轍鮒の急(てっぷのきゅう)の意味と由来|荘子の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

轍鮒の急(てっぷのきゅう)の意味と由来|荘子の原文・書き下し文・現代語訳とイラストで読むお話【故事成語】

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轍鮒の急てっぷのきゅう

ひとことで言うと

さしせまった苦しい状態。車のわだちにたまった少しの水で苦しむ鮒が、「今すぐ少しの水がほしい」と求めた、荘子のたとえ話から。

読み方てっぷのきゅう
意味さしせまった危険や苦しみ。今すぐ助けが必要な、ひどく困った立場。
出典『荘子』外物篇
お話貧しい荘周が粟を借りに行くと、監河侯は「税が入ったら三百金を貸そう」と答えた。荘周は、わだちの鮒に「西江の水を引いてこよう」と言ったら、鮒が「それなら干物屋で探せ」と怒った、というたとえ話で言い返した
似た言葉涸轍の鮒・焦眉の急・危機一髪・絶体絶命
反対の様子悠々と構える・余裕しゃくしゃく
漢文の句法疑問(豈〜哉)・再読文字(将)・限定(耳)・比較(不如)

このページのポイント

  • 「轍鮒の急」はさしせまった苦しい状態。今すぐ助けが要るときに使います
  • 出典は『荘子』外物篇。わだちの鮒が「先の大量の水より、今の少しの水」を求めたたとえ話を、4こまのイラストで読めます
  • 原文には再読文字「将」・限定「耳」・比較「不如」・置き字が出てきて、漢文の句法の復習にぴったりです

「轍鮒の急」の意味と読み方

「轍鮒の急」はてっぷのきゅうと読みます。意味は「さしせまった危険や苦しみ」「今すぐ助けが必要な、ひどく困った立場」のことです。とくに、お金や食べ物がなくて今日・明日にも困るような、急ぎの苦しさに使います。

「轍(てつ)」は、車輪が通ったあとに道にできる細長いくぼみ、つまりわだちのことです。「鮒(ふ)」は魚のふなです。わだちにたまった、ほんの少しの水の中で、水がなくなりかけて苦しんでいる鮒。それが「轍鮒」です。「急」は「さしせまっていること」。3つ合わせて、わだちの鮒のように、すぐにでも助けが要るさしせまった状態を表します。

「轍(わだち)」は車輪の通ったあと← 車輪のあと少しの水たまり轍(わだち)+ 鮒(ふな)= 轍鮒今にも水がなくなりそうな、さしせまった苦しい立場のたとえ
雨のあと、車輪のあとのくぼみにたまったわずかな水。そこにいる鮒は、水が干上がればすぐに命があぶない
うかるくん

うかるくん

「てっぷのきゅう」って、はじめて聞きました。むずかしい字ですね…。

ミスターT先生

ミスターT先生

字はむずかしいけれど、話はとても分かりやすいよ。出典は『荘子(そうじ)』。お金を借りに行った荘子が、「あとでたくさん貸そう」と言われて、わだちの鮒のたとえ話で言い返したんだ。「今すぐの少し」と「あとでたくさん」、どちらがありがたいか、という話だね。

ふだんの言い方では、次のように使います。少しかたい書き言葉で、新聞のコラムや評論文、スピーチなどで見かけることが多い言葉です。

  • ○台風で家を失った人々は、まさに轍鮒の急にある。
  • ○来年の大きな計画よりも、まず目の前の轍鮒の急を救うべきだ。
  • ○資金がつきかけた会社にとって、わずかな融資でも轍鮒の急を救う助けになる。

「轍鮒」だけで「さしせまった苦しい立場にある者」を指すこともあり、同じ話から「涸轍(こてつ)の鮒」(水がかれたわだちの鮒)という言い方も生まれました。どれも同じ『荘子』の話がもとになっています。

絵で読む「轍鮒の急」のお話

話の流れを4つの場面で見てみましょう。登場するのは、思想家の荘周(そうしゅう)、つまり荘子その人と、監河侯(かんがこう)という身分の高い人です。2こま目からは、荘周が話したたとえ話の中の場面です。

絵で読む「轍鮒の急」のお話(4こま)

