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酒池肉林しゅちにくりん
ひとことで言うと
ぜいたくのかぎりをつくした、豪華な酒もり。殷の紂王が、酒で池を作り、肉をかけて林のようにして、夜通し宴会をした話から。
| 読み方 | しゅちにくりん |
|---|---|
| 意味 | ぜいたくのかぎりをつくした、豪華な酒もり(宴会)。ぜいたくざんまいの暮らし。 |
| 出典 | 『史記』殷本紀(「以酒為池,県肉為林」) |
| お話 | 殷の紂王は重い税をかけて財宝をため込み、沙丘に酒の池を作り、肉をかけて林のようにして夜通し宴会をした。人々の心がはなれ、周の武王にほろぼされた |
| 似た言葉 | 栄耀栄華・贅沢三昧・豪華絢爛 |
| 反対の言葉 | 質素倹約・粗衣粗食・一汁一菜 |
| 漢文の句法 | 以A為B・使役(使)・置き字(而・於) |
このページのポイント
- 「酒池肉林」はぜいたくのかぎりをつくした豪華な宴会。「肉林」は肉をかけた林で、女性の意味ではありません
- 出典は『史記』殷本紀。殷の紂王が酒の池・肉の林で宴会をし、国をほろぼした話を、4こまのイラストで読めます
- 原文の「以酒為池、県肉為林」で、「以A為B」の形と使役「使」が学べます
「酒池肉林」の意味と読み方
「酒池肉林」はしゅちにくりんと読みます。意味は「ぜいたくのかぎりをつくした、豪華な酒もり(宴会)」のことです。酒や食べ物がありあまるほどの、ぜいたくな宴会や暮らしを表します。
字のとおりに読むと、「酒池」は酒で満たした池、「肉林」は肉をたくさんかけて林のようにした木々です。中国の古代、殷(いん)という国の最後の王・紂王(ちゅうおう)が、本当に酒の池を作り、木々に肉をかけて宴会をしたという話から生まれた言葉です。
うかるくん
池いっぱいのお酒って、本当にそんなことをした王さまがいたんですか?
ミスターT先生
司馬遷の『史記』にそう書かれているんだ。殷の紂王は、もともとは頭がよく力も強い王だったけれど、酒と遊びにおぼれて、重い税で人々を苦しめた。そのぜいたくの代表として書かれたのが、酒の池と肉の林だね。ただ、3000年ほども昔の話だから、どこまでが本当にあったことかは分からない。「そう伝えられている」と読むのが正しい読み方だ。
今の日本語では、次のように使います。少し大げさな、ユーモアをまじえた言い方として使われることも多い言葉です。
- ○その王は、民の苦しみをよそに酒池肉林の毎日を送った。
- ○優勝祝いのパーティーは、ごちそうが並ぶ酒池肉林のさわぎだった。
- ○会社のお金で酒池肉林の宴会を開いた社長が、きびしく批判された。

絵で読む「酒池肉林」のお話
話の流れを4つの場面で見てみましょう。主人公は、殷の最後の王・紂王(ちゅうおう)です。紂王のぜいたくは、やがて殷という国そのものをほろぼすことになります。
絵で読む「酒池肉林」のお話(4こま)
紂王の宴会は、ただのぜいたくではありませんでした。宴会のお金は、人々からしぼり取った重い税です。人々が苦しむ一方で、王は酒の池のそばで夜通し飲みつづける。この落差が、人々のうらみを大きくしたのです。

ミスターT先生
「酒池肉林」は、ただ「豪華」という意味だけではなく、上に立つ人が、ぜいたくにおぼれて国をほろぼしたという、いましめの話でもあるんだ。だから今でも、悪いお金の使い方を批判するときによく使われるんだよ。
このお話の4こま目にある「牧野(ぼくや)の戦い」で、殷は周(しゅう)にほろぼされます。年代は紀元前11世紀ごろとされますが、正確な年については研究者の間で説が分かれています。
「酒池肉林」の原文・書き下し文・現代語訳
出典は『史記』の殷本紀(いんほんぎ)です。殷の歴代の王の記録で、最後の王・紂のところに酒池肉林の話が出てきます。1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で読んでいきましょう。書き下し文は代表的な読み方の一例です。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方へ。
