蟷螂の斧(とうろうのおの)の意味と由来|荘子・淮南子の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

蟷螂の斧(とうろうのおの)の意味と由来|荘子・淮南子の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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蟷螂の斧とうろうのおの

ひとことで言うと

弱い者が、自分の力を考えずに強い相手に立ち向かうこと。かまきり(蟷螂)が前足のかまを斧のようにふり上げて、大きな車に向かっていく姿から。

読み方とうろうのおの
意味弱い者が、自分の力を考えずに強い相手に立ち向かうこと。とてもかなわない、むだな抵抗。
出典『荘子』人間世・『淮南子』人間訓(斉の荘公の話)。「螳螂之斧」の形は陳琳の檄文(『文選』)。どれを出典とするかは本による
お話かまきりが前足をふり上げて車輪に向かう。『荘子』では身のほど知らずのたとえ、『淮南子』では荘公がその勇気に感心して車をよけた
似た言葉身のほど知らず・暴虎馮河・ごまめの歯ぎしり
反対の言葉長いものには巻かれろ・君子危うきに近寄らず
漢文の句法再読文字(将)・疑問(乎)・置き字(而)

このページのポイント

  • 「蟷螂の斧」は弱い者が力を考えずに強い相手に立ち向かうこと。かまきりの前足のかまを斧に見立てた言葉です
  • 出典は『荘子』と『淮南子』。同じかまきりが「身のほど知らず」と「勇気がある」の正反対に描かれる話を、4こまのイラストで読めます
  • 「とうろう」は虫へんの「蟷螂」。明かりの「灯籠」と書くまちがいや、勝った場合に使うまちがいに注意しましょう

「蟷螂の斧」の意味と読み方

「蟷螂の斧」はとうろうのおのと読みます。意味は「弱い者が、自分の力を考えずに、強い相手に立ち向かうこと」です。また、そうしたとてもかなわない、むだな抵抗のたとえとしても使います。「蟷螂の斧を以(もっ)て隆車(りゅうしゃ)の轍(わだち)に当たる」という長い形もあります。

「蟷螂(とうろう)」はかまきりのことです。かまきりは、敵が近づくと前足のかまを高くふり上げて身構えます。その前足を「斧(おの)」に見立てて、小さなかまきりが、大きな車に斧をふり上げて向かっていく姿にたとえた言葉です。

かまきりの「斧」で、車に立ち向かうかまきり(蟷螂)前足のかま=斧弱い者が、力を考えず強い相手に向かう=かなわない、むだな抵抗
かまきりの前足のかまを「斧」に見立てています。相手は大きな車。とてもかないません
うかるくん

うかるくん

かまきりが車に向かっていくなんて、なんだか勇ましい感じもしますけど…。

ミスターT先生

ミスターT先生

いいところに気がついたね。実はこの話、中国の昔の本によって、かまきりの評価が正反対なんだ。『荘子(そうじ)』では「身のほど知らず」、『淮南子(えなんじ)』では「勇気がある」。今の日本の「蟷螂の斧」は、おもに身のほど知らずのほうの意味で使われているよ。

ふだんの言い方では、たとえば次のように使います。

  • ○大企業を相手に小さな店が値下げで勝負するのは、蟷螂の斧だろう。
  • ○横綱に挑む新入幕の力士の姿は、蟷螂の斧とも見えた。
  • ○蟷螂の斧と言われても、わたしたちは反対の声を上げ続ける。
豆の枝とかぼちゃの上に、前足を上げたかまきりと、ばったが描かれた多色刷りの絵本の見開き
江戸時代の絵本に描かれたかまきり(右のかぼちゃの上)。前足のかまを持ち上げた姿が、「斧」にたとえられました。左ページには、この虫をよんだ狂歌が書かれています。画像:喜多川歌麿『画本虫撰(えほんむしえらみ)』(日本・江戸時代 1788年、メトロポリタン美術館蔵、パブリックドメイン)

絵で読む「蟷螂の斧」のお話

「蟷螂の斧」のもとになった話は、ひとつではありません。ここでは、場面がはっきりしている『淮南子』の斉の荘公(そうこう)の話を3こまで、今の意味に近い『荘子』のたとえを1こまで見てみましょう。

絵で読む「蟷螂の斧」のお話(4こま)

