漢文文法・句法辞典 › 入試別
難関大
ひとことで言うと
国公立二次・難関私大の漢文は、書き下し・現代語訳・内容や理由の説明を自分で書く記述が中心です。句法の訳の型を答案に必ず出すこと、省かれた主語・目的語を補うこと、たとえや対句を主張の言葉に言いかえることで差がつきます。
このページのポイント
- 記述は書き下し・現代語訳・内容説明・理由説明・漢詩や要約の5種類
- 書き下しは順番・ひらがなの字・置き字・再読文字・仮名遣いで満点をねらう
- 現代語訳は書き下す→句法に印→逐語訳→補う→整えるの5ステップ
- 説明は根拠→言いかえ→組み立て→結び。たとえは主張の言葉に直す
- 高3は春に句法完成→夏に毎日1題→秋に説明・過去問が目安
はじめて(やさしく):二次・難関私大の漢文は何がちがう?
国公立大学の二次試験(個別学力検査)や難関私大の漢文では、自分の言葉で書く記述問題が中心になります。共通テストのように選択肢から選ぶのではなく、書き下し文・現代語訳・内容や理由の説明・漢詩の説明・要約を、答案用紙に書かなければなりません。
国公立大の二次では、傍線部の書き下し・現代語訳・理由の説明を組み合わせた形がよく出ます。白文(返り点も送り仮名もない文)のまま傍線を引き、「書き下し文に改めよ」と問う形も多く見られます。難関私大では、選択式に加えて、書き下し文や返り点を書かせる問いがまざることもあります。出題の形は大学・学部・年度でちがうので、志望校の過去問で確かめておきましょう。
サクラちゃん
共通テストの漢文はとれるのに、二次の記述になると点が伸びないんです……。
ミスターT先生
共通テストは「正しい選択肢を見分ける」試験。二次は「正しい答案を自分で作る」試験だ。見分けられても、句法の訳を答案に書き忘れる、主語を補わない、それだけで点が引かれる。
サクラちゃん
知識はあっても、書き方を知らないと点にならないんですね。
ミスターT先生
そのとおり。だからこのページでは、答案の作り方の手順と減点されやすい所を先に覚えてしまおう。句法の中身は辞典の各ページにある。
ここまでのまとめ
- 二次・難関私大の漢文は記述が中心(書き下し・現代語訳・内容説明・理由説明・漢詩や要約)
- 句法の知識は共通テストと同じ。使い方が「選ぶ」から「書く」へ変わる
- 点を分けるのは句法の訳・主語の補い・言いかえ
しっかり:記述答案の作り方
1. 書き下し文:知識だけで満点がとれる問い
書き下しは、きまりを守れば満点がとれる問いです。次の5点で減点されないようにします(書き下し文のきまり(ひらがなにする字)・送り仮名と訓読のことば)。
- 返り点どおりの順番(とくに一レ点・上下点)。
- 助詞・助動詞にあたる字はひらがな(不→ず・之→の・也→なり・可→べし・使→しむ・見→る・被→る など)。
- 置き字(而・於・于・乎・矣・焉)は書かない(置き字の一覧)。
- 再読文字は2回目をひらがなで書く(再読文字の一覧)。
- 送り仮名は歴史的仮名遣い、活用は文語文法どおり(「ざる」「ざれ」「ん」「んや」など)。
白文から書き下す
白文心不在焉、視而不見、聴而不聞、食而不知其味。
書き下し文心焉に在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らへども其の味を知らず。
(『大学』)
現代語訳心がそこに向いていなければ、目を向けても見えず、耳をかたむけても聞こえず、食べてもその味がわからない。
上下点をふくむ長い書き下し
白文不知周之夢為胡蝶与、胡蝶之夢為周与。
書き下し文周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを知らず。
(『荘子』斉物論)
現代語訳(わたし)荘周が夢で蝶になったのか、蝶が夢で荘周になったのか、わからない。
2. 現代語訳:句法の訳+補い
現代語訳の採点では、句法の訳が入っているか、省かれた主語・目的語を補ったか、重要語の意味が正しいかが見られることが多いと考えられます。次の表のように、句法ごとに答案に必ず入れる訳の型を決めておきましょう。