1粟を借りに行く粟(あわ)を貸してください税が入ったら三百金を貸そう荘周(荘子)監河侯
1家が貧しい荘周(荘子)は、監河侯のところへ粟(あわ)を借りに行きます。監河侯は「税が入ったら三百金を貸そう」と答えました。
2轍の中の鮒ほんの少しの水でわたしを助けて!轍の水たまり
2荘周はむっとして、たとえ話を始めます。「昨日、車の轍の水たまりに鮒がいて、少しの水で助けてほしいと言った」。
3西江の水を引こう遠くの西江呉・越の王に会って西江の水を引いてこよう
3「わたしは、南の呉・越の王に会って、西江の水を引いて迎えに来よう、と言った。すると鮒は怒って顔色を変えた」。
4干物屋で探すがいい干物屋それなら干物屋でわたしを探すがいい!曾ち早く我を枯魚の肆に索むるに如かず
4鮒は言います。「少しの水があれば生きられるのに。それなら早く干物屋でわたしを探したほうがましだ」。

監河侯は「貸さない」とは言っていません。それどころか「三百金」という大金を約束しています。けれども、それは税が入ってから、つまりずっと先の話です。今日食べる物に困っている荘周にとっては、先の大金より、今の少しの粟のほうがずっと大事なのです。

人差し指を立てて説明するミスターT先生

ミスターT先生

この話のおもしろいところは、荘子が直接もんくを言わずに、たとえ話で言い返したところだ。鮒に「干物屋でさがせ」と言わせることで、「あなたの約束は、わたしにとってその程度のものだ」と、するどく皮肉っているんだね。

荘周(荘子)は、中国の戦国時代の思想家で、宋(そう)の国の蒙(もう)という所の人だったと伝えられています。役人として出世することに興味がなく、暮らしは貧しかったという話が、『荘子』の中にいくつも出てきます。この「轍鮒の急」も、その一つです。

「轍鮒の急」の原文・書き下し文・現代語訳

出典は『荘子』の外物(がいぶつ)篇です。原文を1文ずつ、返り点と送り仮名をつけた訓読文で読んでいきましょう。書き下し文は代表的な読み方の一例で、本や教科書によって少しちがうことがあります。返り点の読み方は返り点(レ点・一二点)の読み方、書き下し文のきまりは書き下し文の書き方でくわしく説明しています。

『荘子』外物の本文(句読点を補ったもの。字は日本の字体に直しています)荘周家貧、故往貸粟於監河侯。監河侯曰、「諾。我将得邑金、将貸子三百金、可乎。」荘周忿然作色曰、「周昨来、有中道而呼者。周顧視車轍中、有鮒魚焉。周問之曰、『鮒魚来、子何為者邪。』対曰、『我東海之波臣也。君豈有斗升之水而活我哉。』周曰、『諾。我且南遊呉越之王、激西江之水而迎子、可乎。』鮒魚忿然作色曰、『吾失我常与、我無所処。吾得斗升之水然活耳。君乃言此、曾不如早索我於枯魚之肆。』」

1文目:荘周が粟を借りに行く

書き下し文荘そう周しゅう家いへ貧まづし、故ゆゑに往ゆきて粟ぞくを監かん河が侯こうに貸かる。

(『荘子』外物)

現代語訳荘周は家が貧しかった。そこで、出かけて行って監河侯に粟(穀物)を借りようとした。

ここがポイント「貸(か)る」は、ここでは「借りる」という意味です。原典には「貣(とく)」の字で書く本もあり、維基文庫(中国語のウィキソース)の本文も両方の字を示しています。「於」はここでは読まない置き字で、「監河侯に」の送り仮名「に」がその働きをしています。

2文目:監河侯の返事

書き下し文監かん河が侯こう曰いはく、「諾だく。我われ将まさに邑いふ金きんを得えんとす、将まさに子しに三さん百びゃく金きんを貸かさんとす、可かならんか。」

(『荘子』外物)

現代語訳監河侯が言うには、「よろしい。わたしはもうすぐ領地からの税金を受け取ることになっている。そうしたらあなたに三百金を貸そう。それでよいかな。」

ここがポイント「将(まさ)に〜んとす」は「今にも〜しようとする」という再読文字。一度目は「まさに」と読み、返って二度目に「んとす」と読みます。「邑金(ゆうきん)」は領地から入る税金。「子(し)」は「あなた」です。