1狩りに出た荘公荘公かまきり
1斉の荘公が馬車で狩りに出ると、一匹の虫が前足をふり上げて、車輪に打ちかかろうとしていました。
2これは何の虫か此れ何の虫ぞや蟷螂です。進むを知って退くことを知らず力を量らず敵を軽んず荘公御者
2「これは何の虫か」。御者は「蟷螂です。進むことを知って退くことを知らず、力を量らずに敵を軽く見る虫です」と答えます。
3車を回して避けるよけるこれが人なら天下の勇士となろう!
3荘公は「これが人なら天下の勇士になる」と言って、車を回してよけました。それを聞いた勇士たちは、この殿のためなら命をかけようと思いました。
4『荘子』では汝夫の螳蜋を知らざるか其の臂を怒らせて車轍に当たる蘧伯玉かまきり大きな車輪
4一方『荘子』では、かまきりは「自分の力ではかなわないことを知らない」もののたとえ。今の「蟷螂の斧」の意味は、こちらに近いのです。

荘公は、退くことを知らないかまきりを見て、おろかだと笑うのではなく、その勇気に感心しました。そして、わざわざ車の向きを変えてよけてやったのです。この話を聞いた勇士たちは、勇気のある者を大切にする殿だと知って、荘公のためなら命をかけようと思ったと書かれています。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

『淮南子』では、この話は「小さなことで、大きな人の心をつかむ」例として出てくるんだ。かまきり一匹をよけただけで、勇士たちが集まってきた。かまきりそのものより、荘公のふるまいが主役の話なんだね。

ところが、今の日本で「蟷螂の斧」と言うときは、ほめ言葉ではなく、「かなうはずのない相手に、むだに逆らう」という意味がふつうです。この意味は、もうひとつの出典『荘子』の見方に近いものです。どちらを「蟷螂の斧」の出典とするかは、辞書や本によって書き方がちがいます。このページでは両方を紹介します。

「蟷螂の斧」の原文・書き下し文・現代語訳

まず『荘子』人間世(じんかんせい)、次に『淮南子』人間訓(じんかんくん)の原文を、1文ずつ訓読文で読みます(書き下し文は読み方の一例です)。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点・上下点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方へ。

『荘子』人間世:蘧伯玉のたとえ

衛(えい)の国の顔闔(がんこう)が、性格の荒い太子の教育係になることになり、賢者の蘧伯玉(きょはくぎょく)に相談します。蘧伯玉は「相手に合わせながら、気をつけなさい」と答え、かまきりのたとえを持ち出します。

『荘子』人間世の本文(一部。句読点を補ったもの。維基文庫の本文による)汝不知夫螳蜋乎?怒其臂以當車轍,不知其不勝任也,是其才之美者也。戒之!愼之!積伐而美者以犯之,幾矣!

1文目:かまきりを知らないか

書き下し文汝なんぢ夫かの螳たう蜋らうを知しらざるか?

(『荘子』人間世)

現代語訳あなたは、あのかまきりを知らないのか。

ここがポイント「乎(か)」は文の終わりについて「〜か」とたずねる字で、疑問の句法の基本です。「夫(か)の」は「あの」。「螳蜋」は「かまきり」で、今の日本では「蟷螂」と書くのがふつうです。

2文目:車の輪に立ち向かう

書き下し文其その臂ひぢを怒いからせて以もつて車しや轍てつに当あたり、其その任にんに勝たへざるを知しらざるなり。

(『荘子』人間世(原文は「當」))

現代語訳(かまきりは)その腕をふり上げて車の輪に立ち向かうが、自分にはその役目がとても果たせないことを知らないのだ。

ここがポイント「怒らせる」は「(腕を)いからせる=ふり上げる」。「任に勝(た)へず」は「その役目にたえられない、力が足りない」。「不」が2回出てくる文で、否定の句法の練習になります。蘧伯玉はこのあと「自分の才能をほこって相手にさからえば、危ない」と続けます。

『淮南子』人間訓:斉の荘公とかまきり

『淮南子』人間訓の本文(一部。句読点を補ったもの。維基文庫の本文による)齊莊公出獵,有一蟲舉足將搏其輪,問其御曰:「此何蟲也?」對曰:「此所謂螳螂者也。其為蟲也,知進而不知卻,不量力而輕敵。」莊公曰:「此為人,而必為天下勇武矣!」迴車而避之。勇武聞之,知所盡死矣。

