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漁夫の利ぎょふのり
ひとことで言うと
二者が争うすきに、第三者が苦労なく利益を横取りすること。しぎとはまぐりがはさみ合っているところを、漁師が両方まとめて捕まえた話から。
| 読み方 | ぎょふのり(「漁父の利」とも書く) |
|---|---|
| 意味 | 二者が争っているすきに、第三者が苦労なく利益を横取りすること。 |
| 出典 | 『戦国策』燕策(蘇代が趙の恵王を説得したたとえ話) |
| お話 | 川原で、はまぐり(蚌)の肉をつついたしぎ(鷸)が、殻にくちばしをはさまれた。どちらも放さないうちに、漁師が両方を捕まえた |
| 似た言葉 | 鷸蚌の争い・犬兎の争い・漁夫之利 |
| まちがえやすい言葉 | 一石二鳥・一挙両得(争いの意味はない) |
| 漢文の句法 | 再読文字(且)・仮定(〜ずんば)・否定(不肯) |
このページのポイント
- 「漁夫の利」は二者の争いのすきに、第三者が苦労なく得をすること。争っている二者はどちらも損をします
- 出典は『戦国策』。しぎとはまぐりが漁師に捕まる話を、4こまのイラストで読めます。本当は戦争を止めるためのたとえ話です
- 原文には再読文字「且」・仮定「〜ずんば」・一二三点が入っていて、入試で問われやすい所が多い話です
「漁夫の利」の意味と読み方
「漁夫の利」はぎょふのりと読みます。意味は「二者が争っているすきに、第三者が苦労なく利益を横取りすること」です。「漁父の利」と書くこともあり、どちらも正しい書き方です。
「漁夫(漁父)」は漁師、「利」は利益・もうけのことです。争っている二人(二つの国やチーム)は、どちらも力を使い果たして損をし、争いに加わっていない第三者だけが得をする、という場面で使います。
サクラちゃん
「漁夫の利」って、漁師さんがもうかる話なんですか? 魚がたくさんとれた、とか?
ミスターT先生
おしい! とれたのは魚じゃなくて、けんかしていた鳥と貝なんだ。中国の昔の本『戦国策(せんごくさく)』にある話でね、しぎとはまぐりがはさみ合って動けなくなっているところを、通りかかった漁師が両方まとめて捕まえてしまう。漁師は何の苦労もしていない、というところがポイントだよ。
ふだんは、たとえば次のように使います。
- ○上位の2チームがつぶし合い、3位のチームが漁夫の利を得て優勝した。
- ○2つの大きな店が値下げ競争をしているあいだに、近くの小さな店が漁夫の利を占めた。
- ○兄と姉がおやつを取り合っているすきに、弟が漁夫の利でおやつを食べてしまった。
「漁夫の利を得る」「漁夫の利を占める」「漁夫の利をさらう」の形がよく使われます。四字熟語の形で「漁夫之利(ぎょふのり)」と書くこともあります。
絵で読む「漁夫の利」のお話
まずは話の流れを、4つの場面で見てみましょう。登場するのは、川原のはまぐり(蚌=ぼう)と、水辺の鳥しぎ(鷸=いつ)、そして通りかかった漁師です。場所は、燕(えん)の国の南を流れる易水(えきすい)という川の川原です。
絵で読む「漁夫の利」のお話(4こま)
しぎは「雨が降らなければ、はまぐりは干からびて死ぬ」と考え、はまぐりは「くちばしを放さなければ、しぎは何も食べられずに死ぬ」と考えました。どちらも「がまん比べなら自分が勝つ」と思っていたのです。けれども、がまん比べをしているあいだに、二ひきとも漁師に捕まってしまいました。

ミスターT先生
この話のおもしろいところは、しぎもはまぐりも、自分の言っていることは正しいところだ。雨が降らなければはまぐりは弱るし、くちばしを放さなければしぎも弱る。でも争いそのものに夢中になると、まわりが見えなくなる。そこを第三者にねらわれるんだね。
しぎとはまぐりのせりふは、原文では「今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん」「今日出ださず、明日出ださずんば、即ち死鷸有らん」と、同じ形の文をくり返して言い返し合う書き方になっています。声に出して読むと、二ひきが意地を張り合っている様子がよく分かります。