1文目:重い税でため込む
書き下し文賦税を厚くして以て鹿台の銭を実たし、鉅橋の粟を盈たす。
(『史記』殷本紀)
現代語訳税を重くして、それで鹿台(という建物)の銭をいっぱいにし、鉅橋(という倉)の粟(穀物)を満たした。
2文目:沙丘に集める
書き下し文大いに楽戯を沙丘に冣む。
(『史記』殷本紀)
現代語訳沙丘(という所)に、音楽や遊びをする者たちを大勢集めた。
3文目:酒の池と肉の林
書き下し文酒を以て池と為し、肉を県けて林と為す。
(『史記』殷本紀)
現代語訳酒で池を作り、肉をかけて林のようにした。
4文目:夜通しの酒もり
書き下し文長夜の飲を為す。
(『史記』殷本紀)
現代語訳夜通しの酒もりをした。
紂王の最期(『史記』殷本紀)
殷本紀は、紂王のぜいたくのあと、人々がうらみ、諸侯にもそむく者が出たこと、紂王がさらに刑罰をきびしくしたことを書いています。そして周の武王が攻めてきて、牧野(ぼくや)で戦いになります。
紂王の最期
書き下し文紂走り、入りて鹿台に登り、其の宝玉の衣を衣て、火に赴きて死す。
(『史記』殷本紀)
現代語訳紂は逃げて(都に)入り、鹿台に登って、宝石で飾った衣を身につけ、火の中に飛びこんで死んだ。
サクラちゃん
先生、「酒池肉林」の原文には、ほかにも何か書いてあるんですか?
ミスターT先生
宴会のところには、男女をはだかにして追いかけっこをさせた、という一文もある。でもこの言葉の中心は、あくまで「酒の池」と「肉の林」というぜいたくだ。だから「肉林」を女の人のことだと思うのはまちがいなんだ。この話は、ぜいたくにおぼれた王が国をほろぼした話として読むのが大事だよ。
出典『史記』と話の背景
出典の『史記』は、前漢の司馬遷(しばせん)が書いた歴史書です。伝説の時代から前漢の武帝のころまでを書いていて、王朝ごとの記録「本紀(ほんぎ)」の一つが殷本紀です。
殷(商)という国と紂王
殷は、中国で、実在がたしかめられている最も古い王朝の一つです。自分たちでは「商(しょう)」と呼んでいたとされ、「商」とも呼ばれます。うらないに使った亀の甲や牛の骨に刻んだ甲骨文字(こうこつもじ)は、漢字のいちばん古い形の一つとして知られています。
紂王は殷の最後の王で、帝辛(ていしん)とも呼ばれます。『史記』は、紂王がもともと弁が立ち、動きがすばやく、力は猛獣を素手で倒すほどだったと書いています。その才能におごり、家来の忠告を聞かず、酒と遊び、そして妲己(だっき)という女性を大切にして、その言うことばかり聞くようになったとされています。
人々のうらみが高まると、紂王は反対する者にきびしい刑罰を加えるようになりました。忠告した家来も、次々に退けられます。こうして人々の心は、西の周(しゅう)の国へとはなれていきました。周の文王は人々にしたわれ、その子の武王が、諸侯を率いて殷を攻めます。これが牧野の戦いです。
「桀紂」と「堯舜」
中国では、殷の紂王と、その前の王朝・夏(か)の最後の王である桀王(けつおう)を並べて「桀紂(けっちゅう)」と呼び、暴君の代表としてきました。反対に、理想の聖人の王として並べて呼ばれるのが「堯舜(ぎょうしゅん)」です。堯と舜は、『韓非子』の矛盾の話の背景にも出てきます。
ただし、紂王の悪い話の中には、殷をほろぼした周の側が、自分たちの正しさを示すために大げさに伝えたものもあるのではないか、という見方もあります。酒池肉林の話がどこまで本当だったのかは、はっきりした資料が見つからないので、「そう伝えられている」と受け止めておきましょう。
紂王と妲己の話は、のちの物語にも
殷と周の戦いは、のちの時代にも人々の想像をかき立てました。明(みん)の時代には、この戦いを、仙人や妖怪が術を使って戦う物語にした小説『封神演義(ほうしんえんぎ)』が書かれます。この小説では、妲己はキツネの精が人の姿になったものとして描かれ、紂王をまどわす悪役になっています。