3文目:わだちの中の鮒

書き下し文周しゅう顧かへりみて車しゃ轍てつの中なかを視みるに、鮒ふ魚ぎょ有あり。

(『荘子』外物)

現代語訳わたし(荘周)がふり返って車のわだちの中を見ると、鮒がいた。

ここがポイント「焉」は文の終わりに置く読まない字(置き字)で、「〜がいた」と言い切る調子をそえます。荘周が自分のことを「周」と名前で呼んでいるのも、漢文によくある言い方です。

4文目:鮒のたのみ

書き下し文君きみ豈あにに斗と升しょうの水みづ有ありて我われを活いかさんか。

(『荘子』外物)

現代語訳あなたは、ほんのわずかな水を持っていて、わたしを生かしてくださるのではありませんか(どうか助けてください)。

ここがポイント「豈(あに)〜んか」は、ここでは「なんとか〜してくれないか」とたずねる、願いをこめた言い方です。「豈」はふつう「どうして〜か、いや〜ない」という反語で使われることが多い字なので、文の流れで読み分けます。疑問の言い方は疑問の句法へ。「斗升(とうしょう)」は一斗・一升という小さな量で、「ほんの少し」の意味です。

5文目:荘周の約束

書き下し文西せい江こうの水みづを激げきして子しを迎むかへん、可かならんか。

(『荘子』外物)

現代語訳(呉や越の王に会いに行くので)西江の水をせき止めて勢いよく流し、あなたを迎えに来よう。それでよいかな。

ここがポイント「激(げき)して」は、水をせき止めて勢いよく流すこと。この文のすぐ前に「我且に南のかた呉・越の王に遊ばんとす」(わたしは南の呉や越の王のところへ行くところだ)とあります。「西江」がどの川を指すかは、長江とする説などがあり、はっきりしません。

6文目:鮒の怒りのことば

書き下し文吾われ斗と升しょうの水みづを得えば然すなはち活いきんのみ。

(『荘子』外物)

現代語訳わたしは、ほんの少しの水さえもらえれば、それで生きのびられるのだ。

ここがポイント「耳(のみ)」は「〜だけだ」と範囲をしぼる限定の句法。「得ば(えば)」は「もし手に入れたら」という仮定で、仮定の句法の考え方です。「然(すなは)ち」は「そうすれば」。
「轍鮒の急」で覚える句法4つ豈〜哉豈に〜んかなんとか〜してくれないか疑問・願い〜耳〜のみ〜だけだ限定不如〜に如かず〜のほうがよい比較而・焉・於読まない字置き字置き字
「轍鮒の急」の原文に出てくる句法。疑問(願い)・限定・比較・置き字が練習できます

話のしめくくり「枯魚の肆」

鮒の最後のことばは、原文で「君乃言此、曾不如早索我於枯魚之肆」です。書き下し文は「君乃ち此を言ふ。曾ち早く我を枯魚の肆に索むるに如かず」のように読みます(「索めんには如かず」と読む本もあります)。意味は「あなたがそんなことを言うのなら、いっそ早く干物屋の店先でわたしを探したほうがましだ」です。

「枯魚(こぎょ)」は干した魚、つまり干物。「肆(し)」は店です。西江の水が届くころには、自分はもう干からびて干物屋に並んでいるだろう、という強烈な皮肉です。「〜に如かず」は「〜のほうがよい」という比較の句法で、「百聞は一見に如かず」の「如かず」と同じです。

維基文庫の本文では「曾不如(早)索我於枯魚之肆」と「早」を括弧に入れていて、「早」の字が無い本もあることが分かります。教科書や辞典では「早」を入れた形で読むことが多いです。

サクラちゃん

サクラちゃん

監河侯は、本当にお金を貸すつもりだったんですか?それとも、ことわる口実だったんですか?