「漁夫の利」の原文・書き下し文・現代語訳
中学・高校の教科書や問題集では、次の形で読むことが多いです(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。
1文目:趙が燕を攻めようとする
書き下し文趙且に燕を伐たんとす。蘇代燕の為に恵王に謂ひて曰はく、
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳趙の国がいまにも燕の国を攻めようとしていた。蘇代は燕のために、(趙の)恵王に言った。
2文目:易水の川原で見たこと
書き下し文「今者臣来たるとき、易水を過ぐ。蚌方に出でて曝す。而して鷸其の肉を啄む。蚌合して其の喙を拑む。
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳「いま、わたしがこちらへ来るとき、易水を通りかかりました。ちょうどはまぐりが(水から)出て、日にあたっていました。するとしぎがその肉をついばみました。はまぐりは殻を閉じて、しぎのくちばしをはさみました。
3文目:しぎの言い分
書き下し文鷸曰はく、『今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん。』
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳しぎは言いました。「今日も雨が降らず、明日も雨が降らなければ、死んだはまぐりができあがるだろう。」
4文目:はまぐりの言い分
書き下し文蚌も亦鷸に謂ひて曰はく、『今日出ださず、明日出ださずんば、即ち死鷸有らん。』
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳はまぐりもまた、しぎに言いました。「今日も(くちばしを)出さず、明日も出さなければ、死んだしぎができあがるだろう。」
5文目:漁師が両方とる
書き下し文両者相舎つるを肯んぜず。漁者得て并せて之を禽にす。
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳(しぎとはまぐりの)両者は、たがいに相手を放そうとしませんでした。(そこへ来た)漁師が見つけて、両方まとめて捕まえてしまいました。
6文目:秦が漁師になる
書き下し文燕趙久しく相支へて、以て大衆を弊れしめば、臣強秦の漁父と為らんことを恐るるなり。
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳(いま趙が燕を攻めようとしています。)燕と趙が長いあいだ持ちこたえ合って、人々を疲れさせれば、わたしは強い秦が(この話の)漁師になることを心配するのです。
7文目:恵王が攻めるのをやめる
書き下し文恵王曰はく、「善し。」乃ち止む。
(『戦国策』燕策(教科書で多い形))
現代語訳恵王は「なるほど、よく分かった」と言って、そこで(燕を攻めるのを)やめた。
原典(『戦国策』燕策)の本文では
維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる『戦国策』(士礼居叢書本の「燕二」)の本文と、教科書の形には、次のような違いがあります。
- 「漁者」と「漁父」:お話の中では「漁者(ぎょしゃ)」、蘇代のまとめでは「漁父(ぎょほ)」と書かれています。どちらも漁師のことです。日本語では「漁夫の利」「漁父の利」の両方の書き方が使われます。
- 字のちがい:古い注には、「拑(はさむ)」を「箝」と書く本があること、「喙(くちばし)」を「啄」と書いた本は誤りであることが書かれています。「禽(とりこにする)」は、教科書によっては「擒」と書かれます。
- 「雨」の読み方の説:古い注には、「今日不雨」の「雨」はもとは「両(口を開く)」の字だった、という説も紹介されています。ただ、ふつうは「雨が降らなければ」と読みます。こうした読み方の説は「諸説あり」です。
うかるくん
えっ、この話って、蘇代っていう人が王様にしたたとえ話だったんですか!
