国士無双(こくしむそう)の意味と由来|史記・蕭何と韓信の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

国士無双(こくしむそう)の意味と由来|史記・蕭何と韓信の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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国士無双こくしむそう

ひとことで言うと

国の中に並ぶ者のいない、すぐれた人物。漢の蕭何が、逃げ出した韓信を自分で追いかけ、主君の劉邦に「韓信は国士無双です」とすすめた話から。

読み方こくしむそう
意味国の中に並ぶ者のいない、とびぬけてすぐれた人物。
出典『史記』淮陰侯列伝(原文は「國士無雙」)
お話劉邦に用いられずに逃げた韓信を、丞相の蕭何が自分で追いかけてつれもどし、「ほかの将軍とちがい、韓信は国士無双」と言って大将軍にさせた
似た言葉天下無双・古今無双・唯一無二・当代随一
反対の言葉凡人・十人並み・有象無象
漢文の句法二重否定(非〜無)・限定(耳)・否定(不敢)

このページのポイント

  • 「国士無双」は国の中に並ぶ者のいない、すぐれた人物。「無双」は「並ぶものがない」という意味です
  • 出典は『史記』淮陰侯列伝。逃げた韓信を蕭何が追いかけ、劉邦にすすめた話を、4こまのイラストで読めます
  • 原文には否定・限定・二重否定が入っていて、「背水の陣」「四面楚歌」の韓信の出発点の話です

「国士無双」の意味と読み方

「国士無双」はこくしむそうと読みます。意味は「国の中に並ぶ者のいない、とびぬけてすぐれた人物」です。原文では旧字体で「國士無雙」と書きます。

「国士(こくし)」は国の中でとくにすぐれた人物、「無双(むそう)」は「双(ならぶもの)」が無い、つまり二つとないという意味です。中国の歴史書『史記』で、漢の蕭何(しょうか)が、のちの名将韓信(かんしん)のことを、主君の劉邦(りゅうほう)に「国士無双です」と言ってすすめた話から生まれた言葉です。

「国士」+「無双」の組み立て国士こくし国の中でとくにすぐれた人物無双むそう「双(ならぶもの)」が無い=二つとない+国の中に並ぶ者のいない、すぐれた人物
「国士」はすぐれた人物、「無双」は並ぶものがないこと。合わせて「国じゅうに二人といない人物」です
うかるくん

うかるくん

「国士無双」って、マンガやゲームで聞いたことがあります! 「むそう」って、強いってことですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

近いね。「無双」は「並ぶものがいない」という意味だ。この言葉は、漢の大将軍・韓信が、まだだれにも認められていなかったころ、ただ一人その才能を見ぬいた蕭何が言った言葉なんだ。『史記』にある、とても有名な場面だよ。

今の日本語では、次のように使います。

  • ○彼の将棋の強さは、まさに国士無双だ。
  • ○戦国時代の名将の中でも、その武将は国士無双とたたえられた。
  • ○監督は新人の才能を見ぬき、「国士無双の逸材だ」と言った。

絵で読む「国士無双」のお話

話の舞台は、秦がほろびたあとの紀元前206年ごろです。天下は楚の項羽(こうう)と漢の劉邦の二人が争っていました。劉邦は項羽によって、西の山おくの漢中(かんちゅう)に追いやられていました。そこにいたのが、項羽のもとを去って劉邦の軍に加わったばかりの韓信です。4つの場面で見てみましょう。

絵で読む「国士無双」のお話(4こま)