ミスターT先生

ミスターT先生

そこは原文には書かれていないんだ。本気だったかもしれないし、体よくことわったのかもしれない。でも荘子にとっては、どちらでも同じこと。今困っている人に「あとで」と言うのは、助けないのとあまり変わらない、というのがこの話の言いたいことだね。監河侯がだれのことかも、はっきりしない。河を監督する役人のこととも、ある国の君主のこととも言われていて、諸説あるんだ。

出典『荘子』と話の背景

「轍鮒の急」の出典は『荘子(そうじ)』です。中国の戦国時代(紀元前4世紀ごろ)の思想家・荘周(そうしゅう)と、その流れをくむ人々の文章をまとめた本で、「内篇」「外篇」「雑篇」に分かれています。この話のある「外物篇」は雑篇の一つです。荘周本人が書いたのは内篇が中心で、外篇・雑篇は後の人が書いた部分も多いと考えられていますが、どこまでが本人の文章かは研究者の間でも意見が分かれています。

荘子は、諸子百家の道家(老子・荘子)を代表する人物です。孔子・孟子の儒家が「礼」や「仁」で世の中を正そうとしたのに対し、道家は人の作ったきまりや、えらくなりたい気持ちにしばられず、自然のままに生きることを大切にしました。荘子の本には、動物や虫、木などが出てくるたとえ話(寓話)がたくさんあります。

同じ『荘子』から生まれた故事成語には、次のようなものがあります。

  • 井の中の蛙(せまい井戸の蛙が、海の大きさを知らない話。秋水篇)
  • 朝三暮四(朝に三つ・夕方に四つのとちの実で、猿がだまされる話。斉物論篇)
  • 蟷螂の斧(かまきりが前足をふり上げて車に立ち向かう話。人間世篇など)
  • 胡蝶の夢(蝶になった夢を見て、自分が蝶か人か分からなくなる話)
  • 尾を泥中に曳く(えらい役人になるより、泥の中で自由に生きるほうがよいという話)

「尾を泥中に曳く」の話では、荘子は楚の国から大臣にならないかとさそわれても、ことわっています。出世よりも自由を選んだから、暮らしは貧しかった。そう考えると、「轍鮒の急」で荘子が粟を借りに行く場面も、荘子らしい話だと分かります。

荘子は「たとえ話」で言い返した本当の話困っている側荘周先の約束をする側監河侯「三百金を貸そう」たとえ話困っている側鮒先の約束をする側荘周「西江の水を引こう」==鮒が荘周に怒ったように、荘周は監河侯に怒っている
荘子は、監河侯への不満を、鮒と自分のたとえ話に置きかえて言い返しました

この話は二重のたとえになっています。本当の場面では「困っている荘周」と「先の約束をする監河侯」。たとえ話では「困っている鮒」と「先の約束をする荘周」。荘周は、自分を鮒の立場に、監河侯を自分の立場に置きかえて話したのです。聞いている監河侯は、鮒の怒りが自分に向けられていることに気づく、というしかけです。

直接「あなたの約束は役に立たない」と言えば、相手は怒るかもしれません。でも、たとえ話で言えば、相手は自分で気づくしかありません。このような相手を説得したり、皮肉ったりするためのたとえ話は、『荘子』だけでなく、『韓非子』の矛盾や『戦国策』の漁夫の利など、戦国時代の本によく見られます。

「今すぐの少し」と「あとでたくさん」斗升の水量:ほんの少しとどく:今すぐ鮒は生きのびる○ 助かる西江の水量:たくさんとどく:ずっと先その前に干物に…× 間に合わない急ぐときは、あとの大きな助けより今の小さな助けが大事
量が多くても、届くのが遅ければ役に立たない。「今すぐの少し」の大切さが、この話の中心です

「轍鮒の急」の使い方と例文・似た言葉

「轍鮒の急」は、名詞として「轍鮒の急にある」「轍鮒の急を救う」「轍鮒の急を告げる」のように使います。命や暮らしにかかわるほど、今すぐの助けが必要な状態に使うのがポイントです。少しかたい言葉なので、作文や小論文で使うと、引きしまった表現になります。