ミスターT先生
そうなんだ。教科書ではしぎとはまぐりの場面が有名だけど、本当の主役は説得の名人・蘇代だ。「戦争はやめましょう」と正面から言うより、「二ひきとも漁師に捕まった話」をしたほうが、王はすっと納得する。同じ『戦国策』の「蛇足」も、同じように説得に使われたたとえ話なんだよ。
出典『戦国策』と話の背景
「漁夫の利」の出典は『戦国策(せんごくさく)』です。中国の戦国時代(紀元前5世紀〜紀元前3世紀)に、各国をめぐって王に意見を説いた遊説家(ゆうぜいか)たちの言葉を、国ごとにまとめた本です。前漢の劉向(りゅうきょう)が、いくつもの記録を整理して今の形にしたと伝えられています。この話は、燕(えん)の国の巻(燕策)に入っています。
戦国時代の中国には、秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓の7つの大きな国(戦国の七雄)がありました。中でも西の秦(しん)はどんどん強くなり、のちに始皇帝が中国を統一します。ほかの6か国にとって、秦はいつも大きな心配のたねでした。
この話では、北の趙(ちょう)が、となりの燕を攻めようとしていました。そこで燕のために、遊説家の蘇代(そだい)が趙の恵王(けいおう)のもとへ行き、しぎとはまぐりの話をします。蘇代は、同じく遊説家として有名な蘇秦(そしん)の弟と伝えられる人物です。
蘇代の言いたいことは、こうです。「燕と趙が長く戦えば、どちらの国も兵や人々が疲れきってしまいます。そうなれば、強い秦が、この話の漁師のように、両方の国をまとめて手に入れてしまうでしょう。王さま、よくよくお考えください」。恵王は「なるほど」と言って、燕を攻めるのをやめました。
蘇代は燕の味方として話していますが、趙にとっても得になる話として説得しているところが上手です。古い注によると、この恵王は趙の恵文王(けいぶんおう)のこととされます。ただし、この話がいつのことかは、注にも「時期は考えられない(はっきりしない)」と書かれていて、正確な年は分かりません。

「漁夫の利」の使い方と例文・似た言葉
「漁夫の利」は、「漁夫の利を得る」「漁夫の利を占める」「漁夫の利をさらう」「漁夫の利となる」の形でよく使います。使うときは、①争っている二者がいる、②第三者がいる、③第三者は苦労せずに得をする、の3つがそろっているかを確かめましょう。
- ○選挙で二人の有力候補が票を分け合い、三人目の候補が漁夫の利で当選した。
- ○大国どうしの対立が続けば、別の国が漁夫の利を得ることになる。
- ○トップ2人が最終ラウンドで転び、後ろを走っていた選手が漁夫の利をさらった。
- ○二人の言い争いが、結局ライバルの漁夫の利となってしまった。
- ×毎日コツコツ練習したので、試合で漁夫の利を得た。(自分の努力で得た利益には使わない)
- ×漁師さんが大漁で、漁夫の利がたくさん出た。(漁業のもうけの意味ではない)
似た言葉
- 鷸蚌(いつぼう)の争い:この話の場面そのものを言う言葉。「二者が争って、どちらも第三者に利益をとられること」で、漁夫の利と同じ話から生まれました。
- 犬兎(けんと)の争い:同じ『戦国策』(斉策)にある話から。足の速い犬が、すばしこいうさぎを追いかけ回して、両方とも疲れて倒れたところを、農夫が両方とも手に入れた、という話です。「田父(でんぷ)の功」とも言います。
- 漁夫之利:「漁夫の利」を四字熟語の形で書いたもの。
- 濡(ぬ)れ手で粟(あわ)・棚からぼた餅:苦労せずに利益を得ること。ただし「争う二者」が出てこないので、漁夫の利より意味が広い言葉です。
まちがえやすい言葉
- 一石二鳥・一挙両得:「一つのことをして、二つの得をすること」。漁師が鳥と貝の二つを手に入れたので似ているように見えますが、争いを利用するという意味は入っていません。
- 反対の言葉:「漁夫の利」の反対語は、辞書でもはっきり決まったものが見つかりませんでした。争った二者の立場から見ると、「呉越同舟」(仲の悪い者どうしでも、共通の危機には協力し合う)のように、争いをやめて協力することを表す言葉と比べると、話の教えがよく分かります。
「漁夫の利」のよくあるまちがい
- 「りょうふのり」と読む:正しくはぎょふのり。「漁」は「漁師(りょうし)」では「りょう」と読みますが、「漁夫」「漁業」「漁港」では「ぎょ」と読みます。字の読み方は「漁」の読み方・書き順・部首、「夫」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
- 「漁夫」を「漁父」と書いたらまちがい、と思う:どちらも正しい書き方です。原文の蘇代のせりふは「漁父」です。「父(ほ)」は、ここでは年配の男の人を表す字で、「漁父」は漁師のことです。
- 自分の努力で得たものに使う:漁夫の利は、他人の争いのおかげで、苦労せずに得る利益です。がんばって勝ち取ったものには使いません。
- 「争っている二者」が得をすると思う:得をするのは第三者で、争っている二者はどちらも損をします。
- 漢文で「且」を「かつ」と読む:「趙且伐燕」の「且」は、「まさに〜んとす」と読む再読文字です。くわしくは再読文字(未・将・且・当・猶)の読み方へ。
このページは、意味のよく似た言葉が多い「漁夫の利」を、話の流れから整理しました。似た話の「蛇足」や、反対の場面の「呉越同舟」とセットで覚えると、故事成語の問題で迷いにくくなります。
入試ではこう出る
「漁夫の利」は、中学受験から大学受験までよく出る故事成語です。
- 中学受験:意味を選ぶ問題、「ぎょふのり」を漢字で書く問題、「漁夫の利」が当てはまる場面を選ぶ問題がよく問われます。「一石二鳥」とのちがいを問う選択肢もよく見かけます。
- 高校受験:漢文の入門で読むことが多い話なので、返り点をつける・書き下し文に直す・しぎとはまぐりがそれぞれ何と言ったか・漁師が両方を捕まえられた理由を問う問題が中心です。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
- 大学受験:「且」の再読文字、「〜ずんば」の仮定、「恐強秦之為漁父也」の一二三点を訳す問題。鷸・蚌・漁父がそれぞれ何をたとえているかを答えさせる問題も定番です。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

うかるくん
「鷸と蚌は何のたとえ?」と聞かれたら「燕と趙」、「漁父は?」と聞かれたら「秦」。たとえの組み合わせを図で覚えておけば、すぐ答えられるね!
