(疑問・詠嘆)、比較の「孰与」、選択の「与其」と、働きがたくさんあります。まず一覧表で全体を見ましょう。
「与」の読み分けの一覧表
| 読み | 品詞・働き | 意味 | 見分け方の目印 | 例(書き下し) |
|---|---|---|---|---|
| と | 接続(並列) | AとB | 名詞と名詞のあいだ(Bにも「ト」) | 富与貴=富と貴きと |
| と | 前置詞(相手) | Aと(いっしょに)〜する | 与+人+動詞 | 与朋友交=朋友と交はる |
| ともに | 副詞 | いっしょに | 与のすぐ下が動詞 | 与楽之=与に之を楽しむ |
| あたふ | 動詞 | 与える | 与+人+物(文の動詞) | 与之釜=之に釜を与ふ |
| くみす | 動詞 | 味方する・賛成する | 与+人(文の動詞) | 吾与点也=吾は点に与せん |
| あづかる | 動詞 | 関わる・関係する | 与+事がら(文の動詞) | 不与其事=其の事に与らず |
| か・や | 文末の助字(=歟) | 〜か(疑問)・〜だなあ(詠嘆) | 文の終わり | 仁之本与=仁の本為るか |
| よりは | 与其A寧B(選択) | AよりはむしろB | 下に「其」、後ろに「寧」 | 与其奢寧倹=其の奢らんよりは寧ろ倹せよ |
| と | A孰与B(比較) | AとBとどちらが〜か | 「孰」とセット | 我孰与徐公美=我は徐公と孰れか美なる |
「と」と読むときの「与」は、日本語の助詞「と」にあたるので、書き下し文ではひらがな「と」で書きます。「か・や」も助詞なのでひらがなです。いっぽう「あたふ・くみす・あづかる」は動詞なので、漢字「与」のまま送り仮名をつけます。
うかるくん
えっ、「与」が「と」なの? 「与える」だと思ってた!
ミスターT先生
漢文ではむしろ「と」の方がずっと多いんだ。もとは「手を組んでいっしょに何かを持ち上げる」形の字だと説明されていて、そこから「いっしょに・〜と」「仲間になる(くみす)」「手わたす(あたふ)」と意味が広がったと考えられているよ。
サクラちゃん
「関与」の「与」が「あづかる」、「与党」の「与」が「くみす(味方)」ですね!
ミスターT先生
その通り。熟語で覚えると忘れにくいね。
1. 「と」(並列):AとBと
名詞と名詞のあいだの「与」は、「AとB」の「と」です。ここで大事なきまりがあります。書き下し文では、Bの後ろにも送り仮名「ト」をつけて「AとBと」と読むのです。日本語の古い言い方「父と母と」と同じ形です。
A与B(AとBと)
白文富与貴、是人之所欲也。
書き下し文富と貴きとは、是れ人の欲する所なり。
(『論語』里仁)
現代語訳財産と高い身分とは、だれもがほしがるものである。
2. 「と」(相手):Aと〜する
「与+人+動詞」の形では、「与」は「Aと(いっしょに)〜する」の「と」です。英語の with にあたります。読むときは、人に送り仮名をつけずに「与」へ返って「と」と読み、それから動詞へ進みます。
与A+動詞(Aと〜する)
書き下し文朋友と交はりて信ならざるか。
(『論語』学而)
現代語訳友だちとつきあって、誠実でなかったことはないか。
与之+動詞(之と行く)
書き下し文虎以て然りと為す。故に遂に之と行く。
(『戦国策』楚策)
現代語訳虎はもっともだと思った。そこで、とうとう狐と一緒に出かけた。
ここまでのまとめ
- 名詞+与+名詞 = 「AとBと」(Bにも「ト」)
- 与+人+動詞 = 「Aと〜す」(相手)
- 「と」の「与」は、書き下し文でひらがなで書く
しっかり(共通テスト)
動詞の「与」:あたふ・くみす・あづかる
文の中にほかの動詞がなく、「与」そのものが動詞になるときは、「あたふ(与える)」「くみす(味方する・賛成する)」「あづかる(関わる)」のどれかです。下に「人+物」が来れば「あたふ」、「人」だけなら「くみす」、「事がら」なら「あづかる」が目安です。
与ふ(あたふ=与える)
書き下し文之に釜を与へよ。
(『論語』雍也)
現代語訳彼に一釜(ひとかま)分の穀物を与えてやれ。
与す(くみす=賛成する)
書き下し文吾は点に与せん。
(『論語』先進)
現代語訳わたしは点(曽皙)に賛成するよ。
与る(あづかる=関わる)
書き下し文其の事に与らず。
(自作)
現代語訳そのことには関わらない。
文末の「与」:か・や(疑問・詠嘆)
文の終わりの「与」は、「歟」と同じ助字で、「か」「や」と読みます。「〜か(疑問)」のほか、「〜であろうか(推量をこめた言い切り)」「〜だなあ(詠嘆)」の気持ちを表します。書き下し文ではひらがなです。疑問の句法(乎・哉・与・邪)や詠嘆の句法(哉・矣乎・与)でも扱います。
文末の「与」と動詞の「与」
書き下し文之を求めたるか、抑も之を与へたるか。
(『論語』学而)
現代語訳(先生は政治の相談を)自分から求めたのか、それとも(国の君主が)先生に持ちかけたのか。
文末の「与」(〜であろうか)
書き下し文其れ仁の本為るか。
(『論語』学而)
現代語訳(親孝行と年長者への従順こそが)思いやりの心(仁)のおおもとなのだろう。
見分け方の手順
- 文末にあるかを見る。文の終わりなら「か・や」(疑問・推量・詠嘆)。
- 決まった形かを見る。下に「其」があり、後ろに「寧」があれば選択の「与其A寧B」。上に「孰」があれば比較の「孰与」。
- 名詞と名詞のあいだかを見る。そうなら並列の「AとBと」。
- 「与+人」の下に動詞が続くかを見る。続けば相手の「Aと〜す」。目的語が省略されて「与」のすぐ下が動詞なら副詞「与に(ともに)」。
- 文にほかの動詞がなければ「与」が動詞。人+物なら「あたふ」、人だけなら「くみす」、事がらなら「あづかる」。
サクラちゃん
「与之」が「之と」なのか「之に与ふ」なのか、どこで決めればいいですか?