  • ○被災地は轍鮒の急を告げており、一日も早い支援が求められる。(今すぐ助けが要る)
  • ○立派な将来の計画もよいが、まず轍鮒の急にある人々を救わなければならない。
  • ○わずかなお金だったが、轍鮒の急にあった彼には何よりありがたかった。
  • ○「三年後に大きな補助を」という約束では、轍鮒の急は救えない。(話の教えそのまま)
  • ×テストまであと一か月で、轍鮒の急だ。(まだ時間がある・命や暮らしにかかわらない)
  • ×彼はいつも轍鮒の急のように落ち着いている。(意味が正反対)
轍鮒の急似た言葉涸轍の鮒焦眉の急危機一髪絶体絶命一刻を争う反対の様子悠々と構えるのんびりする余裕しゃくしゃく
似た言葉と、反対の様子を表す言葉

似た言葉

  • 涸轍の鮒(こてつのふな):水のかれたわだちの鮒。同じ話から生まれた言い方で、意味もほぼ同じです。
  • 焦眉の急(しょうびのきゅう):まゆげがこげるほど、火がせまっていること。急いで対処しなければならないこと。「轍鮒の急」が「困っている人の苦しさ」に重点があるのに対し、「焦眉の急」は「急いで片づけるべき問題」に使うことが多い言葉です。
  • 危機一髪(ききいっぱつ):髪の毛一本ほどのわずかな差で、危険がせまっていること。
  • 絶体絶命(ぜったいぜつめい):どうにも逃れようのない、追いつめられた立場。
  • 一刻を争う:少しの時間もむだにできないほど急ぐ。

反対の様子を表す言葉

「轍鮒の急」にぴったりの反対語はありませんが、「急がずに落ち着いている様子」として、悠々と構える・のんびりする・余裕しゃくしゃくなどが反対の様子にあたります。

話の教えに近いことわざ

「あとの大きな助けより、今の小さな助け」という教えは、日本のことわざの「明日の百より今日の五十」(先の大きな利益より、確かな今の利益)に近い考え方です。また、助けを求める側から見ると、「遠くの親類より近くの他人」(いざというときは、遠くの親せきより近所の人のほうが頼りになる)にも通じます。

「轍鮒の急」のよくあるまちがい

「轍」を書きまちがえない轍くるまへんわだち・轍鮒○ これ徹ぎょうにんべん徹夜・貫徹× 徹鮒撤てへん撤回・撤去× 撤鮒車の通ったあと(わだち)だから「車へん」
「轍」はくるまへん。形の似た「徹」「撤」とまちがえないように
  • 「轍」を「徹」「撤」と書く:車の通ったあとなので車へんの「轍」です。徹夜の「徹」(ぎょうにんべん)や撤回の「撤」(てへん)とは別の字です。「轍」「鮒」は常用漢字ではありません。「徹」の読み方・書き順・部首・「撤」の読み方・書き順・部首のページと見くらべると、へんのちがいがよく分かります。
  • 「てつふのきゅう」「てっぷうのきゅう」と読む:正しくは「てっぷのきゅう」。「轍(てつ)」と「鮒(ふ)」がつながって「てっぷ」になります。
  • のんびりした場面で使う:「轍鮒の急」は、命や暮らしにかかわるほどのさしせまった苦しさです。「少し急いでいる」くらいでは使いません。
  • 「わだちの鮒が人を助けた話」と思う:助けを求めたのは鮒のほうです。そして、この鮒は荘子自身のたとえです。
  • 「轍を踏む」と混ぜる:「前車の轍を踏む」は、前の人と同じ失敗をくり返すという、別の言葉です。同じ「轍」の字を使いますが、意味はまったくちがいます。
うかるくん

うかるくん

「焦眉の急」と「轍鮒の急」、どっちを使えばいいのか迷っちゃいます…。

ミスターT先生

ミスターT先生

目安を教えよう。「人や生き物が、今すぐ助けを必要としている」なら轍鮒の急、「問題や仕事を、急いで片づけなければならない」なら焦眉の急だ。「焦眉の急の課題」とは言うけれど、「轍鮒の急の課題」とはあまり言わないね。