1韓信が去る韓信ここにいても用いられない…
1漢の劉邦の軍が漢中にいたころ、韓信は丞相の蕭何に何度もすすめられていましたが、劉邦に用いられませんでした。「ここにいても仕方がない」と、韓信は逃げ出します。
2蕭何が追う韓信蕭何待ってくれ、韓信どの!
2韓信が去ったと聞いた蕭何は、劉邦に知らせるひまもなく、自分で追いかけました。「丞相の蕭何まで逃げた」と聞いた劉邦は、両手を失ったように怒りました。
3劉邦と蕭何劉邦蕭何おまえまで逃げたのはなぜだ!逃げた者を追ったのです。韓信です
3一日二日して、蕭何がもどってきました。劉邦が「なぜ逃げた」としかると、蕭何は「逃げたのではありません。逃げた者を追ったのです。韓信です」と答えます。
4国士無双!劉邦韓信韓信は、国じゅうに二人といない人物!信のごとき者に至りては、国士無双なり
4「ほかの将軍は代わりがいます。しかし韓信は国士無双、国じゅうに二人といない人物です」。劉邦は韓信を大将軍にし、全軍がおどろきました。

このとき、劉邦の軍からは、ふるさとに帰りたい将軍たちが次々に逃げ出していました。劉邦が「十人以上逃げても追わなかったのに、韓信だけを追ったというのはうそだろう」と言うと、蕭何は「ほかの将軍なら代わりはいくらでもいます。でも韓信のような人物は、国じゅうに二人といません」と答えたのです。

「国士無双」の話の流れ1韓信が去る何度すすめられても用いられず、逃げ出す2蕭何が追う劉邦に知らせるひまもなく、自分で追いかける3「国士無双」「天下を争うなら韓信しかいない」と説く4大将軍に儀式をととのえて任命。全軍がおどろいた
「国士無双」の話は4ステップ。逃げた韓信を追いかけた蕭何の判断が、のちの漢の天下を決めました
人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

蕭何のすごいところは、劉邦に知らせるひまもなく、自分で追いかけたことだ。丞相(大臣のトップ)が自分から追いかけるほどの人物——それだけでも、韓信がどれほど特別だったかが分かるね。

「国士無双」の原文・書き下し文・現代語訳

出典は、前漢の司馬遷(しばせん)が書いた歴史書『史記』の淮陰侯列伝(わいいんこうれつでん)です。「淮陰侯」は、韓信がのちに与えられた位の名前です。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で見ていきましょう。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています(書き下し文は代表的な読み方の一例です)。

白文(『史記』淮陰侯列伝より。新字体)信度何等已数言上、上不我用、即亡。何聞信亡、不及以聞、自追之。……何曰、「臣不敢亡也、臣追亡者。」……何曰、「諸将易得耳。至如信者、国士無双。王必欲長王漢中、無所事信。必欲争天下、非信無所与計事者。」……至拝大将、乃韓信也、一軍皆驚。

1文目:韓信が去る

書き下し文信しん度はかるに、何か等ら已すでに数しばしば上しやうに言いふも、上しやう我われを用もちゐずと、即すなはち亡にぐ。

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳韓信は考えた。「蕭何たちがもう何度も王(劉邦)に(自分のことを)すすめてくれたのに、王はわたしを用いない」と。そこですぐに逃げ出した。

ここがポイント「上(しやう)」は、ここでは主君の劉邦のこと。「不(ず)」は否定の句法の字で、「我を用ゐず」と、下の「我を用」を読んでから返ります。「即(すなは)ち」は「すぐに」。「すなはち」と読む字の見分け方は「而・則・乃・即」の読み方と違いへ。「亡(に)ぐ」は「逃げる」という意味です。

2文目:蕭何が追う

書き下し文何か信しんの亡にぐるを聞ききて、以もつて聞ぶんするに及およばず、自みづから之これを追おふ。

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳蕭何は韓信が逃げたと聞くと、王に申し上げるひまもなく、自分で韓信を追いかけた。

ここがポイント「聞(ぶん)す」は「王に申し上げる」という意味。「以て聞するに及ばず」で「王に申し上げることもできず(そのひまもなく)」となります。レ点と一二点が組み合わさった「不レ及二…一」の形は、返り点の順番の練習にぴったりです。

3文目:逃げたのではない

書き下し文何か曰いはく、「臣しん敢あへて亡にげざるなり、臣しん亡にぐる者ものを追おふ。」

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳蕭何は言った。「わたしは決して逃げたのではありません。わたしは逃げた者を追いかけたのです。」