ミスターT先生
「之」の下を見よう。「与之行」なら下に動詞「行く」があるから「之と行く」。「与之釜」なら下に物「釜」があって、ほかに動詞がないから「之に釜を与ふ」。文の動詞がどれかを決めるのが先なんだ。
うかるくん
「之」の読み分けと同じで、まず動詞をさがす!
もっと深く(難関大・上級者)
1. 比較の「孰与」:AとBとどちらが〜か
「A孰与B」は、AとBを比べてたずねる形です。「AはBと孰れか〜(なる)」と読むほか、「孰与」を2字まとめて「AはBに孰与ぞ(いづれぞ)」と読む教科書もあります。答えは「Bの方がまさる」ことが多く、比較の句法(於・不如・莫若・孰与)につながります。
A孰与B(比較の疑問)
書き下し文我は城北の徐公と孰れか美なる。
(『戦国策』斉策)
現代語訳わたしと城北の徐公とでは、どちらが美しいか。
A与B孰〜(AとBとどちらが)
書き下し文師と商とは孰れか賢れる。
(『論語』先進)
現代語訳師(子張)と商(子夏)とでは、どちらがすぐれていますか。
2. 選択の「与其A寧B」:其のAよりは寧ろB
「与其A寧B」は「其のAよりは寧ろB」と読み、「AよりはむしろBの方がよい」と、後ろのBを選ぶ形です。ここでの「与」は「よりは」と読み、Aを読んでから返ります。前のAを選ぶ「寧A無B(寧ろAとも、B無かれ)」と、選ぶ側が逆になるので注意しましょう。くわしくは選択の句法(寧〜無〜・与其〜寧〜)で扱います。
与其A寧B(選択)
書き下し文礼は其の奢らんよりは、寧ろ倹せよ。
(『論語』八佾)
現代語訳礼というものは、ぜいたくにするよりは、むしろ質素にせよ。
3. 副詞「与に」と、「与」の目的語の省略
「与+人+動詞」の「人」が、前に出てきてわかりきっているときは省略され、「与」のすぐ下に動詞が来ます。このとき「与」は「与に(ともに=いっしょに)」と読みます。「与之」の「之」が落ちた形と考えればよいでしょう。「俱(ともに)」「共(ともに)」と並べて「与俱〜」と書く例もあります。
与に(ともに=いっしょに)
書き下し文与に之を楽しむ。
(自作)
現代語訳いっしょにそれを楽しむ。
4. 「あづかる」の有名な例と、白文での注意
論語泰伯篇には、伝説の聖天子・舜と禹について、天下を治めながらも「而不与焉(而も与らず)」、つまり自分は政治の細かいことに直接関わらなかった、とほめる言葉があります。ここの「与」は「あづかる」です。白文では「与」の読みの手がかりが位置しかないため、文の動詞をまず決めることが何より大切です。「与」の前後に別の動詞があれば、「与」は前置詞(と)か接続(と)。なければ、「与」が動詞(あたふ・くみす・あづかる)です。

5. 「与」と「歟」「乎」、旧字体「與」
文末の「与」は「歟」と同じ字として使われ、「乎」「邪(耶)」「哉」などとともに疑問・詠嘆を表します。「乎」が疑問・反語に広く使われるのに対し、「与(歟)」は推量や、やわらかい問いかけの気持ちが強いと説明されます。また、古い版本や大学入試の本文では、旧字体の「與」で書かれていることがあります。字形がちがっても読み方・働きは同じです。

ミスターT先生
「与」は位置で読む字。名詞のあいだは「AとBと」、人+動詞の前は「Aと」、文末は「か」、文の動詞なら「あたふ・くみす・あづかる」。「与其」と「孰与」はセットで覚えておこう。
よくあるまちがい
まちがい1:「A与B」でBに「と」をつけ忘れる
「富与貴」を「富と貴きは」と書き下すのは不十分。漢文訓読では「富と貴きとは」のように、Bにも「ト」をつけるのがきまりです。
まちがい2:「与」をいつも「与ふ」と読む
「与朋友交」を「朋友に与へて交はる」と読むのは誤り。下に動詞「交はる」があるので「朋友と交はる」です。「与」が動詞になるのは、ほかに動詞がないときだけです。
まちがい3:文末の「与」を読み落とす・漢字で書く
「其為仁之本与」の「与」は疑問・詠嘆の「か」。書き下し文では「仁の本為るか」とひらがなで書きます。「与ふ」と読んだり、読まずに飛ばしたりしないように。
まちがい4:「与其A寧B」でAを選ぶと訳す
「与其奢寧倹」は「奢るよりは、むしろ倹約を」。選ぶのは後ろのBです。前のAを選ぶ「寧A無B」と混同しないようにしましょう。
まちがい5:「孰与」を「孰か与へん」と読む