ただし、これは小説の中のつくり話です。『史記』の殷本紀は、紂王が妲己を大切にして言うことを聞いた、とは書いていますが、キツネの精などとは書いていません。故事成語を学ぶときは、歴史書に書かれていることと、のちの物語がふくらませたことを分けて考えることが大切です。三顧の礼の雪の場面が小説『三国志演義』の脚色であるのと、よく似ています。
「酒」と「池」の字
「酒」の右側の「酉(ゆう)」は、もともと酒を入れるつぼの形からできた字です。「さんずい」がついて、水のような飲み物の「さけ」を表します。この「酉」は、酔・配・酵などの字にも入っています。写真の青銅の酒器のような道具が、殷の時代から使われていたことを思い出すと、字の成り立ちも覚えやすくなります。
ぜいたくや悪政で国が乱れる話は、ほかの故事成語にも出てきます。重い税や悪い政治が人々を苦しめることを言った「苛政は虎よりも猛し」(『礼記』)は、酒池肉林と合わせて読むと、昔の人がどんな政治をおそれていたかがよく分かります。
「酒池肉林」の使い方と例文・似た言葉
「酒池肉林」は、ぜいたくな宴会・酒もりや、ぜいたくざんまいの暮らしを表すときに使います。もとの話が「ぜいたくで国をほろぼした王」なので、批判やからかいの気持ちをこめて使うことが多い言葉です。
- ○独裁者は、国民が飢えるなか酒池肉林にふけっていた。(批判)
- ○「今日は酒池肉林だ」と、父はテーブルいっぱいのごちそうを見て笑った。(大げさな、ユーモアのある言い方)
- ○歴史の授業で、殷の紂王の酒池肉林の話を習った。
- ○公のお金で酒池肉林の接待をしていたことが分かり、大問題になった。
- ×お昼ごはんはおにぎり1個で、まさに酒池肉林だった。(ぜいたくではない)
- ×女性をたくさん集めることを酒池肉林と言う。(「肉林」は肉をかけた林)
似た言葉
- 栄耀栄華(えいようえいが):富や地位を得て、ぜいたくをきわめること。
- 贅沢三昧(ぜいたくざんまい):思うままにぜいたくをすること。
- 豪華絢爛(ごうかけんらん):きらびやかで、はなやかなこと。
- 山海の珍味(さんかいのちんみ):山や海でとれるめずらしいごちそう。宴会のごちそうを表します。
反対の言葉
- 質素倹約(しっそけんやく):ぜいたくをせず、むだづかいをしないこと。
- 粗衣粗食(そいそしょく):そまつな着物と、そまつな食べ物。つつましい暮らし。
- 一汁一菜(いちじゅういっさい):汁物一つ、おかず一つの、質素な食事。
作文・小論文で使うときのコツ
「酒池肉林」は、だれかのぜいたくを強く批判したいときに、ひとことで印象を残せる言葉です。たとえば「税金のむだづかい」を取り上げる作文で、「一部の人だけが酒池肉林を楽しみ、多くの人が苦しむ社会であってはならない」のように使うと、言いたいことがはっきり伝わります。
一方で、身近な人の楽しい食事会を「酒池肉林」と書くと、読む人によっては悪いぜいたくの意味にとられることがあります。作文では、批判の場面か、わざと大げさに言う冗談の場面かが読み手に分かるように書きましょう。
四字熟語の一覧では、「酒池肉林」は酒池肉林(四字熟語の一覧)として、ほかの「ようす」を表す四字熟語といっしょに並べています。
「酒池肉林」のよくあるまちがい
- 「肉林」を女性のことだと思う:いちばん多いまちがいです。原文は「肉を県けて林と為す」で、肉をたくさんかけた木々のことです。「酒池肉林」は酒と食べ物のぜいたくを表す言葉で、色ごとの意味ではありません。
- 「酒地肉林」「酒池肉輪」と書く:「池(いけ)」と「林(はやし)」です。字は「池」の読み方・書き順・部首・「林」の読み方・書き順・部首で確かめましょう。「酒」の読み方・書き順・部首・「肉」の読み方・書き順・部首もあわせて見ておくと、書きまちがいが防げます。
- 「さけいけにくばやし」「しゅちにくばやし」と読む:正しくは「しゅちにくりん」。4字とも音読みです。
- ほめ言葉として使う:「おいしい料理がたくさん」のつもりで、目上の人の招待に「酒池肉林ですね」と言うのは失礼になることがあります。もとは暴君のぜいたくの話だからです。
- 紂王を「秦の始皇帝」とまちがえる:紂王は殷の最後の王です。秦の始皇帝よりも800年以上前の人物です。