ここがポイント「不敢〜(敢へて〜ず)」は「わざわざ〜しない・決して〜しない」という否定の句法。「臣(しん)」は家来が主君に向かって自分を言うときの言葉です。

4文目:国士無双

書き下し文何か曰いはく、「諸しよ将しやうは得え易やすきのみ。信しんのごとき者ものに至いたりては、国こく士し無む双さうなり。」

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳蕭何は言った。「ほかの将軍たちは、代わりを手に入れるのはたやすいだけです。しかし韓信のような者となると、国じゅうに並ぶ者のいない人物です。」

ここがポイント「耳(のみ)」は「〜だけだ」という限定の句法(唯・独・耳・而已)。「〜のごとき者に至りては」は「〜のような者となると」と、話題をきりかえて強調する言い方です。「如(ごと)し」は比況の句法(如・若・猶)の字で、書き下し文ではひらがなにします。この一文が「国士無双」の出どころです。

5文目:天下を争うなら韓信しかいない

書き下し文必かならず天てん下かを争あらそはんと欲ほつせば、信しんに非あらずんば与ともに事ことを計はかる所ところの者もの無なし。

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳(王が)どうしても天下を争おうとお考えなら、韓信でなければ、いっしょに大事を相談できる者はいません。

ここがポイント「Aに非(あら)ずんばB無し」は「AでなければBはない」という二重否定の句法で、「Aだけが〜できる」と強く言う形です。「欲せば」は「もし〜しようと思うなら」という仮定の句法の読み方。この前には「王が漢中の王のままでいるおつもりなら、韓信を使う必要はありません」とあります。

6文目:全軍がおどろいた

書き下し文大たい将しやうを拝はいするに至いたりて、乃すなはち韓かん信しんなり、一いち軍ぐん皆みな驚おどろく。

(『史記』淮陰侯列伝)

現代語訳大将軍を任命する(儀式の)ときになると、それはなんと韓信であった。全軍の者がみなおどろいた。

ここがポイント将軍たちは、それぞれ「自分が大将軍になれる」と喜んでいました。ところが選ばれたのは、まだ名も知られていない韓信だったのです。「乃(すなは)ち」は、ここでは「なんと・意外にも」という気持ちをこめた言い方です。三・二・一点が続けて出てくるので、返り点の順番に注意しましょう。
「国士無双」の原文で覚える句法4つ不敢敢へて〜ずわざわざ〜しない否定耳〜のみ〜だけだ限定至如〜のごときに至りては〜のような者となると話題の提示非A無BAに非ずんばB無しAでなければBはない二重否定
「国士無双」の原文で覚える句法は4つ。否定・限定・話題の提示・二重否定が一度に練習できます

原典(『史記』淮陰侯列伝)の本文では

維基文庫(中国語のウィキソース)で見られる本文の、主な部分は次のとおりです(旧字体・句読点は維基文庫のもの)。

『史記』淮陰侯列伝の本文(一部)信度何等已數言上,上不我用,即亡。何聞信亡,不及以聞,自追之。人有言上曰:「丞相何亡。」上大怒,如失左右手。……上復罵曰:「諸將亡者以十數,公無所追;追信,詐也。」何曰:「諸將易得耳。至如信者,國士無雙。王必欲長王漢中,無所事信;必欲爭天下,非信無所與計事者。顧王策安所決耳。」
  • 「国士無双」は「國士無雙」:原文は旧字体です。「雙」は「双」の古い字で、「ふたつ・ならぶ」という意味です。
  • 「如失左右手」:蕭何が逃げたと聞いた劉邦は「左右の手を失ったように」怒った、とあります。蕭何がどれほど大切な人だったかが分かる言い方です。
  • 「顧王策安所決耳」:「あとは王がどちらを選ぶか、それだけです」と、蕭何は劉邦に決断をせまっています。
サクラちゃん

サクラちゃん

蕭何は、韓信のことをどうしてそんなに信じられたんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

『史記』には、蕭何が韓信と何度も話をして、すぐれた人物だと思ったと書いてある。言葉だけでなく、話し合いを重ねて才能を確かめていたんだね。そして韓信を大将軍にするとき、蕭何は「よい日を選び、身を清め、壇をつくって、礼をつくして任命してください」とまで言っている。人を大切にするとはどういうことかを教えてくれる場面だよ。