「我孰与城北徐公美」の「与」は比較の相手を示す「と」。「我は城北の徐公と孰れか美なる」です。「与ふ」と読むと文が成り立ちません。
練習問題
やさしい
- 次の訓読文を書き下し文にしなさい。(自作)父与子ト、同ジクスレ心ヲ。
答えと解説を見る
父と子と、心を同じくす。(父と子と、心を同じくす。)意味は「父と子とが、心を一つにする」。名詞と名詞のあいだの「与」は並列の「と」で、Bの「子」にも「ト」をつける。
- 次の訓読文を書き下し文にし、「与」の働きを答えなさい。(自作)吾与レ汝往カン。
答えと解説を見る
吾汝と往かん。(吾汝と往かん。)働き:相手を示す「と」(前置詞)。「与汝」の下に動詞「往く」があるので「汝と往く(おまえと行こう)」。
ふつう
- 次の文の3つの「与」の読みを答えなさい。
「求之与、抑与之与」(『論語』学而)答えと解説を見る
1つめ(求之与):文末の「か」。2つめ(抑与之):動詞「あたふ」(与へたる)。3つめ(与之与):文末の「か」。書き下し文は「之を求めたるか、抑も之を与へたるか」。
- 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
「誰与我」答えと解説を見る
書き下し文:誰か我に与せん。 訳:だれがわたしに味方するだろうか(いや、だれも味方しない)。ほかに動詞がなく、下が人「我」だけなので「与」は動詞「くみす」。「誰か〜ん」は反語。
むずかしい
- 次の白文を書き下し文にし、現代語に訳しなさい。(自作)
「与其生而辱、寧死而栄」答えと解説を見る
書き下し文:其の生きて辱めらるるよりは、寧ろ死して栄えん。 訳:生きながらえて恥をかくよりは、むしろ死んで名誉を得たい。「与其A寧B」の選択で、選ぶのは後ろのB(死して栄ゆ)。「与」は「よりは」と読む。
- 「A孰与B」と「A不如B」の違いを説明しなさい。
答えと解説を見る
「A孰与B」は「AはBと孰れか〜(AとBとどちらが〜か)」と、2つを比べてたずねる形。「A不如B」は「AはBに如かず(AはBに及ばない)」と、Bの方がまさると言い切る形。「孰与」の問いの答えが「不如」で示されることも多い。
関連ページ
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受験掲示板「100点BBS」で質問・相談しよう
よくある質問
漢文の「与」の読み方は?
「と」「ともに」「あたふ」「くみす」「あづかる」「か・や」などがあります。名詞のあいだなら「と」、文末なら「か」、文の動詞なら「あたふ・くみす・あづかる」と、位置で読み分けます。
「A与B」はなぜ「AとBと」と読むのですか?
漢文訓読のきまりで、並列の「与」を「と」と読んだうえで、Bにも送り仮名「ト」をつけるからです。「富与貴」は「富と貴きと」と書き下します。
文末の「与」は何と読みますか?
「か」または「や」と読み、疑問や推量・詠嘆を表します。「歟」と同じ字です。例:其為仁之本与=其れ仁の本為るか。
「与其A寧B」の意味は?
「其のAよりは寧ろB」と読み、「AよりはむしろBの方がよい」と後ろのBを選ぶ選択の形です。
「孰与」はどう読みますか?
「A孰与B」は「AはBと孰れか〜」と読み、AとBとどちらが〜かとたずねる比較の形です。「AはBに孰与ぞ」と読む教科書もあります。
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出典・参考
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」国語(言語文化・古典探究)
- 例文の本文:『論語』(里仁・学而・雍也・先進・八佾)、『戦国策』(楚策・斉策)。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による
- 高校の漢文句法の標準的な説明(与の読み分け・与其A寧B・孰与)にもとづいて作成。字源の説明や読みが分かれる所は本文中に記した
- 画像:「至聖先賢半身像」より端木賜(子貢)(元代、作者不明、国立故宮博物院蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