3文目:車輪に打ちかかる虫

書き下し文斉せいの荘さう公こう出いでて猟れふす、一いつ虫ちゆう有あり、足あしを挙あげて将まさに其その輪りんを搏うたんとす。

(『淮南子』人間訓(原文は「齊」「莊」「獵」「蟲」「舉」))

現代語訳斉の荘公が狩りに出かけると、一匹の虫がいて、足を持ち上げて今にもその(車の)輪に打ちかかろうとしていた。

ここがポイント「将(まさ)に〜んとす」は、1字を2回読む再読文字。「今にも〜しようとする」という意味です。返り点で下から返ってきたとき、2回目の「す」を読みます。

4文目:御者の答え

書き下し文其その虫むしたるや、進すすむを知しりて卻しりぞくを知しらず、力ちからを量はからずして敵てきを軽かろんず。

(『淮南子』人間訓(原文は「蟲」「輕」))

現代語訳この虫というのは、進むことは知っていても退くことを知らず、自分の力を考えずに敵を軽く見るのです。

ここがポイント御者は「此れ所謂(いはゆる)螳螂なる者なり(これがいわゆるかまきりです)」と答えてから、この説明をします。「而」は読まない置き字で、「〜て」「〜して」の送り仮名の働きをしています。「其の〜たるや」は「その〜というものは」と話題をしめす言い方です。

5文目:荘公のことばと行動

書き下し文荘さう公こう曰いはく、「此これ人ひとたらば、必かならず天てん下かの勇ゆう武ぶたらん。」車くるまを迴めぐらして之これを避さく。

(『淮南子』人間訓(原文は「莊」))

現代語訳荘公は言った、「これがもし人であったなら、きっと天下の勇士となるだろう」。そして車の向きを変えて、かまきりをよけた。

ここがポイント「為(た)らば」は「〜であるならば」と仮定の句法の働きをする読み方。「為」には「なす・なる・たり・ために」など多くの読み方があり、「為」の読み方と用法で見分け方を説明しています。文末の「矣」は読まない置き字で、言い切りの気持ちを強めます。
「蟷螂の斧」の原文で覚える句法不知〜乎〜を知らざるか〜を知らないのか疑問将〜将に〜んとす今にも〜しようとする再読文字不量力力を量らず力を考えない否定而(読まない)「〜て」「〜して」をつなぐ置き字
「蟷螂の斧」の原文で覚える句法。疑問・再読文字・否定・置き字が出てきます

「螳螂の斧」という4字の形

『荘子』と『淮南子』には、じつは「斧」という字は出てきません。「螳螂之斧(螳螂の斧)」という形がはっきり出てくるのは、後漢の終わりごろ、文人の陳琳(ちんりん)が、袁紹(えんしょう)のために書いた檄文(げきぶん=敵を責め、味方を集めるための文書)です。この文章は、のちに詩文集『文選(もんぜん)』におさめられました。

陳琳「為袁紹檄豫州」(『文選』)の一部(維基文庫の本文による。「螳螂」は「螗蜋」とする本もある)欲以螳螂之斧,禦隆車之隧。

書き下すと「螳螂の斧を以て、隆車の隧(みち)を禦(ふせ)がんと欲す」。「隆車」は大きな車のことで、(曹操の軍は)かまきりの斧で、大きな車の行く手をふさごうとしているという意味です。陳琳は、敵の曹操をかまきりにたとえて、「勝てるはずがない」とあざけったのです。日本の「蟷螂の斧を以て隆車の轍に当たる」という言い方は、この「螳螂之斧」と、『荘子』の「車轍に当たる」が合わさった形と考えられます。

サクラちゃん

サクラちゃん

「蟷螂の斧」って、一つの本から生まれたわけじゃないんですね。

ミスターT先生

ミスターT先生

そうなんだ。『荘子』のたとえ、『淮南子』の荘公の話、陳琳の「螳螂之斧」と、少しずつ形を変えながら伝わってきた言葉なんだ。ほかに『韓詩外伝(かんしがいでん)』という本にも斉の荘公の同じ話があるとされているけれど、今回は本文を確かめられなかったので、ここでは原文をのせないでおくね。

出典『荘子』『淮南子』と話の背景

同じかまきりでも、見方は正反対『荘子』人間世蘧伯玉のたとえ腕をふり上げて車の輪に当たる自分の力ではかなわないことを知らない身のほど知らず『淮南子』人間訓斉の荘公の話進むことを知って退くことを知らない荘公「人ならば天下の勇士だ」車を回してよけた勇気をほめる日本の今の意味は『荘子』に近い(かなわない相手へのむだな抵抗)
『荘子』は「身のほど知らず」、『淮南子』は「勇気がある」。同じかまきりの見方が正反対です

『荘子』と蘧伯玉のたとえ

『荘子(そうじ)』は、戦国時代の思想家荘周(そうしゅう)と、その流れをくむ人たちの考えをまとめた本です。老子とならぶ道家(どうか)の代表的な書物で、「胡蝶の夢」「朝三暮四」「井の中の蛙」など、たとえ話から生まれた故事成語がたくさんあります。道家と儒家・法家のちがいは諸子百家(儒家・道家・法家)の考え方で図にしています。

人間世という篇は、乱れた世の中で、どうすれば身を守りながら人とつきあえるかをテーマにしています。かまきりのたとえは、性格の荒い太子に仕える顔闔への忠告の中で出てきます。蘧伯玉は、「かまきりは自分の腕に自信があるから車にも向かっていく。自分の才能をほこって、強い相手にさからえば、身があぶない」と教えたのです。続けて、トラを飼う人は、トラを怒らせないようにえさのやり方まで気をつける、というたとえも出てきます。

『淮南子』と斉の荘公

『淮南子(えなんじ)』は、前漢の淮南王・劉安(りゅうあん)が、学者たちを集めてまとめさせた本です。道家の考えを中心に、いろいろな学派の考えを集めています。「塞翁が馬」の話も、この本の同じ人間訓に出てきます。

荘公の話は、「聖人は小さなことを行って、大きなことをなしとげる」という段の中の例のひとつです。同じところには、魏の田子方(でんしほう)が年老いた馬を見捨てずに買い取った話も並んでいて、小さなものを大切にするふるまいが、人の心を動かすことを言っています。

「蟷螂の斧」という言葉の歩み戦国時代『荘子』人間世車に当たるかまきりのたとえ前漢『淮南子』人間訓斉の荘公がかまきりをよける後漢の末陳琳の檄文(『文選』)「螳螂の斧」の形で出てくる日本「蟷螂の斧」身のほど知らずのたとえ
『荘子』のたとえから日本の「蟷螂の斧」まで、少しずつ形を変えて伝わってきました

なお、中国では今も「螳臂当車(とうひとうしゃ)」(かまきりの腕で車に当たる)という四字の成語がよく使われ、日本の「蟷螂の斧」と同じく身のほど知らずのむだな抵抗という意味です。

赤と黒のうるしぬりの小さな箱の表と裏。つる草がはう、こわれた車輪のそばに、銀色のかまきりがいる
江戸時代の印籠(いんろう=薬などを入れて腰に下げた小箱)。こわれた車輪とつるの中に、かまきり(右の面の下)があしらわれています。車輪とかまきりの組み合わせは、この故事を思わせる図柄です。画像:「Case (Inrō) with Design of Praying Mantis beside Broken Wheel Overgrown with Vines」(日本・江戸時代 19世紀、メトロポリタン美術館蔵、パブリックドメイン)

「蟷螂の斧」の使い方と例文・似た言葉

「蟷螂の斧」は、「〜は蟷螂の斧だ」「蟷螂の斧をふるう」「蟷螂の斧にすぎない」の形で使います。力の差が大きすぎて、とても勝ち目のない抵抗を表します。相手に向かって言うとかなり失礼なので、自分の力が小さいことを分かったうえで「蟷螂の斧かもしれないが」とへりくだって使う言い方もよく見られます。

  • ○一人で大きな組織に立ち向かうのは、蟷螂の斧にすぎない。(勝ち目がない)
  • ○蟷螂の斧と知りながら、彼は最後まで自分の意見を曲げなかった。(分かっていて立ち向かう)
  • ○わたしの意見など蟷螂の斧かもしれませんが、あえて申し上げます。(へりくだって言う)
  • ○強豪校を相手に蟷螂の斧をふるう覚悟で、全力でぶつかった。(自分たちのことを言う)
  • ×かまきりが蟷螂の斧でえものをつかまえた。(本物のかまきりの前足のことには使わない)
  • ×弱いチームが蟷螂の斧で強いチームに大勝した。(勝った場合には使わない)

英語では、似た意味で a futile resistance(むだな抵抗)や、聖書の話から a David and Goliath fight(小さな者と巨人の戦い。ただしこちらは小さい側が勝つ話)などと言います。

蟷螂の斧似た言葉身のほど知らず暴虎馮河ごまめの歯ぎしり匹夫の勇反対の態度長いものには巻かれろ君子危うきに近寄らず彼を知り己を知れば百戦殆うからず
似た言葉と反対の態度の言葉。「暴虎馮河」は向こう見ずな勇気、「蟷螂の斧」は力の差に注目した言葉です

似た言葉

  • 身のほど知らず:自分の力や立場をわきまえないこと。ふだんの言い方での「蟷螂の斧」です。
  • 暴虎馮河(ぼうこひょうが):素手でトラに立ち向かい、歩いて大河をわたるような、向こう見ずな勇気。『論語』から。
  • ごまめの歯ぎしり:力のない者が、くやしがってもどうにもならないこと。「ごまめ」は小さなかたくちいわしの干物です。
  • 匹夫(ひっぷ)の勇:考えのない、血気にはやるだけの勇気。『孟子』から。
  • 軽挙妄動(けいきょもうどう):よく考えずに、軽はずみに行動すること。

反対の態度を表す言葉

  • 長いものには巻かれろ:力の強い相手には、逆らわずに従ったほうがよいということ。
  • 君子危うきに近寄らず:かしこい人は、あぶないことには近づかないということ。
  • 彼を知り己を知れば百戦殆うからず:相手と自分の力をよく知っていれば、何度戦っても負けない。『孫子』から。蟷螂の斧は、この反対の「己を知らない」状態です。

「蟷螂の斧」のよくあるまちがい

「とうろう」は虫へんの「蟷螂」蟷螂とうろうかまきり○ これ灯籠とうろう明かりの道具× 灯籠の斧斧おの下は「斤」父+斤原文では「螳螂」「螳蜋」とも書く(「蟷」は「螳」の異体字)どちらもむしへん。かまきりは「虫」の仲間「とうりょう」「とうろうのふ」とは読まない
「とうろう」は虫へんの「蟷螂」。明かりの「灯籠」とは別の言葉です
  • 「灯籠の斧」と書く:「灯籠(とうろう)」は、お寺や庭にある明かりの道具。同じ読みですが、まったく別の言葉です。「灯」の読み方・書き順・部首・「籠」の読み方・書き順・部首の「灯籠」ではなく、虫へんの「蟷螂」と書きます。
  • 「とうりょうのおの」と読む:正しくは「とうろうのおの」。「螂」は「ろう」と読みます。
  • 「斧」を「斤」「釜」と書く:「斧(おの)」は、「父」の下に「斤(おのづくり)」を書く字です。
  • 勇気をほめる言葉だと思う:『淮南子』では荘公がかまきりの勇気をほめましたが、今の「蟷螂の斧」は「かなわない相手へのむだな抵抗」という意味がふつうです。人をほめるときに使うと、かえって失礼になります。
  • 勝った場合に使う:蟷螂の斧は「とても勝ち目がない」ことを言う言葉です。小さい者が大きい者に勝った話には使いません。
うかるくん

うかるくん

「蟷螂」って、画数が多くてむずかしすぎます…。

ミスターT先生

ミスターT先生

どちらの字も「虫」へん。右側は「当」と「郎」だ。「虫が当たる」と覚えると、かまきりが車に当たる話とつながって忘れにくいよ。ちなみに「蟷」も「螂」も常用漢字ではないから、ふつうは読めれば大丈夫。書き取りより、意味と読みがよく問われるんだ。