| 句法 | 書き下しの形 | 答案に入れる訳 | くわしいページ |
|---|---|---|---|
| 反語 | 豈に〜んや/安くんぞ〜ん | どうして〜か、いや〜ない | 反語 |
| 再読文字 | 未だ〜ず/将に〜んとす/当に〜べし | まだ〜ない/いまにも〜しようとする/当然〜すべきだ | 再読文字 |
| 使役 | AをしてBしむ | AにBさせる | 使役 |
| 受身 | AのBする所と為る/Bる | AにBされる | 受身 |
| 二重否定 | 〜ざるは無し/〜ざるべからず | みな〜する/〜しなければならない | 二重否定 |
| 部分否定 | 常には〜ず/倶には〜ず | いつも〜とはかぎらない/両方とも〜とはかぎらない | 部分否定と全部否定 |
| 抑揚 | Aすら且つB、况んやCをや | AでさえBだ、ましてCはなおさらだ | 抑揚 |
| 仮定 | 苟くも〜ば/縦ひ〜とも | もし〜ならば/たとえ〜としても | 仮定 |
| 限定 | 唯だ〜のみ | ただ〜だけだ | 限定 |
| 累加 | 唯だに〜のみならず | ただ〜だけでなく | 累加 |
再読文字+受身を一度に訳す
書き下し文しからずんば、若が属皆且に虜とする所と為らんとす。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳そうでなければ、おまえたちはみな、いまにも(沛公に)捕虜にされようとしている。
二重否定の訳
書き下し文父母の年は、知らざるべからざるなり。
(『論語』里仁)
現代語訳父母の年齢は、知っていなければならない。
仮定+指示語の補い
書き下し文丘や幸ひなり、苟くも過ち有らば、人必ず之を知る。
(『論語』述而)
現代語訳わたし(孔丘)は幸せだ。もし過ちがあれば、人が必ずそれに気づいて(教えて)くれる。
もっと深く:説明・漢詩・要約と、1年の勉強の流れ
1. 内容説明・理由説明の答案の型
説明問題では、どこが答えの根拠かを先に決めます。漢文は対句とたとえ話で主張を述べることが多いので、「何を何にたとえているか」「対句の前半と後半で何がくらべられているか」を言いかえると、答案の骨組みができます。
たとえ(玉)と主張(人)を言いかえる
書き下し文玉琢かざれば、器を成さず。人学ばざれば、道を知らず。
(『礼記』学記)
現代語訳玉はみがかなければ、器(りっぱな道具)にならない。人は学ばなければ、(人として行うべき)道を知らない。
「則」の前後を因果で結ぶ
書き下し文倉廩実つれば則ち礼節を知り、衣食足れば則ち栄辱を知る。
(『管子』牧民)
現代語訳米倉がいっぱいになれば(人々は)礼儀や節度をわきまえ、衣服や食べ物が足りれば名誉と恥を知るようになる。
2. 漢詩の説明と要約
漢詩の問いでは、形式(五言・七言、絶句・律詩)・押韻・対句を押さえたうえで、景色(前半)と心情(後半)の結びつきを説明させる形がよく見られます。答案は「〜という景色を通して、〜という思いを表している」の形にすると書きやすくなります(漢詩のきまり(絶句・律詩・押韻・対句))。要約では、話の筋を追うのでなく、筆者の主張と、それを支える理由・たとえを字数内で組み合わせます。思想の文章なら、儒家・道家などの立場を知っていると主張がつかみやすくなります(諸子百家(儒家・道家・法家)・漢文の文学史)。
心情の説明(四面楚歌)
書き下し文漢皆已に楚を得たるか。是れ何ぞ楚人の多きや。
(『史記』項羽本紀)
現代語訳漢はもう楚の地をすっかり手に入れてしまったのか。なんと楚の人が多いことか。
逆説めいた文の内容説明
白文知之為知之、不知為不知。是知也。
書き下し文之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。
(『論語』為政)
現代語訳知っていることは知っているとし、知らないことは知らないとする。これが(本当に)知るということだ。
3. 減点されやすい所と、白文の訓読