練習問題
やさしい
- 「漁夫の利」の意味として正しいものを選びましょう。
ア 漁師が魚をたくさんとってもうけること イ 一つのことで二つの得をすること ウ 二者が争うすきに、第三者が苦労なく利益を得ること エ 努力して利益を手に入れること答えと解説を見る
ウ。アは言葉どおりの読みちがい、イは「一石二鳥」「一挙両得」、エは努力による利益なので、どれもちがいます。 - 「漁夫の利」の話に出てくる鳥と貝は何ですか。
答えと解説を見る
しぎ(鷸)とはまぐり(蚌)です。しぎがはまぐりの肉をつつき、はまぐりが殻を閉じてしぎのくちばしをはさみました。
ふつう
- 「今日不雨、明日不雨、即有死蚌。」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
今日雨ふらず、明日雨ふらずんば、即ち死蚌有らん。「〜ずんば」は「もし〜しなければ」という仮定の言い方です。 - 漁師が、しぎとはまぐりの両方を捕まえることができたのはなぜですか。
答えと解説を見る
しぎとはまぐりがたがいにはさみ合ったまま、どちらも相手を放そうとしなかった(両者相舎つるを肯んぜず)ので、逃げることができなかったからです。
むずかしい
- 「臣恐強秦之為漁父也」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。
答えと解説を見る
書き下し文は臣強秦の漁父と為らんことを恐るるなり。訳は「わたしは、強い秦が(話の)漁師のように両方を手に入れることを心配するのです」。一二三点の順に返ります。 - 蘇代の話で、鷸と蚌、漁父は、それぞれ何をたとえていますか。また、蘇代は何のためにこの話をしたのですか。
答えと解説を見る
鷸と蚌は、争おうとしている燕と趙、漁父は強い秦のたとえです。燕のために、趙の恵王に燕を攻めるのを思いとどまらせるため(燕と趙が疲れきれば、秦に両方を取られてしまうと説得するため)に話しました。
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よくある質問
漁夫の利の意味を簡単に言うと何ですか?
二者が争っているすきに、関係のない第三者が苦労せずに利益を横取りすることです。争っている二者はどちらも損をします。
漁夫の利の由来となった話はどんな話ですか?
『戦国策』にある話です。しぎがはまぐりの肉をつつくと、はまぐりが殻を閉じてしぎのくちばしをはさみました。どちらも放さずに言い争っているうちに、通りかかった漁師が両方をまとめて捕まえてしまいました。
漁夫の利の出典は何ですか?
中国の戦国時代の遊説家の言葉をまとめた『戦国策』の燕策です。燕を攻めようとする趙の恵王に、蘇代が「燕と趙が争えば強い秦が得をする」と説いたたとえ話です。
「漁夫の利」と「漁父の利」はどちらが正しいですか?
どちらも正しい書き方です。原文では蘇代のせりふに「漁父」とあり、どちらも漁師のことです。
漁夫の利と一石二鳥のちがいは何ですか?
一石二鳥は「一つのことで二つの得をすること」で、争いの意味はありません。漁夫の利は「二者の争いのすきに、第三者が得をすること」です。
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最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