出典『史記』と話の背景

「国士無双」の出典は『史記(しき)』です。前漢の司馬遷が書いた中国の歴史書で、人物の伝記を集めた「列伝」の中に、韓信の伝記「淮陰侯列伝」があります。同じ伝記からは「背水の陣」も生まれています。『史記』がどんな本かは漢文の文学史(史記・論語・唐詩)でも整理しています。

六つ折りの屏風の絵。山あいの道を、馬に乗った二人の人物が行く。右の方に月が出ている
江戸時代の画家・与謝蕪村がえがいた「蕭何追韓信図」の屏風。馬で山道を行く韓信と、それを追う蕭何がえがかれています。月が出ていますが、『史記』には月のことは書かれていません。画像:与謝蕪村「蕭何追韓信図屏風」(江戸時代 18世紀、野村美術館蔵、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)

「月下に韓信を追う」は後の時代のイメージ

蕭何が韓信を追う場面は、のちの時代の絵や芝居でもよく取り上げられ、「月の夜に追いかけた」というイメージで知られるようになりました。上の与謝蕪村の屏風にも、月がえがかれています。ただし、『史記』の本文には月のことは書かれていません。テストで原文について聞かれたら、「月の夜」という部分は入れずに答えるのが安全です。

韓信と蕭何

韓信は、若いころ町の若者の股の下をくぐるはずかしめを受けても、じっとがまんしたことで知られる人物です(「韓信の股くぐり」)。はじめは項羽に仕えましたが、作戦を進言しても用いられず、劉邦のもとへ移りました。しかし劉邦のもとでも、はじめは低い役しか与えられませんでした。そこで韓信の才能を見ぬいたのが、劉邦の重臣・蕭何だったのです。

大将軍になった韓信は、その後、趙との戦いで「背水の陣」をしいて大勝し、最後は垓下(がいか)で項羽を囲んで「四面楚歌」の場面をつくりました。蕭何の「国士無双」という見立ては、まさに正しかったのです。

劉邦と「漢の三傑」劉邦(漢の高祖)張良作戦を立てる蕭何国を治め、食料を送る韓信軍を率いて勝つ推薦
劉邦は、天下を取れたのは張良・蕭何・韓信の三人を使えたからだと言いました。この三人を「漢の三傑」と呼びます

漢の三傑と「成るも蕭何、敗るるも蕭何」

皇帝になった劉邦は、「作戦を立てることでは張良(ちょうりょう)に、国を治めて食料や兵を絶やさないことでは蕭何に、大軍を率いて必ず勝つことでは韓信に、わたしはかなわない。この三人を使えたから天下を取れたのだ」と語ったと『史記』は伝えています。この三人を「漢の三傑」と呼びます。劉邦と韓信が兵の数について語り合った「将に将たり」の話もよく知られています。

しかし、天下が定まったあと、韓信は反乱の疑いをかけられ、最後は都で殺されてしまいます。このとき韓信をおびき出したのも、劉邦の皇后(呂后)と相談した蕭何だったと『史記』は書いています。韓信を世に出したのも蕭何、命を失うきっかけをつくったのも蕭何——ここから日本では、「成るも蕭何、敗るるも蕭何」(成功するのも失敗するのも同じ人のおかげ・せい)ということわざが生まれました。韓信が捕らえられたときの言葉は「狡兎死して走狗烹らる」として知られています。

麻雀の役「国士無双」

「国士無双」は、マージャン(麻雀)の役の名前としても知られています。いちばん高い役(役満)の一つで、1と9の数の牌と、東・南・西・北・白・發・中の字の牌、合わせて13種類を1枚ずつそろえる形です。「十三么九(シーサンヤオチュー)」という別名もあります。全部がちがう牌でそろう、ほかに並ぶもののない形なのでこの名がついたと考えられますが、名前の由来ははっきりした資料が見つかりませんでした。