白文に返り点をつける問い、白文を書き下す問いでは、文の組み立て(主語・述語・目的語・補語)から読む順番を考えます。「不・無・有・使・為・所・可・難」など、下から返って読むことが多い字に目をつけると近道です(漢文の語順(主語・述語・目的語・補語)・返読文字の一覧)。ふだんから「訓読文→書き下し文→白文」の順に音読し、最後は白文だけで読めるかを試しておきましょう(漢文の勉強法(白文の音読))。
4. 1年の勉強の流れ
- 4〜6月:句法と重要語を終わらせます。句法の一覧(印刷用)を手元に置き、言えない句法をなくします。
- 7〜8月:書き下しと現代語訳の記述を毎日1題。書いたら上のチェックリストで自己採点します。
- 9〜11月:説明・要約・漢詩の問い。志望校の過去問で、出題の形(白文か訓読文か、字数、解答欄の大きさ)に慣れます。
- 12〜1月:共通テスト対策(共通テストの漢文)と並行し、記述は週2題ほどで感覚を保ちます。
- 1〜2月:志望校の過去問を時間を計って解き、答案を先生や友人に見てもらいます。
京大のように、漢文訓読の文体で書かれた明治の文語文を出す大学もあります(京大国語 文語文(明治擬古文)の勉強法)。書き下し文は古文の文法で書くので、古文の記述の力もそのまま役立ちます(国公立二次・難関私大の古文文法)。

うかるくん
説明問題、本文をそのまま写すと「言いかえていない」って言われるし、言いかえすぎると「根拠がない」って言われるし……。
ミスターT先生
根拠の場所は本文、言葉はふつうの日本語、が基本だ。たとえの部分は外して主張の側で書く、対句は「AではなくB」「AもBも」のように関係を言葉にする。この2つだけで答案はぐっと締まる。
サクラちゃん
書いたらチェックリストで見直し、ですね!

ミスターT先生
答案を書いたら、一度採点者になったつもりで読み直してみよう。「句法の訳はあるか」「だれが・何を、が補われているか」。この見直しが、二次の漢文でいちばん点を伸ばすよ。
よくあるまちがい
まちがい1:反語を疑問のまま訳す
「どうして〜か」で止めると、反語の訳としては足りません。「どうして〜か、いや〜ない」まで書くか、「〜ない」と結論を言い切ります(反語の句法)。
まちがい2:主語・目的語・指示語を補わない
漢文は主語や目的語がよく省かれます。訳や説明では「(項羽が)」「(その過ち)」のように補わないと、意味が通らない答案になります。
まちがい3:書き下しで置き字・ひらがなの字をまちがえる
「而」を書く、「不」を漢字のまま書く、再読文字の2回目を落とす、の3つが定番の減点です。ただし「焉」のように、置き字に見えて「ここに」「いづくんぞ」と読む字もあります(置き字)。
まちがい4:説明問題で、たとえの言葉のまま答える
「玉を琢くこと」のようにたとえの言葉のまま書くと、説明になりません。たとえが表している主張の中身(学問で自分をみがくこと)に言いかえます。
まちがい5:字数・解答欄を考えずに書く
字数制限や解答欄の大きさは、求められている要素の数のヒントです。要素が足りないと減点、入りきらないと読みにくい答案になります。過去問で解答欄の大きさに慣れておきましょう。
練習問題(記述・自作)
二次の記述の形をまねた自作の問題です(本文は有名な一節から短く引いています)。
やさしい
- 次の白文を書き下し文に改めなさい。
未知生、焉知死。(『論語』先進)
※「未」は再読文字、「焉」は「いづくんゾ」と読む。 - 次の書き下し文を、句法がわかるように現代語訳しなさい。
父母の年は、知らざるべからざるなり。(『論語』里仁)答えと解説を見る
例:「父母の年齢は、知っていなければならない。」「〜ざるべからず」は二重否定で「〜しなければならない」。「知らないわけにはいかない」でも可。「知ってはいけない」のように否定のまま訳すと誤りです(二重否定)。
ふつう
- 次の文を、省略されている語を補って現代語訳しなさい。
丘や幸ひなり、苟くも過ち有らば、人必ず之を知る。(『論語』述而)答えと解説を見る