入試ではこう出る

「轍鮒の急」は、「矛盾」や「蛇足」ほど小学校では習わない、少しむずかしい故事成語です。そのぶん、高校受験・大学受験の漢文や語彙の問題で出てくることがあります。

  • 高校受験:故事成語の意味を選ぶ問題、「轍」の読み書き、話の内容から「鮒が怒った理由」を答える問題。書き下し文に直す問題では、レ点・一二点の練習になります。高校受験の漢文は高校受験の漢文(返り点・書き下し文の対策)にまとめています。
  • 大学受験:『荘子』の寓話として原文が出たときに、「豈〜哉」「将に〜んとす」「〜耳」「不如」などの句法の読み方・訳し方、たとえ話が何を言いたいのかを説明させる問題がよく問われます。評論文の中で「轍鮒の急」が使われ、意味を問われることもあります。共通テストの漢文の出方は共通テストの漢文(配点・時間配分)へ。
ひらめいたサクラちゃん

サクラちゃん

「鮒が怒った理由」を書く問題は、「ほんの少しの水で今すぐ助かるのに、ずっと先の大きな助けを約束されても間に合わないから」と、「今すぐ」と「先」を対比させて書くのがコツですね!

練習問題

やさしい

  1. 「轍鮒の急」の意味として正しいものを選びましょう。
    ア 魚つりで急いでいること イ さしせまった苦しい状態 ウ 車がとても速いこと エ 前の人と同じ失敗をすること
    答えと解説を見るイ。わだちにたまった少しの水の中で苦しむ鮒のように、今すぐ助けが必要な状態です。エは「前車の轍を踏む」の意味です。
  2. 「轍」の読み方と意味を答えましょう。
    答えと解説を見るてつ(わだち)。車輪が通ったあとに道にできる、細長いくぼみのことです。車へんの字です。

ふつう

  1. 「君豈有斗升之水而活我哉」を書き下し文に直しましょう。
    答えと解説を見る君豈に斗升の水有りて我を活かさんか。「而」は置き字で読みません。「斗升の水」は、ほんの少しの水のことです。
  2. 鮒が「早く干物屋(枯魚の肆)でわたしを探したほうがましだ」と言ったのはなぜですか。
    答えと解説を見る鮒はほんの少しの水があれば今すぐ助かるのに、荘周はずっと先に西江の水を引いてこようと言ったから。水が届くころには自分は干からびて干物になっている、という皮肉です。

むずかしい

  1. この話で、荘周が鮒のたとえ話をしたのは、監河侯の何を批判するためですか。
    答えと解説を見る荘周が今すぐ粟を借りたいのに、監河侯が「税が入ったら三百金を貸そう」と、ずっと先の約束をしたこと。今困っている人に先の大きな約束をしても役に立たない、ということを、たとえ話で気づかせようとしました。
  2. 「吾得斗升之水然活耳」の「耳」は何という句法ですか。句法の名前と、文全体の現代語訳を答えましょう。
    答えと解説を見る限定(〜のみ=〜だけだ)。訳は「わたしは、ほんの少しの水さえもらえれば、それで生きのびられるのだ」。

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よくある質問

轍鮒の急の意味を簡単に言うと何ですか?

さしせまった苦しい状態のことです。車のわだちにたまった少しの水で苦しむ鮒のように、今すぐ助けが必要な、ひどく困った立場を表します。

轍鮒の急の由来となった話はどんな話ですか?

『荘子』外物篇の話です。貧しい荘周が監河侯に粟を借りに行くと、「税が入ったら三百金を貸そう」と言われました。荘周は、わだちの鮒に「西江の水を引いてこよう」と言ったら、鮒が「それなら干物屋で探すがいい」と怒った、というたとえ話で言い返しました。

轍鮒の急の「轍」とは何ですか?

「わだち」のことで、車輪が通ったあとに道にできる細長いくぼみです。「てつ」と読み、車へんの字です。徹夜の「徹」や撤回の「撤」とは別の字です。

轍鮒の急と焦眉の急はどうちがいますか?

どちらも急ぎの状態ですが、轍鮒の急は「人や生き物が今すぐ助けを必要としている苦しさ」、焦眉の急は「急いで片づけなければならない問題」に使うことが多い言葉です。

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出典・参考

  • 原文:『荘子』外物(維基文庫の本文で確認。字は日本の字体に直し、句読点を補ったもの)
  • 書き下し文・現代語訳:合格大作戦(代表的な読み方をもとにした一例)
  • お話の絵・図:合格大作戦

最終更新:2026年10月29日/作成:大学受験合格大作戦