麻雀の役「国士無双」(13種類を1枚ずつ)一萬九萬①筒⑨筒1索9索東南西北白發中+どれか1種類をもう1枚=役満
麻雀の役「国士無双」。13種類の牌を1枚ずつそろえる、とてもめずらしい形です

「国士無双」の使い方と例文・似た言葉

「国士無双」は、「国士無双の〜」「国士無双とたたえられる」の形でよく使います。ポイントは、人物の才能や力が、国の中でだれにも負けないほどすぐれていることをほめる言葉だということです。とても強いほめ言葉なので、ふだんの会話より、文章やスピーチで使うことが多い言葉です。

  • ○この棋士は、十代で全タイトルを取った国士無双の天才だ。
  • ○歴史の教科書にのる名将たちの中でも、彼は国士無双とたたえられる。
  • ○先生は、その生徒の才能を見ぬき、「国士無双の人材だ」とまわりに紹介した。
  • ×このラーメン屋のスープは国士無双だ。(人物をほめる言葉。食べ物などには「天下一品」などを使う)
  • ×クラスで二番目に足が速い彼は、国士無双だ。(「並ぶ者がいない」ので、二番目には使わない)
国士無双似た言葉天下無双古今無双唯一無二当代随一天下一少しちがう一騎当千白眉反対凡人有象無象十人並み
似た言葉・反対の言葉。「一騎当千」「白眉」は、似ているけれど意味が少しちがいます

似た言葉

  • 天下無双(てんかむそう):天下に並ぶ者がいないこと。国士無双と同じく「無双」を使う言葉です。
  • 古今無双(ここんむそう):昔から今まで、並ぶ者がいないこと。
  • 唯一無二(ゆいいつむに):ただ一つだけで、二つとないこと。人にも物にも使えます。
  • 当代随一(とうだいずいいち):今の時代で、いちばんすぐれていること。

少しちがう言葉

  • 一騎当千(いっきとうせん):一人で千人の敵を相手にできるほど強いこと。「力の強さ」に重点があり、国士無双は「国でいちばんの人物」に重点があります。
  • 白眉(はくび):同じなかまの中でいちばんすぐれた人や物。「なかまの中」でくらべる言葉で、国士無双のような「国じゅう」という大きさはありません。

反対の言葉

  • 凡人(ぼんじん)・十人並み:とくにすぐれた所のない、ふつうの人。
  • 有象無象(うぞうむぞう):数ばかり多くて、役に立たない人やもの。

「国士無双」のよくあるまちがい

  • 「国士夢想」「国士無想」と書く:「むそう」でも、「夢想(ゆめのように思う)」や「無想(何も考えない)」ではありません。「双(ならぶもの)が無い」で「無双」です。字は「双」の読み方・書き順・部首、「無」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。
  • 「こくしぶそう」と読む:「無」は「ぶ」とも読みますが(無事・無礼など)、この言葉はむそうと読みます。
  • 「国士」を「国を思う活動家」の意味だと思う:今の日本語では「国士」が「国のことを心配して行動する人」の意味で使われることもありますが、この言葉の「国士」は国でとくにすぐれた人物のことです。
  • 言った人と言われた人を取りちがえる:「国士無双」と言ったのは蕭何、言われたのは韓信です。劉邦が言ったのではありません。
  • 物や食べ物に使う:もともと人物をほめる言葉です。物には「天下一品」「唯一無二」などを使います。
うかるくん

うかるくん

蕭何と韓信と劉邦、三人も出てきて、だれがだれに言ったか分からなくなりそうです…。

ミスターT先生

ミスターT先生

「追いかけた人が、ほめた人」と覚えよう。逃げた韓信を追いかけたのが蕭何。その蕭何が、劉邦に向かって「韓信は国士無双です」と言った。お話の2こま目と4こま目を思い出せば、まちがえないよ。