入試ではこう出る

「蟷螂の斧」は、高校受験・大学受験で出てくることの多い言葉です。

  • 中学受験:むずかしい漢字なので、読みと意味を選ぶ問題が中心です。「( )の斧」に動物(虫)を入れる問題も考えられます。
  • 高校受験:故事成語の意味を選ぶ問題、例文の中での正しい使い方。「暴虎馮河」「身のほど知らず」など、似た意味の言葉との組み合わせがよく問われます。漢文の入門は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)へ。
  • 大学受験:評論文や小説の中で「蟷螂の斧と知りつつ」のように出てきて、意味や筆者の気持ちを問われることがあります。漢文では、「将」の再読、「不知〜乎」の疑問、「為」の読み分けがねらわれます。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

『荘子』は「身のほど知らず」、『淮南子』は「勇気をほめる」。でも今の意味は「かなわない相手へのむだな抵抗」。この3つを分けて覚えると、ひっかけ問題もこわくないですね!

練習問題

やさしい

  1. 「蟷螂の斧」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 小さな力でも集まれば強くなること イ 弱い者が、力を考えずに強い相手に立ち向かうこと ウ するどい道具を持つこと エ 強い者が弱い者をいじめること
    答えと解説を見るイ。かまきりが前足を斧のようにふり上げて、大きな車に立ち向かう姿のたとえです。
  2. 「蟷螂」は何という虫のことですか。また、何を「斧」にたとえていますか。
    答えと解説を見るかまきり。かまきりの前足のかまを「斧」にたとえています。

ふつう

  1. 「挙足将搏其輪」を書き下し文に直しましょう。また「将」は何という種類の字ですか。
    答えと解説を見る足を挙げて将に其の輪を搏たんとす。「将」は1字を2回読む再読文字で、「将に〜んとす(今にも〜しようとする)」と読みます。
  2. 斉の荘公は、かまきりを見てどうしましたか。また、それはなぜですか。
    答えと解説を見る車の向きを変えて、かまきりをよけました。退くことを知らずに立ち向かうかまきりを、「人であれば天下の勇士になる」と、その勇気に感心したからです。

むずかしい

  1. 『荘子』人間世と『淮南子』人間訓では、かまきりの描き方がどうちがいますか。今の「蟷螂の斧」の意味とも関係づけて説明しましょう。
    答えと解説を見る『荘子』では、自分の力ではかなわないことを知らずに車に向かう身のほど知らずのたとえ。『淮南子』では、退くことを知らない勇気を荘公がほめています。今の「蟷螂の斧」は「かなわない相手へのむだな抵抗」という意味で、『荘子』の見方に近いです。
  2. 次の文のうち、「蟷螂の斧」の使い方として正しいものを選びましょう。
    ア 小さな町工場が蟷螂の斧で大企業に勝った。 イ 蟷螂の斧と知りつつ、市民たちは計画に反対の声を上げた。 ウ 彼は蟷螂の斧のように頼もしい人だ。
    答えと解説を見るイ。アは「勝った」場合なので合わず、ウはほめ言葉として使っているので合いません。

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よくある質問

蟷螂の斧の意味を簡単に言うと何ですか?

弱い者が、自分の力を考えずに強い相手に立ち向かうことです。とてもかなわない、むだな抵抗のたとえとしても使います。

蟷螂の斧の「蟷螂」とは何ですか?

かまきりのことです。かまきりが敵に向かって前足のかまをふり上げる姿を、斧をふり上げているのに見立てています。

蟷螂の斧の出典は何ですか?

『荘子』人間世の、車の輪に立ち向かうかまきりのたとえと、『淮南子』人間訓の、斉の荘公がかまきりをよけた話がよく挙げられます。「螳螂の斧」という形は、後漢の陳琳の檄文に出てきます。どれを出典とするかは本によって書き方がちがいます。

蟷螂の斧はほめ言葉ですか?

ふつうはほめ言葉ではありません。『淮南子』では斉の荘公がかまきりの勇気をほめていますが、今の日本では「かなわない相手へのむだな抵抗」という意味で使います。自分のことを「蟷螂の斧かもしれませんが」とへりくだって言うこともあります。

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出典・参考

  • 原文:『荘子』人間世、『淮南子』人間訓、陳琳「為袁紹檄豫州」(いずれも維基文庫の本文で確認)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(読み方の一例)
  • 絵:メトロポリタン美術館(Open Access、パブリックドメイン)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