例:「わたし(孔子)は幸せだ。もし(わたしに)過ちがあれば、人が必ずそれ(わたしの過ち)に気づいてくれる。」採点のポイントは、①「丘」=自分(わたし)、②「苟くも〜ば」の仮定「もし〜ならば」、③「之」の中身(自分の過ち)の3つ。
- 次の白文に、「AのBする所と為る」と読めるように返り点をつけ、書き下し文も書きなさい。
白文:為人所制
(意味:人におさえつけられる)答えと解説を見る
返り点:為二人所一レ制。書き下し文:「人の制する所と為る。」読む順は人①・制②・所③・為④。「所」へは「制」から1字返るのでレ点、「為」へは「人所制」をこえて返るので一二点で、「所」に一点とレ点が重なって「一レ」となります(受身の句法)。
むずかしい
- 「玉琢かざれば、器を成さず。人学ばざれば、道を知らず。」(『礼記』学記)とは、どういうことか。たとえの内容を明らかにして、50字程度で説明しなさい。
答えと解説を見る
例:「人は玉と同じで、素質があっても学問でみがかなければ、人として正しい道を知ることはできないということ。」(50字)。ポイントは、①玉(たとえ)と人(主張)が対応していること、②「琢く」=学ぶ、「器」=役に立つ人物・正しい道、の言いかえ、③「〜ということ」で結ぶこと。
- 「漢皆已に楚を得たるか。是れ何ぞ楚人の多きや。」(『史記』項羽本紀)と言ったときの項羽の心情を、状況を明らかにして60字程度で説明しなさい。
答えと解説を見る
例:「敵の漢軍から楚の歌が聞こえ、故郷の楚の人までが漢に降ったと思い、自分が孤立し追いつめられたことを悟っておどろき嘆く気持ち。」(61字)。①四方から楚の歌が聞こえる状況、②楚が漢に降ったという判断、③驚き・嘆き(「何ぞ〜や」の詠嘆)の3要素を入れます。故事成語「四面楚歌」のもとの場面です。
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- 国語の勉強掲示板(古文・漢文・現代文の勉強の相談)
よくある質問
国公立二次の漢文では何が出ますか?
大学によってちがいますが、傍線部の書き下し文、現代語訳、内容や理由の説明を組み合わせた記述がよく出ます。白文のまま書き下させる問いや、漢詩の心情を説明させる問い、要約を求める問いもあります。志望校の過去問で形を確かめましょう。
漢文の現代語訳で減点されないコツは?
反語・使役・受身・二重否定などの句法の訳の型を答案に必ず入れること、省かれた主語・目的語・指示語の中身を補うことです。まず逐語訳を作り、句法の訳を残したまま自然な日本語に整えます。
漢文の説明問題はどう書けばいいですか?
傍線部の前後や対句・たとえの部分から根拠を見つけ、たとえの言葉をそのまま使わずに主張の言葉へ言いかえ、理由なら「〜から」、内容なら「〜ということ」で結びます。
白文の書き下しが苦手です。どう練習すればいいですか?
訓読文、書き下し文、白文の順に音読し、最後は白文だけで読めるかを試します。不・無・有・使・為・所・可など、下から返って読むことが多い字に目をつけ、主語・述語・目的語の組み立てから読む順番を考えるのが近道です。
二次の漢文はいつから対策すればいいですか?
目安として、高3の春までに句法と重要語を終え、夏から書き下しと現代語訳の記述を毎日1題、秋から説明・要約と志望校の過去問に取り組むと無理がありません。あくまで目安で、早く始めるほど楽になります。
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出典・参考
- 例文の本文:『大学』、『荘子』斉物論、『史記』項羽本紀、『論語』里仁・述而・為政、『礼記』学記、『管子』牧民。訓読は高校の教科書で一般的な読み方による。「自作」とした問題は合格大作戦の作例
- 出題の形は国公立二次・難関私大で一般的に見られる傾向で、大学・学部・年度によって異なる(特定の大学の入試問題は転載していない)。勉強の時期・量は目安
- 画像:蘇軾「黄州寒食詩巻」(北宋・11世紀、台北・国立故宮博物院、Wikimedia Commons・パブリックドメイン)
最終更新:2026年10月28日/作成:大学受験合格大作戦