入試ではこう出る

「国士無双」は、高校受験から大学受験でよく見かける言葉です。

  • 中学受験:四字熟語・故事成語の意味を選ぶ問題、「むそう」の漢字を書く問題(「夢想」とのまちがい)で出ることがあります。
  • 高校受験:故事成語の意味と由来、「無双」の意味を問う問題。高校受験の漢文の出方は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:『史記』淮陰侯列伝は、韓信の話としてよく読まれる文章です。「不及以聞」「非信無所与計事者」の読み方と訳、「蕭何はなぜ韓信を追ったのか」の説明がよく問われます。共通テストでの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

蕭何が韓信を追った理由を書く問題は、「ほかの将軍は代わりがいるが、韓信は国に並ぶ者のいない人物で、天下を争うなら韓信なしでは計画を立てられないから」と、「ほかの将軍とのちがい」と「天下を争うため」の両方を書くのがコツですね!

練習問題

やさしい

  1. 「国士無双」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 国のために命をかける兵士 イ 国の中に並ぶ者のいない、すぐれた人物 ウ 国じゅうで夢を見ること エ 二人で国を治めること
    答えと解説を見るイ。「国士」はすぐれた人物、「無双」は並ぶものがないことです。ウは「夢想」とのまちがいです。
  2. 「国士無双」と言ったのはだれで、だれのことを言ったのですか。
    答えと解説を見る蕭何が、韓信のことを(劉邦に向かって)言いました。

ふつう

  1. 「何聞信亡、不及以聞、自追之」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る何信の亡ぐるを聞きて、以て聞するに及ばず、自ら之を追ふ。「不レ及二以聞一」は、レ点と一二点の組み合わせです。
  2. 劉邦は、蕭何が韓信を追ったと聞いて、はじめは信じませんでした。それはなぜですか。
    答えと解説を見るそれまで十人以上の将軍が逃げても、蕭何はだれも追わなかったのに、韓信だけを追ったというのは不自然で、うそだと思ったからです。

むずかしい

  1. 「非信無所与計事者」を書き下し文に直し、現代語訳しましょう。また、何という句法が使われていますか。
    答えと解説を見る信に非ずんば与に事を計る所の者無し。訳は「韓信でなければ、いっしょに大事を相談できる者はいない」。「Aに非ずんばB無し」の二重否定で、「韓信だけが相談相手になれる」と強く言っています。
  2. 「成るも蕭何、敗るるも蕭何」ということわざは、どのような事実から生まれましたか。
    答えと解説を見る韓信を見ぬいて大将軍にすすめたのも蕭何、のちに韓信を都におびき出して死に追いやるきっかけをつくったのも蕭何だったことから、成功も失敗も同じ人によることのたとえになりました。

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よくある質問

国士無双の意味を簡単に言うと何ですか?

国の中に並ぶ者のいない、とびぬけてすぐれた人物のことです。「国士」はすぐれた人物、「無双」は並ぶものがないという意味です。

国士無双の由来はどんな話ですか?

『史記』淮陰侯列伝の話です。劉邦に用いられずに逃げ出した韓信を、丞相の蕭何が自分で追いかけてつれもどし、「ほかの将軍は代わりがいるが、韓信は国士無双です」と劉邦にすすめました。韓信は大将軍になり、のちに漢の天下統一に大きな働きをしました。

国士無双と言ったのはだれですか?

漢の劉邦の重臣・蕭何です。蕭何が、主君の劉邦に向かって韓信のことを国士無双と言いました。

麻雀の国士無双と関係がありますか?

麻雀の役の国士無双は、この故事成語の言葉を名前に使ったものです。13種類の牌を1枚ずつそろえる役で、いちばん高い役(役満)の一つです。名前がつけられたいきさつは、はっきりした資料が見つかりませんでした。

国士無双の似た言葉は何ですか?

天下無双、古今無双、唯一無二、当代随一などです。どれも、ほかに並ぶものがないほどすぐれていることを表します。

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出典・参考

  • 原文:『史記』淮陰侯列伝(維基文庫の本文で確認。白文は新字体にしたもの)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(一般的な読み方をもとにした一例)
  • 絵:与謝蕪村「蕭何追韓信図屏風」(野村美術館蔵、Wikimedia Commons、パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