うかるくん
じゃあ、「酒池肉林」はいい意味ではないんですね…。
ミスターT先生
そう、基本は「度をこしたぜいたく」への批判だ。ただ、家族や友だちの間で「今日のごちそうは酒池肉林だね」と、大げさに楽しく言う使い方もある。相手や場面に合わせて使い分けるのが、ことばの上手な使い方だね。
入試ではこう出る
「酒池肉林」は、四字熟語・故事成語の問題として、中学受験から出てくることのある言葉です。
- 中学受験:四字熟語の読み書き(「しゅちにくりん」を漢字で)、意味を選ぶ問題(「ぜいたくな宴会」)、□に漢字を入れる問題(酒□肉□)。
- 高校受験:故事成語の意味と、もとになった話(殷の紂王)を結びつける問題。似た意味・反対の意味の四字熟語を選ぶ問題。高校受験の漢文は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)へ。
- 大学受験:『史記』殷本紀の原文で、「以酒為池、県肉為林」の書き下し、「以A為B」の訳し方、使役「使」の読み方などが問われることがあります。世界史では、殷の滅亡や「殷周革命」とあわせて出てくることもあります。共通テストの漢文は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。

サクラちゃん
「以酒為池」は「酒を以て池と為す」。「以A為B」の形は、「AでBを作る」「AをBとする」と訳すんですね!
練習問題
やさしい
- 「酒池肉林」の意味として正しいものを選びましょう。
ア お酒が飲めない人のこと イ ぜいたくをきわめた豪華な宴会 ウ 森の中の池 エ 質素なくらし答えと解説を見る
イ。酒の池と肉の林という、ぜいたくな宴会のことです。エは反対の意味です。 - 「酒池肉林」の「肉林」とは、もとは何のことですか。
答えと解説を見る
肉をたくさんかけて、林のようにした木々のことです。女性の意味ではありません。
ふつう
- 「以酒為池、県肉為林」を書き下し文に直しましょう。
答えと解説を見る
酒を以て池と為し、肉を県けて林と為す。「以A為B(Aを以てBと為す)」の形です。 - 酒池肉林の話の主人公はだれですか。また、その国はどうなりましたか。
答えと解説を見る
殷の紂王です。ぜいたくと重い税で人々のうらみを買い、周の武王に牧野の戦いで敗れて、殷はほろびました。
むずかしい
- 「厚賦税以実鹿台之銭」を現代語訳しましょう。
答えと解説を見る
税を重くして、それで鹿台の銭をいっぱいにした。「以」は「それによって」と前の事がらを受ける働きです。 - 「酒池肉林」の話は、今の私たちにどのような教えを伝えていると考えられますか。
答えと解説を見る
例:上に立つ人が、人々の苦しみを考えずにぜいたくにおぼれると、人々の心がはなれ、国や組織がほろびるという教え。(ぜいたくへのいましめが書けていれば正解)
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よくある質問
酒池肉林の意味を簡単に言うと何ですか?
ぜいたくのかぎりをつくした、豪華な酒もり(宴会)のことです。酒や食べ物がありあまるほどの、ぜいたくな暮らしを表します。
酒池肉林の「肉林」とは何ですか?
肉をたくさんかけて林のようにした木々のことです。原文は『史記』殷本紀の「肉を県けて林と為す」で、女性のことを表す言葉ではありません。
酒池肉林はだれの話ですか?
中国の古代、殷の最後の王・紂王の話です。重い税をかけて財宝をため込み、酒の池と肉の林で夜通し宴会をしたと『史記』に書かれています。紂王は周の武王に敗れ、殷はほろびました。
酒池肉林の反対の言葉は何ですか?
質素倹約・粗衣粗食・一汁一菜などです。どれも、ぜいたくをしない、つつましい暮らしを表します。
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最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦



